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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2010-9月号 (VOL.61, NO.5)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2010-9

特集:「地方分権の実現を支援する最新自治体ソリューション」

本特集号では,住民情報,財務会計,介護保険,電子調達など,地方公共団体の多岐にわたる業務において富士通グループが提供するITソリューションの一端や,システム全体最適化を支援する取組みなど,地方分権の実現を支援する富士通グループの最新自治体ソリューションを紹介いたします。


自治体ソリューション事業本部長
寺田 満明
自治体ソリューション事業本部長 寺田 満明 写真

地方分権の実現を支援する最新自治体ソリューション特集に寄せて(PDF)

厳しい地方財政,世界に類を見ないスピードで進展する少子高齢化,さらには一般行政職員の激減など,いま,地方公共団体は重い経営課題を課せられています。このような状況において,富士通グループは地方公共団体の皆様に信頼いただけるよう,その役割を担ってまいりたいと考えています。そして,多岐にわたる業務においてITソリューションをご提供させていただくとともに,法改正についても確実な対応をしてまいります。また,ご提供ソリューションをベースに共同利用,クラウドサービスにも積極的に取り組んでいます。さらにクラウドサービスならではの新たな分野でのソリューションも提供してまいります。富士通グループは,社会的責務を負う責任あるITベンダとして,地方公共団体の行政改革をITソリューションによってご支援することに存在意義があると考えており,今後も地方公共団体と住民の皆様のお役に立てるよう取り組んでまいります。

特集:地方分権の実現を支援する最新自治体ソリューション 目次〕

総括

  • 地方分権改革の実現に向けた富士通グループの取組み

基盤・インフラの最適運用に向けて

  • クラウド時代に向けた自治体向け共通基盤:
    新INTERCOMMUNITY21基盤
  • SuperCALS電子調達SaaSによる自治体クラウド化と
    業務改革
  • オープンパッケージによる大都市住民情報システム最適化
  • メインフレーム資産を活用したオープン化事例
  • 自治体システムの運用保守プロセススタイルの変革

最新ソリューションと事例

  • 特定保健指導支援システム
    —携帯電話を活用したメタボ予防指導—
  • 橋梁点検支援システム
    —安心して暮らせる生活基盤整備をサポート—
  • クラウドを見据えた新住民情報システム:MICJET MISALIO
  • 新地方公会計制度の概要と導入に向けた富士通の取組み
  • 介護保険システムへの富士通の取組み
  • 東京都様における公共交通利用促進
    および環境負荷低減に対する新たな取組み
  • 自治体ビジネス・フィールドワークによる
    現場起点の業務改革・改善
  • 自治体の地球温暖化対策支援
  • 地域農業活性化への三つの見える化を支えるICT

特集:地方分権の実現を支援する最新自治体ソリューション


総括

地方自治体の財政状況が悪化してから,相当な時間が経過している。この間,自治体は行財政改革として,職員数の削減をはじめ,歳出削減のために様々な施策に取り組んできた。しかし,本格的な人口減少時代に突入し,新興国との産業競争が激化する日本では,自治体は歳入・歳出の両面で,将来に向け一層厳しい経営環境が待ち構えていることが明らかである。
本稿では,国から自治体への地方分権改革が,地域主権などの動きも含めて今後本格化する中,自治体に対して飛躍的な効率性と有効性の向上が求められている背景を明らかにする。また,地方分権改革の実現に向けて,本特集における富士通グループの取組み事例を俯瞰(ふかん)し,持続可能で活力ある自治体の形成のために,経営の高度化・業務の効率化の視点から富士通グループが貢献できるポイントを論ずる。

佐々木 央

基盤・インフラの最適運用に向けて

現在,自治体においても長引く不況の結果,システムのTCO(Total Cost of Ownership)削減が急務となっている。このような背景から,クラウドコンピューティングが話題となり,コンピュータシステムは,所有から利用へとパラダイムシフトが始まっている。富士通では,クラウドコンピューティングの効果,期待,課題を分析し,自治体向けアプリケーションフレームワークである「INTERCOMMUNITY21基盤」をクラウドコンピューティングに適合するよう強化した。
本稿では,クラウドコンピューティング時代に向けたフレームワークの強化ポイントならびに,その取組みを紹介する。

