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雑誌FUJITSU

2010-1月号 (VOL.61, NO.1)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


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雑誌FUJITSU 2010-1

年頭ご挨拶

特集: 「富士通プロダクトを支える分析・解析技術」

本特集では,最先端プロダクトの高性能化,高信頼性化を実現するために不可欠な分析・解析技術への富士通の取組みを紹介いたします。


株式会社富士通研究所
取締役
矢野 映
株式会社富士通研究所 取締役 矢野 映 写真

富士通プロダクトを支える分析・解析技術特集に寄せて(PDF)

最先端プロダクトの高性能化,高信頼性化を実現するために不可欠な分析・解析技術は地球の安全,安心を支える基礎技術としての位置付けも有しており,環境負荷の低減が企業の最重要課題となる21世紀においては,極めて重要な役割を担うものと考えています。

特集:富士通プロダクトを支える分析・解析技術 目次〕

分析技術

  • SIMSによる極浅不純物分布の高精度評価法
  • 走査トンネル顕微鏡を用いた2次元キャリア
    分布計測技術とデバイス開発への適用
  • SNDM測定によるトランジスタ中のドーパント
    プロファイル計測への応用
  • 球面収差補正STEMによる原子分解能評価
  • 絶縁物や深い界面のオージェ電子分光分析
  • 放射光・中性子ビームを利用した材料分析
  • ソフトエラー評価に向けた放射線測定技術
  • 透過型電子顕微鏡によるデバイス・材料評価
  • 環境モニタリング用小型センサ

解析技術

  • プリント配線板材料の評価・解析技術
  • プリント配線板のスルーホール接続評価技術
  • コネクタ実装における解析技術
  • 高精度プロセス・デバイスシミュレーションの
    ためのイオン注入分布解析
    ―テール関数に基づくイオン注入分布
    データベース―
  • 高精度プロセス・デバイスシミュレーションの
    ためのイオン注入分布解析
    ―擬似結晶拡張LSS理論による
    イオン注入分布解析―

特集:富士通プロダクトを支える分析・解析技術


分析技術

CMOSプロセス開発では,デバイスの微細化に伴い,ゲート部において,数nmの薄膜や40 nm以下の極浅接合が形成されている。デバイスの性能や信頼性を向上させるため,これらをナノレベルで制御することが不可欠になっている。これに伴い,このような薄膜内の元素分布や極浅接合での不純物分布をナノレベルで分析・評価することが求められている。組成や微量な不純物の分析は,2次イオン質量分析法(SIMS)が最適である。とくに,近年,新タイプの装置が開発され,ナノレベルでの元素分布評価が可能になった。しかし,この分析法は,複雑な物理現象を利用して分析するため,本来の分布を得るためには,分析条件の最適化が必要となる。
本稿では,2次イオン質量分析法を使った表面から数nm~十数nm領域の元素分布評価において,精度低下を引き起こす要因を考慮し,高い精度が得られる分析条件を検討した最近の成果について述べる。

多田 陽子, 鈴木 邦広, 片岡 祐治

ゲート長50 nm以下の微細トランジスタを高性能化するためにはソース/ドレイン電極などのシリコン中不純物分布を最適化する必要があるので,2次元不純物分布を高空間分解能で評価する技術が切望されていた。富士通マイクロエレクトロニクスは,走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて1 nm程度の空間分解能の2次元キャリア分布計測技術を開発し,90 nm世代以降の微細トランジスタ開発に適用した。製造条件の異なる微細トランジスタに対して,断面測定で得た2次元キャリア分布とトランジスタ特性の製造条件依存性がよく一致した。このような断面キャリア分布計測結果を基に微細トランジスタ不純物分布が最適化された。また,走査トンネル顕微鏡による2次元キャリア分布計測技術を用いてトランジスタ特性ばらつきの原因となる不純物分布揺らぎを評価した。不純物分布がゲート加工形状揺らぎに依存していることを明示した。計測結果を基にトランジスタ特性ばらつき低減方法を提案・実証した。

福留 秀暢

走査型非線形誘電率顕微鏡法(SNDM)をトランジスタ中のドーパントプロファイル計測に適用して以下の結果が得られた。まず,標準試料のエピタキシャル多層膜の2次イオン質量分析法(SIMS)測定と試料断面のSNDM測定により,濃度一定領域が各層とも約4~5µmの厚さで得られ,ドーパント量に1対1に対応したSNDMシグナルを得ることに成功した。また,実デバイスのドーパント濃度プロファイルとしてn-,p-チャネルトランジスタ断面観察において,標準サンプルによる較正曲線を用いることで2次元画像での濃度プロファイルを得ることができた。

