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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2013-1月号 (VOL.64, NO.1)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2013-1

年頭ご挨拶

特集:「新しい世界へのICT活用」

本特集号では,データを中心とした活動の中でも先進的で特徴的な取組みを,ソリューションと技術の両面から,幅広く紹介します。


執行役員常務
川妻 庸男
執行役員常務
川妻 庸男 写真

新しい世界へのICT活用特集に寄せて(PDF)

富士通は,これからも新たな課題,新しい分野への挑戦を続け,人や社会そのものに貢献できるICTを目指してまいります。

特集:新しい世界へのICT活用 目次〕

総括

  • ICTの貢献分野・領域の拡大に向けた富士通の取組み

ソリューション

  • ビッグデータ活用による価値創出を支援する
    データキュレーションサービス
  • データ活用を指向する新サービスへの取組み
  • データ活用基盤サービス
  • 位置情報基盤を使った新たなサービス
  • 位置情報サービスのためのアプリケーション基盤
  • RFIDを活用したグローバル航空機整備効率化ソリューション
  • 情報連携活用基盤を活用したサービス
    —高齢者ケアクラウド—

ICT活用を支える技術

  • コンバージェンスサービスを支える大規模データ分析技術
  • スマートフォンを用いた肌状態測定技術
  • 屋内ロケーション管理技術
  • コンバージェンスサービスを支えるセンシング技術
  • 実証実験から制度化へ踏み出したエリアワンセグ
  • 農業分野におけるICT利活用までの道のり
  • 観測衛星データ活用による農業共済業務効率化の実証
  • 利用者データを中心とする新たなICTの形

特集:新しい世界へのICT活用


総括

従来,ICTは主に人の仕事を代行することで業務の効率化を図り,コストを削減するために活用されていた。しかし昨今,ICT活用への期待が変化しつつある。その背景には,ビジネス環境の変化が挙げられる。市場競争の激化に加え,消費者ニーズの多様化や,不透明な景気動向が重なり,新しいビジネスの創出は困難を極めている。こうした状況の中,お客様からも,今までICTが扱ってこなかった分野や,ICTでは実現できないと思われていた領域に関する相談が増えてきている。著者らは,これらの課題に取り組みつつ,次の社会のあるべき姿を模索するに当たり,実社会における人の活動やモノの動きから生まれる「データ」そのものと,データの利活用による新たな価値創造に着目した。富士通が保有する総合的な技術力で,この膨大で多種多様なデータを分析・融合・活用し,人々がより豊かに安心して暮らせる社会の実現を目指している。
本稿では,最近注目を集めるビッグデータを中心に,データ利活用によるICTの貢献分野の拡大と,富士通の総合力,社会の期待と新領域への適用,今後の方向性について紹介する。

小林 午郎, 新井 浩治

ソリューション

膨大で多種多様なビッグデータの戦略的かつ迅速な活用が,産業界に大きな価値創出をもたらすと期待されている。しかし,ビッグデータの活用には高度な分析スキルや大規模な分析環境が必要になることが多い上に,費用対効果も把握しにくいという課題があるため,具体的な取組みに着手できていない企業も少なくない。富士通のデータキュレーションは,このような課題を抱えるお客様を強力に支援する分析サービスである。ビッグデータ分析の専門家であるデータキュレーターが,お客様の経営や業務に与えるビッグデータの価値を短期間で的確に検証する。データキュレーターは,データ分析に関する専門スキルを駆使して,大規模な分析環境でビッグデータの潜在的な価値を最大限に引き出す分析を行う。この「データに語らせる」アプローチにより,業種や業務の知識に捉われない新しい知見の発見や,ビッグデータの有用性や効果の客観的かつ的確な理解が可能となる。
本稿では,多岐にわたる業種や業務で実績を挙げているデータキュレーションサービスの中から,生活習慣病の発症予防に関する社内事例を紹介する。

岡本 青史, 安藤 剛寿, 高梨 益樹

ビッグデータの活用や分析は,いまだ一部の企業にとどまっており,多くの企業ではデータ活用に興味はあるものの,具体的な取組みは進んでいない。データの価値は,実世界のより多くのモノやコトの状態を捉え,集約し,融合することで更に高まっていくため,データの収集,蓄積,活用に取り組む企業が増えれば増えるほど,価値が増大すると考えられる。すなわち,データ活用を推進する企業が増えること自体がビッグデータのビジネスを大きくすると言える。富士通では,企業のデータ活用の呼び水とすべく,データに新しい解釈を加えることで新しい価値を見出し,そこに新たなサービスを生み出す「データ二次活用サービス」と,異なる業種のサービスから生まれるデータを,相互のサービスの強化や新サービスの創生に活用する「異業種マッシュアップサービス」の二つのデータ活用モデルを実装したサービスを商用化した。
本稿では,この二つのサービスについて事例を交えて紹介するとともに,サービスで収集したデータの二次活用を促進するデータ交換の場である「データマーケットプレイス」について紹介する。

