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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2009-7月号 (VOL.60, NO.4)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2009-7

特集:「ネットワーク」

本特集では,通信オペレータのICTインフラを支える先進プロダクト,企業におけるセキュアなネットワークの実現やICTの高度利用を促進するソリューションへの富士通の取組みを紹介いたします。


経営執行役常務
テレコムビジネスグループ長
長富 紘
経営執行役常務 テレコムビジネスグループ長 長富 紘 写真

ネットワーク特集に寄せて(PDF)

富士通は,先端技術により実現する高信頼で人に優しいプロダクト・サービスの提供を通じて,お客様の新しいビジネスを啓発し,快適で安心できるネットワーク社会づくりに貢献し続けてまいります。

特集:ネットワーク 目次〕

概要

  • ネットワーク社会の進化と技術革新

トランスポート

  • 次世代アクセスおよび分散型MSANコンセプト
  • 光化を進めるアクセストランスポート
    —GE-PONプラットフォーム—
  • LTE/WiMAXシステムの動向
  • 40 Gbps光波長多重伝送システム
  • マルチレイヤコンバージェンスプラットフォーム:
    FLASHWAVE 9130
  • グローバルな通信ネットワークを提供する
    海底光通信システム
  • IPネットワークの動向と富士通の取組み
  • グリーンネットワークへ向けた取組み

サービスプラットフォーム

  • ネットワークサービスの新市場に向けた
    先進技術開発
  • 世界初の微弱ワンセグ配信システム
  • IMS付加サービス提供基盤
  • Trusted Computingの実用化に向けて
  • フィールドイノベーションに貢献する
    センシングプラットフォームサービス
  • ネットワーク装置における見える化
  • サービス提供プラットフォーム技術

オペレーション&マネジメント

  • 柔軟な伝送ネットワークの構築と
    管理システム:AW Navi
  • ネットワークセンシング
    —監視診断技術への取組み—
  • 次世代ネットワークの「見える化」を実現する
    Proactnes II

特集:ネットワーク


概要

情報通信システムの進化が社会生活に影響を与え,革新を起こし,浸透する,といったサイクルが世に定常化して久しい。その基盤を担う広域ネットワークでは,次世代ネットワーク(NGN)が商用稼働を始め,家庭内への光ファイバ接続(FTTH)や,ブロードバンドワイヤレス系の多彩なアクセス技術が普及期を迎えたことで,社会生活の更なる革新を誘発・先導している。
本稿では,実社会で起こっている生活シーンの変革や企業・業務システムの進展を,ネットワーク技術の観点から検証し,さらに未来に向けた技術創造の動向,および富士通の取組みについて述べる。

高橋 英一郎, 熊谷 和義, 中条 孝文

トランスポート

欧州におけるネットワーク事業者の間では,FTTH(Fiber To The Home)またはFTTC(一般的にはFiber To The Curbだが,ここではFiber To The Cabinetを指す)による大規模なファイバインフラストラクチャの構築による高速ブロードバンドサービスの導入が検討され始めている。FTTHとFTTCのどちらを選択するかは,地域,そしてポイントツーポイントファイバ,PON(Passive Optical Network),およびxDSL(Digital Subscriber Line)のどれがふさわしいかなどのソリューションの範囲によって異なる。富士通の既存のマルチサービスアクセスノード(GeoStream Access Gateway)は,Fujitsu Telecommunications Europeにより開発され,現在BT(ブリティッシュテレコム)の21世紀ネットワークに導入されて,電話局からPSTN/ISDNとDSLの統合アクセスを提供している。GeoStream Access Gatewayは,バックプレーン不要のアーキテクチャであるため,ネットワーク内で機能を分散でき,分散型MSAN(Multi-Service Access Node)を構築できる。このソリューションは,とくにFTTCの導入を希望するキャリアに適しており,またベースバンド音声サポートにおける富士通の実績は,既存のインフラストラクチャをFTTCインフラストラクチャに統合することを目指すキャリアへの無類のセールスポイントとなる。

Chris Gallon, Dal Chohan, Steve James

国内では,2008年にFTTH契約数がDSL契約数を超え,ブロードバンド契約の半分はFTTHを活用し,そのサービスメニューも増えてきた状態である。これはFTTHサービス料金が,各種の技術の進歩で低廉化し,契約者にとって享受するサービスが適度の満足度に近づいたためと思われる。富士通は,この急増するFTTH契約者のアクセスプラットフォームとして,量産に対応したGE-PONシステムを提供している。
本稿では,本システムの加入者線端局装置(OLT:Optical Line Terminal),加入者線終端装置(ONU:Optical Network Unit),およびその監視制御システムについて,製品機能を紹介するとともに,最新の技術・標準化動向として,IEEEで議論されている10G-EPONに触れる。現在のGE-PONシステムからのスムーズな移行を図る装置の技術開発を行い,契約者がストレスを感じない,快適で安全なサービスを享受できるよう,アクセストランスポートを提供していく。

