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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2012-7月号 (VOL.63, NO.4)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2012-7

特集:「画像LSI」

本特集号では,富士通セミコンダクターが取り組んでいる,画像処理に関する各種システムLSIに向けた基幹技術について,LSI商品だけでなく,各種ソリューション実現のためのソフトウェア技術,各種機能をLSIに集約するための設計・開発支援技術など,様々な観点から紹介します。


富士通セミコンダクター株式会社
経営執行役副社長
八木 春良
富士通セミコンダクター株式会社
経営執行役副社長
八木 春良 写真

画像LSI特集に寄せて(PDF)

富士通セミコンダクターは,最先端の画像処理技術,応用支援技術,設計・開発支援体制を背景に,LSIソリューションの企画・開発から製造,販売に至るまで,一貫したサポートをお客様の視点に立ってご提供することにより,お客様のビジネスにご協力させていただきたいと考えています。

特集:画像LSI 目次〕

総括

  • 富士通の画像LSI戦略
    ~Visualアプリケーションプラットフォームの構築~

商品展開

  • デジタルカメラ用ISP:Milbeaut
  • 携帯電話向け画像処理LSI:Milbeaut Mobile
  • 自動車用グラフィックスディスプレイコントローラ
  • 中国地上波テレビ放送(CTTB)向け
    セットトップボックス
  • H.264トランスコーダLSI
  • マルチメディア放送対応チューナモジュール
  • アプリケーションプロセッサを用いた
    画像ソリューションの構築

画像LSIを支える技術

  • 高画質と低消費電力を実現するH.264/AVC
    コーデック技術
  • 3Dグラフィックスシステムの開発環境
  • 動画像圧縮を支えるプラットフォーム
  • 3Dグラフィックスオーサリングシステム:CGI Studio
  • HMIシナリオ製作用オーサリングシステム:
    Inspirium HMI-Studio
  • 全周囲立体モニタシステム用車載向け
    グラフィックスSoC
  • 組込みソフトウェア:Inspirium
  • 画像LSIのハードウェア/ソフトウェア協調設計
  • 先端テクノロジー向けLSI設計環境開発
  • 画像LSIの低消費電力技術
  • 大規模画像LSIの検証技術
  • チップ・パッケージ・プリント基板協調設計手法
  • 画像LSI向け半導体パッケージング技術

特集:画像LSI


総括

「画像の富士通」をキャッチフレーズに,富士通では人間の感性に働きかける画像技術,それを適用したLSIを開発してきた。その多くは様々な分野の画像関連機器・システムに採用され,画質・絵作りに対して高い評価と実績を重ねている。
デジタル画像が広く社会に浸透し,こうした画像機器に対する市場のニーズも変化してきている。高性能化・小型化・低電力化といった性能追求と同時に,コンテンツやそれをつなぐサービスとの相互依存性が高まっており,従来の単機能独立型からネットワーク接続された複合機能型に変わりつつある。富士通は,こうした市場の変化を見据え,得意とする画像技術を集約したLSIと,これまでお客様とのシステム開発を通じて蓄積・整備してきた開発支援環境とを統合し,「Visual(視覚に訴える)アプリケーションプラットフォーム」の構築を進めている。
本稿では,本プラットフォームをベースとした映像ソリューションを紹介する。

三宅 富, 乙部 幸男

商品展開

Milbeaut(ミルビュー)はデジタルカメラのシステムをワンチップで実現するISP(Image Signal Processor)である。各種イメージセンサからの信号を取り込み,高画質化処理,データ保存を20 Mpixel超の静止画およびフルハイビジョン動画で行うことができる。本稿ではMilbeautシリーズの第6世代となるMB91696AMについて紹介する。
MB91696AMは,新開発の高速信号処理プラットフォームにより高速連写撮影とフルハイビジョン動画撮影を可能とし,世代を重ねるごとにノイズ除去性能や光学補正機能を向上させ,そして市場要求に的確に応える汎用画像処理マクロを搭載している。本製品は高画素化,高速化,多機能化が求められるデジタルカメラにおいて,静止画からフルハイビジョン動画まで撮影者の要望に応える高性能・高画質を実現しており,多くのデジタルカメラに搭載されている。

