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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2011-11月号 (VOL.62, NO.6)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2011-11

特集:「環境」

本特集では,省エネ・節電に貢献する富士通グループのグリーンICTや先進テクノロジーをはじめ,環境負荷低減に関する様々な活動や生物多様性保全への取組みなどを紹介いたします。


特命顧問(環境担当)
髙橋 淳久
特命顧問(環境担当) 髙橋 淳久 写真

環境特集に寄せて(PDF)

富士通グループはグローバルな環境問題の解決に向けて,ICTを最大限に駆使するとともに業種・業界を越えた連携も進め,お客様をはじめステークホルダの皆さまと新たな価値を創造することで,富士通グループが目指す人に優しい豊かなインテリジェント社会—ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティの実現を目指していきます。

特集:環境 目次〕

総括

  • 富士通グループの環境への取組み

省エネルギー・環境負荷低減に貢献するグリーンICT

  • 富士通の節電・省エネソリューション
  • グリーンネットワークソリューションによるネットワークのグリーン化
  • エネルギーマネジメントシステムの実現に向けた富士通の取組み
  • 節電意識を高めるスマートコンセント
  • 環境負荷低減に貢献するソフトウェアの開発・提供
  • ScanSnapシリーズの環境配慮と,お客様使用による環境負荷低減への貢献

環境配慮製品の開発・提供

  • ライフサイクルを通じた製品の環境配慮
  • 製品含有化学物質規制への対応
  • 効率的なLCA算出システムの開発
    ~改善につなげる製品環境配慮設計~
  • ネットワーク機器の省エネ評価基準策定への取組み

地球温暖化対策・事業所での環境負荷低減

  • 地球温暖化防止に向けた富士通グループの取組み
  • 環境負荷低減に向けた低温接合技術
  • 自らの実践による環境リファレンスモデル構築

サプライチェーンを通じた環境負荷低減

  • 富士通グループのグリーン調達の取組み
  • グリーン物流の取組み

生物多様性の保全

  • ICTを活用した生物多様性保全と生物多様性評価
  • ハイパースペクトルによる植生マッピング技術

特集:環境


総括

富士通グループでは,環境を経営の最重要項目の一つとして位置付けており,企業および社員の行動の原理・原則を示した“FUJITSU Way”の中で,「地球環境を守る」ことを富士通グループが目指すべき四つの指針の一つとして定めている。この基本的な考え方に基づき,中期環境ビジョン“Green Policy 2020”を策定し,低炭素で豊かな社会の実現を目指している。また,そのバックキャスティング,および近年のグローバルな環境課題への対応を目的とした「第6期富士通グループ環境行動計画」を2010年度から開始し,2012年度までに目標をすべて達成できるよう取り組んでいる。
本稿では,富士通グループが推進している環境経営の枠組みについて紹介する。また,その枠組みに基づいて実施された自社の環境負荷低減,およびお客様と社会に向けた環境貢献活動の事例を取り上げる。

竹野 実

省エネルギー・環境負荷低減に貢献するグリーンICT

2011年3月に発生した東日本大震災による電力供給力の減少に伴い,いかに「節電」に対応するかが企業の大きな経営課題となっている。また,2010年度に改正された省エネ法に伴い,長年企業が取り組んできた「省エネ」も大きな課題としてクローズアップされている。
富士通は,節電・省エネを,それぞれ別々のものとして捉えており,双方とも「法規制」「社会的責任」「コスト削減」の三つの側面から重要であると認識した上で,お客様の節電・省エネに対する取組みを広く支援している。節電においては,広く社会に自社のノウハウを提供することで節電への取組みを推進しようとしている。また,省エネにおいては,自らの考え方を明示した上で,お客様における効果的な省エネを支援している。
本稿では,節電・省エネに関して昨今の社会情勢,およびそれぞれの特徴を紹介する。さらに富士通がICTを活用し,どのようなアプローチで節電・省エネに取り組んでいるのかを紹介する。

