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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2007-1月号 (VOL.58, NO.1)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2007-1

年頭ご挨拶

特集:「ハードディスクドライブ」

本特集号では,HDDの高記録密度化に向けた富士通の最新技術を紹介するとともに,磁気記録の限界を打破するテラビットを目指す次世代磁気記録技術開発に向けた富士通の取組みを紹介します。


経営執行役常務 ストレージプロダクト事業本部担当
古村 一郎
経営執行役常務 ストレージプロダクト事業本部担当 古村 一郎 写真

ハードディスクドライブ特集に寄せて(PDF)

富士通はこれまでモバイルパソコン向け2.5インチHDDおよびネットワークストレージを含むサーバ向け3.5インチHDDの二分野に集中し,高品質と高い技術力によって2006年には両分野で業界2位の地位を競うまでになりました。そして,これらの分野の製品ラインを拡充させながら,継続して高品質・高性能な製品を市場に投入することで,さらなる社会への貢献を目指しています。

特集:ハードディスクドライブ 目次〕

ドライブ技術

  • エンタプライズHDDの新たな潮流
  • モバイル2.5インチHDD
  • HDDのインタフェース技術

機構・トライボロジー技術

  • サーボトラック書込み技術
  • HDDにおけるナノスケールシミュレーション技術
  • HDDの高記録密度化と信頼性を支えるHDI技術
  • 極低浮上用潤滑剤の開発 -分子の高さを制御できる新規潤滑剤-

先端磁気記録技術

  • 超高密度垂直磁気記録技術
  • 高密度記録用交換結合型磁気記録媒体(SFM)
  • TMR膜とヘッド技術
  • 次世代高密度記録用CPP-GMR技術
  • 熱アシスト磁気記録
  • ナノホールパターンドメディア

特集:ハードディスクドライブ


ドライブ技術

富士通は信頼性の高い高性能なエンタプライズ用ハードディスクドライブを長年にわたって提供してきた。最近このエンタプライズHDDの市場において,より高性能・省電力・省スペースの要求が高まり,2.5インチSFF(Small Form Factor),シリアルSCSI化という大きな流れが始まりつつある。
本稿では,2.5インチSFF,シリアルSCSIのメリットを解説し,この流れが今後の技術的必然であることを示す。そして富士通の最新機種,AL-10シリーズの概要と要素技術について概説する。AL-10シリーズは 3.5インチ15 000 rpm機,2.5インチ10 000 rpm機,そして富士通が初めて開発した,2.5インチでは最高速な15 000 rpm機からなり,要素技術としては共通プラットフォームとした新世代ドライブ群である。

有賀 敬治

富士通はノートパソコン(PC)やコンシューマエレクトロニクス製品などの省スペース機器向けに2.5インチハードディスクドライブ(HDD)を開発している。ノートPCの性能向上やアプリケーションソフトウェアの多種多様化に伴い,2.5インチHDDへの大容量化,高性能化の要求はとどまることがない。今回,世界最高水準の面記録密度130 Gビット/平方インチを実現したMHW2160BHとMHX2250BTを開発した。MHW2160BHは2.5インチディスク媒体2枚を9.5 mmの高さに納めた容量160 Gバイトでディスク回転数が5400 rpm,MHX2250BTはディスク媒体3枚を12.5 mmの高さに納めた容量250 Gバイトでディスク回転数が4200 rpmである。これら製品の高記録密度は,垂直磁気記録技術およびヘッド浮上制御技術などを採用して実現した。また,インタフェースには高速データ転送が可能なシリアルATAインタフェースを採用して高性能化にも応えている。

明官 謙一

ハードディスクドライブ(HDD)のインタフェースは,システムの高速転送要求に応えるためシリアル化されている。その主要なものとしてはファイバチャネル(FC),シリアルATA(SATA),Serial Attached SCSI(SAS)がある。これまでHDDの市場セグメントと使用されるシリアルインタフェースは対応していた。最近はコスト低減の要求から使用するシリアルインタフェースが選択されている。その結果,HDDの市場セグメントと従来のシリアルインタフェースとの対応も崩れてきた。例えばエンタプライズのHDDとして,従来ローエンド用であったSATAと大容量のHDD本体を組み合わせた製品が登場している。
本稿では,これらシリアルインタフェースの特徴と,インタフェースのシリアル化に対応したHDDのコントローラ部分におけるインタフェース技術の概要を説明し,今後の課題について論ずる。

