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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2001-7月号 (VOL.52, NO.4)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2001-7

特集: 「研究開発最前線」

研究開発最前線特集に寄せて(PDF)

特集: 研究開発最前線目次〕

生活を豊かにするサービス・ソリューション

  • 新しいモバイルサービスを支えるインスタントメッセージ技術
  • モバイルアプライアンス
  • デジタル家電
  • CRMを支える先進技術
  • ブロードバンド時代の新サービス
    -インタラクティブCM/クロスメディア検索-

豊かなインターネット社会を創造する情報通信インフラ

  • 次世代ネットワークアーキテクチャ
    -バーチャルルータネットワークにおけるトラヒックエンジニアリング-
  • フォトニックシステム
  • モバイルインフラ
    -IMT-2000とその後の展開-
  • 次世代ノードシステム
  • インターネットミドルウェア技術
  • インターネットセキュリティ
  • 大規模e-ビジネスサイトを支える技術

情報通信インフラを支える最先端テクノロジ

  • 光ネットワーク用デバイス
  • 次世代ストレージ技術
  • フラットパネルディスプレイ
  • システムLSI用VLIWプロセッサコア
  • サブ100 nm世代のトランジスタと多層配線技術
  • 先端分析・評価技術
  • ナノテクノロジ

特集:研究開発最前線


生活を豊かにするサービス・ソリューション

携帯電話は,電話だけでなくメールなど新たなコミュニケーション手段を備え,様々な情報サービスをいつでもどこでも受けることができるパーソナルな情報端末として急速に普及している。本稿では,今後のインターネットインフラとして期待されているインスタントメッセージ技術を活用した新しいモバイルサービスについて紹介する。インスタントメッセージは,相手の今の状況を参照し,相手の状況に応じてリアルタイムに文字メッセージを送ることができる技術である。まずはじめに,インスタントメッセージのプロトコル標準化動向について紹介する。つぎに本技術を用いたモバイルコミュニケーションサービスとして,開発し実験公開中のサービスおよびシステムについて,ユーザ評価を含めて紹介する。さらに,モバイルコマースなど,インスタントメッセージ技術を活用した新しいモバイルサービスについても紹介する。

奥山 敏、角田 潤、岩川 明則

モバイル環境が飛躍的に充実してきた。これからは,「どんなアプライアンスを携帯し,どう活用するか」が,個人のライフスタイルを決める。モバイルスキャナ"Rapidscan"は,このような新しい時代の要請を先取りして開発された。シリーズ最新機のRS-C40Uは,600 dpiの高解像度で,読取り画像の自動結合機能によって,クラス最小(最軽量)ながら,大きな紙面をも入力でき,大変使いやすくした。また,USBインタフェースと業界標準のTWAIN規格に準拠で,INTACTA.CODEへの対応など,幅広いアプリケーションで利用できる。さらに,Rapidscanの技術を継承した簡単操作の"DigitalMEMO"は,表示部やメモリを持ち,単独で携帯して活用できる。今後は,インターネットスキャナや統合情報ビューアへの飛躍の可能性も秘めている。本稿では,イメージ情報を入力するスキャナをベースとしたモバイルアプライアンスの展開と,その要素技術について紹介する。

野田 嗣男、千葉 広隆、安部 文隆

2000年末のBSデジタル放送の開始により,印刷メディア,パッケージメディア,通信メディアに続いて,最後までアナログが主流であった放送メディアもデジタル化が本格化し,いわゆるデジタルコンバージェンスが立ち上がりつつある。
本稿では,ホームネットワークを中心として,上記環境変化への対応を述べる。
従来,家庭ではAV機器に適したシリアルインタフェースであるIEEE1394を軸としたマルチメディアネットワークが中心になると考えられてきたが,アクセス系のIP化および開発速度の速さから,バックボーンはIPベースの高速有線LANになる。また,複数のプロトコルが宅内外に共存することから,宅内外のネットワークを終端するホームゲートウェイが非常に重要となる。さらに,デジタル家電向けヒューマンインタフェース,著作権保護技術,リモートメンテナンス技術などの基本的技術が,家電のデジタル化促進には不可欠である。

村上 敬一、浅見 俊宏、竹林 知善

Customer Relationship Managementソリューションへの研究所の取組みを紹介する。インターネットコールセンタにおける業務効率化として,顧客からの電子メールへの自動回答や顧客への効果的なキャンぺーンメール発信技術を説明する。これらは,すでにBroadChannel/InternetContactやBroadChannelポテンシャルセールスとして製品化された。つぎに"EC+CRM"の基盤として顧客に最適な商品/オプションなどの組合せを提示するコンフィグレーション技術や,Webブラウザ搭載により急速に広がるモバイル端末への対応技術を説明する。これらは,1~2年内の製品化・実用化を目指している。最後に中長期的課題として,音声認識や合成などへの取組みについても触れ,今後を展望する。