伊藤 映, 田崎 裕二, 徳永 奈緒美

富士通は,パブリッククラウド環境で動作するPaaSで,インターネットを介し,大量のデータを収集・蓄積する機能,大量に集まるデータの中から即座に特定条件に一致するデータを検知する機能,大量データを分析する機能などを持ったデータ活用基盤サービスを提供している。従来は,お客様自身がシステム構築に必要なハードウェアやソフトウェアを用意していたが,本サービスを利用することにより,お客様が資産を持つことなく,ビッグデータの収集・蓄積,検知,分析までの一連の処理を短期間で構築し,手軽に運用を開始することができる。外部アプリケーションとの接続も可能であり,お客様の持つオンプレミスやクラウド環境とつながり,大量データを効率的に活用する処理を取り込むことができる。
本稿では,データ活用基盤サービスの機能・特長,利用イメージを紹介する。

小山 淳, 松口 正昭

近年,ICTの進化により,ネットワークに接続できる端末が多様化し,かつ我々の生活に浸透してきている。ネットワークに接続可能なこれらの端末からは,人・社会・環境の状況をリアルタイムに取得することができる。富士通では,この様々な端末から大量かつ多種多様なデータを取得・活用することによって,より豊かで安心な社会の実現に役立てることが可能と考えている。そこで,大量のセンシングデータを収集,蓄積,分析し,知恵を組み合わせ企業の課題から地球規模の課題までを解決することで豊かな社会を実現していくことを目指し,位置情報を中心に多種多様な大量の情報を統合して扱うことを可能にした「SPATIOWL」を提供している。
本稿では,このSPATIOWLが提供するサービスの一つである「位置情報基盤」の活用事例について,機能の特徴や利用形態を中心に紹介する。

関口 悟朗, 鈴宮 功之, 福井 覚

富士通は「ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティの実現」を掲げ,人々の生活をより豊かで快適なものにすることを目指している。その実現のためには,現実世界から様々なデータをセンシングし,起きている事象を的確に把握することが不可欠である。全てのヒトやモノは,必ず「位置」という情報を持っている。そして,移動に伴ってその値が変化している。すなわち,これらの対象物と,その位置情報を確実に把握することが,現実世界の事象をより的確に把握する手段の一つであり,その結果,もたらされる価値も大きいと考えられる。また,スマートフォンやモバイルネットワークの普及・充実により,位置情報を扱う環境が整ってきた。企業活動においても,位置情報は重要な情報資産となりつつあり,その位置情報をマネジメントして,業務改善や新サービス創出につなげることが,企業価値に直結する時代となってきている。富士通では,これらの位置情報を活用するためのクラウドサービスであるSPATIOWLを提供している。
本稿では,このSPATIOWLのサービス群の中で,お客様自身がアプリケーション,またはシステムを独自に開発する場合に活用できる「位置情報基盤サービス」について,その特徴や利用形態,今後の構想などを紹介する。

玉井 恭平, 脇谷 哲, 尾林 俊文

2012年2月より,米ボーイング社は「RFID Integrated Solutions」というRFIDを活用した航空機整備を効率化するサービスを,全世界の航空会社に向けて販売開始した。そのサービスのIT基盤は富士通のAIT(Automated Identification Technology)ソリューションである。本ソリューションは,航空機の部品や装備品,機材などにAITデバイスを取り付け,整備プロセスにおけるデータを自動的に収集することで部品適用状況や在庫状況を管理でき,航空機材の効率的な運用を可能にする。更に,世界最大容量のメモリを持つパッシブRFIDチップや航空使用のための特殊仕様タグの開発,ワンストップに全体システムを提供できるソフトウェア開発力,グローバルなサポート体制など富士通ならではの強みが生かされている。
本稿では,AITソリューションの全体概要とその適用について述べる。

