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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2012-3月号 (VOL.63, NO.2)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2012-3

特集:「新たな時代のSI技術」

富士通は,これまで蓄積してきた技術,ノウハウ,ツールに最新の技術を取り込みながらSI技術を強化してきました。本特集号では,これらの新しいSI技術の一端を,「業務・システムのライフサイクル」「クラウド・インテグレーション」「SE基本ワークスタイル」というキーワードに沿ってご紹介します。


執行役員常務
上嶋 裕和
執行役員常務 上嶋 裕和 写真

新たな時代のSI技術特集に寄せて(PDF)

これからの時代の情報システムは,ビジネスの発展に合わせて成長させていくことが重要になります。富士通は,お客様の「今のビジネス」を大切にし,そこからの飛躍を可能にする施策を提供いたします。そして,今後も新しい時代を先取りする強い技術でお客様のビジネスに貢献してまいります。

特集:新たな時代のSI技術 目次〕

総括

  • 新たな地平の先に見えてきたソフトウェア技術

業務・システムのライフサイクル

  • APMモダナイゼーションの取組み
    ~これからのSE~
  • 業務リファレンスモデルによる超上流工程品質向上
  • ビジネスとICTシステムをつなぐ要件定義手法:
    Tri-shaping
  • ソフトウェアライフサイクルを支えるアプリケーションフレームワーク:INTARFRM
  • システム開発におけるテストの取組み
    ~テスティングフレームワーク~
  • 富士通におけるアジャイル開発への取組み

クラウド・インテグレーション

  • 全体最適化手法:TRIOLEアプローチ
  • TRIOLEシステム構成モデル
    ~プライベートクラウド基盤~
  • クラウド時代の運用標準化
  • ビジネスイノベーションを支える新たなテクノロジー
  • クラウド時代に求められるSEワークスタイルの変革
    ~クラウドアーキテクト室の実践~
  • 富士通が考える既存ICT資産再利用

SE基本ワークスタイル

  • システム構築の標準プロセス体系:SDEM
  • SE活動を支えるナレッジの蓄積と再利用
  • ワークスタイルを支えるナレッジベース
  • マルチベンダ製品とOSSの利用リスクに対する取組み
  • クラウドサービスによる開発環境の標準化と
    システム構築の生産性向上
  • ソリューションビジネスにおける品質確保の取組み

特集:新たな時代のSI技術


総括

富士通は,1987年に総合システム開発体系「SDAS(System Development Architecture & Support facilities)」を発表した。当時はメインフレームを中心とした業務効率化のための新規システム開発全盛期ということもあり,SDASもシステムの「開発体系」を謳(うた)いつつ,開発を支援するツール群としての色彩が強かった。
時代は流れ,ビジネスにおけるICTの役割は,単なる効率化ツールから業務の中核を担う,なくてはならないものへと変化している。一方,システム開発は一巡し,ハードウェア・ソフトウェア資産の運用・保守にICT投資の8割が割かれるという新たな局面を迎え,いかにこれらの現実に向き合い,真にビジネスに貢献する身軽で変化に強いICT資産へと変貌を遂げるかが,経営者や情報システム部門にとって喫緊の課題となっている。
こうした時代背景に合わせ,SDASに,発表以来25年間にわたりICTの開発・運用現場で蓄積されたノウハウと最新の技術動向を加味する。そして,可視化,標準化,結合といったキーワードを基に,今後10年必要とされる「組み合わせて新たな価値を導出する発想とその検証」のための幅広い技術体系として再構成する。
本稿では,この進化したSDASについて紹介する。

柴田 徹, 若杉 賢治, 成瀬 泰生, 宇野 和義

業務・システムのライフサイクル

これからのSEは,稼働中のシステムを運用・保守し,現場の変化に合わせてシステムを変化させ続けることが求められる。企業におけるICTの位置付けが変わったからである。現在のICTに企業の経営層が期待することは,効率化,コスト削減に加え,「競争力やビジネスの強化」である。企業におけるICTの位置付けが変わるにつれ,システムに携わるSEに対する要求も変化した。SEがこの要求に応えるには,「変化を捉え」「システムをスリム化し,最適な状態に導き」「システムの最適な状態を維持する」ことの三つが重要である。
富士通は,この三つをAPM(Application management and Portfolio Management)モダナイゼーションの各技法で実現する。APMモダナイゼーション技法は,「もったいない」「モダナイ」「持たない」と表現された三つの方法で,レガシーシステムを最適化し,再レガシー化を防止する技法である。この技法で,日々の運用・保守業務の中から改善の芽を作り,正確な現状把握と最適な技術を組み合わせてスリム化した上で次期システムを構築できる。さらに,構成管理を中心とした運用・保守プロセスで最適な状態を維持し,システムを進化させることができる。
本稿では,「現場の変化に合わせてシステムを変化させ続ける」を実現するAPMモダナイゼーションの取組みを中心に,これからのSE像について述べる。