西田 清和, 及川 洋光

通信トラフィックの増加に伴って,ネットワーク機器は高速・大容量となり,電力消費量の増加が懸念されている。富士通はネットワーク機器の省電力化促進を目指し,「グリーンネットワークソリューションビジョン」を策定して,お客様の環境負荷低減を図るため,「デバイス」「システム」「ネットワーク全体」「ネットワーク構築運用」「ネットワーク活用ソリューション」の五つの視点から省エネ技術の開発に取り組んでいる。
この方針のもと,アクセストランスポートシステムや光張出し無線装置などを開発,製品化することで,お客様の環境負荷低減と運用・保守コストの削減を実現するとともに,ネットワーク全体のグリーン化に貢献している。
本稿では,ネットワーク機器の省エネ技術の開発の方向性と開発事例について紹介する。

出光 正和, 斉木 公一, 杉山 準, 羽田野 泰司

東日本大震災以降,電力需給が社会問題となっており,その影響は,企業の事業活動から一般家庭生活へと波及している。エネルギーの課題は一般に「安定需給」「環境対応」「コスト抑制」に加え,震災以降は「安全」も重要視されるようになっており,現在日本のエネルギー政策は転換期に差し掛かっている。
このような背景のもと,エネルギーマネジメントシステム(EMS:Energy Management System)は,ICTを活用することで上記の課題に対処し,個別と全体の最適化を実現するものである。本格的なEMSを商用レベルで実現するには,膨大な数のデータ発信源から送られてくる大量のデータを,瞬時に処理し新たな価値へと変換するICTと,各システムのインテグレーションが不可欠である。富士通は,ICTベンダとしてスマートグリッドの実現に向けて,これまでに蓄積してきたネットワーク技術やクラウド基盤・システムインテグレーションのノウハウを活用し,EMSの構築と関連するソリューションやサービスを提供することが社会的役割と考えている。
本稿では,ICTベンダの立場から見たEMSについての位置付けと富士通の取組みを紹介する。

北川 賢治, 松本 大輔, 天野 和彦

プレスリリーススマートグリッド関連事業について富士通と富士電機で業務提携に向けた覚書を締結

オフィスなどにおける消費電力の削減ツールとして機器ごと・個人ごとというミクロな単位での電力見える化を実現した。このミクロな単位での電力見える化を実現するために,非接触タイプの電流センサを個々のコンセントに組み込んだ,小型で通信機能を有する電源タップ,スマートコンセントを新規開発した。さらに,電源タップから個々の電力データを収集して解析・見える化する「電力見える化システム」を開発した。
電力見える化システムにおいて,個人レベルの詳細な電力消費パターンを表示すること,およびオフィス内での相対的な順位を分かりやすく伝えることで,OA機器の使い方の改善意識の向上につながり,節電を実現できた。自社オフィスで社員約100人に1台ずつスマートコンセントを配布して電力見える化システムの試行を実際に行ったところ,約15%の電力削減につながった。

村上 雅彦, 壷井 修, 岩川 明則, 中澤 文彦

プレスリリース業界最小の電力センサー内蔵のスマート電源タップを開発

プレスリリース小形電力センサー内蔵スマートコンセント新発売 ~コンセント単位で消費電力を「見える化」し省エネに貢献(スマートコンセント FX-5204PS、ゲートウェイ FX-5250GW)~

プレスリリース京都大学と富士通が共同でエネルギーマネジメントの実証実験を開始

近年,サーバやストレージ,ネットワーク,パソコンなどのICT機器による省エネ化にとどまらず,ソフトウェアの環境負荷低減が重要になってきている。富士通では,ICT機器と組み合わせて環境負荷低減に寄与するソフトウェア製品の開発を行っている。
本稿では,富士通の環境負荷低減対象ソフトウェア製品(Systemwalker,Interstage,Symfoware,ServerView Resource Orchestrator,ETERNUS SF)の活用シーンを紹介する。さらに,自らのソフトウェア事業活動に伴う環境負荷低減活動(沼津ソフトウェア開発クラウドセンター,ソフトウェアライセンスの電子納品)の取組みについて紹介する。