遠藤 謙太郎

スマートフォンに代表される携帯電話カメラ機能は,ここ数年で「高画素・高画質」「フルハイビジョン動画録画・再生」など急成長で進化している。これらの要件は緊急的な撮影用途や,PCや携帯端末での閲覧利用には携帯電話機内のアプリケーションプロセッサに内蔵されたカメラ機能でも実現は可能であるが,ハイエンドモデル向けとしてコンパクトデジタルカメラに匹敵する画質・性能を求めるため,専用の画像処理LSIであるISP(Image Signal Processor)を採用しているお客様も少なくない。
本稿では,富士通が開発した携帯電話向け画像処理LSI「Milbeaut Mobile」の変遷と性能について紹介する。

小松 悟, 木村 光麿, 大川 章, 宮下 秀昭

自動車に搭載される情報機器向けシステムLSIとして,富士通では長年にわたりグラフィックスディスプレイコントローラ(GDC:Graphics Display Controller)を製品化してきた。近年では自動車のインストルメントクラスタやセンターディスプレイといったシステムにも,フルカラー液晶ディスプレイを使用したものが増加しており,自動車1台に複数のディスプレイを搭載するものも多い。このような機器の進化に伴い,富士通では高性能なマイクロプロセッサと独自に開発したGPU(Graphics Processing Unit),および自動車内の各種ネットワーク機能を搭載したSoC(System-on-a-Chip)であるMB86R1xシリーズを製品化している。
本稿では,最近の自動車情報機器,システムの動向について概説するとともに,最新の自動車用GDC製品として開発したMB86R1xシリーズの概要と,搭載されているGPU,画像処理ユニットおよびネットワーク回路など,本LSIに向けて開発した技術について説明する。

三浦 栄介, 中原 誠, 西 英史

本稿では,中国地上波テレビ放送(CTTB)市場で広く使用されている富士通セミコンダクター製の標準画質(SD)セットトップボックス(STB)用デコーダLSIであるMB86H06を紹介する。高性能,低コストを特長とする本デコーダは,優れたエラーコンシールメントと堅ろうな音声/映像(AV)同期を備えている。DDR2に対応したQFP256パッケージで,2層PCBレイアウトをサポートすることで部材(BOM)コスト削減に貢献している。また,弱信号状態におけるエラーコンシールメントとAV同期の実現方法について説明する。

Jiang Li, Yan Yingrui, Ni Xin

地上デジタル放送などに用いられているMPEG-2方式の画像圧縮データをより圧縮率の高いH.264方式の画像圧縮データに,またH.264方式の画像圧縮データをより低いビットレートにそれぞれ変換することで,記録時間をより長く,ネットワークのトラフィックをより低くすることが求められている。本稿では,これらの用途に必要となるトランスコード処理をリアルタイムで実行するLSIを紹介する。本LSIは画質面で最も有利とされる,画像圧縮データを一旦伸張し,再度圧縮するトランスコード方式を採用しており,変換処理に伴う画質の劣化を最小限にしている。また,USBバスパワー(2.5 W以下)での動作やPCI Express Mini Cardサイズ(30 mm×50.95 mm)への搭載などを可能とするため,小型かつ低消費電力を実現しており,現状では地上デジタル,BSデジタル,CSデジタルなどの放送の長時間記録の実現を目的として主にPC-TVやPVRに採用されている。昨今,スマートフォンやタブレットなどの携帯端末の普及に伴い,動画像のネットワーク経由での視聴・録画の需要が増大しており,ネットワークのトラフィック低減や携帯端末で再生可能な画像圧縮形式への変換などへの採用が見込まれている。富士通セミコンダクターでは,これらの用途に対応するため,新たなソリューションの構築を進めている。