鎌倉 潤一, 濱本 勇人, 木村 茂樹

プレスリリース業務システムを「スリム化」するサービスを販売開始

プレスリリースお客様の業務システムをクラウド環境に移行するサービスを販売開始

企業におけるシステム導入の目的が業務効率化から経営貢献へと変化し,経営視点で求められる業務データのつながりを実現するため,業務を意識したシステム構築が必要となってきた。一方,業務におけるシステム利用の比重が大きくなり,業務部門が保有していた業務ノウハウはシステムに隠蔽されることが多くなった。これを受け,企業のシステム担当やベンダはICTの知識だけでなく,業務要件を引き出すために業務ノウハウを所有する必要が出てきた。
富士通はこの対策として,業務ノウハウを形式知化した業務リファレンスモデルを業種・業務ごとに開発した。業務リファレンスモデルは,従来の市販本のような業務説明にとどまらず,システム構築で利用可能な業務フローや概念データモデルなどから成る。お客様とベンダの共通認識として業務リファレンスモデルを活用することで,業務ルールの整理の品質向上,超上流工程に携わる要員スキルの向上,ステークホルダの抽出による要件抽出漏れの予防,他業種同業務も視野に入れた業務ノウハウの迅速な展開を図ることができる。これによりお客様のシステム構築の品質向上と効率化に貢献していく。

鈴木 ひろみ, 林 惠美子

今やICTシステムは,経営や業務にとってなくてはならないものである。経営や業務に貢献できるICTシステムを実現すること,すなわち,「ビジネスとICTシステムをつなぐ」ことが,企業の競争優位だけでなく存続を左右するほど重要なファクタになってきている。このような背景のもと,富士通は要件定義手法Tri-shapingを開発した。Tri-shapingは,ビジネスとICTシステムをつなぐ役割を担う人たちを,技術の面から支援することを狙った手法である。ビジネスの世界からICTの世界に要件を落としていく過程の様々な局面で「抜け」「漏れ」「曖昧」が生じ正しくつながらないという問題がある。Tri-shapingは,そのつながりにくい所をつないでいくためのノウハウを提示している。

新垣 一史, 森田 功, 鈴木 佐知子, 若杉 賢治

プレスリリース要件定義のノウハウを集大成、「Tri-shaping」として体系化

プレスリリースクラウドサービスを活用し、要件定義ツール群を富士通グループへ適用開始

ビジネス環境の変化は激しさを増し,より迅速で効率的なICTシステムの構築・保守が求められている。また,厳しい経済状況の中,SOAやクラウドなどのICTシステムを支える技術の進化に追随しながら,システム資産を継続的に発展させていくことが求められている。こうした状況に対応するため,富士通は2010年より,グループのノウハウを結集したアプリケーションフレームワーク「INTARFRM(インターファーム)」を提供している。INTARFRMは,システム構築・保守の効率化や標準化を支援する。また,要件定義から設計・開発・運用・保守に至るまで首尾一貫した手法で,お客様のシステム資産の継続的な発展を支援する。
本稿では,お客様のソフトウェアライフサイクルを支えるアプリケーションフレームワークであるINTARFRMの特長と導入効果,活用の広まり,および今後の取組みについて述べる。

恩地 正裕, 野津 辰治

お客様システムの開発において,コストの多くがテストに費やされている。しかし,テストに十分な時間とコストをかけたとしても,必ずしもシステム品質が良くなるというものではない。このような中,富士通は効率的で高品質なテスト作業を可能とするFujitsu Efficient Testing Frameworkを開発した。本フレームワークは,テストの作業手順やドキュメントが標準化されており,効率的かつ効果的なテストが可能である。また,テスト結果を見える化し,その出来栄えを品質の出来栄えとして捉えて評価する考え方を導入しており,出来栄えを分析・評価しながらテスト計画~実施~評価~見直しのPDCAによる品質ライフサイクルマネジメント(QLCM)が行える。さらに,時間・コスト・品質をバランス良くマネジメントしながら,システムのライフサイクルに沿って品質を確実に高めていくことが可能である。
本稿では,システムの品質を維持・向上していくために必要な要素と課題を明らかにし,その課題を解決するために開発したテスティングフレームワークの機能と特長について紹介する。