森永 景介

地方自治体では,昨今の厳しい財政状況下,限られた事業予算の中で最大の効果を導くための施策を着実に推進し,安全・安心な公共サービスを提供することが要求されている。しかし,公共工事の執行をめぐり,談合問題や贈収賄事件などが頻発し社会的な問題となっている。こうした調達業務上の問題解決に応えるべく,富士通では,「SuperCALS電子調達」パッケージをいち早く立ち上げ,現在都道府県で17団体,市町村で200団体以上もの地方公共団体に採用いただいている。また2009年4月には,ICTの時流である「所有から利用へ」に対応すべく,電子入札のクラウドサービスとして「SuperCALS電子調達SaaS」の提供を開始している。
本稿では,まず初めに電子入札システムの社会的背景を述べ,「SuperCALS電子調達SaaS」による自治体クラウド化を可能とするサービス機能について説明する。また,県と市町村の共同窓口設置による申請受付と資格審査の一元化や業種区分に依らない入札参加のワンストップ化など業務改革にまで踏み込んだ取組み事例について紹介する。

礒邊 浩宣, 杉澤 博見

厳しい財政状況,国による業務標準化の流れの中で,大規模自治体の住民情報システムにおいても,業務をパッケージシステムに極力合わせた業務標準化への取組みが主流となってきている。富士通では,2006年より大都市向けのパッケージ製品の開発を進めており,その中で重点的に研究開発を重ねてきたことは,大規模トランザクションへの対応である。とくにメインフレームユーザからの移行が中心になることから,バッチ性能維持と信頼性の確保を前提に,プラットフォーム,開発方式,機能要件の検討を重ね,製品提供に至っている。
本稿では,人口30万人以上の大都市におけるオープンパッケージによるシステム最適化について,富士通の取組みと適用事例を紹介する。

遠藤 光憲

自治体では,行財政改革の推進を目的に業務・事務のBPRを含む全体最適化を進めている。これに伴い,現行業務を支えてきた基幹システムも再構築が必要となり,メインフレームからのオープン化が急速に進展している。オープン化によるシステム再構築では,初期導入費の低下など一定の効果が得られているが,一方で多数サーバの運用管理の負担増大,システムライフサイクルの短命化に伴う長期視点でのTCOの上昇など,新たな問題も顕在化しつつある。
本稿では,これらの問題に対する総合的なソリューションとして,富士通が提供する「PRIMEQUEST(プライムクエスト)」とこの上で動作する「OSⅣ/XSP動作機構」について,その特長と自治体における適用事例・効果について紹介する。

斉藤 友嗣, 木村 剛美, 藤川 和雅, 斎藤 信二

近年,全国自治体の状況は,国内財政状況悪化の影響で継続的な税収の減少傾向にある。これに伴い,以下に記載する課題と解決に向けた改善施策が,政令指定都市でも実施途中にあり,ベンダとしても変革に向けたチャレンジが続いている。まず,専門スキル保持職員の減少や度重なる制度改正による業務の複雑化に伴い,お客様だけでのシステム運用と維持管理が限界にきており,安定運用を目指す。つぎに,コスト削減要求の一方で,コストアップの要因となり得るサービスレベルと品質向上を追求する。最後に膨大な個別開発資産を持つお客様のホスト集中型のシステム形態から,脱ホストへの移行を行う。
本稿では,顧客先常駐型で遂行している業務運用保守ビジネス(オンサイト型アウトソーシング)の中で,著者らが直面した課題への取組みと,現状の属人化ビジネスからの脱却を目指し,ITIL(Information Technology Infrastructure Library)の概念を利用して取り組んだ改善施策を論述する。