田中 和幸

富士通セミコンダクターは,携帯機器向けマルチメディア放送の規格であるISDB-Tmm(Integrated Services Digital Broadcasting for Terrestrial Multi-Media Broadcasting)に準拠した,モバキャス対応のチューナモジュールを開発した。
本チューナモジュールは富士通研究所と共同で開発した独自のアルゴリズムを採用することで,大幅な受信感度の向上とともに,SFN(Single-Frequency Network)環境での受信性能の改善を実現することで,受信エリア拡大に貢献している。本チューナモジュールは端末開発ユーザの設計用途に合わせて2タイプ用意している。アンテナに直結するだけで容易に機能・性能の実現が可能なMB86A35Vと,端末開発ユーザが妨害特性を考慮してフィルタを外部で追加できるMB86A35Cである。
本稿では,モバキャス対応チューナモジュールの開発における課題と改善策,および製品仕様とラインナップについて述べる。

岡山 純一郎, 水野 美孝

アプリケーションプロセッサを用いた画像ソリューションとは,富士通の得意とする画像処理技術を生かし,ソフトウェアや評価ボードを含めたアプリケーションプラットフォームを顧客に提供する形態である。このプラットフォームを使用することにより,セットメーカである顧客は多機能な新製品を短期間に開発し,市場へ投入することができる。本プラットフォームはイメージングプロセッサMilbeautと組み合わせることで,高性能の画像処理システムを実現し,他セットメーカに対して優位性をアピールすることが可能となる。
本稿では,アプリケーションプロセッサ「MB86S62」を用いた画像アプリケーションプラットフォームの事例を紹介する。

須賀 敦浩, 中原 英利, 兵頭 正人, 瀧本 伸一

画像LSIを支える技術

国際標準H.264/AVCの持つ高い符号化性能を生かして高画質を達成するためには,膨大な演算やそれに伴う多くの画像データの参照が必要であり,低消費電力化とはトレードオフの関係にある。富士通では,独自の画像解析技術を軸に業界最高水準の高画質・低消費電力性能を達成するH.264/AVCコーデック技術を開発し,数多くの映像機器向けのLSIに適用してきた。
本稿では,内部演算処理に伴って発生する外部メモリとのデータ転送に着目した低消費電力化技術について概説する。まず,動画コーデック処理に最適化された,画像の可逆圧縮手法について述べる。次に,本技術を適用して繰り返し利用される可能性の高いデータを先読みして保持し,データ転送量を大幅に削減する「可逆圧縮プリフェッチメモリ」と呼ぶ技術について説明する。本稿で紹介した技術をはじめ,高画質と低消費電力を両立させたH.264/AVCコーデック技術によって,低消費電力化の要求が強い機器への適用が可能となる。

森岡 清訓

近年,カーナビゲーションシステムやデジタルメータなど車載機器で3Dグラフィックスを用いるものが増えている。これらの機器は,よりグラフィカルなユーザインタフェースを搭載することによって,今まで表現できなかった視覚的な効果を実現できるようになった。富士通セミコンダクターでは,カメラから得られる実際の映像を3Dグラフィックスと組み合わせることで現実の世界と融合させ,ユーザの視覚支援を行う拡張現実に注目し,グラフィックスシステムの開発を推進している。このような3Dグラフィックスを用いたシステムの構築やアプリケーションを開発するためには,多くの専門知識が必要になる。富士通セミコンダクターでは,3Dグラフィックスを用いたアプリケーション開発者の負担を軽減するために開発環境と最適な機能,性能を発揮できる製品を実現するためのソフトウェアを開発,提供している。
本稿では,3Dグラフィックスを用いたシステムを実現するためのソフトウェア構成やアーキテクチャ,およびその応用事例について説明する。