朽木 忍, 山中 佳技, 松本 一志, 伊藤 雅子

プレスリリースソフトウェアライセンスの電子納品を開始

パーソナルドキュメントスキャナScanSnapシリーズは,コンパクトかつ省電力な製品としてオフィスから家庭まで,幅広いシーンで利用され,紙文書の電子化によって紙の保管スペース削減など環境負荷低減に大いに貢献している。また,新製品においてはクラウド連携機能強化により,スキャンする場所・機会を拡大し,さらなる環境負荷低減に貢献している。
本稿では,ScanSnapシリーズに盛り込まれた環境技術と,本製品を使用することによるお客様の環境負荷低減への貢献について紹介する。

宮下 幹朗, 上野 勝

環境配慮製品の開発・提供

富士通グループでは,製品のライフサイクルにおける環境負荷低減に向けた取組みを進めている。節電・省エネ技術による消費電力の削減,省資源化,リサイクル率向上,化学物質管理による有害物質の排除を目指して,1993年より製品環境アセスメントを実施している。新規製品開発時には,開発,製造,流通,使用,リサイクルを含むライフサイクルアセスメント結果を基に,従来製品に対する「環境効率ファクター」を指標として,お客様に提供する製品全体の環境性能の改善を図っている。また,トップレベルの環境性能を有する製品として,スーパーグリーン製品を定義し,先進的で競争力のある環境配慮製品の開発を推進している。
本稿では,第6期富士通グループ環境行動計画(2010年度~2012年度)におけるスーパーグリーン製品の開発推進活動とその製品事例,環境効率ファクターおよび製品リサイクルの取組みを紹介する。

中神 好正, 北島 政充, 生沼 一幸, 濱川 雅之

富士通グループでは,2006年に施行された欧州のRoHS指令,日本のJ-Mossなどの化学物質規制への対応として,鉛・カドミウムなど6物質を含有しない環境(化学物質)配慮設計ルールの制定,および代替技術開発,部品材料の採用・受入分析技術開発を行い,製品設計に適用してきた。これに先立って2003年から進めてきた環境配慮設計ルール,分析技術について,化学物質含有情報の信憑(ぴょう)性向上,設計効率の向上,および分析対象部位・物質の拡大が望まれている。また,2009年からは特定化学物質の管理規制である欧州REACHも設計基準となっている。
本稿では,初期の環境(化学物質)配慮設計ルール概要と化学物質情報品質と設計効率向上の新設計ルール,含有規制化学物質候補の分析技術を中心に紹介する。

八木 晴見, 比留間 明臣, 臼井 康博

近年,環境への意識の高まりから環境配慮設計にかかわる取組みが各企業で進んでいる。このような取組みを行う評価手法として,製品のライフサイクルにおいて発生する環境負荷を定量的に評価するライフサイクルアセスメント(LCA)がある。LCAではCO2などの環境指標により,製品のライフサイクルのどの段階でどれだけのCO2が排出されているかを定量的に把握することができるため,環境負荷の把握やその負荷削減の検討材料として多くの企業において導入されている。しかし,LCAを算出するには,製品を構成する部品や材料ごとの環境負荷を計算し製品単位で積み上げていく必要があるため,製品あたりのLCA評価を行うには多くの手間と時間がかかる。これを手作業で算出すると富士通テン製のカーナビの場合であれば1台の算出に約20時間かかる。このため,LCA算出のための市販ツールや計算ツールが各種整備され始めているが,それでも3~5時間程度かかってしまうのが現状である。
本稿では,これらLCA算出に伴う作業の効率化の課題を克服し,「製品品番を入力すればLCAが自動算出できる」システム開発を目指した,富士通テンの取組みについて紹介する。

