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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2013-11月号 (Vol.64, No.6)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2013-11

特集:「スマートシティ・エネルギー」

本特集号では,富士通が国内各地で推進しているスマートシティの取組みと,電力の制度改革に向けて体系化したエネルギーソリューションを紹介します。


スマートシティ・エネルギー推進本部
本部長
山岸 憲一
スマートシティ・エネルギー推進本部
本部長 山岸 憲一 写真

スマートシティ・エネルギー特集に寄せて(PDF)

富士通の考えるスマートシティとは,エネルギーなどの社会インフラのスマート化をICTで実現すること,地域の課題や活性化の在り方を地域とともに考え解決すること,そして,ICTにより持続的な社会価値の循環を創出し,その地域で暮らす住民生活の質の向上を追求していくことです。富士通は,ICTによって社会的課題の解決に貢献し,地域における新たな価値創造を推進することにより,人々が安心して暮らせる豊かな社会「Human Centric Intelligent Society」の実現を目指してまいります。

特集:スマートシティ・エネルギー 目次〕

総括

  • 富士通のスマートシティへの取組み

スマートシティ

  • 会津若松市におけるスマートコミュニティ構築の取組み
  • 住民の思いを反映するスマートコミュニティに向けて
    ~あわじ環境未来島構想事例~
  • 社会インフラの効率的な維持管理の実現
    ~道路の簡易点検から始める長寿命化~

エネルギー

  • 富士通が創出するスマートハウスサービス
  • 企業向けエネルギーマネジメントへの取組み
  • 最適エネルギーマネジメントを支援する取組み
  • スマートメーター活用のためのソリューション
  • 電力営業系ソリューションの電力システム改革への取組み
  • 設備を中心にしたデータモデルによる火力設備管理ソリューション

研究開発

  • デマンドレスポンスの動向と技術開発
  • 配電網シミュレーション技術の研究開発

環境

  • ICTが創る環境未来都市の新たな捉え方
    ~Sustainable City Network~
  • 都市の価値および環境負荷の定量的評価手法
    ~ICT導入による貢献量~

特集:スマートシティ・エネルギー


総括

今,日本が直面しているエネルギー不足・少子高齢化などの課題は,いずれ世界が直面する課題である。日本はこれらの課題を解決し「課題解決先進国」となり,新たな社会を創造するフロントランナーとして世界を牽引(けんいん)していくポジションに立っている。富士通はその一端を担うべく,ICTを活用して社会や人々の暮らしに貢献することを目指し,スマートシティを推進している。富士通のスマートシティとは,エネルギーなど社会インフラのスマート化をICTで実現すること,地域課題や活性化の在り方を地域とともに考え解決すること,そしてICTにより持続的に社会価値の循環を創出することである。
本稿では,富士通の目指すスマートシティの概要を説明し,各産業分野の課題を解決するソリューションの開発への取組みと,国内で参画している実証実験などの事例を紹介する。またスマートシティのインフラ基盤となるエネルギーソリューションについて述べる。

玉井 久嗣

スマートシティ

会津若松市は,豊かな自然と歴史文化を誇る日本有数の観光都市であり,豊かな自然の恩恵を生かし,再生可能エネルギー導入促進と,地産地消型エネルギー利用促進を通じて,「産業の創出・誘致・振興」「豊かな生活基盤の提供」「市民への安心・安全の提供」に取り組んでいる。
富士通は半導体事業の生産拠点として40年来,会津若松市とともに歩んできた縁もあり,会津若松市が推進する「スマートシティ会津若松」の実現に向けて,市と東北電力との共同により,2011年度からスマートコミュニティ導入促進事業に携わってきた。
本稿では,「会津若松地域スマートコミュニティ導入促進事業」の概要として,エネルギーコントロールセンター(ECC)による,再生可能エネルギー普及に向けたサービスなどを紹介するとともに,地域活性化に向けた将来展開についても述べる。