石井 義則, 山下 治雄

日本の携帯電話およびPHSの利用者が2009年2月末には1億1100万加入に達し,さらに,第3世代移動通信システム(IMT-2000)について普及率が88%を超え移動環境においてデータ通信を行う環境が整いつつある。また社会・経済活動の高度化・多様化を背景に,インターネット接続や動画像伝送など,携帯電話を利用したデータ通信利用が拡大傾向にあり,より高速・大容量で利便性の高い移動通信システムの導入に期待が寄せられている。
本稿では,高速な移動無線アクセスサービスを実現するLTE(Long Term Evolution)/ WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)の状況と将来に向けた高速化の動向と今後について述べるとともに,これらのシステムに使用されている技術について概要をまとめる。

齊藤 民雄, 田中 良紀, 加藤 次雄

富士通テレコムネットワークス(FTN)では,国内通信キャリアに向けた光伝送システムを開発,供給している。このたび,FTNでは国内通信キャリア向けに世界初のRZ-DQPSK変調方式を採用した40 Gbps光波長多重伝送(DWDM)システムを開発した。このDWDMシステムは最大40本の40 Gbps(STM256)信号(合計1.6 Tbps)を光ファイバ1本に多重し伝送することができる。
本稿では,40 Gbpsの光信号をDWDMシステムに多重した場合の技術課題と解決策,40 Gbpsの各種光変調方式の特徴およびRZ-DQPSK変調方式の優位性について説明する。

和仁 一夫, 小野 威

次世代ネットワークの構築が加速されていく中,メトロネットワークではSONET/SDHベースのネットワークからIP,DWDMを交えた様々なネットワークが構築されている。一方,専用線をはじめとする既存ネットワークもしばらくは存続するため,伝送機器が多機種化し,運用管理も複雑化してきている。これらを解決するため,富士通テレコムネットワークスはマルチレイヤコンバージェンス(MLC)プラットフォームを提案し,そのコンセプトに基づいたFLASHWAVE 9130を開発している。
本稿では,MLCのコンセプトを紹介し,MLCの中核となり,既存ネットワークと次世代ネットワークの融合を効率的に実現できるFLASHWAVE 9130の特長について述べる。さらに,今後のトラフィック増加,IPトランスポートの進展に対応するための装置および機能拡充について示す。

斉藤 文彦

インターネットの急速な拡大に伴う通信トラフィックの増大により,グローバルなネットワークの大容量化が進んでいる。富士通は,大容量で時間遅延の少ない通信インフラの構築を可能とする海底光通信システムをキャリアに提供している。急速なトラフィック需要の増大に対応するための容量拡大の手法としては,新規システムの建設と既存システムの波長増設がある。後者において,既設の端局装置と新規の端局装置を結合して波長増設する方法(カプラ挿入法)を確立した。この方法は海底ケーブルの部分をそのまま使い,端局装置のみに変更を加えるもので,コストとリードタイムの点で優れている。さらに増設容量拡大のために,受信感度に優れるRZ-DPSKトランスポンダを採用し,既存の大洋横断システムの増設プロジェクトに適用した。

中元 洋, 杉山 晃, 内海 敦彦

今日,IPネットワークは,個人,法人を問わず,様々な利用シーンで使われるようになってきており,今後もその重要性が高まっていくと考えられる。このIPネットワークの一つの方向性として,コア基盤は収束化(convergence化)し,サービスと密接な部分は多様化(diversity化)していくことが考えられる。今後は,収束化したIPネットワーク基盤の上で,いかに多様化したサービスに対応する仕組みを提供するかが重要となる。富士通では,多様化したサービスに対応する具体的な製品例として,バックアップや映像配信といったアプリケーションの高速通信を実現するWANDIRECTORという製品を商品化した。
本稿では,IPネットワークの過去の推移も参照しながら将来の方向性を述べるとともに,WANDIRECTORの概要を紹介する。

浦田 悟, 川原 茂樹, 下國 治

二酸化炭素排出抑制の一手段としてネットワークの利用が期待されているが,ネットワークを流れるトラフィック急増に伴い,2025年時点で2006年の13倍のネットワーク消費電力が予測されており,この消費電力を抑制する省電力化技術の重要性が高まっている。とくに,2025年時点での消費電力を2006年並に抑制するためには,現在開発されている装置単体での省電力化技術に加え,ネットワーク全体でシステム的に省電力化する技術も必要となる。一般に,ネットワークを構成するルータは,その消費電力の約4割をパケット転送に必要なルーティング処理が占めており,加えて,転送パケットの大小にかかわらずほぼ消費電力は一定という特性を持つ。そこで,今回,エンドエンドでのトラフィックの流れや性質をとらえ,これらのルータの消費電力特性に着目したシステム的な省電力化に向けた技術課題を明らかにするとともに,その課題を解決する開発技術を紹介する。

