Skip to main content

Fujitsu

Japan

アーカイブ コンテンツ

注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2005-3月号 (VOL.56, NO.2)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2006-5

特集: 「ユニバーサルデザイン」

富士通では,まずユニバーサルデザインを全社的な課題として位置付け, お客様中心の開発プロセスを創り, お客様のご意見を生かしながら個々の製品やサービスの改善を推進しています。


取締役専務
伊東 千秋
取締役専務  伊東 千秋 写真

ユニバーサルデザイン特集に寄せて(PDF)

富士通では, まずユニバーサルデザインを全社的な課題として位置付け, お客様中心の開発プロセスを創り, お客様のご意見を生かしながら個々の製品やサービスの改善を推進しています。

特集: ユニバーサルデザイン 目次〕

  • 富士通のユニバーサルデザインへの取組み

ユニバーサルデザインを取り巻く環境

  • ICT Accessibility in the US Developments in Public and Private Sectors
    (米国におけるICTアクセシビリティ -公共と民間の各部門における動向-)
  • 日本政府のユニバーサルデザイン(デジタル・ディバイド是正)推進動向
  • 国内のユニバーサルデザインの動向
  • 高齢者・障害者等配慮設計指針(JIS X 8341)の紹介と富士通の標準化への取組み
  • 「国際ユニヴァーサルデザイン協議会」活動紹介

ユニバーサルデザイン推進事例

  • 富士通のWebアクセシビリティ・ソリューション
  • 富士通のWebアクセシビリティへの取組み
  • パソコン「FMVシリーズ」におけるアクセシビリティ向上への取組み
  • 携帯電話「らくらくホン」におけるユニバーサルデザインへの取組み
  • ワークプレイスのユニバーサルデザイン

手法と技術

  • Webユーザビリティ評価手法:シナリオウォークスルー法
  • Webアクセシビリティ診断ツール
  • ウェブ・アクセシビリティ支援ツール:WebUD

特集:ユニバーサルデザイン


世界的にユニバーサルデザインに対する要求が高まっている。とりわけ,IT分野には,各人の生活や仕事に直結するため,高い期待と要求が挙げられている。日本においては,ユニバーサルデザインが社会的な活動となって,各社が対応を推進している。そのような環境で,富士通は,かねてから推進していた“Human Centered Design”の考え方を,IT(ハードウェア,ソフトウェア,Web),Work Place(建築,施設,事務所・店舗),Work Style(就業,安全衛生)の面に展開するとともに,全社を挙げての活動を推進している。ユニバーサルデザインを推進することは,お客様にとって使い勝手の良い製品やサービスを提供することとなり,今後のユビキタス社会に向け重要な課題と言える。
本稿では,日本を中心とした,ユニバーサルデザインの推進活動を概観し,富士通のユニバーサルデザインの考え方やその実現ステップを紹介する。

加藤 公敬,岩崎 昭浩

ユニバーサルデザインを取り巻く環境

米国議会は1998年にリハビリテーション法の修正によって508条を改正し,連邦政府機関に対して電子技術および情報技術を障害者にとってより利用しやすくするよう規定した。この修正で,IT関連製品のアクセシビリティに関して連邦政府機関の責任の所在が根本的に変化したのである。同法では,連邦政府機関は職員に利用しやすいIT製品を調達し,公開情報やデータにアクセスしやすくするように規定している。
508条に呼応して,関連業界団体は情報技術を組み込んだ新しい支援技術(AT)の開発で牽引役を果たしてきた。また,企業が中心となって政府に対して製品のアクセシビリティ機能を伝達するビジネス手段を創造してきたのである。この過程で,情報通信技術(ICT)に依存するIT企業およびAT企業は,広範囲なユーザを対象とする設計が競争に有利であるという事実に気付きつつある。本稿は米国でのICTアクセシビィティの現状について検討する。