上出 英行, 山本 崇, 岡 立朗, 中平 利一

プレスリリースLCA算出時間の大幅削減で環境配慮設計(DfE)を推進

プレスリリース環境配慮設計(DfE)の評価システムを開発

プレスリリース全製品分野でのLCA(ライフサイクルアセスメント)を実施~より環境に配慮した製品作りを推進~

地球温暖化対策の視点から,環境負荷低減への取組みが求められる中,コア・アクセス系ネットワーク機器の省エネ評価基準が国内外で存在しない状況を考慮して,著者は情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)の省エネ推進活動として,「ネットワーク機器の省エネ検討プロジェクト」を立ち上げ,コア・アクセス系ネットワーク機器に関する省エネ評価指標や目標値などの検討を開始した。その検討内容を総務省と電気通信関係5団体で推進する「ICT分野におけるエコロジーガイドライン協議会」に提案して,「ICT分野におけるエコロジーガイドライン」を策定した。このガイドラインはICT機器の省エネ評価指標や基準値などを規定しており,電気通信事業者の調達基準のベースとなるものである。
本稿では,このガイドライン策定に向けた取組みとベンダの対応が必要となる内容について紹介する。

出光 正和

地球温暖化対策・事業所での環境負荷低減

現在,京都議定書における第一約束期間(2008~2012年)であり,日本では温室効果ガスの排出量を6%削減することを約束している。このため,産業界においても自主行動計画を策定するなどして,各企業は目標達成への活動に取り組んでいる。
富士通グループでは,温暖化防止対策として,お客様や社会全体の温室効果ガス排出量削減への貢献と,自らの事業活動からの排出量削減に取り組んでいる。
本稿では,このうち,自社の工場・事業所における取組みとして,第6期環境行動計画での削減目標,従来から継続しているインフラ設備を中心とした対策に加え,新たに開始した再生可能エネルギーの導入,生産プロセスにおける省エネ技術開発などについて紹介する。

角野 夕一, 石川 鉄二, 川口 清二, 藤井 正隆

今回,新たに低温ではんだ付けが可能な錫(すず)(Sn)-ビスマス(Bi)共晶はんだ合金にアンチモン(Sb)を0.5 mass%添加することにより,高ひずみ速度域での延性および落下衝撃に対する破断寿命の向上に成功した。本はんだ合金は,Sn-Sb化合物が固相から分散析出し,凝固組織を微細化する性質を持っており,Sn-Bi共晶はんだの大きな欠点であったぜい弱な性質を大幅に改善できる。具体的には,延性がSn-Bi共晶はんだの4倍,繰返し落下寿命は4倍に向上する。衝撃的な負荷に対する耐性を改善できたことにより,携帯電話やノートPCなどのモバイル機器への適用拡大が期待できる。また,本はんだ合金は融点が低いため,現行の鉛フリー錫(Sn)-銀(Ag)-銅(Cu)はんだに比べて45℃低い温度(180℃)ではんだ付けすることが可能となり,リフローはんだ付け炉に使用する消費エネルギーを約30%削減するなど,環境負荷低減にもつながる。
本稿では,開発したSn-Bi-Sbはんだ合金の基礎特性に関して研究成果を紹介する。

作山 誠樹, 赤松 俊也, 岡本 圭史郎

世界的に環境対策が注目される中,富士通グループでは,ICT製品やソリューションを活用してお客様の企業や社会の環境負荷を低減することを目的に,社内で環境リファレンスモデルを構築している。この活動は,グループ内の4拠点を代表的なモデル拠点として選定し,実践の場と主な施策について“Green Reference for Tomorrow”をキーコンセプトに取り組んだ。4拠点の活動は,“Green Reference for R&D”を掲げる川崎工場では,先端グリーンテクノロジとソリューションの創造の実践,“Green Reference for Office”の富士通ソリューションスクエアでは,先端グリーンオフィスとグリーンワークスタイルの変革への取組み,“Green Reference for Factory”の富士通アイソテックでは,サステナブルなものづくりを目指して様々な施策の実行,“Green Reference for Data Center”の館林システムセンターでは,世界トップレベルの環境配慮型グリーンデータセンターとして導入した様々な施策の運用ノウハウの蓄積を,それぞれ進めている。
本稿では,富士通グループが取り組んだ環境リファレンスモデル構築の背景,代表的な施策,今後のノウハウの蓄積について紹介する。

