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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2012-11月号 (VOL.63, NO.6)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2012-11

特集:「ネットワーク」

本特集号では,豊かな社会を実現していく基盤として重要な役割を果たすネットワークの領域で,富士通が力を入れて取り組んでいるネットワークサービスとマネジメントプラットフォーム,およびそれらを支えるネットワーク転送インフラの最新技術を紹介します。


執行役員
ネットワークビジネス部門副部門長
井上 保
執行役員
ネットワークビジネス部門副部門長
井上 保 写真

ネットワーク特集に寄せて(PDF)

ICTは,人と社会の間を「つなぐ」ための重要な手段です。近年,ICT機器の範疇(はんちゅう)を越えた多くのモノがネットワークを通じてコミュニケーションすることにより,集合知のような新しい世界の創造へと拡大しています。社会活動の基盤となるネットワークを提供する一員として,富士通は,これらのシーズを敏感に感じ,いち早く具体化しタイムリに社会へ提供することが今求められていると考えています。

特集:ネットワーク 目次〕

総括

  • 社会活動の変化と多様化に対応するこれからの
    基盤ネットワーク

ネットワークサービスとマネジメントプラットフォーム

  • フローベース・通信サービスの可視化技術
  • 仮想化技術の通信サービスへの適用
  • 大規模データセンターのネットワーク仮想化
  • サービスの並列化・多重化を支えるネットワーク
    基盤技術
  • スマートメータネットワークを支える技術
  • スマートコミュニティ実現に向けたネットワーク技術
  • ネットワークレディ機器の活用を加速する
    サービスプラットフォーム技術

サービスの進化を支えるネットワーク転送インフラ技術

  • モバイルアクセスシステムの技術動向
  • 高速ブロードバンドサービスを支える光アクセス技術
  • 膨張する幹線トラフィックに対応する超高速
    トランスポート
  • 大容量ミリ波帯インパルス無線技術
  • ネットワーク自動制御技術
  • トラフィックの急増と変動に対応するトランスポート系
    運用管理技術
  • 高可用性,低遅延ネットワークタップ

特集:ネットワーク


総括

社会活動の基となるコミュニケーション,それを支えてきた通信ネットワークは,ユーザの要望と新しく提供され続けるサービスの多様化により,つなげるための技術変革を乗り越えて進化を遂げてきている。スマートフォンの普及やデータセンターを活用したクラウドサービスなどの普及が着実に社会へ浸透している中,更に多くのものを確実につなげることが使命となっている。
本稿では,今,コミュニケーションの質的・量的な要因が変わっていくことで,社会インフラとしてますます重要な役割を果たしていくネットワークとその適用サービスについての数々の課題を整理し,課題解決に向けて,富士通が取り組んでいる最新技術や具体例を紹介しながら,基盤ネットワークの今後の動向と,その方向性を考察する。

熊谷 和義, 高橋 英一郎, 加藤 次雄

ネットワークサービスとマネジメントプラットフォーム

2011年の東日本大震災では,通常時を大幅に超える通信要求が生じた。このような災害時やそのほかの突発的なトラフィックの変動に対し,通信システムの基盤にサーバ仮想化技術を適用して必要に応じて通信処理リソースを増減するとともに,フローベースネットワークを導入して通信処理リソース増減に追随して動的に経路変更を行うことで,効果的に対応することが可能になる。
一方で,このような動的に再構成される仮想リソースの稼働状況を的確に可視化し,サービスの運用を可能とするためには,リソース表現の論理化(物理的表現からの分離),特定サービスの品質情報のみのフィルタリングによるリソース状況把握,膨大な量のフローを運用者が理解可能な形に可視化する方式など,様々な観点からの仮想リソース可視化の技術が必要となる。
本稿では,このような動的な通信処理リソース制御で構築されたシステムの運用と,フローベース制御ネットワークの構成管理における課題を整理し,課題解決に向けた富士通の可視化技術の取組みについて紹介する。