田上 祐也, 渡辺 真, 山口 裕子

富士通では,アナログTV放送の時代から,MPEG-2方式に対応した動画像を圧縮するLSIを開発してきた。近年のBS/地上デジタル放送では,放送自体がMPEG-2で圧縮されたデータとなったが,MPEG-2より更に圧縮効率の良いH.264方式に変換し直すことで,より効率的に記録できるようにするなど応用分野は増えている。これら動画像圧縮処理においては,映像だけでなく音声処理や圧縮処理されて生成されたデータの加工処理など,それぞれのデータの特徴に応じた処理が必要となる。また,動画像圧縮処理では,大量のメモリと大量のデータを扱うという特徴から外部DRAMの接続が必須となるため,メモリシステムの構成方法も重要な要素である。
本稿では,これらの開発要件に対して,プラットフォームの観点から,富士通が開発してきたLSIについて紹介する。プラットフォーム化により,設計資産とノウハウの蓄積,および周辺環境の整備が進み,新たなLSI開発の際にも効率的な開発が行えるようになっている。

大塚 竜志

近年,自動車においてもフルカラーのLCDを搭載したインストルメントクラスタなど,3Dグラフィックスを応用したシステムの普及が始まっている。富士通センミコンダクターのグループ会社である,Fujitsu Semiconductor Embedded Solutions Austria GmbHは,このようなシステム開発用ツールとしてCGI Studioを開発した。CGI Studioは,3Dグラフィックスによるコンテンツを自動車システム向けに開発するためのオーサリングツールのフレームワークとして,デザイナのアイデアを実際のターゲットシステム(実際の製品,または製品開発用のプロトタイプなど)で実現するためのワークフローを提供する。また,CGI Studioは普及したほかのグラフィックスオーサリングツールと併用して使用することができ,お客様が使用している既存のツールの統合を可能にする。CGI Studioは複数のソフトウェアが統合されており,2Dおよび3Dコンポジション,オーサリングツール,シーンの生成,ソウトウェアグラフィックスエンジン「Candera」,シーンプレイヤなどで構成している。また,使用するターゲットハードウェアでのアプリケーション実行時のパフォーマンスのボトルネックを識別するための解析ツールなども含まれている。本稿では,自動車へのグラフィックスの応用の動向について概観し,CGI Studioの特長と,CGI Studioで実現されるデザイナと組込みシステム開発者間での協調作業のワークフローについて説明する。

Gerhard Roos, Gernot Reisinger, Roland Winkler

組込み機器メーカでは,画像LSIを使用した機器の高性能化・多機能化・多様化が進んでいるため,搭載されるソフトウェア規模が増大しており,いかに開発費を抑えながらソフトウェア開発を行うかが大きな課題となってきている。その中でも画面数の多い機器ではソフトウェアにおけるユーザインタフェース(UI)部分の比率が高いため,特にUI部分のソフトウェア開発費の削減が重要な課題となっている。従来のUI部分のソフトウェア開発は,UI仕様策定,UI実装,デザインの作り込みを通して行い,実際の機器に載ってからの操作性検証となるため,後工程において手戻りが多く発生する傾向にある。そのため,この手戻りを抑えるために,UI仕様策定段階でいかにUI仕様をブラッシュアップできるかが重要なポイントとなる。一方,UI実装におけるソフトウェア開発ツールは数多く市販されているが,UI仕様策定段階でUI仕様をブラッシュアップ可能なUI開発ツールが整備されていないのが現状である。
本稿では,UI仕様策定段階から後工程に至る,UI開発工程全体をカバーし,トータルでUI開発費を削減するInspirium HMI-Studioの優れた特長について紹介する。

平林 俊一

近年,車両周辺の死角エリアを削減することによって,自動車運転者の視覚支援を行うカメラシステムが進化している。富士通セミコンダクターが開発した全周囲立体モニタシステムは,立体的な曲面上に画像を投影することによって,自由に視点を変更し,見たい場所をクローズアップできるため,従来の俯瞰(ふかん)カメラシステムでは困難であった周辺の車両や歩行者の識別が可能となった。全周囲立体モニタシステムは,車載向けグラフィックスSoC(MB86R11/MB86R12)を使用して開発を行っている。本SoCは,ARM社のCortexTM-A9を搭載し,OpenGL ES2.0対応のグラフィックスエンジン,各種周辺インタフェースを1チップに集積し,カメラ画像のキャプチャから合成画像の出力まで30 ms以内の低遅延と視認性向上処理機能による高画質を実現している。また,全周囲立体モニタ画像を作成・編集するミドルウェア,オーサリングツールによって,車両周辺360°のシームレスな画像を実現している。
本稿では,全周囲立体モニタシステムの概要とその開発プラットフォームについて解説する。