David Olive,Jamal P. Le Blanc

日本では,「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」(いわゆる「IT基本法」)のもとで,「日本が2005年に世界最先端のIT国家になる」との目標を掲げた「e-Japan戦略」が2001年1月に策定された。以来,各年度ごとの「e-Japan重点計画」にのっとり,迅速かつ重点的に実施すべき具体的施策の展開が図られてきている。中でも「デジタル・ディバイド」の解消・是正は首尾一貫してe-Japan戦略の実行に当たって克服すべき横断的課題と明示されている。
同戦略の進展に伴い,本格的なIT利活用時代を迎えている。すべての利用者がネットワークを介し,生活に密着した多様かつ高度なサービスを主体的に利用し,利用者個々の能力を最大限に発揮できる環境整備がますます重要となっている。
本稿では,年齢・身体的な条件によりサービスの利活用が機会的にも能力的にも制限されてはならないという基本的考えのもと,総務省,経済産業省,国土交通省など関係各省の取組みを紹介する。

堀越 知一

高齢社会を迎える日本では,IT社会に向けてインターネット,携帯電話,パソコンの普及が急速に進んだ。これらは我々の生活には不可欠なものとなりつつある。誰でもIT社会の恩恵を受けるには,年齢,身体機能,知識や経験にかかわらず利用できるユニバーサルデザインの考え方が求められる。国や自治体,企業では,IT社会の実現に向けてユニバーサルデザインに対する取組みが行われており,どんな人でも利用しやすいITインフラの整備が進んでいる。高齢者や障害者の場合は,ITインフラの整備だけではまだ一人一人のニーズへの十分な対応が難しいことがあり,ITインフラを提供する側と当事者とをつなぐ中間支援的な立場の方が個別のニーズを満たすことで多くの問題を解決することが多い。
本稿では,IT社会の実現に向けた国や自治体,企業のユニバーサルデザインの動向と,高齢者や障害者がITの積極的な利活用をしていく上での今後の課題について述べる。

池田 佳代子

「高齢者や障害者にも暮らしやすい情報化社会」の実現に向け,2004年にパソコンなどの情報処理装置およびWebコンテンツや電子マニュアルなどを対象にした日本工業規格JIS X 8341「高齢者・障害者等配慮設計指針」が公示された。この規格は,主に高齢者,障害のある人々および一時的な障害のある人々が,これらの製品およびサービスを利用するときの情報アクセシビリティを確保し,向上させることを目的としている。
本稿では,まず本規格策定に至る経緯として米国の法律,国際規格および日本で公表されたガイドライン,規格化への動きを紹介する。つぎに,本規格の構成と策定の経緯を説明する。続いて本規格からいくつかの項目を引用し具体的に何を求めているかを説明する。加えて国際規格への日本としての働きかけ,富士通の標準化への取組みを概説し,最後に本規格を適用する上での課題を述べる。

飯塚 潤一

日本では最近ユニバーサルデザイン(UD)をうたう商品が数多く発表・販売され,ビジネス的にも成功例が増えてきている。2002年12月には「国際ユニバーサルデザイン会議2002」がUDをテーマとする日本初の国際会議として開催された。2003年11月,この国際会議の理念と成果をもとに「国際ユニヴァーサルデザイン協議会(IAUD)」が発足した。IAUDには製造業だけでなく流通・サービス業まで,日本を代表する幅広い業種・業態の多くの企業が会員として参加している。IAUDはUDを啓発・プロモーションする団体というより,産官学を挙げた協力体制により,一業種・一企業では解決が困難であったUDの課題を共有し,具体的に実践する大きな力となることが期待されている。
本稿ではIAUDの設立に向けた経緯・活動概要とともに,最近開催されたUD国際会議“Designing for the 21st Century III”を紹介し,最後に富士通の協議会へのかかわり方と新しいビジネスの創出など協議会の役割とビジネスへのインパクトや今後の活動への展望について述べる。

