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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2011-7月号 (VOL.62, NO.4)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2011-7

特集:「LTE」

本特集では,ヒューマンセントリックへの取組み,LTEネットワークインフラシステム,Expressカード型端末やそれらを実現するデバイス技術,また,実際に基地局を設置する際の無線エンジニアリング技術やフィールドトライアル,さらに性能向上を目指した取組みとして,SON(Self-Organizing Network),干渉制御技術のICIC(Inter-Cell Interference Coordination)などを紹介いたします。


特命顧問
長富 紘
特命顧問 長富 紘 写真

LTE特集に寄せて(PDF)

富士通は最先端のテクノロジをベースに,モバイルネットワークの高度化を目指して,さらなる技術の発展に取り組み,次世代のモバイルシステムの開発やサービスの充実に継続的に貢献してまいります。

特集:LTE 目次〕

ヒューマンセントリックへの取組み

  • 広帯域無線アクセス技術が切り拓く
    ヒューマンセントリックICT社会

LTEネットワークインフラシステム

  • 次世代モバイルネットワークの概要
  • LTE向けコアネットワーク(EPC)装置
  • NTTドコモ様向けLTE無線基地局装置
  • 屋外型LTE無線基地局装置(eNodeB)
  • LTE/W-CDMA共用高効率電力増幅器
  • 高効率電力増幅用GaNデバイス
  • モバイルネットワーク管理システム

LTEモバイル端末

  • LTE向けベースバンドLSIとExpress Card端末開発
    への取組み
  • SAWフィルタ不要のLTE/W-CDMA/GSMセルラー
    標準対応トランシーバLSI

フィールドトライアル

  • 無線エンジニアリング技術
  • LTE移動通信システムのフィールドトライアル

性能向上を目指した取組み

  • 無線ネットワークの最適化技術:SON
  • セル間干渉制御(ICIC)技術

標準化への取組み

  • 次世代モバイルネットワークの標準化動向

特集:LTE


ヒューマンセントリックへの取組み

富士通は,「ICTの利活用によって人がより豊かに安心して暮らせる社会(Human Centric Intelligent Society)を築くこと」を新たなビジョンとして提唱している。
本稿では,まずヒューマンセントリックICT社会の実現に向けてネットワーキング機能が持つべき特性として,「利用の制約の緩和」「サクサク感の提供」「煩わしい手作業の省略」がキーになることを示す。とくに,サクサク感の核となる広帯域無線アクセス方式としてWLAN,Mobile-WiMAX,LTEを取り上げ,それらの特徴を整理する。つぎに,情報流通量の増加を念頭に三つのアクセス方式について考察し,LTEが有望なアクセスリンクを提供する方式であることを論じる。ネットワーキング機能の更なるヒューマンセントリック化には,利用者や無線資源の状況を理解した上で,利用者の要求とそれを実行するタイミングを制御する仕組みが必要になる。最後に,その試みとして,利用者の位置によって変化する無線資源の状況を反映した無線リンク仮想化制御の考え方と期待できる効果を示す。

関 宏之, 中津川 恵一

LTEネットワークインフラシステム

世界の携帯電話ユーザは45億人を突破し,ますます増加を続けている。とくにここ数年はインターネットアクセスや音楽のダウンロード,動画通信などのモバイルデータ通信トラフィックが年率3倍近い伸びを示している。スマートフォンの人気に伴って今後2020年までの10年間で200倍に激増するとも予測されているデータトラフィックを吸収し,新たなサービスのプラットフォームとして注目されているのが,第3.9世代(3.9G)とも呼ばれるLTE(Long Term Evolution)である。
本稿では,2010年12月に国内でも商用サービスが開始された,この高速無線アクセスを実現するLTEについて,その特徴と主要技術,ネットワーク構成について概要をまとめる。