多田 尚人, 丸井 智浩, 水谷 彰宏

近年,我が国においては少子高齢化,農漁業従事者の減少,エネルギー,CO2環境問題など,様々な社会的課題に対応することが重要となっている。その中でスマートコミュニティの取組みは,エネルギーマネジメントを中心にICTや環境技術を駆使した社会インフラの効率化,見える化やその制御だけではなく,そこに住まう人の意識や快適性を追求したQOL(Quality of Life)の向上など,新たな価値創造が求められている。スマートコミュニティ創造のためには,地域行政,住民双方が抱える社会的課題に対し,意識やその文脈・背景を可視化した上で地域課題を共有し,それらを解決する施策を導出することが必要である。そこで富士通は,直接,現場(フィールド)において,行政や地域住民が考える社会的価値をインタビューや観察などによって発見できるフィールド・イノベーションを適用し,双方の意識のギャップを分析することで,その地域に合致したコミュニティの在り方の導出を行った。
本稿では,その適用事例として「あわじ環境未来島構想」を紹介する。

矢島 彩子, 岩見 敏郎, 岡 明彦, 高橋 壱

国や都道府県,市町村などの各自治体において,道路や橋梁(きょうりょう)などの社会インフラを適切に維持管理していくことは住民生活の利便性向上だけでなく,防災・減災の面からも住民が安心・安全な生活を送るためにも欠かせない取組みである。一方で公共事業にかけられるコストは限られており,効率良く適切に社会インフラを維持管理していく仕組みがますます重要になってきている。笹子トンネルの崩落事故は記憶に新しいところだが,高度成長期以降に整備された多くの社会インフラが今後急速に老朽化する時代を迎えており,適切な点検による現状の確認とその結果に基づく補修の実施といった計画的な維持管理手法の確立が急務となっていることは間違いない。
富士通は数年前から,道路・橋梁・トンネルなどの社会インフラの維持管理にICTを活用した取組みを展開しており,本稿では,その策の一つとして道路パトロールによって自然に集まるデータを用い,舗装の簡易点検手法を標準化したサービスを紹介する。

村上 茂之, 島田 孝司, 谷 弘幸, 葛西 一良

エネルギー

スマートハウスは,大手ハウスメーカーなどが中心となり,安心で豊かな生活を実現する家として開発が進んできたが,2011年3月の東日本大震災をきっかけに電力不足が深刻な課題となり,災害時のエネルギーの自給自足や省エネ,節エネを支援するためにHEMSから導入が拡大している。現在は,「省エネ・創エネ・蓄エネ」の実現に向けて家電メーカーや設備メーカーの機器の開発も進み,日本におけるスマートハウス市場は,2020年には4兆円規模にも達すると予想する調査会社もある。
本稿では,富士通が創出するスマートハウスサービス,つまり家庭内と社会・地域をICTでつなぎ,人々の生活の質(QOL)の向上を目指すサービス,および生活の付加価値を高めるスマートハウスを実現するソリューションについて述べる。

玉井 久嗣, 山田 顕諭

地球温暖化を含む環境問題に向け,省エネルギーへの取組みが求められている中,東日本大震災の発生,原油高,円安といった要因から電気料金の値上がりが発生している。企業においては,経営に大きな影響を与えるエネルギーコストの削減に向けた更なる取組みが必要となっている。また,今後も,企業ごとの経営対応としてだけでなく,環境問題への対応としての規制により,中小ビルなどを含め,より広範に,かつ,多くの需要家に省エネルギー,エネルギーコスト削減が求められる状況が続くと想定される。その対策にICTを活用したエネルギーマネジメントの導入要求がますます高まっていくと考えられる。富士通のEnetune-BEMSは,このような要求を持つ企業向けにクラウド型でエネルギーマネジメントサービスを提供する。これにより,エネルギーの見える化,データ分析,機器制御といった一連のエネルギーマネジメントを実現し,企業の省エネルギー,エネルギーコスト削減に貢献する。
本稿では,Enetune-BEMSの機能,および導入効果を示し,また,将来追加予定の機能について紹介する。