掛水 光明, 中後 明

サービスプラットフォーム

ネットワークや仮想化をはじめとするICTの進展や通信と放送の法体系の改訂により,膨大なICTリソースをこれまで以上に手軽に利用できる環境が整いつつある。ICTが企業経営に深く結びついている現在,企業はこれまで以上に顧客価値を増大させ,より強力な競争力を獲得できるようになると期待されている。
しかし,ビジネスの現場でのICT活用は依然として利用者に依存しており,ビジネス活動全般に活用できるようにはなっていない。このままでは,企業は顧客価値の増大を思うようにコントロールできなくなる恐れがある。
本稿では,新たなネットワークサービス適用分野でのICT活用に向けた課題と,これを打破する富士通の技術開発活動の中から3次元仮想空間技術と脳活動研究の二つの先進的な取組みを紹介する。

河嶋 英治

放送と通信の融合が進んでいる。放送分野では「地上デジタル放送」やモバイル向けの「ワンセグ放送」が開始され,2011年には従来のアナログテレビ放送は停止される。デジタル放送になると,データ放送による双方向通信が可能となり通信機能と融合する。一方,通信分野では,インターネットを使ったネットワーク放送が開始されている。このように,放送と通信の境界がなくなり,融合しようとしている。
こうした新時代に向け,富士通では,世界初の微弱ワンセグ配信システム「スポットキャスト」を開発した。スポットキャストは,微弱電波を使用することで,ワンセグの情報を誰でも手軽にスポットエリア配信できるようにしたシステムである。放送・通信融合時代にふさわしい,新しい応用を可能にする。本稿では,このスポットキャストを実現するために解決した課題や,実例,今後の取組み・課題などについて述べる。

鈴木 規之, 辻村 仁志

キャリアビジネスの中心は,音声系の電話サービスからメールやWebを使ったパケット系のサービスに移行してきた。また,ネットワークの高速化によって,さらに高度なサービスも提供できるようになりつつある。このような背景からサービスを容易に創造できる仕組みが求められている。
IMS(IP Multimedia Subsystem)は,呼制御ネットワークとアプリケーションが分離されており,音声とパケットのサービスを融合できるアーキテクチャとして注目されている。しかし,標準勧告に従ったアーキテクチャで構成してもビジネスを行うための機能の不足や,サービス提供者との接続性に課題がある。
本稿では,IMSの課題をネットワークアーキテクチャの観点から紹介し,これらの課題を解決するためのサービス基盤を提案する。

櫻井 健一, 丹下 聡一郎, 関根 久幸

専門技術を駆使して情報を排他的に守る高度で複雑なセキュリティから,ネット上で信頼関係を樹立し,信頼度に応じて簡便に情報を利用でき,リスクを最小限に抑え込む"Trusted Computing"への流れが始まっている。これは,インターネットに接続される端末数が非PCを含んで数百億台にまで著しく増加し,それに対応した利用者のスキルが伴わない事態に対し,コスト的にも合理的な方向である。このTrusted Computingを実現する主なものの一つが,業界団体TCG(Trusted Computing Group)が策定し公開する仕様群,技術群である。TCG活動において,富士通は積極的に全階層(理事会,諮問委員会,各作業部会)に参加し,統合的かつ統一的活動を通して標準化に貢献している。
本稿では,Trusted Computingの考え方,TCG技術概要と,それを用いたソリューション案を示し,他社戦略を見据えつつ富士通のビジネス実績,展開および発展性を述べる。

小谷 誠剛

センシングプラットフォームサービスとは,データベース化されたベテランの経験やノウハウと,センシングされた各種データを合わせて分析・マイニングすることにより法則や相関関係を明らかにし,状況に応じた適切なアドバイスをすることで技能継承や人の誘導に使用するものである。富士通はこの取組みとして,下記の二つの分野に着目し,現場作業を変革するソリューションの提供を目指している。まず,「医療・福祉」分野では,病院の外来患者へのサービスとして,カードホルダ型の携帯端末に診察券を挿入することで患者を識別し,個別の案内や診察待ち人数の情報をリアルタイムに表示する新世代ナビゲーションシステムの実証実験を開始した。また「食・農業」分野では,各種センシングデータ収集と分析,作業者の行動把握による原価把握・作業管理,ベテラン作業者のノウハウの抽出,およびこれらを統合した新営農支援システムの実証実験を開始した。