川西 末広

Inspiriumは,富士通が開発した組込みソフトウェアの総称で,組込み機器の付加価値や品質を高めることを目的に,画像LSIに組み込まれる単体のミドルウェアからサーバ連携のミドルウェアまでを幅広く提供する。本稿では,ヒューマンセントリックなインタフェースとして,画像LSIでの画面表示とともにスマートフォンやタブレットPCなどで利用されているタッチパネルからの手書き文字入力を容易に実現させる,手書き文字認識ライブラリと,仮名漢字混じりの文章から正しい日本語で文章を音声で読み上げる音声合成ライブラリを紹介する。手書き文字認識ライブラリは,人が紙にペンで字を書くときの特徴を捉え,崩し文字や走り書きも高い認識率で入力できる。音声合成ライブラリは,仮名漢字混じりの文章から,聞きやすく正しい日本語で読み上げることができる。あらかじめ登録された単語辞書から単語の読みとアクセントを取り出し,韻律処理によってイントネーションとリズムを整え,聞きやすい日本語の音声を合成する。
本稿では,この2種類のライブラリの仕様・構成・応用例について述べる。

徳田 一郎, 森出 茂樹

デジタルカメラなどに搭載される画像LSIは高機能,高性能化が最も著しい分野の一つである。このようなLSIの開発においてチップコストを抑え,チップ面積と消費電力の低減を実現するためには,アプリケーションに適したアーキテクチャ設計が重要である。このアーキテクチャ設計を行うための手法としてESL(Electronic System Level)によるハードウェア/ソフトウェア(HW/SW)の協調設計が半導体ベンダやEDAベンダより提案されてきたが,モデルの開発コストなど様々な課題により実際の開発現場にはあまり浸透してこなかった。このような状況の中,富士通セミコンダクターでは,ASSPやASIC開発のお客様向けデザインサービスであるCedarサービスにおいて,ESLにおけるHW/SW協調検証によるアーキテクチャ設計技術をLSI開発に地道に適用し,オンチップバスのQoSとDDRメモリなどの外部メモリへのアクセス最適化が最も重要なポイントであることを見出した。そして,その最適化ポイントに着目しESLの課題に対する対策を検討した結果,ESLを使ったHW/SWの新しい協調設計ソリューションを構築でき,これまで以上に設計現場に適用されるようになってきた。
本稿では,この新しいアプローチの技術内容と適用効果を紹介するとともに,今後の展開についても説明する。

古手川 博久, 蓮實 直信

画像LSIを代表として,先端テクノロジーを採用するLSIはロジック3000万ゲート以上に達し,1億ゲート規模に迫る勢いである。これは90 nmプロセス世代と比較して,3~10倍のゲート規模に当たる。また40 nm/28 nmといった先端テクノロジーは,プロセス特性の複雑化や配線抵抗の急増が顕著になり,サインオフコーナーの増加やサインオフツールおよびレイアウトツールの高精度化は不可避となっている。更にプロセス要求であるマスクデザインルールも複雑化の一途をたどり,90 nmプロセスと比較して,28 nmプロセスは2倍のマスクデザインルールを必要とする。このようなデザインやテクノロジーからの要求の変化に対応するため,富士通セミコンダクターでは,リファレンスデザインフローと名付けたLSI設計環境に対して,新規機能の開発を行い,LSI設計への導入を進めている。これにより,先端テクノロジーを用いた大規模LSI開発の短TAT化を実現している。
本稿では,リファレンスデザインフローの先端テクノロジー向け開発の特徴と効果について解説する。

