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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2007-7月号 (VOL.58, NO.4)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2007-7

特集:「品質保証」

本特集号では,富士通の品質保証の特徴,高信頼性へのこだわり,サービス・サポート品質への取組みなど,富士通グループの品質保証活動の一端をご紹介いたします。


特別顧問 品質担当
木村 弘正
特別顧問 品質担当 木村 弘正 写真

品質保証特集に寄せて(PDF)

富士通の品質に対する強いこだわりは,1966年の「高信頼性運動」から始まり,「品質こそすべてに優先する」,「質はどこでもものを云う」が根底にありました。2001年からQfinity活動を開始し,お客様から見た品質,例えば「知覚品質」など満足度の向上を目指しています。

特集:品質保証 目次〕

概要

  • 富士通の品質保証への取組み

製品群別品質活動

  • 企業向けソフトウェアパッケージに対する品質活動
  • 海底中継器の信頼性技術
  • サーバ製品の源流からの品質作り込み
  • ストレージ製品ETERNUSの品質保証
  • ノートPCの構造要件と評価技術
  • ソフトウェアにおける品質改善活動
  • 機構評価の技術改革とフロントローディング
  • メカコンポーネントの品質保証技術

お客様システムの安定稼働

  • サービス品質改革によるシステムの安定稼働推進
  • 運用を起点としたサポートインフラの提供

製品群横断の品質活動

  • 購入部品の品質保証活動
  • 開発プロジェクト審査による製品品質の向上
  • ハードウェア製品の品質を支える試験・保守プログラム:TMP
  • システム安定稼働に向けた総合的評価の取組み
  • 品質情報システムの概要と全社展開活動
  • お客様システムごとの品質監視
  • 富士通の品質改善の型"Qfinity"

特集:品質保証


概要

富士通はテクノロジにこだわり,製品・サービスの品質で他社に負けない企業を目指すことを基本方針に掲げて取り組んでいる。富士通の品質保証の中で特徴的な部分は,各製品の品質を横断的に確保する機能を組織として有している点である。富士通では各事業部門が「継続して良い製品・サービスをお客様に提供できるようにする」ため,社会基盤システムへの高信頼性取組み,コンシューマ市場への大量生産に対する品質確保,購入部材の採用増加,工場の関係会社移転などの製品開発・製造プロセスの変更,お客様先でのシステム安定稼働への取組み,品質に関するコンプライアンス遵守など,常に環境変化をにらみ,タイムリに品質保証の仕組みを見直してきた。
本稿では,開発/設計~製造~試験~保守にわたる各ステージにおける富士通の「品質」に対する取組みについて紹介する。

酒井 正弘,長倉 明彦,後藤 直子

製品群別品質活動

富士通は,GLOVIA製品系列として法人業務向けパッケージ製品を開発している。製品系列として,会計・生産管理などの基幹業務系,フロント業務系,モバイル業務連携などのパッケージ製品を有し,製品ごとに業務領域対応の機能を具備し,体系的な事業展開を行っている。この製品に対する品質活動としては,製品・関係・サポート・アフター・費用対効果の五つの品質領域を総合して「サービス品質」と位置付け,追求することを最重要ポリシーとし,このうち,製品品質については品質保証・改善活動で一般的な品質の確保に加え,それぞれの業務領域で特に重要な機能や留意事項への重点的対応を展開している。具体的には,2006年4月のCMMIレベル3の達成など開発プロセス改善活動に加え,社内適用による運用品質の早期向上や,顧客業務遂行上必要な高い信頼性・可用性・堅ろう性の担保,根幹的機能要件の重点的検証の実施を行っている。
本稿では,会計系業務パッケージ(GLOVIA/SUMMIT・GLOVIA-C),およびフロント系パッケージ(BC ContactPlus)の製品品質活動,さらに今後の改善方向について述べる。

種池 一雅,岡田 秀明,石上 浩,向山 英伸

富士通の海底中継器は,1969年に納入した北海道内浦湾ルート用同軸海底方式中継器に始まり,今日の光増幅海底方式用中継機器に至るまで,太平洋をはじめとする世界の多くの海域に敷設されている。
この間,海底中継器の数は,同軸海底方式および光海底方式の合計で約2400台に達しており,商用回線として運用後,フィールドでの障害はゼロである。このため富士通の海底中継器は世界で最も信頼度が高いと評価されている。
この高信頼度海底中継器は,部品の開発から,中継器の設計・開発,製造・検査に至るまで一貫した思想のもとに初めて実現できるものであり,全部門で綿密な連携を取って,信頼度を確保する仕組みを構築した。
本稿では,海底中継器の高信頼性を築いた取組みを紹介する。