神保 寿久, 荒井 一仁, 楠本 博巳

富士通では,急速に変化するお客様のビジネスを迅速にサポートするための手段として,アジャイルソフトウェア開発(以下,アジャイル開発)への取組みを行っている。アジャイル開発とは,「お客様のビジネス価値を最大限に高める」ことを目的として掲げ,短期間で優先度の高い要求から順次構築を繰り返す適応的な開発手法の総称である。様々な市場に幅広く対応する富士通として,現状のアジャイル開発に関する課題を三つ設定し,解決策を検討し実践する。具体的には,豊富なシステム開発経験で培ったノウハウを融合した「FJ‑Agile」というモデルを富士通の目指すアジャイル開発の姿として掲げ,明確にしていく。また,アジャイル開発の効果の源泉として「考える」ことの大切さについても触れる。富士通は,全力を尽くして,お客様と固い信頼関係を築き,良い点だけでなく問題点も包み隠さず共有し,共有したゴールに向けて,一つのチームとなって進むことにより,お客様と新たな感動を共有していきたいと願っている。

和田 憲明, 山下 勝, 浅尾 慧, 川上 真一

クラウド・インテグレーション

企業経営において,ICTの役割は更に重要なものになってきている。また,ICTには一層のコスト削減やグローバルビジネス展開,ガバナンスの強化などへの対応を迫られ,災害や節電への対応も急務となっている。
このような多くの課題,対応が求められる一方,ICTはますます多様化,高度化するばかりではなく,様々なクラウドサービス(SaaS,PaaS,IaaSなど)が出現し,これらをどのように活用し,経営課題に応えるべきか,情報システム部門の大きな悩みになっている。
本稿では,このような情報システム部門の悩みに対し,ICTのあるべき姿を策定するための体系化された手法「TRIOLEアプローチ」を紹介する。TRIOLEアプローチは,関連部門との合意形成をベースとし,共通認識,業務仕分け,運用標準化,セキュリティ基盤設計の四つの標準化・パターン化を機軸としたクラウド時代に対応するICTの全体最適化の実現手法である。

村本 重樹

クラウドの利便性は,短納期で安価に,業務に必要とされるシステムの導入が可能という点にある。サービスやリソースを利用した分だけ料金を払うパブリッククラウドの利用を検討するに当たり,そのサービスレベルが業務システムとして求められる要件を充足していないため,企業内に自社保有のクラウドを導入するプライベートクラウドへの期待が高まっている。プライベートクラウドの導入は,企業内システムを構築するという点においては,従来システムと同様である。しかし従来システムの設計構築手法を踏襲したまま導入した場合,困難に直面する。クラウド特有の要件と運用に関する課題が存在するからである。
本稿では,クラウド特有の課題を払拭し,プライベートクラウドを確実に効率的に導入する,富士通の技術と経験を凝縮した「TRIOLEシステム構成モデル」について紹介する。

野房 恵

クラウド時代に求められるシステムのインテグレーションとして,お客様のビジネスサイクルに合わせてICTシステムを早く,安く,適性品質で提供することが求められている。一方,運用・保守の視点からは,システム全体運用をサービスとして提供したり,運用起点で新たなビジネスを提言したりすることが要求されている。そのための施策としてクラウド環境に対応した運用標準化を確立し,標準化に基づいた商談推進やプロジェクト実践を行うことで,お客様システムのライフサイクル,投資計画の策定や意思決定に対して貢献することが重要であると考えている。
本稿では,運用標準化についての取組みとして,クラウド環境における運用・保守の作業体系の確立および運用・保守モデルの型決めについて述べる。さらに,商談推進およびプロジェクト実践のためのインテグレーション手法として,運用・保守モデルの活用について述べる。

