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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2012-1月号 (VOL.63, NO.1)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2012-1

年頭ご挨拶

特集:「エンジニアリングクラウド」

富士通は2011年6月に日本のものづくりを支えるICTソリューションとして,「エンジニアリングクラウド」を発表いたしました。今回の特集では,このエンジニアリングクラウドが,ものづくりの世界にもたらす変革とその実践例を紹介いたします。


執行役員副社長
佐相 秀幸
執行役員副社長 佐相 秀幸 写真

エンジニアリングクラウド特集に寄せて(PDF)

富士通は,これまでのものづくりの経験を生かし,ICTの力でお客様の商品開発力の強化,付加価値向上をご支援させていただきます。

特集:エンジニアリングクラウド 目次〕

特別寄稿

  • ものづくり分野におけるスーパーコンピューティングの推進

総括

  • 統合設計開発環境の構築とクラウドへの展開

プラットフォーム,ソリューション

  • 富士通のエンジニアリングクラウド
  • 電気系設計プラットフォーム
  • 構造系設計プラットフォーム
  • エンジニアリングクラウドのSaaS/PaaS

アプリケーション,要素技術

  • 総合設計情報管理システム:PLEMIA
  • 仮想生産ラインシミュレータ:GP4
  • プロジェクト推進プラットフォーム:P3
  • 電気特性シミュレーション:SignalAdviser
  • 仮想デスクトップ環境での高速表示技術:RVEC(レベック)
  • エンジニアリングクラウドにおける
    標準部品情報DBの位置付けと役割

エンジニアリングクラウド実践例

  • 電磁界解析の実践事例
  • 構造・熱流体シミュレーションとCAD連携事例
  • 株式会社ジェイテクトのエンジニアリングクラウドを礎とした
    自動車用電装品設計品質向上の取組み

特集:エンジニアリングクラウド


特別寄稿

加藤 千幸

総括

日本のものづくりの現場では,グローバルベンダとの競争が激化する中,多様化する市場ニーズへの対応を図りつつ,お客様が望まれる機能・性能・品質・耐環境性などを考慮した製品を,より速く,より低コストに提供し続けることが重要であり,今まで以上に開発や製造現場にある多くの「知」を生かしながら,開発を加速するグローバルな設計開発環境を構築することが急務になっている。
富士通では,スーパーコンピュータからサーバやネットワーク装置,更には携帯電話に至るプロダクト製品の設計開発環境を「社内統合設計プライベートクラウド」として立ち上げ活用している。また社外のお客様にも,それぞれのお客様のニーズに合わせたクラウド形態を通じ,次世代のものづくり基盤サービスとして提供している。
本稿では,富士通の長年にわたるものづくりノウハウを集約した設計開発環境に,先進クラウド技術を開発・導入し,次世代のものづくり基盤として確立した「統合設計開発環境」について,その全体像,特徴,今後の方向性などについて紹介する。

宮澤 秋彦, 永嶋 寿人

プラットフォーム,ソリューション

製造業における「ものづくり」が現在直面している課題として,「増大する開発コスト」「製品の複雑化」「開発期間の短縮」「企業間の協業」そして「災害対策を含めた事業継続性」がある。これらの課題を解決するためには,「シミュレーション」「情報共有/活用」「ツール/部門連携」が重要と考える。当然ながら,これらは相互に深く連携・関係することでより高い効果が得られる。例えば,装置内発熱や静電気による素子破壊の可能性を設計段階で早期に発見するために熱流体/静電気シミュレーションを実施するが,分散設計環境下では,プリント板と筐体の設計情報を収集し,シミュレーション環境に転送する作業が入り,コピーの手間や情報管理(セキュリティ)に課題がある。このような課題に対し,富士通ではエンジニアの設計環境をクラウド化することにより,シミュレーションの迅速化,情報共有/活用,ツール/部門連携性をより高め,設計品質の高いものづくりを実現できると考える。本稿では,製品開発における課題に焦点を当て,それを解決するためのアプローチとして,富士通が現在取り組んでいるエンジニアリングクラウドについて紹介する。