市村 富保, 前枝 昌弘, 福本 邦男, 黒田 健, 福永 隆三

富士通グループでは,ICT製品やソリューションを活用してお客様や社会の環境負荷の低減や環境効率の向上に貢献することを目的に社内で環境リファレンスモデルを構築してきた。この活動は,「Green Reference for Tomorrow」をキーコンセプトにグループ内の4拠点をそれぞれ研究開発・工場・オフィス・データセンターの代表的なモデル拠点として選定し,開発したソリューションをこれらの拠点において社内実践することにより様々なノウハウを蓄積するものである。エネルギーマネジメントは,本活動の骨格となるソリューションであり,活動開始以降,社内での運用実績で得られた知見を生かし,継続的な改善に取り組んでいる。
本稿では,富士通グループが取り組んでいる環境リファレンスモデルのうち,全拠点共通の取組みのほか,研究開発・工場・オフィスの代表3拠点において,運用段階を経て成果を創出している事例を紹介する。

小沢 哲三, 川口 清二, 西島 拓二, 濱川 雅之, 石川 鉄二, 岡村 斉

東日本大震災以降,エネルギーの供給バランスの問題がクローズアップされ,節電への取組みが生活に定着しつつある。電気をこまめに消すことや,エアコンの設定温度を変えるなど,アナログな節電対策だけでなく,電気使用量の見える化やデマンドレスポンスによる使用量抑制といったデジタルな判断での節電対応が望まれ始めている。また,エネルギーの供給側に向けても,電力需要予測をより細かく実施することが,効率的かつ安定的なエネルギー供給につながると考えられている。このような期待に応えることが可能となった背景として,スマートメーターの導入がある。スマートメーターの導入は,より細かな単位での電気使用量などのデータを収集することを実現し,様々な角度からのデータ分析をすることができるようになった。富士通は今後,このようなデータの利活用を支援するソリューションを提供するための取組みを行っている。このソリューションは,電力需要/供給側の両者へのソリューションであり,将来のスマートグリットを実現する礎になると考える。
本稿では,そのソリューションの構成と特徴について述べる。

野村 浩司, 柏木 哲也, 山下 拓, 河出 忠

経済産業省「電力システム改革専門委員会」において,スマートメーター導入促進・電力小売全面自由化・発送電分離のロードマップが策定され,電力業界は大きな変革のときを迎えている。富士通では,電力営業業務およびシステムのノウハウを生かし,変化へ迅速に対応できる営業ソリューションを展開してきた。しかし,電力システム改革によって様々な課題が発生し,それを解決する新たな仕組みが必要になってきている。
本稿では,まず電力システム改革に伴って大きく変化する電力市場について,先行する海外事例や日本固有の市場環境を加味しながら予測する。次に想定される市場環境の変化によって対応すべき方向性を洗い出し,その方向性に沿ったソリューションの考え方や仕組みについて紹介する。

赤堀 勝幸, 犬塚 純, 岩切 伸一, 内田 倫大

これまで一般電気事業者は「低廉かつ安定した電力の供給」という命題に対して,様々な方策に取り組み,その命題を実現してきた。しかし,東日本大震災による需給逼(ひっ)迫は,大規模電源による供給力の確保を行うという従来の仕組みに内在するリスクに対する考え方の見直しの契機を作り,更に電力システム改革における議論などにより,火力発電の高依存状態や将来の法的分離に伴う自由化の流れが起こっている。これらによって一般電気事業者は,安定供給は維持しつつも,これまで以上に経営の効率化,原価の低減に挑んでいかねばならない厳しい状況になっている。
このような現状において,本稿では,設備保全費用の低減による原価低減に寄与するために開発した火力設備管理ソリューションについて述べる。また,併せて,ソリューションの特徴である,設備(機器=点検対象)を中心とするデータモデルによって,設備管理業務をその枠組みから整理し,設備中心のデータモデルの有用性,重要性について述べる。

