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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2011-5月号 (VOL.62, NO.3)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2011-5

特集:「クラウド・コンピューティング」

本特集号では,富士通のクラウド・コンピューティングにおける新ビジネス領域での実践事例,およびクラウドを支えるテクノロジー・サービスの取組みを紹介いたします。


取締役執行役員副社長
石田 一雄
取締役執行役員副社長 石田 一雄 写真

クラウド・コンピューティング特集に寄せて(PDF)

クラウド・コンピューティングがICT戦略の重要な選択肢の一つとして位置付けられ,適材適所の考え方による具体的な利活用が浸透しています。富士通グループのクラウド・コンピューティグは,長年培ってきたICT技術を結集し,各種のサービスノウハウと人材を強みとして,社会や企業活動に継続的に貢献してまいります。

特集:クラウド・コンピューティング 目次〕

総括

  • 富士通のクラウド・コンピューティングへの取組み

新ビジネス領域での実践事例

  • フードチェーンを高度化する食・農クラウドのあり方
  • どうぶつ医療クラウド
  • 映像処理とプラットフォームを最適化した
    メディアクラウドサービス
  • 現場のモノとクラウドをつなぐM2Mの実践
  • エンジニアリングクラウド開発環境
  • PHRを活用したサービスへの取組み
  • 位置情報ベースサービス基盤

クラウドを支えるテクノロジー・サービス

  • クラウドサービス基盤技術
  • Windows Azure Platformを活用したPaaSサービス:FGCP/A5
  • プライベートクラウドを支えるミドルウェア
  • 富士通クラウドサービスの情報セキュリティ対策
  • INTARFRMの更なる浸透と貢献プラン
  • インテリジェントソサエティを支えるネットワーク技術:
    WisReed
  • 大量データ収集分析基盤
  • クラウド・コンピューティングによるユビキタス端末の変化

特集:クラウド・コンピューティング


総括

クラウド・コンピューティング(以下,クラウド)は,企業内でのプライベートクラウドや業界や団体・個人などでのパブリッククラウド,新規ビジネスやイノベーションでのクラウド活用など,様々な領域で具体的に利用されるようになった。富士通は,クラウドを「お客様と新しい事業やサービスを創造する価値創造型のICT基盤」と位置付け,テクノロジ・プロダクト・ソリューションを総合的なサービスとしてビジネスを進化・発展させている。これまでICTの利活用が進んでいなかった社会インフラ領域にもクラウドを活用することによって,より豊かで安全で環境に優しい社会「ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティ」の実現を目指し,クラウドビジネスを積極的に展開している。
本稿では,クラウドの活用領域,富士通のクラウドの特長,社会インフラにおけるクラウド活用,今後の方向性について紹介する。

宮沢 健太

新ビジネス領域での実践事例

日本の農業・食料関連産業(農・漁業,関連する製造業や流通業,飲食店)は,フードチェーンを通じて一体化しており,国内生産額99.2兆円規模の大きな市場を形成している。富士通が2008年より行っている農業生産をICTシステムで支援する実証実験においても,農業は関連産業と密接な関係を持っており,フードチェーン全体への影響を考慮した支援が必要であることが分かった。
本稿では農業を含むフードチェーン全体にかかわる課題のうち,「農産物の安定供給」「農業経営の安定」「フードチェーンの効率化」を取り上げ,クラウドを活用した課題解決への取組みを述べる。この食・農クラウドの実現により,農業生産者やフードチェーン上のステークホルダがメリットを受ける可能性を示し,農業・食料関連産業全体への貢献を図っていく。

佐竹 雄一, 山崎 富弘

クラウド・コンピューティングの恩恵を享受するためには,クラウドそのものに知識や知恵を内包し,電気や水道のごとくサービスとして提供する「社会的な知のインフラ」を築き上げることが理想的な考え方である。富士通は,このような社会インフラの構築を目指す取組みの一つとして,どうぶつ(伴侶動物)医療分野でのクラウド適用を進めている。どうぶつ医療分野の課題として,診療情報が共有しやすい形で記録されていないこと,また,情報を引き出し,必要な関係者に渡す仕組みが構築されていない点が挙げられる。この課題に対し,著者らは情報を一元的に蓄積するとともに,必要に応じ情報を共有・利活用可能なパブリッククラウド上でのデータ利活用アプローチで解決する実証実験を行っている。本実証実験は,社会インフラとしてのクラウドが提供する社会貢献の形と,社会インフラとしてのクラウドだからこそ実現可能な情報共有モデルを導き出す。本稿では,それらを実現するための取組みと考察に関して紹介する。