五寳 紀雄, 松本 信博, 二宮 伸夫

ビジネス環境が大きく変化していく中,企業にとって生き残りが厳しい時代になっており,ICTの活用領域拡大によるビジネスイノベーションに期待が高まっている。ビジネスイノベーションに不可欠なビッグデータを活用した新たなテクノロジーの登場は,ICTのパラダイムシフトを起こそうとしている。企業が競争力を強化し新たな価値創生を実現するには,「的確な経営判断による経営最適化」と「高精度な現状把握・未来予測によるオペレーションの最適化」を迅速に行うことが鍵となる。経営とオペレーションの最適化を有機的につなげることで,より一層の価値が創生される。新たな価値は要素技術により支えられ,要素技術を束ねることで更なる付加価値が創生される。富士通は要素技術の開発だけでなく,複数の要素技術を組み合わせたソリューションスタックの整備や業種・業際ソリューションの提供により,新たな価値を安心かつスピーディに提供している。これらソリューションをビジネス環境の変化に迅速に対応すべく,お客様とともに最新化・最適化し続けることで,付加価値を高め,お客様のビジネス拡大に貢献していく。

土井 伸也, 常世田 佳典

既存資産の運用や維持にかかるICT投資を低く抑え,新規ビジネスへの戦略的な活用を行いたいというお客様の強いニーズがある。このニーズに応えるためには,クラウドコンピューティングという新しいICT活用の枠組みで,プロダクト,サービス,ソリューションを最適にインテグレーションすることができる人材がこれまで以上に必要と考える。富士通グループでは,従来の業種別や専門技術単位で編成された個別最適なフォーメーションに加え,商談~開発~運用ならびに技術整備という包括的な単位で横断的に活動する枠組みとして,2009年12月にクラウドアーキテクト室を新設した。クラウドアーキテクト室では,ソリューションビジネスの変革施策の一環として,現場のフィールドSEを集めて商談対応,プロジェクト実践,技術整備と3軸でビジネスを牽(けん)引しながら,これからのSEとして求められるプロフェッショナルな人材の育成に取り組んでいる。
本稿では,従来の富士通グループの枠組みを踏まえた上で,クラウド時代に求められるSEワークスタイルの変革に取り組む,クラウドアーキテクト室について紹介する。

原 桂介, 谷口 照明, 福山 博久, 那須 純也

情報システムを取り巻く環境は,社会構造の複雑化やボーダレス化により大きく様変わりしつつある。さらに2011年3月11日に発生した東日本大震災は,ICTのあり方について多くの問題を提起した。一方,情報システムには膨大な既存ICT資産が存在する。この既存ICT資産の近代化は,多くのお客様を悩ませている問題である。なぜなら,肥大化,老朽化した既存ICT資産は柔軟性が乏しく,ビジネス環境の変化へ追随することを阻害するからである。既存ICT資産の肥大化,老朽化を防ぎ,ICT資産の長期成長を支える技術について,富士通では様々な取組みを行っている。近年のモダナイゼーションはシステムの近代化を目的に,「SOA化」「リホスト」「リライト」「リビルド」「スクラッチ」など様々な技術で語られている。
本稿では,既存ICT資産の中から,アプリケーション資産を再利用してシステムを効率的に再構築し,そのシステムの長期成長を支えるモダナイゼーション技術として開発した「APMモダナイゼーションサービス」の取組み,および技術の特長を説明するとともに,導入事例,今後の拡大が期待される適用分野について紹介する。

千田 正一, 宇田 真奈美, 市川 秀樹, 竹森 隆浩

プレスリリース世界初! アプリケーション資産活用のためのソフトウェア地図作成技術を開発

SE基本ワークスタイル

SDEMは,情報システムの企画,開発,運用・保守,品質保証に関わる作業を網羅的かつ体系的に示したものである。そこに携わる,お客様を含めた様々なステークホルダが,作業や役割などにつき共通認識を形成するためのよりどころとなるものである。その歴史は30年に及び,ソフト・サービスの広がり,国際・業界動向に応じた継続的な改善を図っている。
SDEMの特徴は,作業の体系化の考え方にある。情報システムに関わる作業を考えるとき,「情報システムを使える・役立つものとするために,その背景にある経営活動や業務活動を含めた全体で,必要となる作業を捉えること」「それらの作業全体のうち,誰が何を知っているのか,誰が何を決められるのかを明確にすること」が大切である。SDEMではその二つの視点を与える「概念カテゴリ」を,作業を体系化する軸として加えている。この「概念カテゴリ」と「工程」の2軸で作業を体系化することで,作業の全体像がステークホルダにとって理解しやすい形となり,それがステークホルダの共通認識の礎となるように工夫を施している。

