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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2007-5月号 (VOL.58, NO.3)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2007-5

特集:「研究開発最前線」

富士通研究所では,ITインフラを進化させる最先端テクノロジの研究開発を継続的に深耕するとともに,新しいビジネスモデルやソリューション構築の基盤要素として,ビジネスや生活の現場を変革していくユビキタス技術の開発と,さらに,新しい価値を生み出す将来技術の種として,材料・デバイス分野の研究開発に取り組みます。

本特集号では,10年後を見据えたテクノロジ・ロードマップを基軸として,材料・デバイスから,ネットワーク,ITシステム,ソリューションまで,一貫した研究開発の取組みの一端をご紹介します。


株式会社富士通研究所 代表取締役社長
村野 和雄
株式会社富士通研究所 代表取締役社長 村野 和雄 写真

研究開発最前線特集に寄せて -21世紀型研究所を目指して-(PDF)

インターネットを基盤とする情報通信革命の飛躍的な進展により,世の中の動きや産業構造は大きく,そして急激に変化しています。この変化を先取りして,新しい価値やソリューションをお客様や未来社会に提供し続けるために,富士通研究所は「21世紀型研究所」を目指した活動を推進します。
21世紀の研究開発では,「科学」と「技術」に加えて,「ビジネスモデル」と企業の「社会的責任」が重要になると考えています。富士通研究所が目指す「21世紀型研究所」は,これら四つの要素が融合した研究開発を推進して,お客様のバリュー・クリエーションに貢献します。

特集:研究開発最前線 目次〕

概要

  • 研究開発最前線 -富士通研究所の取組み-

最適なマネジメントと情報セキュリティガバナンスを実現するソリューション

  • e-文書・内部統制向け文書画像認識技術
  • 印刷物セキュリティを実現する透かし技術
  • 業務把握インタビュー手法 -業務の実態をワーカ視点で見える化し,課題を抽出する-
  • サポート業務効率化のための分析技術
  • FRAMを利用したICTソリューションにおける環境負荷評価

ビジネスや生活の現場を変革するユビキタス技術

  • ネットワーク知識の応用
  • UHF帯RFIDタグ一括読み書き技術
  • 車載向け映像伝送用圧縮技術:SmartCODEC
  • 仮想試作システムVPS

ITインフラを進化させる最先端テクノロジ

  • TRIOLEオーガニックコンピューティングアーキテクチャ
  • 現場業務を実行・最適化するサービス基盤技術
  • 自律的なサーバ共有を実現するグリッドミドルウェア:Grid Service Platform
  • 20ポート10GイーサスイッチLSIとその応用
  • 超高速光ファイバスイッチと光信号処理への応用

ユビキタス情報システムを支える材料・デバイス

  • 量子ドット光デバイス
  • 超高速・超低雑音InP HEMT IC技術
  • 統計的遅延解析技術
  • FRAM混載LSI用強誘電体新材料技術
  • カーボンナノチューブの放熱バンプ技術

特集:研究開発最前線


概要

富士通研究所は,「21世紀型研究所」の活動理念のもとに,新しい時代の要請を先取りした研究開発を進めている。人に優しく,地球環境に優しいユビキタス情報社会を構築するために,材料・デバイス,ネットワークやコンピュータシステムのそれぞれの研究領域で性能向上や高度化を図り,安心・安全で快適なソリューションの実現を目指している。
研究所のマネジメントでは,成果をグローバルに展開するため,米国,欧州,中国にも研究拠点を設立し,各地域で活動する特徴を出しながら,技術ロードマップを共有するなど,拠点間の連携を密に研究開発に取り組んでいる。
本稿では,本特集号に掲載したテーマを中心に,富士通研究所が進めている研究開発の一端を紹介する。

安部 文隆,近藤 正雄

最適なマネジメントと情報セキュリティガバナンスを実現するソリューション

2005年施行のe-文書法により紙文書を電子化した画像文書の法的証拠能力が認められ,2008年には日本版SOX法が適用され企業活動において財務情報を中心とした内部統制が義務付けられる見込みである。内部統制の支援のために,企業に蓄積・流通されている膨大で多種多様な形態を持つ紙文書情報や帳票情報を電子化して,効果的な検索やデータ入力を実現することへの期待が高まってきている。そこで,著者らは,e-文書・内部統制向け文書画像認識技術として,多種多様な様式を持つ帳票を従来と異なり様式の事前定義なしに効率的に電子化支援できる「帳票向けカラー定義体レス認識技術」,および膨大で多様な紙文書をワンタッチで電子化し検索可能なPDFに変換する「紙文書向けカラー紙文書検索技術」を開発した。本稿では,これら二つの文書画像認識技術について述べる。

