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Fujitsu

Japan

アーカイブ コンテンツ

注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2013-3月号 (Vol.64, No.2)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2013-3

特集:「イノベーションデザイン」

本特集号では,富士通における最新のデザイン活動について,製品開発プロセスにおけるイノベーションや,ビジネスの上流における課題解決やビジョン創造の事例,更には,近年注目を浴びているソーシャルイノベーションに対する取組みなどを中心に紹介いたします。


執行役員常務
大谷 信雄
執行役員常務
大谷 信雄 写真

イノベーションデザイン特集に寄せて(PDF)

富士通は,今後も複雑化する企業や社会の諸課題に対処するために,デザイン活動も含め自社の強みを今まで以上に進化させながら,「shaping tomorrow with you」というブランドプロミスのもと,お客様とともに豊かな未来を創造してまいります。

特集:イノベーションデザイン 目次〕

総括

  • 富士通におけるHCDの変遷とイノベーションデザインへの展望

プロセス改革への取組み

  • システム開発プロセスへのデザイン技術適用の取組み~HCDからUXデザインへ~
  • 共創プロセスによるイノベーション活動
  • 新たな価値創出のための対話型アプローチ
    ~未来ソリューションワークショップの活動~
  • 事業と組織,社会をデザインする実践知リーダー

上流からのデザインアプローチによるお客様事例

  • 保険営業端末の理想形を実現するイノベーションデザインプロセス
  • POSシステムにおける現場起点からのサービス革新
  • 九州工業大学様におけるキャンパスマスタープラン策定を通じたコミュニティデザインの実践

ソーシャルイノベーションへの取組み

  • ソーシャルイノベーション:社会問題の解決を目指した社会システムのデザインとビジネス創造の試み
  • まちづくりイノベーションHUB「まちばた.net」
  • 社会課題からのイノベーションプロセス:認知症プロジェクト
  • 学びのデザイン思考

特集:イノベーションデザイン


総括

富士通のデザイン部門では,これまで一貫して人間要因の検討から人間主体にデザイン開発を行う「ヒューマンセンタードデザイン(Human Centered Design:HCD)」を実践し,HCDのための手法やプロセスを拡大・深耕してきた。今日ではクラウドコンピューティングの時代を迎え,人々が営みを続ける社会や地球環境にも焦点を当てたデザイン活動の必要性が高まっている。企業が提案するモノやサービスが何のために必要なのか,そのモノやサービスは社会にとって「善」なのかを考え,社会に対する「恩恵」と「影響」を評価・検証・実感しながらモノづくりやサービス開発を行うことが重要になると考えている。
本稿では,まずICTの発展と呼応するように実践してきたHCDの変遷に関して,ハードウェアを中心にしたHCD,ソフトウェアを中心にしたHCD,ユニバーサルデザインとHCD,ユビキタスコンピューティングとHCDの四つの局面から,これまでに構築してきた手法やプロセスについて概観する。次に,ソーシャルな観点からデザインを考える「ソーシャルセントリックデザイン(Social Centric Design:SCD)」について考察し,これまでのHCDとこのSCDを融合させた新たなデザインプロセスについて述べる。

上田 義弘

プロセス改革への取組み

人間中心設計(HCD:Human Centered Design)の実践は,主にデザイナーや専門家の領域と捉えられているが,より広く開発の現場で理解され活用されることが重要である。そのためには,現場のSEや開発者に向けて,デザインのノウハウや技術を分かりやすく伝えたり,ツール化して簡単に使えるようにしたりするといった施策が有効である。
富士通デザインでは,システム開発へのデザイン技術の適用として, 富士通の標準開発プロセス体系であるSDEMへのHCDプロセスの組込み,UI(User Interface)設計や評価のフェーズで使えるツールの開発と提供,ユーザビリティ要件定義支援やユーザビリティ教育などを行ってきた。最近ではスマートデバイスの拡大により,RIA(Rich Internet Application)やUX(User Experience)を意識した製品開発ニーズが高まっており,HCDからUXへという流れの中で,全社共通技術部門とともに事例やノウハウの蓄積と開発現場への情報提供を継続的に行っている。
本稿では,主にSIソリューション分野を中心に展開してきたデザイン技術としてのHCD活動を紹介する。

善方 日出夫, 小川 俊雄

富士通は,これまでの製品・サービスを提供する側,される側といったメーカとお客様という関係性である価値提供型のビジネスから踏み出して,ICT利活用の新しい可能性を生み出すイノベーションに向けて,ソーシャルな価値観の共有や新たな発見や気づきを開発に取り込む共創プロセスに着目した。そこでは,お客様企業や自治体,利用者のみならず,行政,NPO法人をも交えた新たな製品・サービスの開発を実践している。
そのプロセスを実践する中で,共感を起点にした合意形成や,集合知でのアイデア創出のスピードアップ,社会との関係性づくりなどいくつかのメリットや効果を実感している。加えて,連続的・継続的にイノベーションを創出し続けるための企業活動の基盤として,フューチャーセンターなどのオープンなコミュニティ形成にも着目している。
本稿では,イノベーション創出に向けた取組みとして,実践を通じて見えてきたデザイン思考を活用した共創プロセスとその効果を紹介する。更にイノベーションを継続的に生み出すための仕組みとして必要と考える活動基盤についても紹介する。