室中 健司, 原 直朗

あらゆる企業活動において,ナレッジ共有と再利用の重要性は年々増している。SE活動も同様で,開発作業の効率化や高品質なシステム開発には非常に重要な要素となっている。現在ではインターネットを利用した情報収集が当たり前のようになっているが,富士通ではナレッジ共有の重要性に早くから着目し,1970年代より,その取組みを開始している。SE活動の現場では,システム開発の中で様々な問題に対応しているが,過去に同様の問題に直面して解決しているプロジェクトがあれば,そのノウハウを共有することでSE活動が円滑に行われ,お客様に高品質なシステムを提供することにもつながるという意識が根付いている。
本稿では,富士通SEのナレッジ施策の代表的な取組みであるFIND2,IKB,SOLUTIONBANKを紹介する。これらは,現場で得られたノウハウの収集から再利用するサイクルを構築して,富士通全体でナレッジを活用したり,専門部門による信頼性の高い技術情報や再利用素材をタイムリに提供したりして,システム開発現場での生産性や信頼性の向上に貢献している。

大門 郁夫, 和田 元

富士通SEの基本ワークスタイルは,ナレッジマネジメントを推進する変革活動によってSEのノウハウを集約して仕事の改善を行っていくことである。インターネット技術を用いて蓄積されたノウハウをどこからでも利用できるようにしたナレッジベースは,ワークスタイルを支えるために発展を続けている。
本稿では,ワークスタイルを支えるナレッジベースとして,SEの現場活動をそのまま知識として蓄積して利用する「コミュニケーションベース」としてのProjectWEB,蓄積されたナレッジへ素早くアクセスできる「ポータルサイト」としてのSE情報ポータル,言葉に共通認識を与え,富士通グループで統一した技術用語を定義し,「用語の標準化」を推進するF-pediaの三つについて紹介する。

金井 和晃, 櫻井 由香, 齋藤 和紀

お客様の多様なニーズにより,近年,システムが複雑化している。システムを複雑化させている要因の一つとして,単一のベンダに依存した技術のみでシステムが構成されることはごく稀(まれ)である点が挙げられる。富士通の場合,社外の技術はマルチベンダ製品とオープンソースソフトウェア(OSS)に大別され,これらに関わるリスクは外部要因で発生し,富士通による直接的なコントロールが及ばない領域が存在する。このような状況に対処するため,富士通はマルチベンダ製品やOSSを含むSIプロジェクトのリスクコントロールに関して様々な取組みを行っている。
本稿では,まずはマルチベンダ製品に関するリスクコントロールの取組みについて述べ,次にOSSのライセンス遵守の取組みについて紹介する。

浦田 敏, 斎藤 貴大

クラウド時代の到来により,カスタムメイドのシステム構築にはクラウドと同様の素早い立上がりが期待され,システム構築における品質・生産性向上の要求は更に厳しくなっている。その要求に応えるためには,アプリケーションフレームワーク単体による設計・実装作業の標準化・効率化に加え,構成管理のような開発チームの運営機能,開発者端末・テストサーバなどの環境構築・整備など,プロジェクトライフサイクルを広くカバーする技術の標準化・効率化が必要不可欠である。このような広範囲の標準化を組織全体で統制・推進するためには,それらの要素を開発環境に含めて標準化し,その開発環境をクラウドサービスよりシステム構築プロジェクトに提供することが効果的である。
本稿では,富士通における開発環境のクラウドサービスの社内実践を例に,システム構築プロジェクト全体を支援するクラウドサービスの効果と課題,そして今後の可能性を論じる。

迫田 誠太郎

富士通は,ICTがもたらす恩恵を誰もが等しく安心して享受できるよう,「品質」を事業の根幹に関わる事項として捉え,富士通グループ全部門で意識して業務を遂行することによって,高品質な製品・サービスをお客様に提供している。
富士通のソリューション部門では,富士通における全ての課題達成に向けた活動であるQfinity活動をベースとし,品質を確保するための原理・原則であるSBN規格を組み込んだQMS(Quality Management System)を定め,このQMSに基づいた品質活動を実践している。また,品質確保のための施策検討を行う全社体制(品質管理責任者会議),経営層を含めたレビュー体制(ソリューション品質会議ほか),ビジネスパートナーに対する品質向上(PQI)制度などを構築している。
本稿では,このようなソリューションビジネスにおける品質確保の様々な取組みを紹介する。

伊藤 吉史, 横山 幸正, 廣瀬 守克


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