藤本 克仁,武部 浩明,直井 聡

個人情報保護法の全面施行(2005年4月)を契機とし,業種を問わず,個人情報漏えい防止のためのセキュリティ関連の情報システム整備が進んでいる。個人情報保護をうたう従来のセキュリティツール,ソリューションは,「印刷をさせない」ことによる情報漏えい抑止が主流を占めている。このため紙を印刷できない不便は避けられず,業務運用に支障を来す事例が報告されている。富士通研究所では,印刷物に細工をすることによって,紙からの情報漏えいを抑止,追跡する二つのカテゴリの三つの技術(持出し抑止・原本識別のための潜像印刷技術,漏えい時に犯人追跡のための地紋透かし技術とフォント透かし技術)を開発した。
本稿では,これらの技術の概要を紹介するとともに,最近の紙のセキュリティに関するニーズについても簡単に紹介する。

阿南 泰三,倉木 健介,中潟 昌平

お客様の業務を改善する効果的なITシステムを実現するためには,お客様から要求された仕様をそのまま実現するだけでは不十分であり,ITベンダ自身がお客様の業務を的確に把握した上で,お客様と共同で仕様を定義することが重要である。著者らはお客様の現場の業務の実態を個々のワーカの視点から効率良く的確に把握できるインタビュー手法を開発した。本手法は,独自の質問ワークシートなどを活用し,一人1.5時間程度のインタビューで個々のワーカの業務を時間軸・空間軸・人間関係軸など複数の観点からとらえるものである。本手法によるインタビューと1日程度の現場の立会い観察を併用することにより,お客様の現場業務の実態を見える化し,解決すべき課題を抽出することができる。これにより説得力のあるIT提案や手戻りの少ないシステム開発が可能になる。
本稿では,本手法の概要と主な分析成果物を説明するとともに,金融営業店での実践事例を紹介する。

石垣 一司,指田 直毅,矢島 彩子

ハードウェア保守やコールセンタといったサポートサービスの効率化に向けた研究開発の取組みを紹介する。ハードウェア保守やヘルプデスクといった顧客の問題解決業務は,サービスエンジニアやエージェントといった人間が問題解決に当たるため,個々の要員の問題解決能力を高めること,適切に人的リソースを配置することが全体的な生産性の向上につながる。IT化されたサポートサービスでは,修理記録や応対記録といった大量の電子化データが蓄積される運用がなされており,これらのデータに基づいて運用を改善することが期待されている。本稿では,これらのデータの分析により要員の生産性を高める問題解決知識(ナレッジ)を候補選別などで支援するナレッジ作成支援技術,およびコンタクトセンタの要員配置に対する指標値をシミュレーションにより高精度で求める要員配置支援技術について紹介する。

難波 功,山中 英樹,柳瀬 隆史

近年,業務部門などにおいて,IC(Integrated Circuit)タグやスマートカードを利用したICT(Information and Communication Technology)ソリューションが導入され,作業の効率化が図られている。本稿では,半導体デバイスとしてFRAM(Ferroelectric Random Access Memory:強誘電体メモリ)を取り上げ,製造時における環境負荷を分析し,さらに,富士通が開発したICTソリューションの環境評価手法を用いて,FRAMを利用したICTソリューションの環境負荷低減効果を評価した。イベント会場における入退場システムや飲食施設でのキャッシュレス決済システムを導入した場合,従来型システムと比較して,FRAM製造におけるCO2排出量の増加があるものの,作業の効率化やペーパレス化により,全体のCO2排出量を削減できることが示唆された。

中澤 克仁,端谷 隆文,朽網 道徳,丸山 研二

ビジネスや生活の現場を変革するユビキタス技術

ユビキタス技術の進展とともに,ネットワークと実世界の密着度は一層強まり,ネットワークを観察することで,仮想世界だけでなく実世界の状況も察知できるようになりつつある。著者らは,ネットワークをある意図を持って観察することで得られる情報をネットワーク知識と呼び,この知識から実世界・仮想世界に活用できるような価値を見い出すことに挑戦している。ネットワークを流れているのは,単なる0/1のビット列に過ぎず,スイッチやアプリケーションなどのオブジェクトがそれぞれの立場でこれに意味付けをすることで,初めてネットワーク知識になり,この意味付けをする手段が技術となる。本稿では,その具体例として,ネットワークの障害診断・品質監視と4次元トラフィックエンジニアリング(TE)について述べる。これらの技術によって,障害箇所の迅速な特定,品質劣化の予測,将来を見越したネットワークリソース割当ての最適化ができるようになる。