安田 満

製品開発において,高性能化・小型化・低コスト・短期開発などの従来からある「ものづくり」の要件に加え,事業継続性,環境対応,安心・安全など企業の社会的責任に対するビジネス要件が増してきている。このような技術とビジネス環境の変化に対応するために,開発全体のガバナンスを効かせた開発プロセス・開発環境の導入が必要である。富士通では長年にわたる「ものづくり」で培ったノウハウを集約し,標準化を図った統合設計開発環境(FTCP:Flexible Technical Computing Platform)を構築し,「エンジニアリングクラウド」として,開発部門はもとより製造現場,製品の修理拠点などにも提供している。
本稿では,FTCPの全体概要と,電気設計プラットフォームの主要なコンポーネントであるプリント板設計CAD,ノイズ解析などのシミュレーション環境,およびそれらの運用を支える標準部品情報データベースの特徴と連携について紹介する。また,エンジニアリングクラウド基盤を活用し,FTCPをクラウド環境で提供することによるメリットや,お客様の既存開発環境のクラウド化について言及する。

中村 武雄, 森泉 清和, 佐藤 敏郎, 山田 修一郎

富士通グループでは,常に最新のICTを使用して,製品開発にとって重要な統合設計環境を構築しており,「エンジニアリングクラウド」もその一環である。エンジニアリングクラウドは多くの構成要素で成り立っているが,本稿では,機械/構造系設計分野のサービスを提供する構造系プラットフォームについて紹介する。
構造系プラットフォームは,製品ライフサイクル全般にわたり3次元データを高速かつ使いやすく利活用できるVPS(Virtual Product Simulator)の技術をベースとし,従来のVPS相当機能と解析・シミュレーション分野のプリ・ポスト処理に必要な機能を併せ持つ。
本稿では,その基本構成や考え方を紹介し,計算用リソース,大量データの扱い,可視化用リソースの三つの観点から,エンジニアリングクラウドで構造系プラットフォームを利用するメリットと今後の課題について述べる。

有田 裕一, 野崎 直行, 出水 宏治

富士通はエンジニアリング業務を対象としたクラウドサービスをDaaS(Desktop as a Service:シンクライアントからのリモートアクセス)形式で提供する。このサービスでは,設計関連データのクラウド上での管理・運用のみならず,2次元・3次元CADを使ったモデリング業務や,デジタルモックアップツールによるシミュレーション,更には地理的に離れた設計者間のコミュニケーションの支援などを月額固定の従量制料金で提供する。
これらのサービスにより,お客様のグローバル拠点間の連携を含めたエンジニアリング業務を飛躍的に効率化させるとともに,お客様のパートナ企業とのデータ連携時における情報漏えいなどのセキュリティや,パートナとの協業立上げに要する時間の短縮といったニーズにも対応することを可能にした。

吉田 義史, 藤田 雄佐

アプリケーション,要素技術

PLEMIAは,富士通のPLM(Product Life cycle Management)ソリューションコンセプトを実現するツールである。PLMソリューションとは,製品の企画段階から設計・開発,ものづくり現場,販売・サポート,廃棄・リサイクルまで,次世代の開発設計・製造環境を構築していくための戦略的統合ソリューションである。PLEMIAは,製品のライフサイクル全体の製品関連情報をICTで一括管理し,設計上流工程からの支援で,市場環境の変化に適応できる柔軟なものづくり体系を具体化する強力なツールである。PLEMIAで実現可能な業務は,エンジニアリングデータ管理による構想段階からの設計業務支援,部品表による製品構成管理の実現,プロセス管理の効率化である。また,PLEMIA導入のメリットは,安全なチーム設計の実施,統合部品表の実現,設計者・管理者におけるプロセスの見える化,多角的な検索機能による情報資産の有効利用,文書データをプロセスの流れで共有が可能という点である。
本稿では,PLEMIAの開発ポリシーとエンハンス計画について述べる。

