Skip to main content

Fujitsu

Japan

アーカイブ コンテンツ

注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2010-7月号 (VOL.61, NO.4)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2010-7

特集:「ヘルスケアソリューション」

本特集では,ヘルスケア分野の安心・安全をITで支えていく富士通の取組みを,将来ビジョン,医療再生を支援するソリューション群,そして海外事例の三つの構成で紹介いたします。


執行役員
地域ビジネスグループ副グループ長
ヘルスケアソリューション事業本部長
合田 博文
執行役員 地域ビジネスグループ副グループ長 ヘルスケアソリューション事業本部長 合田 博文 写真

ヘルスケアソリューション特集に寄せて(PDF)

富士通は,早くからヘルスケア分野に取り組み,他社に先駆けて統合医療情報システムのパッケージ戦略をとり,導入・運用・保守一環の電子カルテワンストップソリューションを提供し医療機関へのIT普及に寄与してきました。今後も変化する時代に対応しながら,さらなる貢献を目指し,お客様と一緒に取り組んでまいりたいと考えています。

特集:ヘルスケアソリューション 目次〕

総括

  • 富士通のヘルスケア分野への取組み

ヘルスケアITの将来ビジョン

  • ヘルスケア分野の国家IT戦略の動向
  • 電子カルテソリューションの展開
  • 電子カルテ時代に対応した
    システムサポートスキーム変革への取組み

医療再生を支援するソリューション群

  • 診断群分類包括評価制度への取組み
  • 地域完結型医療と地域連携ソリューション
  • 診断精度の向上を支援するソリューション
  • 富士通のレセプトオンライン請求への取組み
  • 健康情報システムへの富士通の取組み
  • 高齢化社会に貢献する介護福祉ソリューション

海外の取組み事例

  • ヒューマン・セントリック・ケア
  • カナダにおける病院業務改善コンサルティング:
    Lean Healthcare
  • フィンランドの医療情報アーカイブ(KanTa)
    -基本コンセプトとその情報モデル-
  • EHR相互運用性情報基盤:IOP-H
  • 患者受付端末における生体認証技術の応用

特集:ヘルスケアソリューション


総括

富士通は他社に先駆けて医療分野のIT化に取り組み,国内初の医療機関向けパッケージソフトウェアを開発し,お客様とともに歩んできた。当初は,医療事務業務,臨床検査業務など部門向けのIT化であったが,その後,各部門でのIT化が進み,それらを全体的に統合し,かつ医師による情報入力の始まりとなるオーダリングシステムへと発展させた。また現在では,医師が紙に記載していたカルテ情報のIT化も加わり,電子カルテシステムへと大きく発展を遂げた。さらに,この過程の中で,対象となる市場は医療分野から保健分野や介護分野,ヘルスケア産業分野まで拡大し,今では住民の安心・安全という身近な関心事をテーマとし,社会インフラ基盤の一翼を担うまでになった。
本稿では,その歴史をたどり,現在および将来のヘルスケアソリューションの広がりについて展望する。

貴田 武実

ヘルスケアITの将来ビジョン

超高齢化社会の進展に伴う国民医療費の増大,医師不足・医師の偏在,地域医療の崩壊,医療従事者の過重な労働環境問題など,日本の医療は問題が顕在化し,国民生活に不安を与えている。これらの社会的問題に対して,政府は医療・健康分野を成長産業と位置付け,経済成長につなげるシナリオを描くとともに,ITの積極的な利活用を有効な解決手法の一つとし,ヘルスケア分野を国家IT戦略の重点政策と位置付けて取り組んでいる。今般,民主党政権下でもIT戦略が再始動し,2010年5月に「新たな情報通信技術戦略」が閣議決定されたが,ここでもヘルスケア分野の取組みを重点政策として位置付けている。
本稿では,政府の新成長戦略と新たな情報通信技術戦略を中心に,ヘルスケア分野における国家IT戦略の動向について述べる。

御魚谷 武, 金田 信秀, 藤井 宏紀

本稿では,日本の重点施策の一つである保健医療分野のIT化推進において,中核的な位置付けを担う電子カルテソリューションの展開に関する,富士通の取組みを紹介する。
この電子カルテソリューションの展開では,導入する医療機関規模の特性に合わせたソリューションの企画・提供を進めるとともに,ユーザ会活動を通じてお客様とのパートナシップを更に深めてきた。当初は医療機関内での情報の一元管理が主テーマであったが,最近は地域医療連携促進による患者を軸とする医療情報の統合化が必要となってきている。この状勢を鑑(かんが)みた上で,今後目指すべき姿であるPHR(Personal Health Record)への展望を通じて,患者から個人へと利用形態が発展していく上での電子カルテソリューションの担う将来的な位置付けを再確認する。