加藤 正文,若本 雅晶

860~960 MHzの帯域を使用するパッシブ型UHF帯RFIDタグは,13.56 MHzや2.45 GHzのようなほかの周波数帯のRFIDタグと比較して広い通信エリアを持つことが特長である。そのため,物流・製造をはじめSCMにおいて普及が期待されている。一方,市場への普及を促すためには,RFIDタグとの確実なデータのやり取りが不可欠である。今回,多数のRFIDタグに対しデータの読み書きの確度を向上させる技術を開発した。タグには書込み性能に優れた富士通製FRAM内蔵RFID用LSI(ISO/IEC 18000-6 Type B準拠)を搭載した。赤外線センサによる位置検出を併用したID検出とデータ読み書きを最適化するミドルウェア技術の開発を行い,1 m/sで移動するタグ100枚に対して,1枚あたり,99.999%以上の成功率でデータの読み書きができることを確認した。本稿では,多数のタグデータを読み書きする際の課題と開発した技術の概要について記述する。

馬庭 透,菅野 博靖,加藤 貢

プレスリリース業界初!UHF帯RFIDタグ100枚の移動一括書き込みを実用化

次世代の自動車では,より安全に運転でき,より快適に車内で楽しめるように,カーナビ,DVD,周辺監視カメラなど,多数の映像情報を扱うことが求められる。1本の車載用LANに多数の映像データを伝送するためには,映像データをデジタル形式に直し,多重化して送る手法が主流になると予想される。映像データの伝送には広い帯域が必要なため,限られた車載LANの帯域幅を有効に利用するには,映像データを圧縮して伝送する技術が必須となる。車載映像向け圧縮技術に必要な要件としては,低コストで,最小の処理時間遅れと,高画質を実現することが挙げられる。
本稿では,これらの要件を満たすために,車載映像伝送専用の圧縮技術として開発した"SmartCODEC"について概説する。

小田切 淳一,中野 泰彦,吉田 茂

プレスリリース車載向けの高速な映像圧縮技術「SmartCODECTM」を開発

現在,製造業においては,設計,開発,製造のあらゆる場面で信頼性の向上,開発期間の短縮,コスト削減の要求が強まり,徹底的な情報技術の活用による,ものづくりの効率化が急務となっている。このような状況の中,富士通研究所で長年研究してきたシミュレーション技術をベースに10年の歳月をかけて開発してきた仮想試作システムVPSは,3次元CADシステムの浸透と相まって,現在,様々なものづくりの現場でその先進性を発揮している。本稿では,VPS開発の経緯,現状有する機能の概要,典型的な適用例,今後の発展性について解説する。

佐藤 裕一,橋間 正芳,千田 陽介

ITインフラを進化させる最先端テクノロジ

社会・経済活動を支えるITシステムを安定させ,柔軟で効率の良い運用を実現できる基盤技術として,自律機能への期待が高い。
本稿では,システム管理者やオペレータなど人間系とITのプロセスを融合するTRIOLEオーガニックコンピューティングについて,まずアーキテクチャの基本構造とそれを支えるシステム知識について述べる。つぎに,その主な構成要素であるヒトとITの一連の運用管理手順を規定する統一的な記述形式について述べ,さらに,運用指針を規定するポリシーと運用テンプレートを用いて,間違いのない手順を簡易に作成する方法についても触れる。最後に,本アーキテクチャの共通基盤であるシステム知識に基づく構成管理データベースについて述べる。

勝野 昭,土屋 哲,安達 基光

サービスの時代となり,顧客接点である現場の重要性が増しつつある。バックヤードの業務システムは,提供するサービスの差異化の源泉ではあるが,大規模かつ複雑になり過ぎているために,顧客のニーズの変化に即応することが難しくなっている。そのしわ寄せが現場にきており,顧客ニーズの変化への対応を現場で働く従業員が負担している。
サービスミドルウェアは現場業務をソリューションとして構築する際の基盤となるもので,現場の担当者向けの実行基盤と,現場の責任者向けの最適化基盤から成る。実行基盤は,業務システムや現場のセンサや機器と連携しつつ,現場の担当者が付加価値の高い仕事に集中できるように,作業の実行を支援する。最適化基盤は,顧客ニーズや業務システムの進化に対応して,実行基盤を最適化していく。本稿では,サービスミドルウェアの実行・最適化基盤の概要を述べる。