小沢 哲三, 川口 清二, 西島 拓二, 石川 鉄二, 久川 哲也, 仲尾 由雄

サプライチェーンを通じた環境負荷低減

企業における環境への取組みは,持続可能な社会の実現だけでなく,企業自身が生き残るために必要不可欠なものである。例えば,欧州のRoHS指令やREACH規則といった製品中の化学物質にかかわる規制など,世界の環境関連法規制の動向を注視しながらビジネスを進めることがリスクマネジメント強化につながっていく。さらに近年では法規制遵守にとどまらず,植林や生態系保護などの社会貢献的な活動に率先して取り組むことが,企業価値向上に不可欠となってきている。
富士通グループでは,環境への取組みを経営の最重要課題の一つととらえ,長年にわたり環境活動に取り組んでいる。調達部門では2001年度よりグリーン調達活動を実施している。2009年度までは,法規制遵守などのリスクマネジメントに重点を置いていたが,2010年度からは社会貢献的なテーマとして,新たに「CO2排出抑制/削減の取組み」と「生物多様性保全への取組み」の二つを加え,お取引先とともに活動を開始した。
本稿では,富士通グループにおけるグリーン調達活動に新たに加わった,これら二つの活動について,概要と取組み状況について述べる。

若杉 敏, 並木 崇久, 大沼 英子

グリーン物流は,環境にやさしい物流,環境負荷の少ない物流のことであるが,物流分野の地球温暖化対策として多くの企業が積極的に取り組んでいる。とくに2006年4月には「エネルギーの使用の合理化に関する法律」の改正(通称:改正省エネ法)が施行され,輸送事業者だけでなく荷主事業者へも物流における省エネ対策への取組みが強く要求されたため,各荷主事業者のグリーン物流活動が加速している。富士通においてもサプライチェーン全体にわたる物流に伴う環境負荷の削減活動を展開しており,様々な施策に取り組んでいる。
本稿では,富士通がグリーン物流の取組みとして注力している「モーダルシフトの拡大」「積載効率向上による車両台数削減」などの具体的な取組みについて,事例を交えながら紹介する。

丹羽 和彦

生物多様性の保全

私たちの暮らしはその多くが生物多様性を基盤とした生態系の恩恵によって成り立っている。従来までの化石燃料依存,資源の大量消費で支えられてきた社会は限界を迎え,生物多様性を持続可能な方法で活用していくことが豊かな社会を実現するかぎと言える。
2010年10月,生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が名古屋で開催され,生物多様性にかかわる企業の責任と具体的活動の重要性が改めて確認された。富士通グループでは,2008年に策定した中期環境ビジョン“Green Policy 2020”の目標の一つに「生物多様性の保全」を掲げ,「生物多様性保全へのICTの活用」「生物多様性の社会への普及に貢献」「グローバル規模での展開」の三つの重点テーマを指針に定めて,活動を推進している。
本稿では,富士通グループの生物多様性への取組みについて,ICTを活用した取組みと生物多様性評価の事例を中心に紹介する。

川口 努, 前沢 夕夏, 畠山 義彦, 小野 貴之

生物多様性は人間の生活に密接に関係しており,日々の生活は生物多様性の恵みによって支えられている。生物多様性の低下は生態系に由来する人間の利益となる機能(生態系サービス)の低下を引き起こすことになるため,生き物の多様性に富む河川敷や森林の保全が課題となっている。現状では外来種の侵食や人工林の放置による生物多様性低下が各地で生じており,その対策として,迅速に植生を把握する手法の開発が望まれている。従来の踏査による植生調査は,多大なコストと工数が必要であり,またリモートセンシングによる調査においても,樹種の判別が困難であった。このような状況の中,近年,詳細なデータが取得可能なハイパースペクトルセンサが開発され,様々な分野で利用され始め,環境分野でも,緑地,森林などの大まかな分類が可能になってきた。しかし,常緑針葉樹のスギとヒノキについてはスペクトルが類似しているため,スペクトルデータからでは判別が困難であると考えられていた。本稿では,著者らが新たに開発したスペクトル解析技術を用いて両者の判別を可能にした結果を報告する。

長沼 靖雄, 胡 勝治


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