南 尚人, 今林 徹

プレスリリースどうぶつ医療クラウドを用いたTRVA様との実証実験

近年,YouTubeやNetflixを代表とする動画共有サイト,インターネット放送,オンデマンド型動画視聴サービスなどの映像サービスの普及に伴い,インターネット上における映像トラフィックが著しく増加している。また,スマートフォンやタブレット端末などの急速な普及やGoogle TV,Apple TVなどによる放送とインターネットとの融合と相まってコンシューマによる映像利用は,より一層加速するものと考えられる。このような状況の中,企業においても映像を活用したワークスタイルへのニーズが高まっている。富士通は,国内では放送局の80%,海外では北米3大放送局(ABC/CBS/NBC)で採用されているIPコーデックやIPネットワーク,ICTシステムなどの分野において多くの実績とノウハウを持っており,これらで培った技術を展開してお客様のビジネスを支えていく。
本稿では,トラステッドなクラウドサービスを軸にメディア処理をPaaS(Platform as a Service)環境で提供する「メディアクラウドサービス」について述べる。

太田 健一, 久保田 博昭, 後藤 知範

M2M(Machine to Machine)とは,主として衛星や携帯電話などの広域無線ネットワークを利用して,多数の機械を通信により接続させ,遠隔での監視や制御を可能にする概念であり,これまでも様々な領域で利用されてきた。しかし,今,M2Mは劇的な変革を迎えようとしている。ここ最近の通信技術やサービスの改善やクラウドの登場によって,より多くの情報をより長期に蓄積し,容易に分析できるようになったためである。現場の機械とクラウドをつなげ,情報を循環させ価値を拡大していくことで,製品や顧客サービスの向上,さらには情報そのものを活用するなど,新たなビジネスチャンスが生まれてくる。一方,クラウド上での適用を前提とすることで,M2Mに対して,今までよりも多種多様な機械への接続,およびネットワークを統合して情報収集する環境構築などの要求が出てきている。本稿では,この新しい要求・課題について解説するとともに,富士通の課題解決に向けた取組みを,事例を交えて紹介する。

大澤 達蔵

商品開発において,ビジネス環境変化とスピードへの対応が求められている。富士通ではテクニカルコンピューティングを活用した開発環境FTCP(Flexible Technical Computing Platform)をクラウド上に構築し,エンジニアリングクラウドとしてお客様や社内の商品開発部門に提供している。
本稿では,携帯電話端末の適用例をもとにFTCPの特徴,富士通のエンジニアリングクラウドサービスの概要とメリット,エンジニアリングクラウド実現のための重要技術である大規模シミュレーション結果の高速表示技術について紹介する。エンジニアリングクラウド活用により富士通の社内実践で蓄積されたノウハウに基づき構築されたFTCPとお客様の既存開発環境との連携が可能となり,商品開発期間の短縮と開発品質向上を期待できる。

斎藤 精一, 伊藤 明, 松本 弘, 大田 栄二

近年,高齢化社会に突入し,平均寿命も延びており,その長い人生の中で健康な生活を送りたいというのは皆の願いである。一方,生活習慣病の受診率は,40歳代から大幅に上昇し,高齢者医療制度の拠出金とともに,国民全体の医療費を圧迫している。その対策として,個人の健康情報であるPHR(Personal Health Record)を活用した,予防医療が着目されている。しかし,PHRは,診断情報は医療機関,健診情報は健診機関や保険者(会社の健康保険組合など),運動情報はフィットネスクラブ,体重などの情報は家庭という具合に,様々な場所に散在している。したがって,これらの情報を「いつでも,どこでも,どの端末でも」利用できることが必要であり,クラウド環境を利用したPHR関連サービスの実現が期待される。富士通では,PHRを活用する健康情報基盤を,富士通クラウド上に構築し,従業員を対象とした実証プロジェクトを実施している。本稿では,その実証プロジェクトの概要と,富士通のPHR活用サービスの取組みについて述べる。