勝山 恒男,神田 陽治

近年,IT資源の効率的な利用のために,地理的に分散して存在する複数のシステムをあたかも一つのシステムに見せるグリッド技術に注目が集まっている。しかし,グリッドシステムを科学技術計算のために利用する場合と異なり,一般の業務アプリケーションで利用する場合は業務量の変動に柔軟に対応できる機能が求められる。そこで,業務サービスの重要度を考慮してサーバの割当てを自律的に調整する機能を備えたグリッドミドルウェア,コード名GSP(Grid Service Platform)を開発した。実際に利用されている業務アプリケーションを用いて,特性が異なる二つの業務サービス(バッチ処理とオンライン処理)をGSP上に搭載し,日本とフランスにまたがったテスト環境で実証実験を行った。その結果,GSPを用いるとオンライン処理の処理能力が30%向上するとともに,バッチ処理の処理時間も12%短縮できることが分かった。

繁田 聡一,上田 晴康,今村 信貴

プレスリリースグリッドコンピューティングによる,テレコムキャリア向けITリソース有効活用実験に成功

10ギガビットイーサネット(10GbE)は,10 Gbpsの伝送速度を持つ次世代のイーサネットである。近年のサーバシステムの性能向上や,処理データの大容量化に伴い,システム間を高速に,低いコストで接続できるネットワーク技術として,10GbEが注目されてきている。こうした中,著者らは10GbEを低価格化しITシステムに広範に適用できるようにするため,10GbEスイッチのLSI化に2001年から取り組んでおり,これまでに,世界初の12ポート10GbEスイッチLSIを開発してきた。今回,10GbEスイッチの適用範囲をより拡大できる,20ポートへの対応,10Gシリアルインタフェース内蔵などを実現した新10GbEスイッチLSI"MB86C68"を開発した。本稿では,本LSIの特長について述べ,10Gシリアルインタフェース内蔵を実現した高速IO回路について説明し,最後に本LSIを活用して開発した小型スイッチ装置"XG2000"を紹介する。

清水 剛,日高 康雄,西川 克彦

プレスリリースFujitsu Introduces the Industry's First 20-Port, Ethernet Switch IC with 10Gbps Ethernet Serial Interface for Blade Server, Advanced TCA, Micro TCA, and Data Center Switching

プレスリリースFujitsu Introduces Next Generation 10-Gigabit Ethernet Solution with New 20-Port, Highly Integrated, 1U Switches at Supercomputing 2006

超高速光ファイバスイッチは,光ファイバ内の非線形光学効果である光パラメトリック増幅を用いた新しい動作原理により,波長変換なしに毎秒テラビット級の超高速光スイッチングと光増幅を同時に実現可能である。本稿では,まず,超高速光ファイバスイッチの構成と動作原理を解説する。つぎに,プロトタイプを用いた実験において,160 Gbps信号光を光通信の全帯域にわたり,10倍以上の増幅効率での光スイッチング動作について述べる。また,光サンプリングモニタおよび光信号再生など,次世代光ネットワーク要素技術への応用の可能性についても述べる。本光ファイバスイッチは,高い効率で超高速の光信号処理が可能であり,今後必要となる省エネ・高効率な光ネットワーク処理への応用が期待される。

渡辺 茂樹,岡部 亮,二見 史生

ユビキタス情報システムを支える材料・デバイス

量子ドットと呼ばれるナノメータサイズの半導体微粒子を光デバイスの活性層に用いると,3次元の量子効果特有の性質が現れることから,従来にない優れた性能を有するデバイスの実現が期待される。本稿では,東京大学との産学連携で開発中のデバイスである量子ドットレーザと量子ドット光増幅器について,技術の現状を最新の研究成果を交えて紹介する。量子ドットレーザでは10 Gbpsの高速で直接変調動作でき,かつ温度安定性に非常に優れた波長1.3μm帯レーザが実現されている。量子ドット光増幅器では,100 nm以上の非常に広い波長帯域で,20 dBの高利得,+20 dBm以上の高光出力特性を実証している。富士通ではこのような量子ドット光デバイスの早期商品化に向けて三井ベンチャーキャピタルとの共同出資により,ベンチャー企業「株式会社QDレーザ」を設立し,製品化に向けた開発を加速している。

