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Fujitsu

Japan

アーカイブ コンテンツ

注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2003-5月号 (VOL.54, NO.3)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2003-5

特集: 「ユニバーサルデザイン」

本特集では,急速に関心が高まってきたユニバーサルデザインの動向と,富士通の具体的な製品・サービス開発への取組み事例,新手法などを紹介いたします。

なお,本特集のコンテンツは,スクリーンリーダソフトウェアによって読み上げ可能なタグ付きPDFで作成されています。


代表取締役副社長
杉田 忠靖
代表取締役副社長 杉田 忠靖 写真

ユニバーサルデザイン特集に寄せて(PDF)

これからの企業経営の視点として環境,サステナビリティ(持続可能性)と並び「ユニバーサルデザイン」が注目されてきています。
本特集号が「ユニバーサルデザイン」に対する理解を深め,富士通グループから提供されるあらゆるシステム,ソフト・サービス開発の基本スタンスとして浸透し,当社のお客様,さらにはその先のお客様の満足度向上につながりますことを強く期待いたします。

特集: ユニバーサルデザイン 目次〕

動向と富士通の取組み

  • 富士通のユニバーサルデザインへの取組み
  • 国内外のアクセシビリティの動向
  • 国際ユニバーサルデザイン会議2002を終えて

手法と技術

  • Webユーザビリティ評価手法:シナリオウォークスルー法
  • 音声ポータルソリューション
  • ユーザビリティ改善コンサルティングサービス
  • Webアクセシビリティ診断ツール:WebInspector

事例

  • 富士通におけるウェブ・アクセシビリティ
  • FMVシリーズ関連情報のアクセシビリティ向上への取組み
  • 自動機のユニバーサルデザイン推進
  • 公共システムにおけるタッチパネルのユーザインタフェースデザイン
  • 障害児向け電子メールソフト:らくらくメール
  • 社会貢献活動:パソボラ倶楽部

一般

  • システム運用ソリューションサービス:SupportDesk Management

特集:ユニバーサルデザイン


動向と富士通の取組み

富士通では,アクセシビリティの高い製品やサービスを提供するため,人間中心設計のアプローチを実践,推進している。これは,技術中心ではなく,利用者自身の特性や,利用者の仕事や環境の特性を人間工学的,認知科学的,社会科学的観点から分析し,それを考慮して製品やサービスの仕様を決定していく開発プロセスである。そして,情報技術の利用者には,年齢や身体的特性などの違いにより様々な人がおり,より多くの人々が利用できるようなデザイン,すなわちユニバーサルデザインを重要視している。政府のe-Japan政策では,すべての国民がインターネットなどを利用できる高度情報通信ネットワーク社会の実現を目指しており,社会的にもユニバーサルデザインへの関心が高まっている。
本稿は,ユニバーサルデザインについての定義,社会背景,標準化,富士通の考え方や取組み,ビジネスへの影響などについて紹介する。

松本 啓太,蔦谷 邦夫

e-Japan戦略や重点計画においてはディジタルデバイド対策がうたわれ,障害者や高齢者は依然として「弱者」ととらえられている。しかし,彼らの実態を探ってみると「健常者との格差を縮めたい」という気負いは感じられなく,今まで遠かった社会がITで身近なものになるという感覚を持っていることが分かる。米国では,障害者が健常者と同じように社会参加できるようアクセシブルなIT環境を連邦政府に義務付ける「リハビリテーション法508条」が既に施行されている。ここではITが障害者の社会参加を促すための道具として積極的にとらえられているのである。本稿では,これらの動向を正しく理解していただくため,ITの進展が今まで社会から阻害されてきた障害者や高齢者に力を与え社会参加を促す面を持っているということ,障害者や高齢者と技術者が一体となったアクセシビリティの取組みが必要となっていることなど,国内外のアクセシビリティの動向を解説する。

池田 佳代子

2002年11月30日から12月4日まで,「ユニバーサルデザイン」をテーマとする日本初の国際会議として「国際ユニバーサルデザイン会議2002」が横浜で開催された。
富士通はお客様視点のものづくりとユーザビリティ向上活動の一環として本会議の趣旨に賛同し,会議の立上げ・準備の段階から企画運営スタッフとして組織委員会,実行委員会に参画した。また,特別協賛企業として論文発表,ランチョンセミナー,展示会に参加した。
本稿では,本会議の概要と開催結果,および富士通の取組みについて,活況を呈した会場の様子を交えて紹介し,IT企業にとっての本会議の意義や今後のビジネスへの影響を考える。