加藤 次雄

LTE/EPC(Long Term Evolution/Evolved Packet Core)は第3世代携帯電話網の次を担うシステムとして世界中の移動通信オペレータが採用の方針を打ち出し,一部のオペレータでは既にサービスが開始されている最新のテクノロジである。LTE/EPCは3GPPで標準化されており,無線規格のLTEの最大通信速度は下り325.1 Mbps,上り86.4 Mbpsと規定されている。したがって,このトラフィックを多数収容するゲートウェイ装置にも高いスループット能力が求められている。今回,富士通はLTE向けのコアネットワーク(EPC)におけるゲートウェイ装置ESPGWを,グローバルベンダであるノキアシーメンスネットワークス社との協業により開発し,NTTドコモ様に納入した。本製品は,Advanced TCAベースのハードウェアによる高可用性,信頼性,スケーラビリティ,高スループット,大容量ベアラ数,3GPP標準に準拠した多様な機能サポートを特徴としている。とくにゲートウェイ装置として最も重要とされるスループットは,LTEの高い無線転送能力を生かすことができる極めて高い能力を誇っており,大規模オペレータに求められる高い性能要件に応えることができる。

林 俊樹

富士通は,NTTドコモ様向けLTE無線基地局装置(eNodeB)の開発を行った。
LTE(Long Term Evolution)は3.9世代移動通信システムに位置付けられ,ユーザあたり100 Mbps以上の伝送スループットを目指して標準化が行われた方式である。
開発に当たっては,小型化と保守性の向上,既存設備の有効活用,将来的な機能エンハンスへの柔軟な対応を開発目標に掲げて設計を行い,機能部の最適化と集約化による装置の大幅な小型化,第3世代移動通信システムとの共用構成機能,ソフトウェア変更による機能エンハンスを実現するeNodeBを完成した。
本稿では,eNodeBの概要,ハードウェア,ソフトウェア技術の特徴について紹介する。

渡辺 裕明, 平沢 哲, 鈴木 恭助, 狩野 竜一

富士通は,3GPP標準仕様に基づき,屋外型LTE無線基地局装置(eNodeB)を開発した。本装置は,高効率・高集積化デバイス,柔軟なソフトウェア構成,およびシンプルなアーキテクチャの採用などにより,小型,軽量,低消費電力化を実現している。これによって,移動通信ネットワークのトラフィック増大に向けた効率的な配備が可能であり,お客様の設備投資,運用コスト低減に貢献できる。また,環境にも配慮したプロダクトとなっている。
本稿では,屋外型LTE無線基地局装置について,その概要や特長を紹介する。

渡辺 君夫, 町田 守

次世代移動通信システムとしてLTE(Long Term Evolution)システムが注目されており,高速大容量化が進められている中,基地局に関しては,環境負荷低減や設置性の向上,運用経費の低減のため,小型・低消費電力が求められている。また従来の3Gサービスから,同一のアンテナを用いたW-CDMA/LTEのオーバレイサービスを実現し,導入コストを抑えることが求められている。移動通信システムの無線基地局は,無線信号処理部と無線部(高周波)から構成されており,従来はビル内に設置されていた。近年,この無線信号処理部と無線部を分離して光ファイバで接続し,無線部を屋外筐体として構成するものが増加している。光張出し無線装置と言われるこのような無線部は,一般的にはRRH(Remote Radio Head),NTTドコモ様ではRRE(Remote Radio Equipment)と呼ばれている。富士通では,W-CDMAとLTEの共用を可能とするRREをNTTドコモ様向けに開発した。開発においては,小型・低消費電力を実現するために,デジタル歪み補償を適用するとともに,パワーアンプとしてGaNデバイスによるドハティ構成を採用しパワーアンプの高効率化を図った。本稿では,その原理・方式特性,装置構成などについて述べる。