窪田 好宏, 大橋 正彦, 川口 金司

2011年の東日本大震災では,移動通信ネットワークの通信量が通常の最繁時の50~60倍と爆発的に集中したことにより,システムが輻輳(ふくそう)しユーザに対して安定的にサービスを提供することが困難な状態となった。
富士通では,災害時などにおけるシステム輻輳時にも安定的なサービス供給を実現するため,仮想化技術を活用して通信サービスのマシンリソースを柔軟かつ迅速に割り当てる制御技術の研究開発に取り組んでいる。これにより,動画配信,リッチコンテンツなどの災害時には非優先とされるサービスのリソースを削減し,音声通信,メールなどの安否確認や情報収集を目的とした優先サービスのリソースに割当てを行うことで,優先サービスの疎通率を向上させることが期待できる。
本稿では,富士通における通信サービスのサーバ仮想化基盤のシステム化に向けた取組みについて紹介する。

村合 正明, 降矢 龍浩, 今井 隆士, 木村 昇一

昨今,企業の大規模災害に向けた事業継続性(BCP)の観点からクラウドへの移行が進み,その結果データセンター事業者のシステムの大規模化が進んでいる。クラウドサービスにおいて,IaaS(Infrastructure as a Service)を例に取ると,大規模化が進むにつれ,既存技術での仮想ネットワークや物理ネットワークのネットワーク構築が困難となる。データセンターにおける仮想ネットワークは一般的にVLAN(Virtual LAN)により構築されるが,VLAN IDのビット長から4094までしか構築できないため,この制限の拡張が課題となっている。また物理ネットワークではSTP(Spanning Tree Protocol)によるネットワーク回線利用の非効率性やネットワーク設計の複雑性が課題となっている。
本稿では,大規模データセンターの条件,技術的な課題を整理する。また上記の仮想ネットワーク数の拡張,STPに代わる物理ネットワークの構築など,様々な課題を解決するための技術や各技術の比較や特徴について述べる。

安藤 達宏, 下國 治, 麻野 克仁

昨今,企業間の競争はますます激しさを増し,試験的にスモールスタートで市場を開拓した後,既存サービスに影響を与えることなく,安全に処理容量を拡大するニーズが増えている。このニーズを支える技術としてサービスの並列化が重要視されている。また,信頼性の高いシステムを構築する上で多重化は欠かせない要素技術となっている。加えて,多様化する顧客ニーズにタイムリに対応するため,サービスの追加や変更の頻度は増しており,更に,サービスの利用者数やスマートフォンをはじめとするスマートデバイス数も急激に増加している。これらにより,IPネットワーク上を流れるパケットデータは多様化,多量化が加速している。
本稿では,高信頼かつ大容量なサービスを提供しながら,高頻度にサービスの追加や変更が行われる並列化・多重化されたサーバシステムに,多様化した多量のパケットデータを振り分けるのに適した,スケーラブルな基盤を構成するために求められるネットワーク基盤技術について解説するとともに,富士通における取組みについて述べる。

飯田 譲, 田中 宏明

2011年の東日本大震災以降に直面した電力危機を契機に,「電力供給不足に起因した計画停電の回避」「消費電力の見える化」「節電,省電力化」といった電力消費量に対する管理・制御がクローズアップされ,その解決策の一つとして,「スマートグリッド」の実現が効果的であるとの見方が強くなった。そして,スマートグリッドの需要家側エンドポイントを構成するためのスマートメータの早期導入が望まれ始め,スマートメータと最寄りの電力ネットワークをつなぐスマートメータネットワークは,今後の重要な社会インフラとして位置付けられている。
本稿では,スマートグリッドを実現するためのラストワンマイルであるスマートメータネットワークに着目し,電力使用量などの情報収集やスマートメータに対する電力会社などからの遠隔制御,ならびに消費電力の見える化などスマートメータネットワークに求められる要件に対応する技術について述べる。

北川 勇, 関口 愼一

住宅や公共施設,商業施設などの建物や更にその建物内の空調,照明などの設備をネットワークに接続し,地域でのEMSサービスなどを実現する「スマートコミュニティ」が注目されている。しかし,これらの多様な機器をネットワークに接続するには,二つの課題が存在している。一つは,業界ごとに異なる通信規格の機器が混在していることである。これにより,機器を一つのネットワークシステムにつなぐことが困難になっている。もう一つは,機器が接続されるLANとWANを接続するのに適したWAN通信プロトコルがないことである。これにより,クラウド上のサーバと建物内の機器をシームレスに接続することが困難になっている。
富士通は,これらの課題に対し,機器ごとの通信規格の違いを正規化する機能,正規化された機器のデータ形式をLANとWANで共通に扱うゲートウェイ機能を構築した。これらの機能により,サービス事業者は通信規格の違いを意識することなく,統一された簡易な機器制御インタフェースを利用してサービス開発を行うことが可能になる。これらの機能は「SSPF」として製品化し,HEMSの実証実験を通じて,サービス開発の容易化・短期化の効果を確認した。