蔦谷 邦夫

ユニバーサルデザイン推進事例

日本工業規格JIS X 8341「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス」の制定や,高度情報通信ネットワーク社会形成基本法の施行などにより,府省,自治体を中心に,Webアクセシビリティへの関心はますます高まっている。しかし,個別のコンテンツのチェック・修正による対処だけでは,府省,自治体の数千から数万ページに及ぶWebサイトのアクセシビリティ向上には,多大な時間と労力が必要となることから,その実現は困難である。Webサイトの構築,運営などを含めトータルな視点でより効率的かつ効果的なソリューションを検討していくことが,Webアクセシビリティの向上には不可欠である。そこで,富士通は,府省,自治体のWebアクセシビリティ向上に対し,これまでの取組みの成果をベースにした「Webアクセシビリティ・ソリューション」の提供により,各種の支援を行っている。
本稿では,府省,自治体におけるWebアクセシビリティ向上の課題を述べるとともに,その課題に対して富士通が提供するWebアクセシビリティ・ソリューションを紹介する。

高本 康明,永野 行記

世界的な流れとして,Webアクセシビリティの取組みが活発化している。日本においては,2004年6月に情報アクセシビリティの公的な基準として,日本工業規格JIS X 8341-3が制定された。しかし,実際に企業のWebアクセシビリティの取組みとしてアクセシブルなWebサイトを構築するには,JIS X 8341-3で規定された基準への適合だけでなく,組織的な取組みを行うための協力体制やWebサイト構築工程の標準化,国内外の基準とも整合が取れたガイドラインが必須となる。富士通グループでは2002年から公開Webサイトにおけるアクセシビリティの取組みを,ブランド活動の一環として実施しており,2003年度グッドデザイン賞の受賞や,日経パソコンの「企業サイト ユーザビリティランキング」で1位を獲得するなど,対外的に高い評価を受けている。
本稿では,これらの成果を生み出した組織的なアクセシビリティ活動,およびアクセシブルなWebサイトを実現するための仕組みについて紹介する。

高橋 宏祐

パソコン「FMVシリーズ」を高齢者や障害者を含む多くのユーザに使いやすくするため,企画から運用までの工程で様々なアクセシビリティ向上の推進を行っている。富士通は,これらのアクセシビリティ向上の推進によって,「どこでも」「いつでも」「誰でも」情報に容易にアクセスできることを目指している。
本稿では,それらのアクセシビリティの取組みを,「Webサイト制作」,「ハードウェア」,「ソフトウェア」,「電子マニュアル」に分けて説明する。Webサイト制作については各工程での基本的考え方と具体的な取組み事例を,ハードウェアについては「見やすさ」「使いやすさ」「分かりやすさ」の観点で具体的な取組み事例を説明する。また,ソフトウェアについては使いやすくするためのユーティリティと各アプリケーションでの対応を説明し,最後に電子マニュアルについて具体的な取組み事例を説明する。

飯塚 潤一,森岡 亮,田中 宏治

富士通は高齢者を中心に,操作に不慣れな方や視力などの身体能力が衰えた方にも気軽に使っていただけるように配慮した携帯電話「らくらくホン」を開発した。この開発では,とくに音声合成技術,音声認識技術を駆使し,ハードウェアやソフトウェアのデザイン,それにユーザインタフェースをユニバーサルデザインの視点で工夫することによって,使いやすく分かりやすい携帯電話を実現している。また開発に当たっては,ユーザの視点に立ってユーザビリティの調査や評価を積極的に行い,問題点を明確にした上で携帯電話のデザイン,ユーザインタフェースを改善して商品に反映する,といったプロセスを採用している。
本稿では,まず「らくらくホン」のユニバーサルデザイン実現ステップを紹介し,そしてこのステップによって実現されている「らくらくホン」のハードウェア,ソフトウェア,音声機能のユニバーサルデザイン実例を紹介する。

入江 亨,松永 圭吾,永野 行記

企業の持つ建築・施設であるワークプレイス(WP)のユニバーサルデザイン(UD)推進について,法・制度の整備が進むとともに,社会的にも関心が高まっている。またUDの推進が,高齢者・障害者のWP利用効率や就業環境の改善に貢献することや,企業の社会的責任(CSR)としても認知され,企業姿勢が問われる状況とも言える。
社員の誰もが支障なく利用できるITとともに,ITの活用環境であるWPまで含むトータルなUD視点で計画することは,利用者への配慮のみならず,企業資産であるWPの価値向上につながり,企業の総合的なUD推進のアプローチとなると考えている。
本稿では,WPのUD推進に関する社会的な動向を紹介するとともに,ソフト・サービスの戦略拠点である富士通ソリューションスクエアの構築,ファシリティデザインガイドライン作成など具体的な推進事例を交えて,WP計画でのUD推進の特徴や,そのメリットを紹介する。