菅原 充,山本 剛之,江部 広治

化合物半導体インジウム燐(InP)を用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT)は,電流利得遮断周波数(fT)が500 GHzを超えるなど世界最速性能を有するとともに,100 GHzでの雑音指数が2 dBを切るなど超低雑音性能を示す。そのため,InP HEMTは,従来のガリウム砒素系HEMTでは実現が困難であった,ミリ波帯(30-300 GHz)を利用した大容量通信や高精度高感度センサ,光通信など超高速信号処理システムを実現するキーデバイスとして期待されている。本稿では,最新のトランジスタ形成技術と高速化技術を紹介する。また,このトランジスタ技術を用いた応用例として,94 GHz帯パッシブイメージセンサと準ミリ波帯(23-29 GHz)ウルトラワイドバンド(UWB)レーダを紹介する。超高速・超低雑音InP HEMTの利用により,センシングおよび通信装置の高性能化が図られ,様々な社会基盤を支える高度センサネットワークシステムの形成に貢献していくと考えられる。

中舍 安宏,川野 陽一,佐藤 優,高橋 剛

プレスリリース世界最高性能,UWBレーダー向けチップセットの開発に成功

LSIの微細化・大規模化に伴い,製造時に発生するばらつきが増大している。その中でも,回路の周波数性能を決定する遅延ばらつきの増大は,設計期間や歩留まりに大きな影響を与えている。統計的遅延解析(SSTA:Statistical Static Timing Analysis)とは,遅延ばらつきを統計的に考慮することにより,回路の遅延をより正確に見積もる技術として注目されており,設計期間の短縮や,周波数歩留まりを予測する面で効果が期待されている。富士通研究所ではSSTA実用化の研究を進めており,富士通および富士通ヴィエルエスアイとの連携により,他社に先行してSSTAのプロセッサ設計およびASIC(Application Specific Integrated Circuit)設計への適用を実現した。
本稿では,遅延ばらつきとSSTAの基本手法について解説し,富士通のSSTA技術への取組みと,プロセッサ設計およびASIC設計への適用について紹介する。

新田 泉,澁谷 利行,本間 克己

プレスリリース業界初!統計的な遅延解析をサポートするLSI設計環境を提供

情報ネットワークが社会に浸透するにつれ,電子マネーや交通カードなどで個人を認証するサービスが重要となってきた。RFIDやICカードなどのモバイル機器にはより小型で簡便かつ高いセキュリティが求められている。これらの機器には,低消費電力で高速動作が可能な不揮発性メモリが必要であり,このような用途にはFRAM(強誘電体メモリ)が最適である。FRAM混載LSIの研究・開発においては,FRAMの特長である低消費電力や高速性などの性能を向上させるとともに,記憶容量の増大,書換え回数の無制限化,動作温度範囲の拡大など,市場ニーズとマッチした技術課題を解決することが強く求められている。本稿では,90 nm以降のプロセスで,FRAMの微細化を実現する強誘電体新材料について述べる。まず強誘電体新材料が実現するブレークスルーを説明し,つぎに製品化に必要な課題解決に向けての取組みを紹介する。

丸山 研二,近藤 正雄,Sushil K. Singh,石原 宏

プレスリリース世界初!次世代の大容量FeRAMを可能とする新材料を開発

プレスリリース2メガビット単体FRAMを量産開始

プレスリリース次世代FRAM技術の共同開発の成果について

プレスリリースFRAM搭載LSIがFeliCa方式ICカードに採用

プレスリリースFRAM搭載UHF帯RFIDタグ用LSIを新発売

半導体チップの微細化によって,半導体製品の性能は飛躍的に進歩し続けている。反面,チップの発熱問題が顕在化してきている。例えばコンピュータのCPU,無線通信基地局の高出力増幅器,ハイブリッド車のモータ駆動用パワーモジュールなど,放熱性が非常に重要になってきている例は数多い。
富士通では,これらの放熱性に対する一つの解として,カーボンナノチューブ(CNT)の高い熱伝導性を利用した放熱技術に関する研究開発を行っている。一例として今回,無線基地局向けフリップチップ高出力増幅器用のCNT放熱バンプ技術を開発した。CNT放熱バンプを用いることで,高い増幅率と良好な放熱性を兼ね備えた高周波・高出力増幅器の実現が可能になる。
本稿では,CNT放熱バンプ技術の開発状況について紹介する。

岩井 大介,粟野 祐二


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