宮舟 輝渡, 村田 恭一

最新ソリューションと事例

政府は2008年度から生活習慣病罹(り)患率の改善を目指し,特定健診・特定保健指導制度を開始し,地方公共団体や企業健保組合といった医療保険者に被保険者への意識改善,生活習慣指導を義務化した。特定健診の結果のレベルにより「情報提供」「動機付け支援」「積極的支援」に分け,「積極的支援」では6箇月間で180ポイントの生活習慣指導が義務付けられている。指導対象者の中でも働き盛りの40代~60代では,生活習慣改善の重要性を理解できていても実際に食生活や運動での改善を行うのは容易ではない。また,限りあるリソース内で,効率良く保健指導を行うことが必要とされている。
このような状況の中,富士通は医療保険者の指導面の支援を行うべく,健康アシストシステム「がんばれ!元気くん」を開発し,2010年6月にSaaS型サービスを開始することとなった。社内でのモニタ検証を約1年間行い,その結果,明らかな数値的効果が確認できた。
本稿では,健康アシストシステム「がんばれ!元気くん」の概要とモニタ検証結果を紹介する。

野口 直昭

橋梁の耐用年数は約50年と言われ,高度成長期に建造された多くの橋梁の老朽化が進み,2010年代には橋梁の高齢化時代が訪れる。しかし,自治体の予算不足,人員不足の現状により,88%の橋梁が未点検のまま残されている。また,国から財政補助を受けるためには,早期の「長寿命化修繕計画」の策定が必須となっている。このような課題を早期に解決するために,富士通では,自治体職員がハイビジョンカメラで撮影した橋梁の映像を,建設コンサルタントが遠隔診断できるソリューションをクラウド技術により提供する。このソリューションは富士通の映像証跡技術や視認性向上技術を活用することで,遠隔での橋梁の診断を実現可能とした。
本稿では,自治体の限られた予算と人員の中で,どのように橋梁の予防保全ができるか,また,その手法と効果を橋梁点検支援システムの開発および実証実験での取組みを通じて紹介する。

廣瀬 輝人, 今村 圭一, 畑山 比路樹

目まぐるしく変化する社会と厳しい地方財政の環境下において,自治体の情報システムのあり方も大きく変化してきている。度重なる制度改正や法改正に追随するため自治体のシステム改修費用は,厳しい財政をより圧迫し,その削減が課題となっている。一方で,SaaS/クラウドなどの普及によってICT環境も変化しており,住民記録や税務情報の自治体基幹業務システムも,そのあり方を見直す時期が到来した。富士通は,自治体が魅力ある行政サービスを継続的に地域住民に提供するため,「標準システム」「利用するシステム」「成長・継続するシステム」の三つのコンセプトをもとに,新住民情報システム“MICJET MISALIO”の提供を開始した。
本稿では,MICJET MISALIOのコンセプトおよび特長を紹介する。

櫻井 孝

高度成長時代・バブル時代を経て経済構造そのものが大きく変化した現在では,経営に行き詰る地方公共団体が見られるようになった。一方,道州制や定住自立圏構想など,地方分権に向けた流れは大きな潮流となって進んでいる。こうした流れを受けて地方公共団体では,将来にわたる財政状況の見通しの公表や各地域の実情に即した行財政運営が求められるようになった。この状況下,企業会計的な手法を用い行財政運営の健全性,効率性,弾力性などを明示にしていくことを目的に「新地方公会計制度」が定められた。
本稿では,新地方公会計制度の目的や導入上の課題を明確にし,解決のための富士通のパッケージソフト「IPKNOWLEDGE(アイピーナレッジ)財務情報システム」の新地方公会計制度対応製品を紹介する。また,新制度の導入に際し必要となる固定資産の評価や導入後の活用に向けた財務書類の分析を行うコンサルティングサービスなど,富士通の取組みについて紹介する。