久野 保之

日本の総人口は2010年の1億2806万人をピークに減少する中で,高齢者人口の占める割合は年々増加し高齢化率は上昇している。特に65歳以上の高齢者がいる全世帯の内,高齢者単独世帯や高齢者夫婦のみの世帯は,2010年では42.6%を占めている。来る高齢社会の課題として,膨張する社会保障費の限界,現行の行政サービスの限界などが挙げられる。一方で,高齢化の急速な進展に伴い,高齢者の社会的孤立の懸念や健康・日常生活に対する不安を感じている高齢者が増加している。こうした高齢者が抱える不安に対して著者らは,健康と生活の両面から,高齢者を支える利害関係者(配偶者,家族,地域コミュニティ,更にはチームケアを含む健康支援サービス提供者,生活支援サービス提供者など)間をつないだシームレスな情報連携で高齢者を包括的に支援するプラットフォームの構築が重要と考え情報連携活用基盤を構築した。そして,この情報連携活用基盤を活用したサービスである高齢者ケアクラウドシリーズを体系化した。
本稿では,情報連携活用基盤を活用した高齢者ケアクラウドシリーズのサービスによる課題解決に向けた富士通の取組みを紹介する。

木村 明博, 今林 徹

ICT活用を支える技術

著者らは,携帯機器のGPSデータや家庭,企業の様々な種類のセンサデータ,またブログやtwitterなどのソーシャルメディアから,人や社会の知恵や行動,環境変化などに関する様々な情報を分析・活用する大規模データ分析技術の研究開発を進めている。その実現のためには,ソーシャルメディアのような内容や書き方に関する多様性が非常に大きいデータや,センサデータのように個別の情報量は少ないけれどもリアルタイムで大量に集まるデータといった,これまでビジネスインテリジェンスなどの従来の分析技術が扱ってきた企業内のビジネス情報とは全く異なる性質を持つデータを扱うための新しい分析技術が必要となる。
本稿では,それらの分析技術の中から,半構造データストリーム処理技術,大規模ネットワークデータ分析技術,および二分決定グラフ(BDD:Binary Decision Diagram)を用いた組合せ最適化技術の3種類の技術について紹介する。

湯上 伸弘, 浅井 達哉, 丸橋 弘治, 樋口 博之

従来,肌の状態を測定するには,ユーザが化粧品メーカなどの店頭に出向き,専門家が専用機を用いて行っていた。一方,性能向上が著しいスマートフォンのカメラを用いて,ユーザが手軽に自宅で肌の状態を測定できる可能性が出てきた。しかし肌の色に関しては,自宅にある照明の影響などにより,本来の色とは異なった色に測定されてしまうという課題があった。今回開発した肌状態測定技術は,新規に考案した「カラーフレーム」を用いることにより,スマートフォンのカメラで撮影した肌の色を正確に測定することを可能とした。また,フィルタリングなどの画像処理技術を用いることにより,肌のシミや毛穴の目立ち度も測定することができる。これにより,ユーザは店頭まで出向くことなく,自宅で手軽に肌の状態を知ることが可能となる。
本稿では,主に,カラーフレームを用いて自動で色補正を行う技術,撮影画像品質を確保するためのピンボケ検出技術,シミや毛穴を検出する画像処理技術などに関して述べる。

手塚 耕一, 鈴木 祥治, 清水 雅芳

スマートデバイスや無線ネットワークが普及し,「いつでも・どこでも・だれでも」情報にアクセスできる環境が整ってきた。それは一方で,人の処理能力をはるかに超える大量の情報洪水をもたらしており,逆に利用者の負荷が少なくないことを意味している。これから求められるのは,人が合わせるシステムではなく,人に合わせてくれるヒューマンセントリックなICTシステムである。著者らは,この実現のために,人の役割が場所や時間によって変わっていくことに着目し,その時々で必要とされるサービスや情報を提供するロケーションアウェアなサービス基盤の研究開発を進めている。ここで重要なのが,人の位置を知ることである。屋外ではGPSによる位置測位が主流であるが,屋内ではGPSのような万能な測位技術はまだ確立されていない。そこで,スマートデバイスなどの汎用の機器を活用した,屋内測位を含めたロケーション管理技術の開発を行った。
本稿では,まず研究開発の狙いとロケーションアウェアなサービス基盤の全体像を説明し,その主要技術として,屋内ロケーション管理技術の取組みについて,実証実験などを踏まえて紹介する。