河本 正和

機構・トライボロジー技術

ハードディスクドライブ(HDD)の記録密度の向上のためには,磁気ヘッドをデータトラックに位置決めするために用いられるサーボ情報を記録するサーボトラック書込み(STW)技術の改良が必須である。従来は,外部のアクチュエータを用い,ドライブ自身のヘッドで書き込んでいた。一方,より高い生産性とSTW品質の要求が高まってきたため,最近では新しい方式が求められている。これらの要求に応えるために富士通はHDDメーカとして様々なSTW技術の開発を行ってきた。
本稿では,主なSTW方式とSTWへの要求事項を紹介し,STW品質を低下させる要因について述べる。さらに,生産性向上が期待できる外部書込み方式の代表例として,メディアSTWと磁気転写STWについて説明する。

山田 朋良,福士 雅則,鈴木 啓之,高石 和彦

ハードディスクドライブ(HDD)の開発・設計に利用されている物理シミュレーション技術においても,HDDの高記録密度化に伴い,ナノオーダの精度を問題とする領域に達しつつある。例えば,ヘッドの浮上量は年々低下し,現在では10 nm程度に至っている。したがって,浮上ヘッドスライダの浮上面の平坦性では1 nmの凹凸も問題となる。また,磁気ヘッドのリード・ライト素子も高密度化に対応して,微細化しており,100 nm以下のパターン幅が要求されており,ナノオーダの寸法精度が要求され始めている。
富士通は,これらナノオーダレベルの要求精度に対する課題を解決するため,新たなシミュレーション技術を開発している。本稿では,HDDの高記録密度化に向けて適用されている物理シミュレーションの中で,ヘッド素子の熱突出しと,イオンミリング・デポジションプロセスに関する数値解析モデルを構築し検証した内容を中心に紹介する。

中田 敏幸,青木 健一郎,古屋 篤

ハードディスクドライブ(HDD)の高記録密度化と信頼性を両立させるためには,ヘッドとディスク媒体の磁性層間の物理的隙間を減少させ,ナノの世界で現実に起こっていることを正確に把握する技術や,ナノレベルでヘッド浮上量を制御できる技術が求められている。富士通はHDDの高記録密度,信頼性を向上させるため,これらの技術をHDI(Head Disk Interface)として開発している。
本稿では,HDI技術のうち,CAICISS(Co-Axial Impact Collision Ion Scattering Spectroscopy)による潤滑剤の被覆性評価技術,Drop法による磁気記録媒体保護膜の被覆性評価技術,およびヘッドのスライダ浮上面の化学処理技術を紹介する。

渡部 慶二,千葉 洋,中村 哲一,水谷 晶代

ハードディスクドライブ(HDD)における高記録密度化・大容量化はディスク媒体や磁気ヘッドの材料・加工技術,そして信号処理技術と相まってディスク媒体と磁気ヘッド間の隙間(浮上隙間)の狭小化によって実現されている。ディスク媒体上には潤滑剤が1~2 nmの厚さで塗布されており,ヘッドディスクインタフェース(HDI)の信頼性を支えている。現在,浮上隙間は約10 nmであり,浮上安定性に対する潤滑剤の影響が顕著に表れている。今後の浮上隙間の低減には,潤滑技術が重要な要素技術になるため,富士通は,高記録密度を支える極低浮上用潤滑剤の開発を行っている。このほど,潤滑剤分子の高さを制御できる技術を確立し,分子量が大きくとも潤滑剤分子の高さを低く維持できる潤滑剤の開発に成功した。この潤滑剤により,これまで浮上特性を向上させるために分子量を小さくすると,潤滑剤が蒸発しやすくなり信頼性が損なわれるという問題を解決した。

千葉 洋,佐々 匡昭,渡部 慶二

先端磁気記録技術

垂直磁気記録は30年前から研究されているが,その実用化には軟磁性裏打ち層に起因するスパイクノイズ,広域イレーズ,厚膜によるコストアップ,高記録密度でのエラーレート向上といった課題があった。著者らは,APS-SUL(Anti-Parallel Structure - Soft- Magnetic Underlayer)とグラニュラ膜を用いた2層記録層媒体とトレーリングシールド型ヘッドを開発して,これらの課題を解決し,これらのヘッド/媒体を組み合わせることで300 Gbit/in2を超える記録密度ポテンシャルがあることを確認している。また,信号処理においてはDCターゲットを用いることで垂直記録はSNR利得があることも分かっており,これらの技術に関しての詳細を本稿で報告する。