國分 出, 小楠 功, 櫻田 和子

1938年に国民健康保険法が制定され,その後,この国民健康保険法に基づき,1961年に各市町村単位での国民健康保険制度がスタートした。これにより,全国民がいずれかの保険に加入する「国民皆保険」体制が実現した。ところが,高齢化が進む中で医療費は高騰を続け,2009年度の国家予算における社会保障費の割合は27%を超えるところまで至っており,必然的に保険制度の見直しが継続的に行われている。2000年に創設された「介護保険制度」,2008年に創設された「後期高齢者医療制度」は,その運営主体である自治体と,システムを提供する我々ベンダにとって,全国一斉にシステムを同時稼働させるという難易度の高い事業であった。富士通はこれに対し,自治体向けパッケージ“MCWEL”により対応を行っている。本稿では,社会保障制度の代表である介護保険制度のシステム化と,富士通が提供するMCWELについて述べる。

田部 清輝

従来の自治体の住民向けサービスといえば,規模の大小はあるものの,全国共通の住民サービスを提供することが基本であったが,昨今は各自治体を取り巻く環境の変化に伴い,地域ごとに特色のあるサービスを行う自治体が増えている。東京都様でも「活気ある街作り」「低環境負荷」を目的に様々な施策を実施している。
本稿では,東京都様が独自に取り組んでいる様々な施策の中から富士通が構築に関係するサービスの事例として,公共交通利用促進,乗客サービス向上を目的とした交通局による「ポイントサービス」と,温室効果ガス排出監視と抑制を目的とした環境局による「地球温暖化対策報告書制度」および「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」について紹介する。

保田 益男, 古橋 規尊, 小野 浩司, 有川 三郎

ここ10年,自治体を取り巻く環境は常に変わり続けており,自治体内部でも職員の意識が大きく変わっている。自治体内では業務改革を進めているが,業務の現場では環境変化による業務量の増加と人員削減で対応が追いつかない状況であり,計画と現場との間でギャップが生じている。このギャップを解消し業務改革を進めるためには,現場を見える化し,事実起点で改革・改善活動に反映していく仕組みが必要である。富士通では,人を主役にプロセスとITが一体となった全体最適化により継続的な改善を図るフィールド・イノベーションを提唱している。この考え方に基づき,現場の見える化を実現する富士通独自の手法「ビジネス・エスノグラフィ」を用いた「自治体ビジネス・フィールドワーク」を提供し,現場起点の業務改革・改善につなげている。
本稿では,その概要と手法および分析事例を紹介し,その適用効果を検証する。

坂梨 千尋

近年,CO2をはじめとする温室効果ガスの削減など,地球温暖化対策のより一層の推進は,世界各国共通の喫緊の課題となっている。このような状況下,日本では,国や都道府県はもとより,基礎的自治体である市区町村レベルにおいても,地球温暖化対策に主体的かつ具体的に取り組もうとする動きが急速に拡大しつつある。また,本格的な人口減少社会の到来や諸外国との産業競争の激化など,国・地方を問わず,財政を取り巻く環境が極めて厳しさを増している中,持続可能な地域社会の創造に向け,官民が連携・協力しながら,太陽光などのクリーンエネルギーの普及促進を地域経済の活性化につなげていこうとする新たな試みも活発化傾向にある。
本稿では,富士通総研(FRI)がコンサルティング業務を通じ,地域経済の活性化に資することも視野に入れながら,地球温暖化対策の支援を手懸けた三つの自治体の取組み事例を紹介する。本取組みは,今後,「地球環境の保全」をキーワードとした新たな公共マーケットの可能性を模索することをねらいとしたものである。

長谷川 一樹, 大森 興治, 坂野 成俊

日本の農業は地域の基幹産業であり,地域農業の活性化は地域活性化に直結していると考えている。富士通は,農業がもうかる産業となり持続的に発展できるよう,農業の経営,生産,販売の三つの見える化をクラウドコンピューティング技術により実現する研究,実証実験を進めている。
本稿では,2009年に宮崎県様主催の農業活性化に向けたIT活用研究会に参加し,地域主体による農業の課題や解決に向けたICT活用の検討を行った状況,および富士通のヒューマンセントリックコンピューティング技術,クラウドコンピューティング技術を活用したICTの農業への浸透について報告する。

深谷 朋昭, 河崎 佳文

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