梅川 竜一, 石塚 博司, 大嶋 徹

富士通は,現実社会の様々な分野で発生する大量情報を収集し,ICTを活用した分析を行うことで,新たな価値やサービスの創出を実践している。その中で著者らは,GPSから取得できる位置情報に着目し,交通渋滞に代表されるような,位置にひも付く課題を幅広く解決するために,クラウド・コンピューティング環境上に位置情報ベースサービス基盤を構築した。現在,第一弾として,プローブ交通情報生成機能,POI検索機能,経路探索機能を構築し,それらを利用したサービスの提供を進めている。今後,順次後続の機能を提供していく予定であるが,その中には,位置情報ベースサービス基盤で管理する大量収集情報の活用機能も含まれる。利用形態としては,業務サービスを利用する形態,アプリケーション基盤活用サービスを利用する形態,位置情報ベースサービス基盤内に利用者のシステムを構築し,アプリケーション基盤を利用する形態がある。今後は,様々な分野の情報を一層幅広く収集することで,提供するコンテンツ,サービス,機能の拡充や,さらなる付加価値の創出をねらっている。

玉井 恭平, 品川 明雄

プレスリリースSPATIOWL(スペーシオウル)プレスリリース

クラウドを支えるテクノロジー・サービス

クラウド・コンピューティングという新しいICTモデルの活用も,企業の新事業用インフラや第一次産業や医療・介護などの分野で,いよいよ本格的な展開フェーズを迎えつつある。このようなクラウドの拡大に向けて,富士通では高い利便性,そして安心して利用できる信頼性を高い次元で両立させることを目指し,データセンター向けのクラウド基盤技術をアーキテクチャレベルから見直し,設計・開発に取り組んできた。その成果を本格的なパブリックサービス「オンデマンド仮想システムサービス」として商品化し,2010年10月より商用サービスを提供している。さらに,このMade in FUJITSUの基盤技術を世界5箇国の拠点データセンターにも展開し,グローバルなクラウドサービス展開を進めている。
本稿では,富士通のクラウド基盤技術とそのグローバルなサービスの展開について紹介する。

木野 亨

富士通は,2010年7月に発表したマイクロソフト社との戦略的協業に基づき,FUJITSU Global Cloud Platform “FGCP/A5” Powered by Windows Azureの提供の準備を進めている。本サービスは,富士通の国内データセンターより提供する国内唯一のAzureサービスである。本サービスは,マイクロソフト社が現在パブリッククラウドサービスとして提供中のWindows Azureサービスと同等機能から提供を開始するが,すでに提供済の富士通クラウドサービスや既存の富士通ミドルウェア製品との連携に加え,お客様の声を積極的に取り入れ,富士通固有の上位付加価値サービスを強化し,富士通独自のクラウドサービスに成長させていく。
本稿では,FGCP/A5の位置付け,サービスメニュー,および先行適用事例について紹介する。

門間 仁

肥大化するICTコストの削減,ビジネス変化に追随するためのスピーディなシステム導入などの要求に対し,クラウド・コンピューティングが注目を浴びている。クラウド・コンピューティングには,サービス業者が汎用的なクラウドサービスを数多くのお客様に提供するパブリッククラウドと,お客様情報システム部門が社内・グループ会社に向けて,自社固有のクラウドサービスを提供するプライベートクラウドがある。両者は共存関係にあり,ガバナンス,セキュリティ,可用性,ネットワークなどの要件に応じて,使分けが行われる。富士通はパブリッククラウドサービスの提供に加え,プライベートクラウドを構築するためのミドルウェア製品を提供し,お客様の多様なニーズに応えている。
本稿では,プライベートクラウドによるICTコストの削減,スピーディなシステム導入の実現を支える,ミドルウェア製品の概要を紹介する。

