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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2008-9月号 (VOL.59, NO.5)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2008-9

特集:「科学ソリューション」

本特集では,富士通の科学技術分野における広範囲にわたる活動実績の一端として宇宙・天文・原子力分野のアプリケーションシステム構築事例,研究開発活動を支える大規模テクニカルコンピューティングシステム構築事例,およびその利用技術,ものづくりにおける,CAEパッケージなどを利用した研究・設計・開発へのシミュレーション技術導入事例などを紹介いたします。


取締役副社長
広西 光一
取締役副社長 広西 光一 写真

科学ソリューション特集に寄せて(PDF)

富士通は,科学技術分野のお客様にご指導をいただきながらご要求にお応えしていく中でお客様とともに技術蓄積を図ってきました。
本特集では,富士通の科学技術分野における広範囲にわたる活動実績の一端として宇宙・天文・原子力分野のアプリケーションシステム構築事例,研究開発活動を支える大規模テクニカルコンピューティングシステム構築事例,およびその利用技術,ものづくりにおける,CAEパッケージなどを利用した研究・設計・開発へのシミュレーション技術導入事例などを紹介させていただきます。

特集:科学ソリューション 目次〕

社会システム構築技術

  • 緊急時迅速放射能影響予測(SPEEDI)ネットワークシステム
  • 北陸電力原子力発電所の保守業務システムの構築

宇宙,天文業務システム構築技術

  • 高精度軌道決定技術
  • 温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)地上システム
  • ALMAを支える相関器制御システム

大規模サーバ,ストレージシステム構築,利用技術

  • JAXA統合スーパーコンピュータシステム
    —概要とシステムの中核「富士通のテクニカルコンピューティングサーバFX1」—
  • スーパー神岡実験解析用電子計算機システム
  • 超大規模遺伝子配列DBシステムの構築
  • 第一原理分子動力学・PHASEの超並列化
    —次世代スーパーコンピューティングに向けて—
  • 製造業におけるHPCソリューション事例
  • シームレス可視化ソリューション
  • キャンパスグリッド

計算機利用技術,シミュレーション技術

  • LS-DYNAによる自動車の大規模衝突解析
  • 電磁波解析ソフトウェアPoynting
  • ITが切り拓く創薬研究の新時代
  • HPC向けISVアプリケーションへの取組み

特集:科学ソリューション


社会システム構築技術

緊急時迅速放射能影響予測(SPEEDI:System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information)ネットワークシステムは,原子力関連施設から大量の放射性物質が放出される恐れが生じた場合,周辺環境における放射性物質による影響を迅速に予測するシステムであり,財団法人原子力安全技術センターが文部科学省からの委託により運用しているものである。富士通では,SPEEDIネットワークシステムの主要な機能の開発,各種サーバ導入,ネットワーク整備など,システムの構築および運用・保守を継続的に支援してきた。
本稿では,SPEEDIネットワークシステムの開発および運用の状況を紹介し,富士通のSPEEDIネットワークシステムへの支援の取組みについて述べる。

三澤 真, 永森 文雄

北陸電力株式会社は石川県志賀町に原子力発電所を建設し,1993年7月の1号機の営業運転開始以来,15年以上の運転を重ねてきている。原子力発電所の運転は,発電に加え大規模なプラントを保守・点検することがもう一つの大きな業務になるが,近年,原子力業界では発電所におけるトラブルを発端に,保守・点検などの国の検査制度が度々改正されている。
本稿では,大規模プラントである原子力発電所の保守作業を安全,かつ効率的に進めるために,ITを効果的に利用した原子力作業管理システム,および原子力保守履歴管理システムの導入背景・目的,業務システム開発手法,およびシステムの特徴について述べる。