熊谷 佳晶, 舟生 康人, 前田 宏明

富士通は,LTE(Long Term Evolution)基地局用小型送信増幅器を実現するための高効率窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)の開発を行っている。GaN-HEMTは,その高い破壊耐圧特性により,高効率高出力増幅器として注目を集めている。高い利得と高電力効率の増幅器を実現でき,基地局の消費電力低減と小型化を実現できるためである。
本稿では,高電圧動作可能なGaN-HEMTを用いた基地局向け高出力増幅器の開発状況を述べる。まずGaNの物性的優位点を示し,つぎに増幅器としての利点を述べる。さらにGaN-HEMTの開発当初の課題を列挙し,その解決状況を示す。増幅器としての高効率化データを示し,最後に今後のGaN-HEMTの展開について紹介する。

吉川 俊英, 常信 和清, 金村 雅仁

富士通は,将来的に各種通信ネットワークを統合管理するシステムの開発に取り組んでいる。本稿では,その中の一つの通信ネットワークであるモバイルネットワークを管理するシステムについて,特徴をベースに本開発の現状と将来像を紹介する。
まず最初にネットワーク管理システムの一般論を概説した後,モバイルネットワークを管理することの特徴やそれを実現するための課題を明示し,それら課題を解決するための各種方策の主要部分を説明する。つぎにそれら方策を実現するためのシステム構成とソフトウェア構成をアーキテクチャの考え方をベースに説明する。そして,今後の管理システムにおいて特徴的かつ他社差異化機能となるSON機能の取込み展開を紹介し,最後に本管理システムを統合管理システムに展開していく構想を説明する。

河村 一利, 村田 政雄, 樋口 晃治, 黒河内 文保

LTEモバイル端末

富士通は,次世代の高速通信方式であるLTE(Long Term Evolution)に対応するExpress Card端末を開発した。
本端末はNTTドコモ様の提供するLTEサービス「Xi」(クロッシィ)に供される。最大で約75 Mbpsのダウンロード速度を実現しており,従来の第3世代移動端末性能と比較して10倍以上の通信速度を提供する。飛躍的な通信性能向上をカード状の端末として実現するために,端末の消費電流増加や内部温度上昇への対応,複数のアンテナや複数のLSIの搭載といった課題を克服した。本端末に搭載したLTEベースバンドLSIは,今後開発される様々な機種に対してもLTE通信の基本機能を提供するLTE通信プラットフォームとして開発したものである。
本稿では,LTEベースバンドLSIの特徴とExpress Card端末の主要開発技術と今後の方向性について紹介する。

丸尾 延秀, 五月女 誠

4G移動体通信向けのマルチモード,マルチバンド対応シングルチップCMOSトランシーバLSIを開発した。本LSIは,LTE(FDD/TDD両方)に加え,同じ内部回路で3GのW-CDMAおよび2GのGSM/EGPRSの動作モードにも対応する。帯域としては,FDDバンド1~21,TDDバンド33~40,W-CDMAバンドI~VIとVIII~XI,EGPRSバンドCell850,EGSM,DCS,PCSをサポートする。受信部にはプライマリ入力ポート九つ,ダイバシティ入力ポート五つを備え,外付けLNAと段間SAWフィルタが不要である。オートゲインコントロールは自律的に動作する。送信部には出力ポートを八つ備え,こちらも段間SAWフィルタが不要である。内蔵した送信プリディストーション回路により,オフセット変調の影響を低減できる。ARM7コアをシーケンス制御に用い,APIを提供することにより開発期間の短縮に貢献できる。業界標準の二つのデジタルインタフェースは,2G/3GベースバンドだけでなくLTEベースバンドとの互換性も持っている。本LSIには90 nm CMOS技術を用いた。

Patrick Rakers, Daniel B. Schwartz, Mahib Rahman, James Mittel

フィールドトライアル

移動通信システムの無線ネットワークを構築するには,設備投資の効果を最大限に引き出すための無線エンジニアリング技術が必要である。この技術を高めることで,システムの増減に柔軟に対応することができ,無線ネットワークの最適化を行うことができる。無線エンジニアリング技術は,無線ネットワーク設計,チューニングや運用・保守などの作業に適用される。
本稿では,LTEシステムを考慮した設計手法について解説し,フィールドトライアルにおける性能確認結果の一部を紹介する。