平野 隆,松本 啓太,堀口 かおり

手法と技術

従来のユーザビリティ評価手法では,専門家としての経験やスキルに依存する部分があり,コストがかかるという問題点があった。富士通独自のユーザビリティ評価手法であるシナリオウォークスルー法は,Webサイトの目的を達成するために実現すべき利用者の利用エピソード(シナリオ)を体系的に記述し,シナリオの達成に必要な操作ステップを認知モデルに基づいて評価する。シナリオでWebサイトの目的を定義して評価するため,目的を阻害する重要な問題点を効果的に抽出することができる。また,非専門家でも評価可能であるため,低コストでWebサイトの品質維持を図ることができる。多目的で複雑なWebサイトの場合でも,ビジネス分析手法であるイシューツリーをベースに,優先度の高い目的を選択して評価することにより,ビジネス目的に沿った評価・改善を効果的に実施することができる。
本稿では,まず,従来のユーザビリティ評価手法の問題点について述べ,つぎに本手法の開発,および評価手順について説明し,最後にシステムサポート契約者向けサイトに対して評価・改善までを実施した事例を紹介する。

瀬川 智子,杉村 昌彦,石垣 一司

視覚障害者や色覚障害者は,WebサイトのWebアクセシビリティを高めることで,健常者と同様にインターネットがもたらす生活の利便性を享受できる。しかし,現状は,Webアクセシビリティに十分配慮しているWebサイトは少ない。そこで富士通は,WebサイトのWebアクセシビリティの向上を図るため,「富士通ウェブ・アクセシビリティ指針」の要件を診断するツール群「Fujitsu Accessibility Assistance(富士通アクセシビリティ・アシスタンス)」を開発した。本ツール群は,Webページなどのデザイナや,プレゼンテーション資料の作り手などのオフィスワーカに向けたもので,Webページの作り方が視覚障害者や色覚障害者にとっても読みやすくなっているかを診断する“WebInspector4.0”,背景色と文字色の最適な組合せをリアルタイムに選択可能とする“ColorSelector4.0”,文字や動画像の色合いが色覚障害者にどのように見えているかをシミュレーション表示する“ColorDoctor1.0”の三つのソフトウェアから成る。本稿では,WebサイトのWebアクセシビリティの現状,本ツール群の基準となる「富士通ウェブ・アクセシビリティ指針」,色覚障害者の立場に立った基準評価,および本ツール群の機能を紹介する。

高本 康明,永野 行記

e-Japan重点計画-2004の策定やJIS X 8341「高齢者・障害者等配慮設計指針」の制定の影響を受けて,公共分野を中心としてWebサイトのアクセシビリティ基準への対応が課題となっている。すべての国民に対して,「ウェブ・アクセシビリティ」の確保,向上には,通常のブラウザではWebサイトへのアクセスが困難な高齢者・障害者への配慮が必要である。そこで富士通では,音声読み上げ,漢字の読み仮名表示,文字や図の拡大・縮小,文字色と背景色の変更,入力支援などのアクセシビリティ機能をサポートした高齢者・障害者向け「ウェブ・アクセシビリティ支援ツール」WebUDを開発,提供している。WebUDは,自治体などのWebサイトから提供し,利用者は当該サイト上で使用許諾条件に同意するだけで,自分のパソコンにWebUDをインストールして使用することができる。これにより,高齢者や障害者を含むWebサイトの利用者の主体的なインターネット活用が可能である。
本稿では,WebUDのアクセシビリティ機能を中心に,製品開発要件や導入手順について紹介する。

伊藤 智之,須崎 雅彦


---> English (Abstracts of Papers)