藤澤 直行, 松尾 修一, 山本 幸男, 野中 和樹

研究開発

ICTによってエネルギーや交通などの社会インフラを効率的に運用するスマートシティが注目されている。国内のエネルギー分野では,エネルギーインフラ改革の一貫として,再生可能エネルギーの有効活用や発送電分離を前提とした電力自由化についての活発な議論が行われている。今後,電力自由化が進むと家庭やオフィス,ビルなどの需要家側でエネルギーは管理されるようになり,各需要家のエネルギー管理システムが協調して全体の需給バランスを維持する分散型システムが多く活用されるようになると考えられている。各需要家のエネルギー管理システムを協調動作させ,需給バランスを維持する仕組みとして,電力供給状況に応じて需要を調整するデマンドレスポンス(DR)が必要不可欠となる。
本稿では,まずDR,およびDRビジネスにおいて台頭してきたDRアグリゲータについて紹介する。更に,DRアグリゲータビジネスを拡大する上で重要な機能となる自動DRとその標準動向,ベースライン推定,およびポートフォリオ選択について紹介する。

園田 俊浩, 北島 弘伸, 高橋 悟

社会問題の中でもエネルギー問題は重要で,東日本大震災後に発生した電力不足問題,環境問題などに関わっている。富士通研究所ではICTにより社会問題を解決する「ソーシャルソリューション」の研究開発を進めており,その中で著者らはエネルギーソリューションとしてエネルギー供給最適化技術,エネルギー消費抑制技術などの多種に対応した研究開発を行っている。現在研究開発中の配電網シミュレーション技術は,配電網の電圧状態をシミュレーションする技術である。既存のシミュレーションとは適応対象が異なり,配電網向けに特化されている。本適用のために,多数需要家への対応,高速処理アルゴリズムの適用,配電網を構成する電力機器のモデル化,利用者の即時判断を可能にした見える化の機能を中心に研究開発を行っている。
本稿ではこれらの機能のうち,高速処理アルゴリズム,配電網を構成する電力機器のモデル化について紹介する。

菊地 英幸, 松藤 優一, 柏木 哲也, 竹林 知善

環境

スマートシティ,環境未来都市の実現に向けた各種のプロジェクトが日本国内および世界各地で進められている。これまでのエネルギー,建物,交通など個々の検討に加え,今後は,これらの成果を更に発展させ,都市が持つエネルギー,建物,交通,環境,医療,農林水産業などの異なる分野の異なる課題を横断的に解決することが求められる。この中で,ICTは資源・エネルギー・情報・人・モノの流れをモニタリング,見える化,分析,最適化する有効なツールとして期待されている。
本稿では,都市の持つ複雑な課題をICTにより横断的に解決し,更に都市・町・村の広域の連携により全体最適を図る新たな捉え方として,「Sustainable City Network」を紹介する。更に,環境・エネルギー問題について,分析した結果と具体的な事例を示すとともに,この視点を広げ,交通・運輸,医療,農業などを含む多様な課題に対する具体的な事例を紹介する。

朽網 道徳, 竹野 実, 井岡 紘子

近年,都市化に伴う環境負荷の増加により,スマートシティの概念が提案され,その実現に向けて様々なインフラの導入が進められている。そして,それらのインフラを有機的につなぎ,新しいサービスを創出するために,ICTの導入がますます重要になってきている。同時に,都市の問題点の把握や改善策の立案を促すために,それらの効果を定量的に評価する指標が必要となっている。富士通では,都市全体における価値と環境負荷の両方の項目に着目し,これまで検討してきたソリューションの導入効果を定量的に評価する手法を都市全体に拡大させ,都市の効率(スマート度)やICTの導入効果を定量的に評価する手法を開発した。
本稿では,都市の効率(スマート度)の評価の新たな考え方,評価の枠組みおよび環境負荷評価技術,環境貢献評価技術を活用したソリューション導入による効果の評価方法,更に都市へのソリューションの導入を想定した具体的な評価事例を紹介する。

山内 崇裕, 朽網 道徳, 永野 友子, 藤井 秀道


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