本田 耕一郎

ナノテクノロジの進展や,エレクトロニクスデバイスの微細化により,原子レベルで構造や組成を制御することが重要になってきている。それらの研究開発を推進するためには,材料やデバイスの正確な構造,組成,物性を原子レベルで計測する技術の開発も不可欠となっている。走査透過型電子顕微鏡(STEM)は,高い空間分解能を有する観察装置であり,分析装置を組み合わせることにより,原子レベルで分析が行える装置として,研究開発や品質管理などの多方面の分野で使用されている。STEM装置の本質的な問題として,磁界型電磁レンズの球面収差の影響による,プローブサイズの大きさや電子線電流量の低下などの性能の制限が挙げられる。近年,球面収差を補正する装置が開発され,市販のSTEM装置に搭載することが可能となり,さらなる高分解能観察や分析に威力を発揮してきている。本稿では,球面収差補正技術による高分解能化の原理とSTEM法による原子分解能測定例を紹介する。

小高 康稔, 山崎 貴司, 片岡 祐治

オージェ電子分光(AES:Auger Electron Spectroscopy)分析は,微小な異物や薄膜の組成,あるいは多層膜や金属接合部界面の深さ方向の組成分布を調べるために有効に用いられている。しかし,電子線を励起源としているために,導電性のない材料の分析は帯電発生のために一般的に困難であった。また,スパッタエッチングを併用した深さ方向分析では,対象とする分析位置が表面から深い場合,表面荒れやミキシングなどの影響で深さ分解能の低下が起こり,正確な評価が困難であった。
著者らは,これらの問題を解決するため,集束イオンビームを用いて試料を薄片化してからオージェ電子分光分析を実施した。絶縁物試料においても帯電の影響を受けることなく測定が可能であること,界面などが深い位置にあっても優れた深さ分解能で深さ方向分析ができることを明らかにした。

佐藤 美知子, 白井 詩織, 瀬山 喜彦, 板倉 徹

富士通では,製品の高性能化および信頼性確保,さらにその安全性確認のために,多くの分析手法や装置が利用されている。著者らはこの中で,一般の分析装置では難しい,放射光および中性子ビームを用いた分析技術の開発と材料分析を行っている。この分析には,国家的に建設された大型共用施設を利用している。
本稿では,理化学研究所により運用されている大型放射光施設SPring-8において,民間13社により建設された「サンビーム」ビームラインの紹介と,富士通研究所の材料分析への適用について事例を紹介する。さらに分析の将来技術として,現在SPring-8に建設が進んでいるX線自由電子レーザ(XFEL),および日本原子力研究開発機構により茨城県東海村に建設された大強度陽子加速器施設(J-PARC)の中性子ビームを利用した分析について紹介する。

淡路 直樹, 野村 健二, 土井 修一

ソフトエラー発生確率の予測・低減を目指した放射線測定技術を紹介する。宇宙線に由来する速中性子や,LSIの材料が発生するα線などの放射線は,コンピュータシステムにソフトエラーと呼ばれる誤作動を起こす。ソフトエラーは基幹サーバなどのミッションクリティカル製品の信頼性を損なうため,エラーの発生率を見積もり,低減させる必要がある。エラーの原因であるα線や中性子線の量を実測するために,著者らはα線量を高感度で測定できる「真空α線トラッキング法」や宇宙線中性子スペクトロメータを開発して使用している。これにより,従来は測定できなかった低α線材料の線量や,高山など任意の環境の中性子線量も測定できるようになり,エラーの発生率を正しく予測できるようになった。また,α線発生量の少ない材料や中性子線量の少ない環境を選ぶことが可能になり,コンピュータシステムの信頼性向上に貢献することができる。

髙須 良三

近年の最先端デバイスは,素子の微細化・複雑化,構成材料の薄膜化・多様化が進み,ナノレベルの構造制御が不可欠である。これらのデバイス製品の高性能化・高信頼化のためには,ナノメートルオーダの評価技術も不可欠となる。本稿では,ナノメートルオーダの評価技術として,高い空間分解能を有する透過型電子顕微鏡(TEM)によるデバイス・材料の解析技術を紹介する。はじめに,ナノレベルで制御されたデバイス形状評価技術として,電子線トモグラフィ法による3次元構造観察技術について述べる。つぎに,デバイスの磁場・電場の情報をナノレベルで可視化する技術として,電子線ホログラフィ法について述べる。さらに,高分解能TEM観察と電子エネルギー損失分光法を用いたナノ構造多層膜の結晶構造と組成解析技術について述べる。最後に,高角環状暗視野走査透過電子顕微鏡法による規則合金の原子配列観察とヘテロエピタキシャル界面構造解析技術について述べる。

宮島 豊生, 伊藤 亮治, 本田 耕一郎, 塚田 峰春

本稿では,雰囲気中に含まれる微量物質を簡便に検出する技術を紹介する。半導体集積回路の製造工程において,雰囲気中の微量の汚染物質がウエハに付着すると製造不良になることがある。そのため,著者らは汚染の原因を調べる手段の一つとして,QCM(Quartz Crystal Microbalance)を用いた汚染センサを開発して使用している。本センサを用いた検出方式は高感度であり,雰囲気中の汚染物質濃度の時間変化を追跡するのに適している。半導体工場の中の汚染物質の挙動を調べることにより汚染源を特定して排除できることから,製造コストの低減と品質の向上に役立つ。またセンサは小型なので工場内の様々な場所やウエハ容器内などに容易に設置できる。コントローラも小型でありノートPCなどのUSB端子に接続するだけで使用できることから,機動性に優れている。そのため半導体工場のみならず,ほかの環境測定への応用も期待できる。