平野 隆, 石塚 昭彦, 坂口 和敏

プレスリリース九州工業大学,人間中心設計アプローチを採用してキャンパスマスタープランを策定

企業を取り巻く環境が大きく変化する時代,未来に向けて富士通はどのような価値を創り出していくべきか。富士通は変化に対応した新たな製品やサービスから提供される価値,未来の価値を創出することが求められている。本稿で説明する未来ソリューションワークショップは対話と発想を用いて未来の価値創出を狙っている。ワークショップという場のデザインにより,様々な知恵や経験を集め,対話を繰り返すことで参加者の共感を生み出し,それぞれが新たな視点を発見,未来の価値を創出することを目指している。
本稿では,新たな価値を創出するための未来ソリューションワークショップが必要とされる背景,今までの論理的思考によるワークショップとの違いを述べる。更に,富士通のソリューションビジネスにおける未来ソリューションワークショップの適用とその具体的な手法の例を説明しながら,ソリューションベンダとして,ICTに対する新たな付加価値をどのように創り出し提供するのかについて,現在の試みとともに今後の展望を紹介する。

林 省吾, 久保田 真木, 山野 大偉治, 小堀 恵

富士通総研の実践知研究センターでは,野中郁次郎センター長のもとで,社会にとって何が善かという「共通善」の意識を持ちながら,個別具体の現場で文脈に応じた最善の判断を下して実践することのできる「実践知リーダー」を支援・育成するプログラムを実施している。実践知リーダーは,新しい技術を活用して製品やシステムなどの「モノ」を開発するだけでなく,モノの意味的な価値を見出すことで,社会の様々なレベルで「コト」を共創していくビジネスモデル・イノベーションのデザイナーであり,実践者である。
本稿では,実践知研究センターの目指す姿を明らかにして,その活動の主旨と概要を説明する。また,今までの活動の中で形式知化されつつある「信条(クレド)」も紹介する。実践知研究センターの活動は,コミュニティデザインやソーシャルイノベーション,フューチャーセンター,価値の共創,プロトタイピング,現場起点とグランドデザインの綜合など,イノベーションデザインの考え方と共通する点が多い。実践知リーダーは,イノベーションデザインの中心的な担い手であるとも言えるだろう。

浜屋 敏, 大屋 智浩

プレスリリース「実践知研究センター」の設立について

上流からのデザインアプローチによるお客様事例

近年求められる機器のデザイン提案は,単に機能を満たす機器の形を作るだけにとどまらず,使う人の利用シーンにどのような良い影響を与えるかという視点からの提案が求められる。富士通デザインは,お客様のニーズのほか,ウォンツを満たすために現状把握,理想把握,全体プラン作成,機器デザインの四つのプロセスから成るイノベーションデザインの手法を確立した。この手法によって,お客様の詳細な使い方に基づく潜在的なニーズ,ウォンツを見出し,それにフィットしたソリューション提案と機器デザインを行うことで機器を提供するだけにとどまらず,機器を使うことによって生まれるエクスペリエンスを提供するものである。
本稿では,お客様理解に基づくデザイン開発の事例として保険営業職員端末の開発事例から富士通におけるイノベーションデザインの手法について解説する。

藤原 和博

流通や金融など業種向けのシステム,いわゆる「BtoBtoC」のプロダクトやサービスは,システム購入者のみならず,システムを取り扱う従業員,サービスを享受する利用客など,ICTに関わる立場の違いから,それぞれの観点で価値を提供することが必要である。こうしたことから「BtoBtoC」のプロダクトやサービスのデザイン開発に当たっては,使いやすさや美しさだけでなく,経営的なメリットまで様々な視点から総合的に考慮することが重要になる。近年は,社会環境の変化に伴い,システムを購入するお客様の経営環境も変化し,生産性や集客,販売機会向上といった経営に直結する要求が高まってきている。そうした状況の中で,魅力的なプロダクト・サービスを提供するために,デザインの役割が,お客様の課題理解に基づき,サービスそのもののあり方まで革新させる価値創出に期待されている。
本稿では,小売業向けのPOS(販売時点情報管理)システムを事例に,営業部門と開発部門とデザイン部門が一体となって新たなプロダクト・サービスを創出したプロセスと,シミュレーション技術を用いて商談をコンサル型に転換する取組みを紹介する。