江尻 祐介, 田尻 真英, 矢野 愛

プレスリリース 「ICTを用いた環境負荷低減」に関する実証実験の一般公開について

家電機器,AV機器,エネルギー機器,ヘルスケア機器など,通信機能を持つネットワークレディ機器が増加している。現状はスマートフォンなどの端末から,個々の機器の状況監視や制御を行うようなサービスが中心であるが,今後は様々な機器を制御する高度なサービスも広がると予想される。ところが,ネットワークレディ機器はメーカやモデルごとに制御手順や機能の差が大きく,その更新頻度も高いため,多様な機器を活用するサービスの開発は容易ではない。そこで,個々の機器の違いを隠蔽するサービスプラットフォームが重要となる。
今回,任意の機器をその種別ごとに共通のプロパティを持つ仮想デバイスとしてモデル化し,任意の仮想デバイスを制御できるAPIを提供するサービスプラットフォーム技術を開発した。サービス開発者はこのAPIで仮想デバイスを制御することで,実際の機器を制御できるため,個々の機器の詳細を意識することなく,サービスを効率的に開発できる。これらの技術はスマートセンシングプラットフォーム(SSPF)に適用されている。

角田 潤, 内藤 壮司, 松倉 隆一

プレスリリース 住宅や店舗のエネルギーマネジメントシステムを容易に構築できるソフトウェア「SSPF V01」を販売開始

サービスの進化を支えるネットワーク転送インフラ技術

モバイルアクセスのデータ通信量は,近年の動画視聴やスマートフォンの普及により急拡大しており,毎年2倍以上のトラフィックの伸びが報告されている。最近の調査では,全世界のモバイルトラフィックの年増加率は将来的に徐々に減少すると予測されているものの,今後も増加を続けるモバイルトラフィックを収容するための対策が必要とされている。このため,従来の3Gシステムよりも高速・大容量なLTE(Long Term Evolution)システムの導入が日本をはじめ世界各国で進められている。
本稿では,モバイルトラフィック対策を述べ,現在サービスが開始されているLTEシステムの技術動向について解説し,富士通が開発している屋外向け基地局装置(eNode B装置)と屋内向けのフェムト基地局装置について紹介する。また,LTEよりも更に高速・大容量化が可能であり,今後の実用化が期待されているLTE-Advancedの技術動向を紹介し,増大を続けるモバイルトラフィックの収容に向けた将来技術について解説する。

関 宏之, 箕輪 守彦

近年,高速なブロードバンドサービスを支えるFTTHは広く普及し,日本では加入件数が2000万件を突破した。今後,高精細画像配信サービス,P2P(Peer to Peer)サービスの提供や高速化の進むモバイルサービスのオフロードとして,また,各種のサービス品質への対応や新しいクラウドサービスなどの提供を支えるインフラとして,光アクセス網の更なる高速・大容量化が期待されている。富士通では,この普及したFTTHを支える量産ベースのGE-PON製品を提供している。また,標準仕様をベースとした主要PON処理のASICの適用や省電力機能を盛り込んだ10G-EPONシステムの開発も行っており,FTTHの高速・大容量化へ対応しようとしている。
本稿では,次世代光アクセスの標準化動向,技術動向について述べるとともに,システム開発を踏まえた富士通の取組みについて述べる。

島田 裕一, 横本 徹哉, 滝澤 基行, 吉田 浩章, 山下 治雄

近年,モバイルトラフィックの高速化や光アクセスの普及,クラウドサービスなどによるデータセンター間を代表とする通信の高速化と大容量化により,コア系ネットワークへ流入するトラフィックの容量膨張への対応は,喫緊の課題となっている。
国際海底網を含め,コア系ネットワークは既に40 Gbpsから100 Gbpsへの光多重方式へ軸を移しつつある中,富士通は従来技術より飛躍的な周波数利用効率向上に期待されていたデジタルコヒーレント技術の実用化に成功した。
本稿では,超高速トランスポートシステムに導入したデジタルコヒーレント技術,および本技術を適用した陸上向けFLASHWAVE 9500と海底向けFLASHWAVE S660について述べる。また,今後の持続的なトラフィックの容量膨張への課題に期待される技術展望についても俯瞰(ふかん)する。