原沢 伸一朗,墨谷 一,太田 研二

近年,製品のライフサイクルが短くなる中,いかに早く新製品を開発し,いかにして信頼性の高い製品を作り出すかがビジネス成功のかぎとなっている。
主要な事業であるサーバ製品の開発においても開発スパンが短くなっており,当然のことながら従来の開発スタイルでは達成できなくなってきた。また,製品保証の面からも製品評価や量産での問題は致命的となる。
このような背景から,著者らは製品保証から見た「源流からの品質作り込み」をテーマに活動を続けてきた。製品開発での工程遅延要因の一つとして,設計問題によるLSIリメークが挙げられる。
本稿では,サーバ製品におけるLSIの開発,およびシミュレーションの手法について,「LSIリメーク0件」に向けた製品保証への取組みを紹介する。

藤岡 泰規,田中 睦浩

ストレージシステム製品は「お客様の大切なデータを守る」,「部品故障があっても動作し続ける」ことを重要目標として製品開発をしている。これらの目標達成に向け,部品故障を想定した様々な擬似故障を発生させ,データ保証と可用性および動作中の復旧作業手順妥当性の観点でサーバも含めたシステムとしての検証を繰り返し実施している。
しかし,2001年まではこれらの擬似部品故障を手作業で発生させていたため,その網羅性に限界があった。これら網羅性を飛躍的に向上させるために,2002年以降,新しい評価手法の導入に積極的に取り組んできた。
本稿では,2002年に開発したETERNUSシリーズで導入した新しい評価手法である,擬似故障発生装置,擬似ディスク,繰返しテストなどによりストレージシステム製品の高い信頼性と可用性を実現させてきた取組みについて紹介する。

小松 守,崎田 雅史

近年の急速なテクノロジの進歩や,社会インフラ・AV環境の整備により,ノートPCは,急速に小型化・軽量化・高性能化が進んでいる。これが,お客様に受け入れられ,ビジネスシーンでは不可欠なツールとなり,パーソナルユースでの活用も拡大し,様々な場所で使用されるようになってきた。例えば,携帯性が向上したことにより,気楽にカバンやバッグに入れて持ち歩けるようになり,今まで以上に,ノートPC本体の堅ろう性,外装の傷つきにくさ,また外部コネクタの耐久性の向上などの要望が多くあがるようになっている。こうしたお客様の使用環境やシーンの多様化に対応し,タイムリに要件を抽出して,製品開発や評価技術に生かし,お客様に安心して快適に使っていただける製品として提供していく必要がある。
本稿では,近年富士通が取り組んでいる,構造デザインに関する「ノートPCの構造への取組みと評価技術」について紹介する。

宇佐美 隆一,川喜田 裕司,藤野 育男

富士通が支えるITシステムは,様々な社会システムのインフラとして利用されており,ITシステムの基盤ソフトウェア(OS,ミドルウェア)の安定稼働が重要視されている。従来,メインフレームで構築されてきたミッションクリティカル分野のITシステムもオープン系システムとして構築されるようになってきており,オープン系基盤ソフトウェアの高品質化への期待はますます高まっている。このような中,高品質な「ものづくり」を実現し,お客様にとって魅力的な商品を開発し続けるための開発プロセスをどのようにして構築し改善していくかが多くの開発者の急務の課題となっている。
本稿では,TRIOLEシステムの中核となるオープン系基盤ソフトウェアにおける最近の品質改善活動として,お客様起点で商品を構築する「仮想カタログ」,および製品開発時の「リスク管理」,「開発環境」,「システム検証」を紹介する。

村井 宏,齊藤 王央,福田 昭一

富士通では携帯電話の開発において市場で実際に使用される状況を想定し,多種多様な評価を行い,その結果に基づいた品質改善を繰り返しながら装置の強度確保を行っている。
現在の携帯電話市場のビジネス環境は契約者数が9600万人を超え,人口の約76%に達している状況であり新規契約は見込めない厳しい状況である。その環境下で勝ち抜いていくためには,市場ニーズにマッチした魅力的な携帯電話を短期間で開発し,競合他社に先駆けて発売することが重要となる。
本稿では,携帯電話の短期間開発へ向けた施策の一つである機構評価の技術改革とそのフロントローディングについて,具体的な内容と成果を紹介する。