山崎 富弘, 渡邊 智之

ネットワークの世界における「見える化」は,これまで死活監視による装置の状態,各装置が処理している通信量,あるいはネットワークの輻輳(ふくそう)状態などを運用管理者に見せることであった。電子商取引などの通信基盤を支えるネットワークインフラとしては重要なことではあるが,直接ネットワーク装置がビジネス状況,とくにエンドユーザの動向を見える化できていない。
今後は顧客ビジネスを支援するためのビジネスの見える化が必要になり,サーバだけでは実現できなかった部分をネットワーク装置が補完し実現することが重要になる。
本稿では,見える化のポイントとしてサーバ負荷分散装置(SLB)に着目し,SLBに新たにアクセス制御ゲートウェイ(ACGW)機能を追加することで,エンドユーザの見える化を行う手法について述べる。

加藤 隆夫, 舟田 隆司, 寺崎 泰範

ブロードバンドネットワークの浸透とともに,ネットワークを使ったサービスの提供形態に大きな変化が進行している。SaaS,PaaSなどによって,様々なサービスがネットワークで利用可能になりつつある。アプリケーションでも,コンピュータでも,ストレージでも,必要なものはネットワークを介して組み合わせ,多様なサービスを迅速に提供できるようになりつつある。富士通でも,システム構築によって培った技術やデータセンタで蓄積した運用ノウハウなどにより,低コストかつスピーディに信頼性の高いSaaSサービスを提供できるよう取り組んでいる。このようなサービス経済へのシフトに呼応し,ネットワーク社会のインフラとして,ネットワークの価値を高め,新しいサービスを迅速に提供するサービスプラットフォームを構築することがますます重要となってきている。
本稿では,ネットワークのサービス化の今後の方向性とサービス提供プラットフォームのアーキテクチャ,要素技術の研究開発の取組みについて紹介する。

中条 孝文, 加藤 正文, 中後 明, 関根 久幸

オペレーション&マネジメント

FTTH(Fiber to The Home)やモバイル通信で映像・高品質音楽を自宅や携帯端末で容易に楽しむことを可能にするIP(Internet Protocol)による通信サービスが急激に普及している。IP通信は広帯域の信号を伝送できるが,信号のトラフィックが場所や時間によって変動するため中継する伝送ネットワークに,このトラフィック変動を吸収する機能を要求している。一方,従来の電話や専用線サービスのトラフィックは,計画的に予測されて伝送ネットワークを設置し,安定で高信頼のネットワークを実現してきた。
本稿では,従来の安定な伝送ネットワークで培われてきた運用の管理システムを機能拡張し,IP伝送ネットワークや従来の伝送ネットワークを擬似してIPネットワークを管理する富士通のネットワーク管理システム(AW Navi)を紹介する。

森川 久, 余越 紀之, 半田 利光

IPネットワーク上に構築されたICTシステム(ネットワークサービス)で発生するトラブルは原因・箇所がネットワーク,サーバ,さらに,データ(コンテンツ)自体に及ぶため,原因究明に困難さを伴い,しばしば復旧に長時間を要する場合がある。
著者らは,このような問題の解決に向けて,ネットワークを流れるパケットのキャプチャをベースとしてネットワークに無用な負荷をかけず,また,ネットワークサービスの利用者が感じるトラブルを敏感に検知し,早急に障害の原因・箇所の診断を可能とする,ネットワークサービスの監視診断技術の研究開発を進めている。
本稿では,ネットワーク障害の原因・箇所切分けに始まり,複数のサーバを経由するサービスにおけるサーバ遅延の診断,さらに,IP電話サービスにおける音響的な品質劣化に及ぶ,多角的なネットワークサービスの監視診断技術について紹介する。

森永 正信, 野村 祐士, 大谷 猛, 河場 基行

現在,それぞれ独立して存在している既存の音声通信・映像配信・データ通信の各ネットワークは,世界のキャリアにおいてIPネットワークへ統合化が進められている。この統合された次世代オールIPネットワークには,品質要件の異なるデータが混在し,多種多様なサービスが提供されていく。Proactnes IIは,ネットワークサービスの運用管理をサポートするシステムであり,ネットワークの「見える化」を実現し,安全・安心なサービス・ネットワークの提供に貢献する。
本稿では,Proactnes IIが保有する,ネットワークセンシング技術,音声品質管理技術,故障解析技術,ダッシュボード技術を概説する。

松田 英幸, 藤中 紀孝, 小川 淳, 村本 智宏


---> English (Abstracts of Papers)