小野 光洋, 俵 覚, 牧野 諭志

LTE(Long Term Evolution)移動通信システムは,スマートユビキタス社会の構築を支えるワイヤレスブロードバンドインフラである。富士通は,クラウド時代に向けたフィールドプルーブンなプラットフォームとなるLTEシステムの早期確立を目指し,フィールドトライアルによる検証を行った。本フィールドトライアルでは,1.7 GHz帯の5 MHz帯域を使用し,グローバル市場向けEnd to EndのLTEシステムを構築し,エリア設計の妥当性検証,性能評価を実施した。スループット性能の検証では,最大下り回線34.6 Mbps,上り回線9.5 Mbpsのスループット性能を達成し,フィールドにおいても十分高い性能を発揮できるシステムであることを確認した。また,従来固定のIPネットワークで使用されるアプリケーションをLTEシステム上で動作確認し,クラウド時代に向けた動作検証を行った。
本稿では,フィールドトライアルの実験成果について述べる。

鬼柳 広幸, 箕輪 守彦

性能向上を目指した取組み

次世代の移動通信ネットワークでは,経済的なネットワークサービスを実現するために,SON(Self-Organizing Network)と呼ばれるネットワーク制御・管理法が注目されている。SONは,構築するネットワークの設計業務,設置業務,および最適化・運用監視といった運用業務に関して,従来人手で行っていた作業をできるだけネットワーク自律で行うことによりTCO(Total Cost of Ownership)の削減を実現する。SONの導入に関しては,既存ネットワークへの影響を最小限にしつつSON機能を適用していくこと,無線ネットワークにとどまらずネットワーク全体を最適化していくこと,状況に応じてSON自体を高度化させていくことといった点が重要である。
本稿では,SONの概要を示すとともに,そのユースケースとしての自動負荷分散,無線カバレッジ最適化といった無線ネットワークの最適化技術,および最適化を実現するシステムアーキテクチャについて述べる。

武智 竜一, 小川 浩二, 奥田 將人

LTEシステムは,下りリンクにおいて最大150 Mbpsの高速伝送が可能となるが,隣接するセルにおいて同一の周波数を用いるため,セル境界においてセル間の信号が互いに干渉することによって十分な伝送速度(スループット)が得られない場合がある。このようなセル間の干渉を制御してセル境界におけるスループットの向上を図る技術が,セル間干渉制御(ICIC:Inter-Cell Interference Coordination)技術である。LTEシステムにおいては,ICIC向けに基地局間で制御情報を交換するための新しいインタフェースが規定されているが,その具体的な使用方法や制御アルゴリズムは規定されておらず,基地局装置ベンダが独自にアルゴリズムを開発する必要がある。
本稿では,LTEシステムにおけるICIC技術の概要について述べるとともに,著者らが独自で開発したICICアルゴリズムとその効果について紹介する。

木村 大, 関 宏之

標準化への取組み

日欧米中韓の標準化団体が1998年に開始した3GPP(3rd Generation Partnership Project)は2008年12月にRelease 8と呼ばれる仕様書セットを公開した。Release 8ではLTE(Long Term Evolution)が仕様化され,無線ネットワークとコアネットワークの新しいアーキテクチャ(EPS:Evolved Packet System)も公開された。LTEはパケット通信のみをサポートし,より柔軟な周波数利用を実現することで,より高速・広帯域通信を可能としている。しかし近年のスマートフォンなどの新しい端末の増加によりネットワークが処理するデータ量が大きく増加し,システム容量の更なる拡大が必要となってきた。これら新しい課題に対応するため,HetNetなどの標準化活動が3GPPを中心として開始されている。本稿では,次世代の移動通信システムに対するこれらの標準化動向と,富士通の標準活動への貢献を説明する。

野田 昭繁


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