土屋 篤

従来のLSI設計ではLSI全体にわたって均一の電源が供給されることを想定していたのに対し,複数電源電圧設計や電源遮断設計を行う場合には,LSI内部を複数の電源領域に分けて設計する必要があり,LSI設計が複雑になる。
本稿では,このようなLSIにおいても高い信頼性で設計を行う富士通セミコンダクターの画像LSIに適用した低消費電力技術について紹介する。富士通セミコンダクターでは,電源制御を行うことで,低消費電力化を図る一連の技術をCoolAdjustとして,注力開発を行っている。そこで,主にダイナミック電力の削減に対して効果のある複数電源電圧設計と,リーク電力の削減に対して効果のある電源遮断設計の技術を中心に説明する。また電源遮断設計においては,電源スイッチをONして回路に電源を供給する際に,回路の寄生容量を充電するための突入電流と言われる大きな電流が流れることで,既に電源ONして動作している回路が影響を受けるということが知られている。2種類の電源スイッチを時間差を付けて制御することによりこの問題を解決したので,これについても紹介する。

浅田 善巳

近年のシステムLSIは,大規模化,高機能化に伴い,ハードウェア構造が複雑化しており,論理品質を確保するための検証が難しくなってきている。特に大規模な画像LSIに関しては,マルチコア構成によるソフトウェア処理の複雑化,内部バスの構造複雑化などにより,機能,性能および消費電力が要求を満たしているかをプレシリコン段階(LSIの設計段階)でシステム検証を実施して確認することが必須である。ただし,製品のモデルチェンジサイクルが短い昨今では,短TATでの製品開発が求められており,品質を保証しつつ,いかに効率良くシステム検証を実施するかが非常に重要である。富士通セミコンダクターでは,ハードウェアエミュレータ(検証対象回路を専用ハードウェアにマッピングし,高速に実行することができる装置)を積極的に使用し,品質を保証しつつ,かつ検証効率を向上させる検証技術を確立し品種適用している。
本稿では,大規模画像LSIのシステム検証として最も有効と考えられるハードウェアエミュレータを使用したハードウェア/ソフトウェア協調検証,性能検証,消費電力見積について紹介する。

林 芳彦, 井熊 範行, 河村 拓, 徳江 貴志

画像LSIを搭載したデジタル機器は,グローバル市場での競争の激化から,性能向上,コストダウン,Time to Marketの短縮が勝ち残るための必須条件となってきている。一方で,画像LSIは大規模SoC(Sytem-on-a-Chip)化が進み,集積度の向上とともに,高速化,低電圧化によるシグナル/パワーインテグリティの顕在化など,設計が難しくなってきている。
富士通セミコンダクターでは,近年のSoC設計における四つの課題(シグナル/パワーインテグリティ問題,高密度設計,設計TATの短縮,コストダウン)に対処する設計手法としてチップ・パッケージ・プリント基板(CHIP-PKG-PCB)協調設計手法を立ち上げ,SoCならびにそれを搭載したデジタル機器の一発完動に貢献する成果をあげてきた。
本稿では,CHIP-PKG-PCB協調設計について,事例を交えながら上記四つの課題に関する取組みを紹介する。

佐藤 厚志, 木村 吉志, 松村 宗明

半導体パッケージの主機能は,LSIチップ(半導体チップ)に形成された微細な電極パッドから電気信号を半導体パッケージの実装端子まで確実に伝えることにあるが,LSIの性能を確実に発揮させるためにLSIの特性や製品使用環境に合わせ,パッケージ構造を最適化することが重要になってきている。
画像LSIは大容量の画像データを高速に処理することが求められており,外部の大容量バッファメモリと高速で高品質なデータ通信が必要となる。これらの動作を確実に行うために半導体パッケージ構造に工夫を行っている。また画像LSIは,デジタルカメラや携帯電話・スマートフォンに代表されるモバイル機器に使用されており,軽薄短小を具現化するパッケージング技術や複数のLSIを混載したSiP(System in Package)構造など高密度な実装技術が採用されている。
本稿では,画像LSI向けの最新の半導体パッケージング技術について紹介する。

米田 義之, 中村 公一


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