奥山 敏, 森 信一郎, 小川 晃弘

富士通は,これまでITS(Intelligent Transport System)分野における取組みとして,道路交通の安心・安全を支援するためのセンシング技術を開発してきた。そこで培われてきた技術は,ドライバーの安全運転を支援するため,周囲の車両と障害物(外界)およびドライバーや車両自体の状態など(内界)をセンシングして,そこで取得したデータに基づき様々な危険状態を検出するというものである。これまで,これらの技術は車両ごとに独立した安全系情報提供システムへ適用されてきた。しかし,近年のICTの発達により,個々の車両が,自身のセンシングデータを伴ってクラウド側と「つながる」ことも可能となってきた。これにより,走行する車両が交通状況の最前線でのセンサとして働き,クラウド上に膨大なデータを収集可能になる。すなわち,多くの車両から得られた,多種・多様な収集データの分析により,車両およびドライバーに対して価値のあるフィードバックを行う高度なテレマティクスサービスの実現が可能になる。
本稿では,富士通の各種車両系センシング技術と,センシングデータを活用して展開するコンバージェンスサービスについて紹介する。

橋口 典男, 東野 全寿, 上野 大輔, 中野 泰彦

数100 m程度の限定された地域で独自のワンセグ放送を行う「エリアワンセグ」が,エリア放送として2012年4月から制度化された。この制度により,誰でも小規模な地域で免許を取得し,独自の放送サービスを行うことが可能となった。既にスタジアムやイベント会場,商店街や大学などで,新メディアとしての利用が始まり,今後の発展が期待されている。
富士通では,エリア放送の制度化以前から,実験免許によるエリアワンセグの実証実験を多数行ってきた。大学などのパートナとともに,イベントや地域情報などを配信し,技術とサービス両面での経験を積み重ねてきた。制度化後は,それらの経験を生かし,本免許への移行や免許の代行申請も行っている。
本稿では,制度化に関する状況と,ホワイトスペース特区などで行った実験,本免許申請の事例,課題や解決策,得られた知見,今後の取組みなどについて述べる。

辻村 仁志, 山本 充彦, 村上 滋春

富士通は,農業生産者に対して経営課題を解決する上で,ICTをどう活用すべきかをワークスタイルの変革も含めて提言していくコンサル型の「イノベーション支援サービス」を立ち上げた。本サービスは,現場改善やPDCAサイクルの導入,ICTを通じたデータ利活用の支援を中心とし,準備・実行・経営支援の各フェーズから成り立っている。このような活動に,農業生産者が各段階を踏んで腰を据えて取り組むことで,単なるICT導入・データ利活用だけではなく,ICTをより身近なものにしていただけるものと考えている。更に,利活用になじむ組織風土が醸成され,その結果,人材の成長にも効果があることが分かってきた。人によるサービスとICTによるサービスが融合して,相互に価値を高め合うことこそイノベーション支援サービスの真髄である。
本稿では,富士通のイノベーション支援サービスについて,成立の背景と目的,実証実験例,および効果を述べる。

川井 大輔, 山崎 富弘

農業は気象条件に依存しており,台風や集中豪雨で被害を受けた場合には,耕作面積・作付品目などに応じて農業共済制度で共済金が支払われる。農業共済業務では,毎年加入農家の異動申告に基づき,短期間で加入農地や転作田を特定する必要がある。現状は膨大な数の水田(農地区画図)を手作業で更新しており,非常に手間がかかっている。著者らは,人手で行っているこの作業を画像解析技術を活用したICTに置き換えることで,高効率,期間の短縮,省コスト,そして高精度が実現できると考えた。この技術は衛星/航空画像を入力し,画像解析で水田の畔(あぜ)を検出して畔の外郭をベクタデータとして出力する。今回,この技術により農地区画図の更新が有効であるかの実証実験を行った。
本稿では,業務効率化の実現手法を実証実験により検証した結果を示す。実験は中間段階であるが,90%以上の精度で農地区画が作成できることが確認できた。これは実用可能な精度であり,大幅な作業の効率化が期待できる。

浅見 直也, 栗田 信行

スマートフォンやタブレットの隆盛により個人が多数の端末を使うことが一般化し,端末間のデータ同期が関心事となりつつある。 一方,多数の優れたクラウドサービスの浸透により我々の利用者データは端末だけでなく様々なサービスにも散在する事態となり,この二つの傾向は拡大加速の傾向こそあれ,とどまる気配はない。無数の端末とサービスが日々イノベーションで進化し続ける現代のICT環境の中で,多くのICT利用者は多端末・多サービスを少しずつ使い方を工夫して変化させながら利用している。一方でその結果,自分の利用者データがどの端末・どのサービスにどれだけ存在しているのかという管理が難しくなっている。富士通はこの問題の解決を目指すべく,利用者データを中心とした新たなクラウドの形である「利用者データコンテナ」というモデルを考案・実装し,これを用いた複数の実証実験を行い,多くの成果を得ることができた。
本稿では,利用者データコンテナの設計思想,仕様の概要とこれを使った実証実験の成果と今後の展望を紹介する。

下野 暁生, 今林 徹


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