杉山 健司、丸山 文宏、湯原 雅信

本稿では,迫り来るブロードバンド時代のマルチメディアを利用した新サービスの提案として,インタラクティブCMとクロスメディア検索について紹介する。インタラクティブCMでは,顧客が3次元の自律キャラクタと対話を行い,プロファイルを取得し,顧客の関心に合わせて広告提示を行うシステムを試作した。顧客のインタラクションに合わせて行動する「自律的振舞い」と顧客の状況に合わせて質問する「自律的対話」によって,かわいらしく賢いキャラクタを実現し,顧客の恒常的な囲い込みを行う。一方,クロスメディア検索では,検索でヒットした商品の画像を一覧表示して,画像を見比べながらショッピングできるサービスを実用化した。値段順や似た色のものが近くに集まるように配置する機能により,商品リストすべてをチェックすることなく画像一覧中で条件が一致する部分の商品だけを比較検討することで欲しい商品をチェックすることができる。

新井 正敏、椎谷 秀一

豊かなインターネット社会を創造する情報通信インフラ

バーチャルルータネットワークは,著者らが提案している次世代ネットワークアーキテクチャである。本アーキテクチャのねらいは,キャリアIPネットワークをあたかも単一の仮想的なルータのように見せ,一元的に制御運用することである。本稿では,光の持つ大容量伝送特性と柔軟な制御が可能な電気処理ノードとを融合させたバーチャルルータネットワークについて概説する。さらに,ネットワーク制御技術の核となるトラヒックエンジニアリング(TE)に着目し,著者らが開発した要素技術について説明する。TEは,ネットワーク内でのトラヒックの流れを制御することにより,ネットワークの高信頼化・最適化を行う技術である。バーチャルルータネットワークとTE技術により,次世代ネットワークの大容量化を達成するとともに,ネットワークの運用性を高めることが可能になる。

宗宮 利夫、野村 祐士、中後 明

21世紀における情報社会においては,いつでも,だれでも,どこでも,どこにでも,安く簡単に情報をやり取りできることが望まれる。この豊かな情報社会を支えるネットワークはフォトニックの技術によって構築されると期待されている。それは,光波長多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)システムに代表されるようにフォトニックシステムが大容量で,柔軟性・拡張性があり,経済化を実現できる特徴を有しているからである。
本稿では,実用化したテラビットWDMシステムを紹介し,大陸横断の陸上長距離システムの技術,次世代の超大容量・超高速システムである40 GbpsWDMシステム,大洋を横断するテラビットの海底WDMシステム,光増幅技術および,将来の光信号のままでネットワークを構成するための光信号処理技術について,富士通研究所の最近の研究成果を述べる。

山口 伸英、渡辺 茂樹

インターネットの進展に伴い,i-modeなどを利用したモバイルアクセスのユーザが急速に増加している。また,モバイルインフラとして大きな期待が集まっているIMT-2000のサービスが世界に先駆け日本で開始されようとしている。IP接続サービスの普及により,データ伝送系のサービスが充実し,利用形態にも大きな変化が現れており,これらを支えるモバイルアクセスインフラの重要性も増し,高速伝送への期待も大きくなっている。
本稿では,はじめに,21世紀に入りますます重要性を増しているモバイルインフラの発展の経緯を振り返り,IMT-2000の技術および標準化を中心に解説する。つぎに,富士通で開発したIMT-2000用の高機能化技術などを紹介する。また,これから進もうとしているBeyond IMT-2000あるいは第4世代移動通信についてのシステムイメージおよびその実現に向けた課題についても述べる。

武田 幸雄

ブロードバンドの本格化に伴いインターネットトラヒックは爆発的に拡大している。一方では,e-コマースをはじめとする様々なサービスがインターネット上で展開され始めており,IPバックボーンネットワークの高性能化,高信頼化,高機能化に対する要求はますます高まっている。富士通研究所では,ネットワークのエッジに機能を集約させ,トラヒックの集中するコアはパケットの高速転送に特化するバーチャルルータネットワーク/バーチャルサーバネットワークの検討を進めている。コアは波長やレイヤ2スイッチなど極力シンプルな構成とし,逆にエッジではURLなど上位レイヤの情報も駆使してパケットの転送制御を行うことで,ネットワーク全体の高性能化,高信頼化,高機能化を実現する。
本稿では,このバーチャルルータネットワーク/バーチャルサーバネットワークを実現するうえでかぎとなるノード構成技術についての取組みを紹介する。

加藤 次雄、鶴岡 哲明、安達 基光

日常の経済活動のみならず,携帯電話からのメール,WWWサービスなどに見られるように,インターネット利用が急増しており,すでに社会生活に不可欠なインフラになっている。これに伴い,データ転送という基本機能はもとより,快適で安定,安全なサービス機能が今まで以上に重要となっている。インターネットミドルウェアとは,基本通信機能の上位機能として,ネットワーク負荷を効率良く処理したり,複数のサービス要素を連携させて,利用者にとって,使いやすく快適な環境を造り出す技術の総称である。
本稿では,このインターネットミドルウェア技術について,その位置付けや役割を含め,主要技術であるサービス連携機構やネットワーク連携機構を実現する技術開発への取組みを紹介する。