中村 達明, 蓮沼 潤一, 鈴木 信太郎

宇宙,天文業務システム構築技術

富士通は1971年以来,日本における人工衛星の軌道決定システムの大半を開発し,その技術は各方面から高い評価を受けている。1990年代中ごろになると人工衛星による地球観測の高精度化・高度化に伴い,軌道決定精度に関して,従来のシステムでは実現し得ない高い精度が要求された。本要求に対し,独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)(当時,宇宙開発事業団)様はGPSおよび衛星レーザ測距(SLR)を使用する高精度軌道決定システム(GUTS)の整備を企画し,その中核を成す軌道決定部分を富士通が開発した。富士通は,GUTSの運用も担当し,その中でシステムの改良を続け,高い軌道決定精度の維持・向上に努めている。
本稿では,GUTSの概要,富士通が担当した軌道決定にかかわるコア技術,現時点でのシステムの達成精度について紹介する。また,GUTSで培った技術をベースとした高精度測位実験システムの概要を紹介する。

片桐 征治, 山本 洋介

日本の宇宙開発利用と航空研究開発を行う機関である独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)様は,温暖化の基礎データである温室効果ガスを観測するための衛星,温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT:Greenhouse gases Observing SATellite)の打上げを2008年度に予定している。富士通は,長年にわたり衛星の搭載システムや地上システムの構築に携わってきており,そこで培った業務ノウハウと,富士通の持つソフトウェア開発技術,IT機器計算機がGOSAT地上システムでも活用されている。
本稿では,一般的な衛星地上システム,GOSAT地上システムの紹介と,富士通が担当するシステムと計算機,ミドルウェアについて紹介する。また,GOSAT地上システムの中で,とくに富士通が貢献している,軌道決定,観測計画などのシステムについて詳しく紹介する。

横溝 正人

自然科学研究機構国立天文台様は,米欧の天文台と共同で,南米チリのアタカマ砂漠近くの高度5000 mの高原に,大型電波望遠鏡の建設を進めている。この計画はALMA(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)計画と呼ばれている。富士通は,(株)FFC(エフ・エフ・シー)と共同で,大型電波望遠鏡で収集したデータを干渉処理する専用計算機である相関器(ACA Correlator),およびLinuxサーバPRIMERGYをベースとする相関器制御システムの開発を担当している。相関器制御システムで用いるPRIMERGY RX300 S3は,チリの高度5000 m,0.5気圧という過酷な環境下で運用する必要があり,安定した運用を実現するために,ディスクレスシステムの採用,同等高度環境下での長時間稼働テストの実施,故障時の速やかな対応のためのリモートメンテナンスシステムの導入を行った。
本稿では,ALMA計画を簡単に紹介し,相関器制御システムの選定から導入において実施した安定運用実現のための施策について述べる。

阿部 勝己, 河瀬 祥子, 森屋 光弘

大規模サーバ,ストレージシステム構築,利用技術

独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA:Japan Aerospace Exploration Agency)様は,富士通のテクニカルコンピューティングサーバFX1を中核とするJAXA統合スーパーコンピュータシステム(JSS)を,2009年4月の本運用に向けて導入する。
JAXA統合スーパーコンピュータシステムは,大規模(超)並列計算機システム,ストレージシステム,大規模共有メモリシステムおよび遠隔利用システムの四つの要素から構成され,卓越した並列アプリケーション実効性能,大容量・高速ストレージおよび遠隔利用といった特徴を有する。
本稿では,JAXA統合スーパーコンピュータシステムの概要とその特徴について説明する。

阿部 孝之, 稲荷 智英, 関 堅

東京大学宇宙線研究所様は,神岡宇宙素粒子研究施設を1996年に新設し,地下1000 mに建設された5万トンの超純水を蓄えた水タンク(直径39.3 m,高さ41.4 m)とその壁に設置された11 129本の光電子増倍管(直径50 cm)から成るスーパーカミオカンデを利用し,ニュートリノと呼ばれる素粒子の観測を続けている。超新星の爆発など数十年に1度10数秒ほどしか観測できないケースも確実にとらえるため,観測は24時間365日続けられ,蓄積されるデータは膨大であり350 Tバイトにも及ぶ。富士通ではこの膨大な観測データを大容量ディスク装置に格納し,高速にアクセスして解析するための計算機システム(スーパー神岡実験解析用電子計算機システム)を2007年2月に導入した。本稿ではスーパー神岡実験解析用電子計算機システム全体の構成とニュートリノのデータをどのように処理しているかを紹介するとともに,いかにしてデータアクセスの高速化とスループット性能の向上を図ったかについて紹介する。