園田 武治

富士通では電子カルテシステムをお客様が安心してご利用いただけるよう,2009年5月より「医療ワンストップサポートセンターサービス」の提供を開始した。電子カルテシステムは複雑なシステムながら24時間365日の稼働が要求され,お客様のシステム運用・保守も多岐にわたる製品知識と膨大な労力が要求される。本サービスではお客様の負担軽減のため,従来の製品別サポートやオンサイトSE作業中心のサポートスキームを刷新し,富士通のヘルスケア関連全製品(ハードウェアからアプリケーションパッケージまで)のQ&Aとトラブルを24時間365日専門スタッフが一括受付・対応する業界初の試みを実現した。また,セキュリティ回線を利用したお客様システム監視によるトラブル未然防止や,リモートメンテナンスによるトラブル迅速解決を可能とした。本稿では,お客様システムの安心安全運用を強力にサポートする「医療ワンストップサポートセンターサービス」について述べる。

櫻井 俊裕

医療再生を支援するソリューション群

2003年4月に全国82施設の特定機能病院(主に大学病院)に導入された診断群分類(DPC:Diagnosis Procedure Combination)を用いた包括評価制度は,その後民間の急性期医療を担う一般病院にも拡大され,2009年度には1557施設が参加となった。富士通は,導入施設数におけるトップベンダとして当初からこの診断群分類包括評価制度の調査・運用に参加しDPCの円滑な導入を支援してきた。また,大量のDPCデータから必要な情報を整理してデータベース化し,病院経営に役立つ統計データを容易に取り出すことができるDPC分析システムを開発した。本システムは医療機関がDPCデータを活用し,医療の質の向上とともにサービスの効率化に取り組むことを支援するツールと位置付けている。
本稿では,包括評価制度の概要とDPC分析システムを使用した経営改善への活用方法,そして病院間のベンチマークに対する富士通の取組みについて述べる。

竹井 和浩, 伊藤 勲一

2008年4月に旭川赤十字病院様,同5月に独立行政法人国立病院機構金沢医療センター様において,HOPE/地域連携V1による地域医療ネットワークが稼働した。本製品は「地域が一体となった医療で,患者とその家族に“安心”を提供する」というソリューションコンセプトを評価され財団法人日本産業デザイン振興会より2009年度グッドデザイン賞を受賞している。
本稿では,まずHOPE/地域連携の導入で見えてきた地域連携ソリューションが地域完結型医療にもたらす効果や地域医療ネットワーク普及のためのポイントを述べる。つぎにニーズが広がりつつあるNN型連携に対応した新商品HOPE/地域連携V3の特長,およびこのNN型連携普及のための必須課題である標準化の問題について述べる。最後にNN型連携がもたらす地域医療の動向について考察する。

田中 良樹

診療情報の電子化の波は,一医療機関における電子カルテ化から地域医療の連携基盤として拡大してきている。診療情報には,CTやMRIによる画像検査,血液や尿などの検体から得られる検体検査結果がある。これらの検査を扱う画像診断部門や検体検査部門向けのシステムは,部門向けの業務支援系システムとして普及してきた。しかし,昨今の医療機器の高度化によって一患者に発生する画像データが飛躍的に増加していること,電子カルテ化に伴い必要な診療情報が容易に参照可能となったこともあり,従来の業務システムから医師および技師の意思決定を支援するシステム,さらには診断精度の向上を支援するシステムに変わりつつある。
本稿では,富士通が提供している診療画像ソリューションと臨床検査ソリューションの現状と診断精度の向上を支援するための取組みについて述べる。

荻野 康晴, 福重 二三男, 村尾 晃平

2006年の省令改正により,診療報酬請求の方法として,安全性が確保されたネットワーク回線を使用した「レセプトオンライン請求」が追加された。政府方針により2015年度までには,原則「電子レセプト請求」(オンライン請求または光ディスクなどを用いた請求)が義務化されることとなっている。レセプトオンライン請求時にインターネット回線を使用する場合,「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠したサービス事業者を使用することとなっている。富士通では当初より本ガイドラインに準拠したFENICSメディカル・グループネットサービスを提供中であり,オンライン請求用ネットワーク回線を活用した新たなオンラインサポートサービスにも取り組んでいる。
本稿では,オンライン請求の概要と富士通のオンライン請求への取組み,および本ネットワーク回線を活用した中小規模病院向けの新たなサービスについて述べる。

西田 浩二

事業者が社員の安全と健康を確保することを義務とした労働安全衛生法が2006年に改正され,さらに2008年4月に高齢者の医療の確保に関する法律による特定健康診査・特定保健指導の制度が施行されるなど,健康増進に関する制度化が進み,国民の健康に対する意識も変化してきている。富士通は,これまで医療機関や健診機関において疾病の早期発見を目的とした健康診断支援システムを提供してきた。この度,昨今の市場環境の変化および国民の健康意識の高まりに対応するために保健指導などの受診者自らが健康増進に活用する機能や事業者が社員の健康をより効果的に管理,指導できる機能などを強化した健康情報システム“HOPE/webH@ins-GX”を開発した。本稿では,新システム開発の背景とシステム利用者の様々な視点から新システムの特長を述べ,最後に国民一人一人の健康増進を手助けするヒューマンセントリックな健康情報ビジネスへの展望について述べる。