蔦谷 邦夫

手法と技術

Eコマースサイトで,「目的の商品を見つけることができない」,「注文方法が分からない」などの理由により購入をあきらめてしまうユーザの割合は40%以上にも上り,2000年度のクリスマス商戦での売上げの損失は,全世界の総計で140億ドルに上ると推定されている。ネット上でのビジネスを効果的に行うには,ユーザにとって使いやすく,訴求性の高いWebサイトを設計することが重要である。本稿では,Webサイトのユーザビリティ上の問題点を抽出し,改善案を導出する富士通独自のWebユーザビリティ評価手法であるシナリオウォークスルー法について述べる。本手法では,ユーザの利用エピソードをシナリオとして体系的に記述することで,お客様のビジネスの目的を明確化するとともに,被験者を用いずに認知モデルに基づいて操作ステップを評価することで,ビジネスの目的を阻害する重要な問題点を従来の手法よりも網羅的に抽出することができる。

小幡 明彦,瀬川 智子,安藤 正純

人間とコンピュータとのインタフェースを考えるとき,ディジタルデバイド,アクセシビリティの観点では,音声によるインタフェースは自然なコミュニケーション手段を実現させる重要な役割を持つ。
本稿では,音声インタフェースの応用分野の中でも,とくに電話を用いた情報アクセスシステムについて概観し,音声認識・音声合成・対話制御技術を用いて各種情報提供サービスを行う音声ポータルソリューションを紹介する。また,そこで使われる各音声処理技術について解説する。音声ポータルでは,とくに音声の特性を考慮した開発が重要である。そこで,音声認識では,不要語への対応,背景雑音や電話回線による音質劣化への対策を強化した。また,音声合成では,コーパスベース音声合成方式と,波形辞書自動生成技術により,自然で多様な声質の音声応答を実現した。音声ポータルは,自治体の情報提供サービスや,株価・交通情報といったリアルタイム情報提供サービスなど,幅広い応用が期待される。

岩見田 均,渡辺 一宏,伊藤 映

富士通ではお客様のシステムやサービスのユーザビリティの向上のために,ユーザビリティ改善コンサルティングサービスを提供している。本サービスではユーザビリティや人間工学に係わる専門家がお客様の状況に応じた評価改善のためのプランを組み立て,利用者の視点・行動様式を考慮に入れた検証を行い,改善案を提供している。Webサイトやコンタクトセンターなどで用いられている自動音声応答システム(IVR/ARS)などのソフトウェア,また現金自動預払機(ATM)などのハードウェアも本サービスの適用対象である。本サービスでは,アンケート調査,グループインタビュー,ユーザテスト,ヒューリスティック評価,シナリオウォークスルー法を用いた評価などの各種手法を用いて,独自の調査分析を実施している。
本稿ではユーザビリティ改善コンサルティングサービスの概略および事例を紹介する。

安藤 正純,大石 和弘,松本 啓太

電子政府をはじめとするIT社会の発展に伴い,Webサイトのアクセシビリティは,今後ますます重要になる。Webサイトの設計,開発,管理に関係する人は,多かれ少なかれ,Webサイトのアクセシビリティについて検討する必要がある。
富士通では,Webアクセシビリティについての考えやノウハウを「富士通ウェブ・アクセシビリティ指針」に示しており,その指針に従ってWebページを作成している。しかし,既存のWebページも含めて,これらのガイドラインを適用するのは大変な作業量となり,その作業を効率良く行うためのツールが求められている。そこで,富士通では,Webアクセシビリティを自動的に効率良くチェックする診断ツール"WebInspector"(ウェブインスペクタ)を開発した。本稿では,WebInspectorの機能やその特徴を紹介する。

高本 康明,永野 行記

事例

世界的に「ウェブ・アクセシビリティ」への取組みが活発化する中,近年,日本においても自治体・官公庁・企業のWebサイトを中心にアクセシビリティの取組みが活発化している。すでに世の中にはウェブ・アクセシビリティに関するいくつかの基準やガイドラインが存在するが,実際にアクセシビリティを満たしたWebサイトを構築する場合,どう実装するのが望ましいのか,その具体的な方法を提示したものは少ない。また,ウェブ・アクセシビリティと一言で言っても多様なユーザ環境が想定され,その実装はサイト制作者にとって難しい課題となっている。
本稿ではFUJITSU日本ポータル http://jp.fujitsu.com/ の運営,およびFUJITSUグループの全世界共通「ウェブ・ガイドライン」の策定活動を通して実践・体得してきたウェブ・アクセシビリティの実装方法を紹介する。