万谷 哲, 松崎 義昭, 山口 靖, 神林 康喜

大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ研究センターは,欧州のEBI/EMBLおよび米国のNCBI/GenBankと共同で,国際塩基配列データベースを構築し,全世界の研究者の研究に供している。生命科学研究の進展とともにこの国際塩基配列データベースは毎年,前年比130~150%という爆発的な拡大を続けており,データベースの構築・公開,検索・解析サービスの提供には大規模なコンピュータシステムが必須である。また継続的な性能・容量の増強とソフトウェアの進化が重要である。
本稿では,爆発的データ増大への対応,高速かつ安定した検索・解析サービスの提供,旧システムからの円滑な移行,ユーザ資産継承,互換性の実現, 高信頼性の実現とセキュリティ対策といった困難な要件を克服し2007年3月に運用を開始した新スーパーコンピュータシステムについて説明し,本システムの日本および国際的な生命科学研究への貢献について紹介する。

菅原 秀明, 山田 弘明, 山田 久仁

PHASEは半導体・金属などの種々の物性を,量子力学に基づく電子状態計算によって解明・予測する第一原理分子動力学計算のシミュレーションコードである。このコードは文部科学省による革新的シミュレーションソフトウェア開発プロジェクトによって開発されたコードの一つで,この開発に富士通は参画している。
近年の計算規模の大規模化への要求により,数万原子規模の計算に対する需要が高まっており,このためには数万の演算器(CPU)を同時に動作させることによって高速に処理する,超並列処理が必要になる。そしてそのためには,実行するシミュレーションプログラムをそのような高並列に対応させるための超並列化が必要になる。
本稿では,このPHASEコードを超並列化するに当たって今回著者らの採った方法,すなわち大規模問題において演算負荷の高くなる部分として抽出したカーネル部分に対して,2次元分割の超並列化を実施した方法を説明する。そしてこの際に,CPU(プロセス)間のデータ転送量が演算量に比べて小さく取れ,予想として超並列化が高い性能を得ることを示す。

小松 秀実, 山崎 隆浩, 市川 真一

従来スーパーコンピュータと呼ばれていたHPC(High Performance Computing)システムは,演算性能が最も重要な要件だった。ユーザは高価かつ高性能なハードウェアを効率良く利用するための高度なスキルが求められた。近年のHPCシステムは,PCクラスタに代表されるように汎用アーキテクチャをベースにしたものとなり低価格化が進んだ。現在では,計算科学の研究を専門とする一部のユーザだけでなく,開発コスト削減を目的とした試作レスのためのシミュレーション活用を推進する製造業の設計開発部門にもHPCシステムが普及しつつある。それに伴い,多くのユーザが簡単にHPCシステムを利用・管理したり,設計開発業務を効率化できるソリューションが求められるようになった。本稿では,Webを活用したHPCシステムの利用ツール"HPC Portal",運用管理ツール「運用管理Portal」,ワークフローツール"SynfiniWay"とこれらを活用したソリューション事例を紹介する。

鈴木 孝一郎, 内田 延宏, 倉石 英明, John Wagner

計算機の単体性能の高速化や分散並列化に伴い,研究者はより大規模なデータを取り扱うようになってきている。これに伴い,計算結果の確認における可視化の重要性は,ますます増してきている。しかし,研究者が汎用可視化ソフトウェアを駆使して可視化を行うためには,作成されたデータ(計算結果など)に対して,多数の可視化手法の中から最適な手法の選択や組合せを行う作業が必要になるなど,様々なスキルが要求されてきた。シームレス可視化ソリューションでは,可視化を計算機利用の流れの中での不可欠な1プロセスとして位置付け,可視化の専門家でなくても研究者が遠隔地の利用者端末を通して小規模から大規模までの計算結果を可視化できる可視化環境を実現した。
本稿では,適用事例を交えてこれからの可視化を紹介する。