髙須 良三

解析技術

電子機器にとって,プリント配線板は欠くことができない重要な部材である。製品の多様化や開発サイクルが短期化する今日,求められる性能や信頼性を満たすプリント配線板を最短期間で開発するためには,数多く存在する市販の材料から目的に合致するものを的確に選定して使いこなすことが重要な課題となっている。富士通では10年以上前より,プリント配線板を使用する立場から絶縁材料の評価を独自に行い,その結果をプリント配線板としての評価結果と照らし合わせて検証,蓄積することを行ってきた。現在では,新規な絶縁材料に対して,様々な富士通製品のプリント配線板に要求される性能が実現できるかどうかを,材料単体の評価で判断することを可能にする評価技術の開発を進めている。
本稿では,それらの中から,熱機械特性,耐熱性,伝送特性を対象とした評価技術について紹介するとともに,今後の展望について述べる。

水谷 大輔

富士通は,サーバ製品やネットワーク製品など世界最高水準の製品を開発している。その製品は様々な部品で構成されており,プリント配線板は,その構成部品の中でも基幹部品と位置付けられている。プリント配線板品質を支える基本要素の一つにスルーホール接続信頼性がある。従来の評価方法は,配線板を低温,高温にさらした温度サイクル試験が一般的な手法として採用されていた。今回,配線板のスルーホールと配線パターンへ電流を印加し,その配線板内部の加熱による温度上昇を用いた評価手法を確立した。この新評価技術により温度サイクル試験よりも実際に近い温度負荷をかけることが可能となり,その結果,従来の約1/5の期間で評価が行えるようになった。
本稿では,これらのスルーホール接続評価技術について紹介する。

菅根 光彦, 森田 義裕

多ピンCPUやASICといった平面実装品や,モジュール搭載カードエッジ基板のコネクタ実装において,接触の信頼度を高精度で解析・検証する技術はますます重要となってきている。今回,実験では得られない個々の接点挙動を可視化するシミュレーション技術を開発した。これにより,コネクタ実装における接続検証が容易となり,また,挙動を明らかにすることで,多くの実験をすることなく安定接触などのメカニズム解明が机上で可能となった。
本稿では,まず高圧で平面実装されるLGA接続において,パッケージや基板のシステム変位を加味しながら,個々の接点の挙動を明らかにして長期接続の信頼度を検証した事例を紹介する。つぎに,モジュール搭載基板を保持し,かつ電気的接触を安定して得るコネクタ実装において,装置輸送時の振動によりカード基板が抜ける挙動・メカニズムを解明することで,コネクタ実装の安全性を検証した事例を紹介する。

田村 亮, 坂入 慎, 舘野 正

イオン注入は,VLSI(Very Large Scale Integrated Circuit)プロセスにおける不純物の標準的なドーピング方法である。したがって,その分布を正確に予想することはデバイスを設計する上で必須である。イオン注入分布のSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)データを解析的に表現し,その解析式のパラメータがイオン注入分布データベースとなる。任意の注入条件の分布はパラメータの補間値を用いて発生させることができる。このイオン注入分布を表現する関数はGauss,Joined half Gauss,Pearson,Dual Pearsonと発展し,著者らは,今回新たにテール関数を提案した。これは,現在標準関数として汎用のシミュレータに利用されているDual Pearsonよりもパラメータが少なく,かつパラメータの値のユニーク性が優れている。この関数を利用し,約1000個のデータベースから成る,イオン注入データベースを構築した。さらに,このデータベースと一つのパラメータをリンクさせることにより,幅広い注入条件でのアモルファス層厚も予想できるようになった。

鈴木 邦広

新規の基板に対する新規イオンの注入,またはデータベースがカバーしきれていない注入条件の分布を知りたい場合がある。それに対応するのがMonte Carloシミュレーションであるが,それは数万個のイオンの飛跡をトレースするために時間がかかるという問題があった。著者らは,Monte Carloシミュレーションと同程度の精度でかつ瞬時に分布を予想する拡張LSS理論を提案した。拡張LSS理論は,アモルファス層中の分布に対応し,実際に利用される結晶中の分布は予想できない。そこで,結晶特有のチャネリング現象に対応するパラメータを半経験的モデルで表現し,拡張したLSS理論とリンクさせて擬似結晶LSS理論を提案した。これにより,新規の結晶基板に対する新規イオンの注入分布を瞬時に予想できるようになった。また,この理論を最近検討されているSi1-xGexに適用し,任意の組成比xにおけるB,As,Pのデータベースを構築した。

鈴木 邦広


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