仁藤 滋昭, 長倉 浩士, 櫻井 明彦

クラウド・コンピューティングは様々な活用の可能性とともに,新しい情報セキュリティの懸念も内包している。クラウドの利益を安全に享受するためには,従来一般的であった情報セキュリティ対策と,クラウド特有の問題に対する情報セキュリティ対策の双方を視野に入れて,セキュリティ対策を進める必要がある。富士通のクラウドサービスでは,このような懸念に応え,安心してクラウドを利用いただくために,富士通グループ内のセキュリティ統制体制の構築や先進的な情報セキュリティ技術の導入など,様々な対策を実施している。
本稿では,富士通のクラウドサービスにおけるセキュリティガバナンス,コンプライアンス対応,情報セキュリティ対策の基本理念と取組みについて紹介する。

奥原 雅之, 鈴木 拓也, 塩崎 哲夫, 服部 真

先行き不透明な社会情勢を背景に登場したクラウドというビジネス形態の変化に加え,スマートフォンをはじめとした可搬型携帯端末の急激な浸透によるアプリケーションそのもののコンシューマ分野への普及が進んでいる。このような時代背景を踏まえて,現在は中規模以上の企業ユーザを視野に開発を進めているINTARFRMを中核とした将来のコンシューマ分野への貢献プランを紹介する。このプランでは,利用者となるターゲットをソフトウェア開発が趣味の若者層に置き,そのターゲットに合わせたカスタマイズ版INTARFRMに,今後のワークスタイルの中心を担うであろうインターネットを利用したクラウド型開発センターを組み合わせた複合的サービスを提案する。また,プラン内容と併せ,従来SI分野の商慣習にはなかったサービス形態を付加することで,利用者メリットと提供者の差別化を両立する新しいビジネスモデルを提案する。

安楽岡 徹

富士通は,クラウドを活用した社会「インテリジェントソサエティ」の実現を通じて,地球温暖化に対する省エネ施策や,災害に対する安全性の向上など,社会規模での課題を解決することを目指している。実現のためには各種センサを密に配置し,エネルギー使用量や河川水位・構造物の劣化などを正確かつタイムリにセンシングし,クラウドへ集約する必要がある。しかし,膨大な量の設置が想定されるセンサをネットワーク化するインフラの構築・運用コストが課題であり,導入への足かせとなってきた。そこで富士通では,自律的にネットワークを形成し,センシングデータの収集を容易にする技術「WisReed(ウィズリード)」を開発した。
本稿では,WisReedを開発した背景,および技術の特徴を説明するとともに,スマートメータへの導入事例と,拡大が期待される適用分野について紹介する。

高橋 勇治, 川島 和也, 中谷 勇太, 市川 達也

社会構造の複雑化やボーダレス化により富士通が取り組むICTのビジネス環境もここ1,2年で様変わりしつつある。富士通では,人や様々なモノからの大量な情報(センシングデータ)をトラステッドなクラウド環境の上で収集し分析・解析するICT基盤の開発に取り組んでいる。従来とは桁違いのデータ量を場合によってはリアルタイムに処理するために,富士通単独での実現にこだわらず,必要に応じパートナとの連携も視野に入れてスピーディな環境提供に取り組んでいる。また技術的にも複合イベント処理(CEP)やHadoopを使った並列分散処理などの新しい技術で高速処理の実現を目指している。

小林 午郎, 藤田 和彦

一般的にクラウド・コンピューティングの利用が進むとクライアント端末に必要なコンピューティングパワーは少なくて済むようになる。それは設計の自由度を増すこととなり,利用用途に最適化されたユビキタス端末の登場が期待される。その一つの例がいわゆるPad型端末と呼ばれるもので,近年,様々なPad型端末が発売され,従来のパソコンでは考えられなかった利用シーンを生み出している。
富士通においても新しいユビキタス端末を発売する計画であり,クラウドを利用した新しい技術による付加価値を含めてヒューマンセントリックな社会に貢献していく。

瓜田 健司, 内島 誠


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