安藤 卓

富士通は文部科学省が提唱する戦略的キャンパスマスタープランづくりの手引きに従って,国立大学法人九州工業大学様の3キャンパス(戸畑・飯塚・若松)の30年後までを見据えて,九州工業大学様のあるべき理想の姿を描いた。価値観・想い・ニーズを重視する人間中心設計によるアプローチを採用し,学生,教員などのステークホルダへのインタビューによる「語り」から九州工業大学様のアイデンティティを導いている。また,地域活性化や少子高齢化時代への対応など,これからの大学への期待を組み入れるため,学生・教員・職員・地域住民などとのフィールドワークやワールドカフェ,ワークショップを行い,地域と大学の新しい関係性を考慮したユーザ参加型のキャンパスマスタープランを策定した。
本稿では,そのプロセスとともにコミュニティデザインの方法論について述べる。

坂口 和敏, 平野 隆, 橋本 尚志, 佐藤 善太, 原田 博一

ソーシャルイノベーションへの取組み

「ソーシャルイノベーション」は,人間中心設計のアプローチにより,社会問題を解決する新しい社会システムをデザインしようとする富士通研究所の取組みであり,社会領域での富士通の新しいビジネス創造を目指したものである。この取組みは,地域の現場に入り込み,地域の人々と協働で,社会問題解決に向けたありたい姿や具体的な施策を検討するもので,著者らは,震災復興,高齢化対策,地域農業再生などをテーマに日本各地で実践を行ってきた。これまでの実践により,既存の多くの施策は経済的持続可能性に課題があり,社会問題の解決には複数施策の統合と地域高齢者の参画が必要であることが分かった。
本稿では,ソーシャルイノベーションの概要と実践事例を述べるとともに,社会問題解決のための新たな関係性の実現を目指した「価値循環モデル」と,ICTの活用により新しい住民共助を実現する「住民参加型スマートコミュニティ」のコンセプトについて述べる。

石垣 一司, 指田 直毅

まちづくりに取り組む個人や組織,団体をつないで社会に新しい価値を生み出すために,富士通研究所はまちづくり活動の広報や連携を支援するWebサイト「まちばた.net(まちばたドットネット)」を2011年11月に公開した。「まちばた」とは,まちづくりの活動そのものを知らせるために掲げる旗を意味する。まちばた.netでは,まちづくり活動の想いや内容を表現し団体間や団体と個人で共有できるほか,共通の関心を持つ人達の発見や,セミナのイベント告知ができる。また,地域の魅力や重要な人・施設を取材して発信するスキルを身につける研修を実施している。まちばた.netは,リアルとネットの両面から,地域間交流や地域で活躍する人材の育成を支援している。
本稿では,まちばた.net公開の背景や目的,サービス内容,実績と今後の展開について述べる。

原田 博一, 八木 龍平, 指田 直毅

プレスリリース名古屋市様の地域課題を情報発信により解決する市民記者を育成

日本の認知症高齢者の推計人数は,2012年の段階で300万人を超え,2025年には470万人に達すると予想されている。認知症は日本の社会に大きなインパクトを与える社会的な事象と言える。また,認知症を取り巻く課題は,高齢社会・ヘルスケアという二つの非常に重要な領域の課題が極度に凝縮された事例(エクストリーム事例)とも言える。認知症に関わる取組みは,高齢社会・ヘルスケアの領域においても,有用な社会イノベーションを起こすためのパイロット事例となり得るだろう。
本稿では,未来のステークホルダとの対話を創造的に進めるフューチャーセッションなどのイノベーションデザインの手法を用い,認知症を取り巻く社会的な事象の理解を深めていくプロセスを報告する。また,社会課題を起点とした企業間・組織間連携の価値についても述べる。本稿で述べる内容は,企業という立場から,社会課題にどのようにアプローチするのかという取組みの一つのケースである。

岡田 誠, 五十嵐 洋一郎, 野村 恭彦, 徳田 雄人

1960年代に誕生したコンピュータは様々な産業のインフラとして浸透し,パソコンの誕生,インターネットの誕生を経て,今では,私たちの生活に欠くことのできない存在となっている。また,技術の発展に加え,経済や社会の発展とともに変化してきた消費者意識や社会価値観に呼応し,ICTのデザインは,「モノ」作りから「コト」作りに変化し,お客様に対するサービス志向のデザインが広く求められる存在になった。一方で,未来の社会を担う子どもたちが学ぶ学校は,私たちの一般生活に比べ,驚くほどICTは活用されていないのが現状である。2011年から総務省の政策として「フューチャースクール推進事業」が始まり,今まさに学校教育の現場にICTの導入が開始された。
本稿では,ICTの導入を契機と捉え,未来の大人を育てるためにあるべき学校の姿を,デザイナーが現場の先生方と描き,未来の社会を担う子どもたちに必要な授業のあり方と学校現場に必要なICTについて探究したプロジェクト,「学びのデザイン思考」を紹介する。

竹田 恵一


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