石井 太朗,田中 智子,秋山 正樹

インターネットは身体障害者や高齢者が独力で情報収集する必要不可欠なものとなっている。例えば,外出が難しい高齢者や肢体不自由者が在宅のままで世界中のニュースを知ることができ,また,視覚障害者は音声読上げブラウザや拡大表示機能を使用して多くのWebサイトから希望する情報を検索することができる。しかし,情報の提供方法によっては,その情報にアクセスできない,正確に理解できないなどの問題を生じさせてしまう可能性がある。そこで,富士通では,パソコンFMVシリーズに関する情報を,だれにでもアクセスしやすく,また理解しやすくなるよう幅広くアクセシビリティの改善を行っている。
本稿では,富士通パソコン情報サイト"FMWORLD.NET"およびサポートポータルツール「富士通サービスアシスタント」におけるアクセシビリティ向上への取組みについて具体的な改善事例を交えて紹介する。

飯塚 潤一,荒川 良弘,山口 哲生

公共的なサービスではすべてのお客様に平等なサービスを提供することが求められている。一方でお客様はそれぞれ,身体能力や利用経験など様々な面で個人差があり,これがディジタルデバイドを生み出す原因ともなっている。
IT技術の進展は,障害者の就業・就学機会を拡大し,障害者の社会進出を推進している。この動きに対応して各国で製品やサービス提供に対するガイドラインの策定やユニバーサルデザイン対応の法制化が進んでいる。富士通では,以前から金融機関,自治体,医療機関などで利用される自動機において,他社に先駆けてディジタルデバイドを削減するため,ユニバーサルデザインの実現を目指し,機器の改善,新機能の開発を推進してきた。
本稿では,富士通の自動機におけるユニバーサルデザインの取組みを紹介し,その考え方,対応手法,成果について述べる。

岩崎 昭浩,高根沢 敦夫,大田 昭典

公共システムではタッチパネルを用いたユーザインタフェースが数多く採用されている。 公共システムはサービスの社会性からユニバーサルデザイン上の配慮が重要である。
タッチパネルを用いたインタフェースは複雑なサービスを簡潔な操作で提供できるなどの利点があるが,操作の触覚的反応が得られにくいなどの欠点も抱えている。富士通では公共システムの開発において,タッチパネルの欠点を補い利便性の高いサービスを提供するために,ユーザインタフェース開発の専門チームを組織して取り組んでいる。
本稿では,具体的な公共システムの画面デザイン事例として"amabile"の画面デザインを取り上げ,「読み取りやすい文字」や「押しやすいボタン」などの工夫や,対人で行われていた手続きが無人で行われることで生ずる「機械操作に対する不安」をフォローする手法,「手続き自体の分かりにくさ」を補う手法を紹介する。

三輪 武生,浅川 玄

「教育の情報化」が進む中,養護学校を含むすべての学校においてコンピュータやインターネットを活用できる環境が整備されつつある。しかし,障害児がコンピュータやインターネットを活用する場合には,一人一人の障害の状態などに応じたソフトウェア・ハードウェアが求められる。そこで,障害児のインターネット利用環境の改善と電子メールを利用したコミュニケーションの拡大を目的として,2001年7月より障害児向け電子メールソフト「らくらくメール」の開発に着手した。養護学校での試用・評価を通して改良を重ね,2002年11月に商品化した。らくらくメールは,障害児の操作を配慮して,漢字かな混じりの受信メールをひらがなに変換して表示する,メールの文章を音声合成で読み上げる,外部入力スイッチを利用して操作するなどの機能を備えている。
本稿では,らくらくメールの機能および開発時の試用・評価について紹介する。

伊藤 智之

富士通インフォソフトテクノロジの社会貢献事業の一環として活動している「パソボラ倶楽部」は,人的援助(ボランティア),パソコン講習会の会場設備提供,遊休設備の無償貸与などを行っている。本稿では,この「パソボラ倶楽部」の活動紹介を中心に,視覚障害者,聴覚障害者がパソコンをはじめとするIT機器を使えるようになるために必要な環境,設備,ソフトウェア・ハードウェア,およびサポータに関する課題と解決へのアプローチについて述べる。また,このような活動の輪を富士通グループ全体に広げていくために必要なバックアップ体制などについても述べる。

山本 孝志,山本 直樹,小林 正

一般

近年のインターネットをはじめとする情報技術(IT)は,情報システムの形態を多様なものにしている。最新の技術を駆使して構築されるシステムは,お客様のビジネスに深く密着し,24時間365日の安定稼働が求められている。一方で運用管理担当者は日々発生する運用課題にどう対処していくか,取り組むべき多くの課題に直面している。富士通ではこれらの課題に対応するために数多くのシステムの運用支援を行う中で蓄積したノウハウをもとに,システム運用ソリューションサービス"SupportDesk Management"を提供している。本サービスは,富士通とお客様のシステムをリモートで接続し,システムの運用管理を支援するサービスである。本稿ではSupportDesk Managementが提供するサービスの概要と適用事例について述べる。

水野 繁子,浜田 哲郎,鈴木 隆之


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