佐藤 正之,野崎 豊,川道 武継,石川 重雄

富士通製のATMに搭載されている紙幣還流型入出金ユニットは,1秒あたり紙幣10枚以上の紙幣高速搬送を行っている。また約6500点におよぶ部品から構成されており,制御も複雑である。扱う紙幣も官封券から流通券で変形のあるものまで紙幣の状態・使用環境の変化にも対応できなくてはならない。通常の製品評価では信頼性試験,安定度評価などを実施しているが,さらに,メカユニットについては,それを構成する部品個々の機能を確認,保証して全体を積み上げることにより一つのユニットを完成させる。
本稿では,この紙幣還流型入出金ユニットを例にとりメカコンポーネントの開発評価から量産段階における品質保証技術の紹介を行う。

矢崎 俊行,新川 悌司,置地 均

お客様システムの安定稼働

業界内外でのCS(顧客満足)意識の高まりに呼応して,保守サービス品質に関するお客様の要求・期待は高まる一方であり,富士通では,「お客様起点」,「納期・品質・スピードへのこだわり」などの強力なトップメッセージのもと,各ビジネスグループがCS活動・品質活動を展開している。
本稿では,富士通の保守サービス部門が展開したサービス品質改革「スピードde NO.1」活動を紹介する。
スピードde NO.1活動は,富士通保守部門の最優先テーマ「お客様システムの安定稼働」をスピードの切り口から追求したもので,お客様接点であるCEやコールセンターの作業プロセス改革や,新たなサービス品質の把握・フィードバックの仕組み構築により,保守サービスにおけるスピードを飛躍的に向上させた。

見目 久美子

複雑化したネットワークシステムにおいては,システムインフラそのものの変化も激しく,手間のかかる運用やコンピュータウイルスなどの様々な問題も発生し,お客様からは「より高度で,より安心・安全なサービス」への期待が高まっている。富士通では,このようなニーズに応えるため,オープンネットワークシステムの保守作業のIT化,効率化にも取り組み,サポートインフラの開発にも力を入れてきた。また情報セキュリティ対策の強化を図るため,ISO27001およびISO20000の認証を取得し,お客様に安心してオープンネットワークシステムのサポートサービスを任せていただける環境を整備した。
本稿では,このサポートインフラを活用して,稼働中のシステムの安定稼働を基盤として,お客様の要望・社会のニーズに応えるための仕組み(技術)と適用効果(事例)について紹介する。

長谷川 満,本多 賢治

製品群横断の品質活動

富士通は,従来より「信頼と創造の富士通」として,高信頼性・高品質な製品の提供を目指し,たゆまぬ品質保証活動を進めている。富士通製品は,いろいろな部品で構成されており,この部品品質が富士通製品の品質を支える基幹要素の一つであると言える。
昨今,安全性・品質に関連したリコールが社会問題となっている。これらリコール原因の一部は,バッテリなどのサプライヤから購入した「購入部品」の品質に起因するものである。富士通では,過去の経験を踏まえ,部品品質に着目した品質システムを構築し,現在は,富士通設計装置に搭載する全部品の認定評価を行う体制を整えている。これらの部品認定評価では,製品信頼性への影響を明確にするとともに,部品サプライヤとの良好なパートナシップをベースに継続的に高品質な部品を使用することにより,お客様での製品不具合を未然に防ぐ活動を行っている。
本稿では,これらの活動について紹介する。

木谷 晃久,佐々波 素子,清板 勝

富士通では製品開発の上流工程から品質の作り込みを行い,下流工程に障害を流出させないために,開発の各段階で第三者評価を逐次行う開発プロジェクト審査制度を導入している。開発プロジェクト審査制度では,開発の計画時,実施時,出荷試験前の3段階で,品質保証本部と各開発部門専任者がチームを組み,デファクトスタンダードモデルであるCMMIを基盤としたチェック観点と専任者の開発技術スキルに基づき,開発の状況を確認している。開発プロジェクト審査において抽出された問題点を即時に,かつ確実に是正するため,審査側,開発側ともに協議し,審査時に具体的施策や時期を決定している。富士通ではこのように,開発プロジェクトにおける開発プロセスの遵守とその運用による継続的改善を徹底し,実践することで,製品品質の向上を図っている。
本稿では,審査制度の特徴と品質改善活動について述べる。