荒川 拓也, 小笠 温滋

大学の計算機利用には,大きく教育用途と研究用途がある。研究用途では,最先端の研究を推進するために,大規模な解析が可能な研究支援環境が求められてきた。一方,大学運営では,効率化が必須であり,限りある予算で高性能な計算サーバを導入し運用することは困難な状況となっている。
富士通は,教育用PC群を夜間や休日に研究用PCクラスタに切り替えることで,研究支援環境を創出する「キャンパスグリッドソリューション」を提供している。
本稿では,キャンパスグリッドの概要,最大の特徴であるパラメトリックスタディにおけるジョブ操作の省力化・自動化,教育用PC群の運用切替え方式について解説する。さらに,キャンパスグリッドの活用事例と効果について述べる。

石坂 晃

計算機利用技術,シミュレーション技術

計算機シミュレーションによる自動車の衝突解析は,自動車開発の期間短縮とコスト削減に欠かせないツールとなっている。開発期間の更なる短縮のため,解析モデルの作成時間短縮の研究が進められ,短時間で人手を介さずに解析モデルを作成することが可能となりつつある。しかし,人手を介さない解析モデルの作成では,実用レベルの解析精度を得るために,現在自動車会社で利用されている解析モデルの10倍以上に詳細化が必要となり,実用的な時間で解析することはできない。そこで,並列計算機を用いた高並列計算での実用解析の実現可能性について検討した。本稿では,自動車会社における大規模解析の必要性を述べ,非線形動的構造解析ソフトウェアLS-DYNAを利用し,現在自動車会社で利用されている規模の解析モデルを10倍に詳細化させた1000万要素の解析モデルを512並列まで高並列実行させ,その結果知り得た技術情報,高速化の施策および今後の検討課題を述べる。

金堂 剣史郎, 牧野 光弘

近年,コンピュータシミュレーションによって電磁波の挙動を解析する取組みが非常に活発である。実際,エレクトロニクス分野の研究開発においては,期間短縮や費用削減を図る目的で,電磁波解析ツールの導入が不可欠になってきている。これには,移動体通信の急速な普及に伴ってマイクロ波デバイスの研究開発が活発になっている,電子回路の電気信号が高速化してその電磁波的な振舞いを考慮する必要が生じている,電子機器からの漏えい電磁波の対策が必要になっている,といった背景がある。富士通では,このような分野で電磁波の挙動をシミュレーションするニーズに応えるべく,電磁波解析ソフトウェアPoyntingの開発,販売およびサポートを行っている。
本稿では,Poyntingの基本機能,並列計算機能,CAD連携機能,回路シミュレータ連携機能について解説するとともに,Poyntingを用いたパッチアンテナ,ミアンダライン,プリント回路基板の計算事例を紹介する。

並木 武文, 巨智部 陽一, 笠野 恭利, 小田 恭裕

医薬の開発は,一般に,疾患と関連の深い体内物質(標的タンパク質)を同定し,この働きを制御する小さな化合物を,既知の化合物ライブラリから探してくることから始められる。したがって,その探索範囲は初めから限定され,新しい構造を持った化合物(新薬)の創出が次第に難しくなってきている。近年,コンピュータの処理能力向上により,コンピュータを用いた医薬の研究開発,すなわち「IT創薬」が可能となった。IT創薬では,タンパク質や化合物の3次元立体構造情報と分子シミュレーション技術を駆使することで,既知の化合物にとらわれることなく,探索範囲が劇的に広げられるようになり,仮想的な未知物質を含む医薬候補化合物を設計することが可能である。
本稿では,コンピュータ上の網羅的大量計算を基盤として医薬設計のブレークスルーを達成したIT創薬の概要を紹介する。

松本 俊二

大学・研究機関,産業界では,研究開発のために,計算機シミュレーションが広く行われている。これらシミュレーションには,HPC(High Performance Computing)プラットフォームが使用されることが多く,また国内外の様々なISV(Independent Software Vendor)アプリケーションが利用されている。このため,富士通は,富士通のHPCプラットフォームでISVアプリケーションを利用するお客様のために,国内外に5箇所のISVアプリケーション対応拠点を設け,グローバルな体制で,富士通のHPCプラットフォームへのイネーブリング推進と高速化,およびISVアプリケーション利用時のトラブル解決支援を行っている。
本稿では,富士通のHPCプラットフォームおよびHPC向けISVアプリケーションの性能特性,利用時の支援内容,支援体制について具体的に紹介する。

福永 隆志


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