飯田 好高, 村田 秀人, 鎌田 聖一

仮想生産ラインシミュレータ「GP4(Global Protocol for …)」は,3Dデータを活用した仮想生産ラインにより,生産準備業務を支援するツールである。近年,国内各種製造業においては,グローバル市場における事業戦略の再構築を進めている。先進国市場の成熟化と新興国市場の拡大や,韓国・中国に代表されるアジア諸国におけるものづくり競争力向上など,ここ数年で国内の製造業を取り巻く環境変化は激しく,厳しい状態にある。特に製造業の大きな変化の要因の一つは,市場のグローバル化に伴い生産拠点の現地化が急速に進んだことである。さらに,円高や震災が拍車を掛け,製造業は生産拠点の海外シフトを加速せざるを得ない状況に追い込まれている。急速な現地化により,現地対応メンバの経験不足による量産立上げ遅れや生産準備コスト増が課題となっている。この大きな変化と課題は,設計業務と量産業務をつなぐ生産準備業務に集中しており,この領域の改革が急務とされている。
本稿では,グローバル生産におけるものづくりの課題からGP4を活用した現物なしでの最適生産ラインの検討方法とその効果について述べる。

田中 淳介, 尾上 隆, 上田 徹

近年,IT社会を支える技術は日々進歩している。機能の多様化や性能向上への更なる要求は,IT機器開発における設計の技術水準や規模を押し上げ,数年前に比べて検討すべき要素は,ますます複雑に幅広くなっている。市場から求められる早期開発・早期出荷を達成するために多くの開発者の投入は,情報および知識共有のコスト増加を招き,その結果,開発プロジェクトが遅延するリスクが高まっている。そこで,プロジェクト内の開発状況や問題およびその対処の見える化を促進するとともに,開発によって蓄積されたノウハウを活用し,開発効率や生産性の向上を支援する環境を構築した。
本稿では,開発者間での情報と知識の共有を促進する「プロジェクト推進プラットフォーム(Project Propulsion Platform)P3」の紹介と,実設計開発プロジェクトに適用した結果と課題および今後の計画を報告する。

山下 智規, 齊藤 王央, 亀田 勝

デジタル装置に使用されるプリント基板(PCB),マルチチップモジュール(MCM),システムインパッケージ(SiP)などの動作周波数の高速化とLSI動作電圧の低電圧化に伴い,シグナルインテグリティ(波形ノイズ),パワーインテグリティ(電源ノイズ),EMC(電磁環境両立性)などのノイズ問題による設計期間の長期化とコスト増加の問題が顕在化している。これらのノイズ問題に対応するために,シミュレーションを駆使して最適な設計を行う電気特性シミュレーション環境を構築し,広範囲な装置設計に適用している。
本稿では,富士通グループの電気特性シミュレーション環境の構築に関するこれまでの取組みと,シグナルインテグリティ解析およびパワーインテグリティ解析について適用事例を交えて解説する。

藤森 省吾, 佐藤 敏郎, 河野 香代子, 鈴木 友幸

近年,データのセキュリティ対策やパソコンの運用管理コストの観点から,クライアント端末には情報を置かず,クラウド内にデスクトップ環境を仮想化して配置し,遠隔からアクセスすることで通常の端末の環境と同じように使える仮想デスクトップサービスが注目されている。さらに,スマートフォンの高機能化と普及に伴って,モバイル環境から仮想デスクトップサービスを利用するニーズも増大しており,いずれもスムーズな操作性が求められている。
富士通研究所は,クラウド内にデスクトップ環境を仮想的に配置して,クライアント端末からアクセスする仮想デスクトップにおいて,動画や高精細な画像を扱う際のデータ転送量を従来の約10分の1に削減することによって,端末利用者の操作応答性能を向上させる高速表示技術「RVEC(レベック:Remote Virtual Environment Computing)」を開発した。本技術により,CADなどのグラフィック処理を行う仮想デスクトップサービスをスマートフォンなどのモバイル環境で利用することが可能となる。