永田 宗一,島田 さつき

ハイエンドサーバの高度なハードウェア設計に加え,購入部品の急増により,装置品質を維持することが年々困難になってきている。この背景のもと,「富士通品質」を確保するために,ハードウェア製品の設計検証から評価・量産,さらに保守までの製品ライフサイクルで品質保証するTMP(Test and Maintenance Program)を開発してきた。TMPの開発目標は,Testability(高い試験能力),Operatability(高いユーザ満足度)であり,とくに障害検出の網羅性,解析性,および操作性を重視している。TMPはハードウェア製品を第三者として設計評価する品質保証部門やフィールドサポート部門で使用される。
本稿では,TMPの開発ポリシーと各技術について述べる。

宮原 真次,指宿 剛,田中 旬

情報処理システムのオープン化が進む中,お客様のシステムは複雑化・多様化するとともに,多くのハードウェアやソフトウェア製品で構成されるようになった。これらの各製品は開発後各種の検証が行われるが,お客様から見た場合,システムの安定稼働に向け,総合的に一貫した品質保証体制が期待されている。
富士通では,ITシステム総合ベンダとしての評価技術を生かし,各製品間での整合性確認やミッションクリティカルなシステムに要求されるシステムの冗長性,可用性の確認に向け,総合評価を行っている。また,オープン化による他社製品を含んだお客様システムに対して接続性検証を実施し,さらには各お客様システムの要件を取り入れた運用の検証に取り組んでいる。
本稿では,上記の取組みと,これらの評価・検証に向けた各種評価ツールを紹介する。

黒木 優一郎,上西 好文

近年の情報処理システムのオープン化により,富士通製品にも専用開発部材から世界標準の部材が採用されるようになり,従来の製品単位の品質管理に加え,製品を横断的に管理することが必須となった。また,インターネット技術など急速なテクノロジの発達,お客様の情報処理システムの24時間365日運用など,利用形態が大きく変化し,かつノンストップでのシステム安定稼働が求められるようになっている。このような,ハードウェア製品の高信頼性・お客様システムの安定稼働を目的に,富士通は,各製品の企画・設計から評価・製造・試験・出荷までの工程,さらにお客様システムの保守情報を含めた品質情報を一元管理し,品質異常の検出や,稼働監視などを統合した「品質情報システム」を構築・運用している。
本稿では,品質情報システムの機能概要と,関係会社を含む全社へのシステム展開の取組みについて紹介する。

鈴木 茂彦,牛尾 泰典,宮沢 よしの

富士通は「お客様の品質満足度向上」を目指し,従来のハードウェア製品別の品質活動に加え,お客様システムごとの品質監視活動をハードウェア中心に展開している。以前から行っていた,サポート部門,事業部門,フィールド部門が一体となったお客様のシステム安定化活動は,評価は高いものの,分析・評価に多大な工数が必要で,活動対象拡大が困難であった。この課題に対し,従来の安定化活動のノウハウを整理・標準化し,障害発生情報の収集や品質状況のグラフ作成などを自動化することにより,活動の対象を広げている(2007年2月末現在:約460システム)。また,品質情報・問題点をサポート部門,事業部門,フィールド部門間で共有する仕組みを構築し,お客様システムの安定稼働に効果を発揮している。
本稿では,お客様システムごとの品質の判断手法,および問題検出時の対応の仕組みを紹介する。

栗原 康夫,増田 英二

富士通は「信頼と創造の富士通」をキャッチフレーズに,1966年から主に製品の機能や信頼性の向上を目的とした「高信頼性運動」を推進し,1977年からは製品のコストダウンや事務の合理化などを目標とした改善工夫提案「VE(Value Engineering)推進活動」を展開してきた。その成果を継承しながら,新しい時代に対応した品質改善活動を目指して2001年4月からスタートした取組みが"Qfinity"である。
富士通は,Qfinityを「品質改善の型」と位置付け,製品の機能や信頼性だけでなく,お客様対応,納期対応,コスト低減などを含めたあらゆる業務の品質をPDCAサイクルを用いて徹底的に追求している。
本稿では,富士通の品質改善活動であるQfinityについて紹介する。

杉本 伸二


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