塩田 昌宏, 横田 泉, 菅谷 靖, 斉藤 成明, 荻原 裕史

近年のネットワークトラフィックの増大に伴い,通信伝送路インフラである多重無線システムにおいても大容量伝送の要求が高まっている。しかし,従来の多重無線システムでは,広帯域な無線周波数の確保が困難であり,また,変復調技術の限界から複数無線チャネルの装置が必要となるため大型な装置構成となり,実用には取扱性や経済性で大きな課題があった。
そこで富士通は,広い周波数帯域の確保が可能なミリ波帯で,大気の減衰特性の影響を受けにくい70~80 GHz帯(E-band)を活用し,原理実証実験で10 Gbpsの無線通信に成功したインパルス無線技術を駆使して大容量伝送(伝送容量:3.6 Gbps)と装置の小型化(4 L,4.5 kg)を実現した。
本稿では,E-bandインパルス無線の特徴と主要技術,今回開発した装置の構成と特性,および適用例について紹介する。

林 洋輝, 中舍 安宏, 青田 正広, 佐藤 尚志

プレスリリース 毎秒10ギガビット超のミリ波帯通信用送信器を開発

プレスリリース 世界初!インパルス無線方式で毎秒10ギガビット超のミリ波通信に成功

プレスリリース 世界最高出力のミリ波W帯向け窒化ガリウムHEMT送信用増幅器の開発に成功

成長著しいクラウドサービスやモバイルサービスに対応すべく,ネットワークには今まで以上に即時性・柔軟性・最適性の3点が求められる。現状,モバイルワイヤレスネットワークやトランスポートネットワークで用いられている機器の多くは,手動による環境設定が行われていることもあり,サービス面から見た場合,即時性・柔軟性という点では,昨今の市場要求を必ずしも満足しているとは言えない。また,急激に増え続けるネットワーク需要に対するインフラ整備のスピードには限界があり,ネットワークの最適利用が求められている。
本稿では,このように常に変化しているクラウドサービスやモバイルサービスを提供する上で重要となっているネットワークの自動制御技術や最適化技術を紹介するとともに,これらの技術を用いたITとの連携の可能性にも言及する。

三浦 和行, 宮川 猛, 森田 浩隆, 岩田 彰雄

近年のモバイルネットワーク技術の発展により,スマートフォンやタブレット端末などの移動端末が急速に普及している。ネットワーク上にはコンテンツやアプリケーションが豊富にあり,通信速度の向上により情報の検索・入手やデータの送受信も容易になっている。その反面,画像や動画データを手軽に利用できることが要因となり,通信トラフィック量が急激かつ流動的な増加を続けている。その傾向は国内においても国内通信事業者が構築・保有している伝送ネットワークへの影響が懸念されており,リソース要求の変動は,都市部から顕著に表れ始めると考えられている。
本稿では,上記の現象に対して,これまでの国内伝送ネットワークを構成する技術や構造から,課題を考察し,その課題を解決するために富士通が開発している新しい技術について述べる。更に,その技術を適用した新しいネットワークを運用する際の課題と,富士通の取組みを紹介する。最後に,国際標準で議論されている動的な伝送ネットワークであるASON(Automatically Switched Optical Network)の紹介と,今後の展望について述べる。

森川 久, 半田 利光, 嘉門 憲男

今日,ネットワークに流れる信号を専用装置でモニタリングして,品質監視や性能測定,課金サービスを行うニーズが高まっている。信号をモニタリングするには,ネットワークタップと呼ばれる小型の装置を線路の途中に挟み,信号をモニタリングするのが一般的であるが,ネットワークにインラインで接続するため,ネットワークタップには高い可用性や低遅延が要求される。
本稿では,ネットワークタップの概要と課題,現在開発を進めている,他社にはないユニークな技術で高可用性,低遅延を実現する1000BASE-T対応ネットワークタップについて紹介する。

都筑 俊秀


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