小川 洋也, 伊藤 孝

介護保険制度,介護サービス市場は急速な高齢化や利用者のニーズの多様化に応えるため変化し続けており,それに伴い介護サービス事業者の業務支援システムへの要求も変化してきている。富士通は2000年4月から施行された介護保険制度に合わせ,介護サービス事業者向け業務支援パッケージ“HOPE/WINCARE”の提供を開始し,時代のニーズに対応できるよう確実な請求処理,事務作業効率化の実現,介護記録の共有と記録データの編集,加工による帳票作成などの新機能の提供,機能改善を継続的に行ってきた。さらに,2010年2月にHOPE/WINCAREシリーズの新製品として,「より快適な操作性の追求」と「記録の利活用による介護サービス品質向上の実現」をコンセプトとしたHOPE/WINCARE-ESを発表した。本稿では,HOPE/WINCAREシリーズによる富士通の介護福祉ソリューションについて述べる。

畠山 仁

海外の取組み事例

世界中の国で,医療費の伸びを抑えて医療サービスの品質を改善していくことが喫緊の課題となっている。医療におけるIT活用は遅れており,医療サービスを支援するITの最適な活用法は,どのような視点から医療サービスを見るかにかかっている。
本稿では,最も一般的な視点(臨床医中心,行政中心,そして患者中心の視点から見た医療サービス)について説明した上で,「ヒューマン・セントリック・ケア」と呼んでいる全体最適の新たな視点について解説する。すべての医療サービス体系の共通の目的および医療サービスに携わる医療従事者間の人間関係・役割を理解することにより,柔軟性に富んだ新たな医療ITシステムを創出できると確信している。

Joel Ratnasothy, Makiko Hisatomi, Paul Blackburn, Ali Anjomshoaa, Kenichi Fukuda, Adel Rouz, Lester Russell

公的医療が危機的な状況に陥ってから既に長い年月が経過している。こうした状況には,医療サービス需要の増大,人口構造の問題,待ち時間にかかわる問題,医療サービスコストの上昇,財政上の制約,医療の質に関する問題,医療従事者不足,生産性と職員満足度の問題など様々な理由が考えられる。今後数年はこの状況が改善する見込みはない。このように世界中の医療セクタの大部分が同様の課題に直面している中,公的医療セクタがこうした課題に対する取組みを迫られるのは時間の問題であり,病院業務改善に向けたコンサルティングとして短期間で患者・臨床医・ステークホルダに成果をもたらす,現場での実践的なアプローチ手法が必要になると思われる。
本稿では,富士通コンサルティング(カナダ)がカナダのケベック州において実践したリーンヘルスケア(Lean Healthcare)のコンサルティング事例を紹介する。

Camil Villeneuve

医療関係者と患者が相互に利用し,情報の共有を可能にする医療情報システムの必要性は,医療情報学の主たるテーマである。HL7 CDA R2といった,XMLをベースに標準化された構造的な情報モデルとサービス指向アーキテクチャ(SOA)は,医療情報を意味的に統一様式で保管し,共有するツールであると認識されている。フィンランドでは,社会保健省がHL7 V3 CDA R2をベースに国の集中管理型医療情報アーカイブを構築するためのプロジェクトを2007年に開始した。このフィンランドのモデルは,SOAを用い,CDA R2の高度構造化を実装していることから,全国の医療情報を集中型保存で収集できるしっかりとしたインフラを提供している。フィンランドでは,これらアーキテクチャ基盤は,全国医療記録アーカイブ,全国的な電子処方せんシステム,そして住民が自分の医療データにアクセスすることができるポータルなどに応用されている。この3種類のアプリケーションは,KanTaという名称でも知られるフィンランドの国民医療アーカイブの土台を構成している。元請業者であるFujitsu Services Finlandは,KanTaシステムの実現に関するプロジェクト全体の責任を担っている。

Teemu Suna

カナダ全域への生涯健康医療電子記録(EHR:Electronic Health Record)の更なる普及推進の一環として,富士通は,EHR相互運用性情報基盤(IOP-H:InterOperability Platform for Health)の開発をケベック州より委託された。このシステムは,多種多様かつ地理的・組織的に分散配置されている各医療機関のアプリケーションソフト間を患者の診療情報が高信頼・セキュア・追跡可能な形態で送受信できることを担保する,堅固かつ柔軟性のある高性能統合プラットフォームである。そして,この情報フローに関するアクセス権と事象発生の論理シーケンスは,規約で定められており,全カナダの医療情報システム標準に準拠するものである。

Pierre Coderre

保健医療の関連産業が患者の安全を守る分野で急速に進歩している一方で,依然として医療IDの盗難(患者なりすまし詐欺)や医療保険詐欺に関する事件は大きく報道され続けており,病院が責任を問われるなど,今も多くの課題が残っている。近年,これらの課題に対処して医療施設が患者のプライバシーを保護し,かつ患者の快適性を確保できるような新しい手法と技術が登場した。
本稿では,米国における患者なりすまし詐欺や患者の本人確認といった課題解決に対して生体認証技術を活用した取組み事例を紹介する。

Josh Napua

---> English (Abstracts of Papers)