松井 一樹, 堀尾 健一, 佐藤 裕一, 佐沢 真一

富士通グループの製品群に使用されている汎用電子部品の情報は標準部品情報DB(Database)で管理され,エンジニアリングクラウドの一構成要素としてグループ内で共有されている。この標準部品情報DBには日々整備されている標準部品のノウハウ情報が格納され,設計システム上で実行されるリアルタイム検証(DRC:Design Rule Check)にこの情報を活用することで設計品質の向上や設計工数の削減に大きく寄与している。
本稿では本DBのエンジニアリングクラウドにおける位置付けと,管理情報,関連システム,および部品標準化の仕組みと設計検証との連携など,ものづくりを支援する役割について説明し,この標準部品情報と設計基準,DRCの連携運用を通して定着した良好な部品標準化サイクルと,設計効率化を加速させる取組みについて紹介する。

森泉 清和, 藪本 稔, 三浦 岩夫

エンジニアリングクラウド実践例

高性能ハイエンドサーバなどのデジタル装置に使用されるプリント板,マルチチップモジュール,システムインパッケージなどの動作周波数の高速化やLSIの低電圧駆動化に伴い,信号伝送ノイズ,電源グランドバウンスノイズと同時スイッチングノイズなどの様々なノイズ源に起因するEMI,アンテナ受信感度劣化への対策が困難になってきている。
富士通は,装置全体の大規模電磁界解析システムを開発して装置設計プロセスに組み込むことにより,上記のノイズ問題の対策を設計段階で可能にした。これにより,スーパーコンピュータ「京」から携帯電話までの広範な装置において,ノイズ問題発生による設計手戻りの発生を撲滅することができた。
本稿では,本システムの特徴と装置設計への適用事例について解説する。

佐藤 敏郎, 松永 孝志, 前田 秀樹, 渡辺 雅英

プロダクト製品のQCD(Quality:品質,Cost:コスト,Delivery:納期)の改善のためには,高精度なシミュレーション技術と短期間での結果提示が重要になっている。シミュレーションにおいては,モデリング・計算・結果分析に至るまでの処理時間短縮に向けた取組みを継続し,テクニカルコンピューティング環境での適用を推進している。これにより,製品開発・設計の加速,製造工程内・顧客先での品質向上を図ってきた。
本稿では,シミュレーションをテクニカルコンピューティング環境で活用する際の工夫点,CADシステムとの連携,および構造・冷却設計に向けた構造,熱流体の各種シミュレーション適用事例とその効果について紹介する。

山岡 伸嘉, 酒井 秀久, 石川 重雄, 諏訪 多聞

株式会社ジェイテクトは,自動車の燃費向上に貢献するステアリング・軸受・駆動製品を全世界に展開している自動車部品,工作機械メーカである。これらの製品の電動化は近年ますます加速している状況にあり,小型・軽量・高効率で更なる省エネに貢献する要素技術に重点を置き開発を推進中である。新興国市場でも電動化の傾向は拡大の一途で,特に自動車用電装品はその使用条件の過酷さに加え,低価格で超軽量という高いレベルでの技術課題の克服が求められている。そこで,従来以上の信頼性を確保しながらも,高性能,高機能な自動車用電装品のスピーディな開発を実現するため,富士通のエンジニアリングクラウドを活用した統合設計開発環境(FTCP:Flexible Technical Computing Platform)を導入し,新たな開発プラットフォームの構築を開始した。
本稿では,FTCPを活用した自動車用電装品開発環境の構築に当たり,その成果をあげるために行った数々の取組みについて紹介する。

瀬川 雅也, 長瀬 茂樹


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