貝津 功剛,戸田 順三,森田 俊彦

近年,耐熱揺らぎ性に優れた磁気交換結合型媒体(SFM:Synthetic Ferrimagnetic Media)が高密度磁気記録用媒体としてハードディスクドライブ(HDD)に広く用いられている。将来の更なる高密度記録への対応のため,信号対ノイズ比(SNR:Signal-to-Noise Ratio)および記録情報の熱揺らぎ耐性を高める次の三つの新たなSFM技術を開発した。第一には,熱安定化層の磁気異方性エネルギーを高めることによって耐熱揺らぎ性を確保しながら,媒体記録層を薄くすることでSNRを改善する。第二には,1 nm程度の極薄強磁性層によって交換結合を強化し,さらに熱安定化層の磁気異方性エネルギーを高めることにより,SNRを劣化させることなく耐熱揺らぎ性を改善する。第三には,セパレート型SFM技術を適用し,記録層の分断による低ノイズ特性と耐熱揺らぎ性を両立させた。これらの新しい技術によって,150 Gbit/in2以上の記録密度の可能性を切り開いた。

岡本 巌

著者らはAl-Oバリア層磁気トンネル接合の開発を行い,抵抗面積積RAが約3Ω·µm2でMR比27%を得ることができた。また,新しい低バリア材料としてTi-OおよびMgOバリア層磁気トンネル接合の研究を行った。ピンド層にCoFeB,フリー層にCo74Fe26/NiFeを用いることにより,MgOバリア層磁気トンネル接合において,RAが2~3Ω·µm2で40~50%のMR比を得ることができた。100 Gbit/in2の面記録密度を目指したAl-Oバリア層TMRヘッドを作製した。シンセティックフェリマグネティック媒体を用いて測定することによって,バイアス電圧を150 mVとしたとき,約5000 µVppの大きな再生出力を得ることができた。さらに,ヘッドノイズについても検討を行った。熱揺らぎノイズがドミナントなノイズであり,マイクロマグネティックシミュレーションにより,ピンド層と反強磁性層間の交換結合磁界(Hex)を強くするとノイズが減ることを見いだした。

小林 和雄,秋元 秀行

高記録密度,および高速データ転送に対しては高出力,高SNR(Signal-to-Noise Ratio),低抵抗などの特性が要求されるため,それらを満たす可能性を秘めるCPP-GMRは将来の高密度記録システムの実現にとって不可欠な技術である。著者らはCPP-GMR(Current-Perpendicular-to-Plane Giant Magnetoresistance)素子を用いた次世代高密度記録用の再生磁気ヘッド実現に向け,スピンバルブ(SV)膜の磁性層として新規材料を開発し,金属系SV膜を用いたCPP-GMR素子の特性を向上させた。新規材料とは,従来困難であった磁気抵抗効果の高い比抵抗とスピン依存散乱効果との両立を可能とする材料である。この材料開発により,低抵抗の特徴を持つCPP-GMR素子の出力向上の可能性を広げ,300 Gbit/in2以上の高記録密度装置への適用見込みを確認した。

長坂 恵一,城後 新,大島 弘敬,清水 豊

熱アシスト磁気記録は磁気記録技術と光記録技術を融合した記録方式である。この方式では,通常の磁気記録では記録できないような高保磁力媒体に対して,光照射することで熱磁気的に記録した後,室温に戻した状態で磁気的に再生する。この技術の適用により,高保磁力媒体に記録できるので,熱安定性を保ちながら磁性粒子を微細化できる。このような媒体,微小光ビームおよびキュリー温度記録を組み合わせると1 Tbit/in2を超える面記録密度記録を達成できる可能性がある。
本稿では,通常のスピンスタンドに新たに設計した光ヘッドを組み込んだテスタを試作して,記録再生特性を調べた。熱アシスト磁気記録によって高い保磁力を有するTbFeCo薄膜に記録することが可能となり,さらに,特別な磁気ヘッドを用いることなく,記録幅を50 nm以下まで狭められることを示す。

松本 幸治,上村 拓也,下川 聡

アルミニウムの陽極酸化で得られるアルミナナノホールに磁性金属を充填したパターンドメディアは,形状異方性により垂直に磁化しやすく,またビット体積を大きくできるので熱揺らぎに強く,さらに非磁性のアルミナに囲まれた微細なナノホール内磁性体で単磁区記録が可能となるなど,次世代の高密度記録媒体として有望である。
本稿では,ディスクサイズのメディア製造プロセスを開発して磁気ヘッドでの記録再生特性評価に成功し,ナノホールの微細化の効果および軟磁性下地膜付与の効果を明らかにしたことを述べる。また,円周記録を行う磁気ディスクにおいて,ナノホールごとに1ビットを記録することを目標に,新規開発のナノホール一次元配列化の結果を加えて,Tbit/in2記録実現への展望を述べる。

伊藤 健一,益田 秀樹


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