勝山 恒男、淺川 和雄

社会/企業活動の基盤として,インターネット技術を利用した情報システムが重要な位置を占めつつある。この動きに従い,インターネット上で相手を見分け,また情報を途中で盗み見られないようにするなどのシステムとしてのセキュリティ技術が,情報システムを支える重要な技術として認識され始めた。
本稿ではセキュリティ関連の技術動向を概説し,富士通研究所での種々の研究成果,およびサービス適用の状況を述べる。暗号では独自技術を開発し,従来標準の5倍以上の速度を実証した。認証では近い将来の電子政府を支える要素技術を開発した。不正アクセス防止ではログ情報の統合管理フレームワークおよびリアルタイムフィルタを開発し,サービスが開始された。コンテンツ保護では超流通の概念に基づく技術を開発し,ディジタルコンテンツ配信サービスに適用され始めている。

小谷 誠剛、森原 隆、鳥居 直哉

インターネットの大規模e-ビジネスサイトはWebサーバ,アプリケーションサーバ,データベースサーバの3階層のクラスタシステムとして構築される場合が多い。しかし,サーバ間通信にはLANが使われることから,サーバ間通信に本来必要のなかったTCP/IPプロトコルスタック処理が必要である。また一般的なI/O接続バスであるPCIバスは10 Gbit Ethernetなどの将来の高速I/O装置を接続するには性能が不足している。
現在,業界の主要なベンダから構成されるInfiniBand Trade Associationによって,新しいI/O接続規格であるInfiniBandの仕様策定が行われている。InfiniBandはネットワーク接続型のI/Oアーキテクチャで,従来のPCIバスよりもデータ転送速度が高速でありスイッチを用いて多数の装置を接続できるという高いスケーラビリティを持っている。
本稿では大規模e-ビジネスサイトを支えるInfiniBandの最新技術を紹介する。

今村 信貴、伊藤 雅典、岸本 光弘

情報通信インフラを支える最先端テクノロジ

本稿では,目まぐるしく大容量化が進む光ネットワークにおいて,要求される光デバイスについて概説するとともに,富士通がこれまで開発してきたいくつかの光デバイスについて紹介する。波長分割多重(WDM)方式において多重度が増す中,ネットワーク構築の経済性・柔軟性・高速性を考えると,光を光のまま処理できる光分岐挿入(OADM)装置や光クロスコネクト(OXC)装置などが不可欠となる。この機能を実現するための光合分波器,大規模光スイッチなど新たなデバイスが必要である。また,1波で40 Gbps以上のビットレートを持つシステムを実現するため,新たな高速の送受信器,分散補償器などのデバイスが必要となる。これらデバイスを機能別・方式別に分類し,最近の動向をまとめる。富士通の代表的なデバイスとして,外部変調器,波長可変フィルタ,半導体増幅器,波長可変レーザを取り上げる。

中澤 忠雄、小滝 裕二、森戸 健

企業活動のIT化やインターネットの爆発的な普及によりディジタル情報の記憶保存,転送に関する技術や装置の重要性が増している。情報記憶(ストレージ)装置の中心に磁気ディスク装置(HDD)や光磁気ディスク装置(MO)が位置している。これらの装置では,高性能化や低価格化が強く要求されており,いかに多くの情報をどれだけ小さい装置に記憶保存できるかという,高密度記録技術の開発が進められている。
本稿では,磁気ディスク装置(HDD)における高密度磁気ヘッド技術および高密度記録媒体について,また光磁気ディスク装置(MO)における高精度位置決め制御技術について解説を行い,高密度記録に関する技術開発の一端を紹介する。

田中 厚志、渡辺 一郎、押木 満雅

インターネットのブロードバンド化にともなって,扱われる映像情報が多彩になっている。その中で,表示デバイスの主力はCRTからフラットパネルディスプレイになりつつある。ディスプレイのフラットパネル化は1970年代に小型の液晶ディスプレイから始まった。その後液晶はパソコン用のディスプレイとして大きな市場をつかんでいる。最近になってPDPは大型化が容易であることから40型クラスの大型ディスプレイとして市場進出を果たした。
本稿では最新のフラットパネルディスプレイ技術として,PDP,フィールドシーケンシャルカラー液晶ディスプレイについて紹介する。

別井 圭一

今後のディジタル民生機器用のシステムLSIは,ハードウェアによる処理を主体としたASIC(Application Specific Integrated Circuit)的手法から,プロセッサをコアとし,その上でアプリケーションプログラムを実行させ処理する「プログラマブル」なプラットフォームに変わっていくものと考えられる。
このプログラマブルなプラットフォームの中核となるプロセッサコアには高い処理性能のほかに,コンパクトなコアサイズ,低消費電力といった相反する要件を満たすことが要求されるため, 新たにFR-Vアーキテクチャを開発した。FR-VはVLIW(Very Long Instruction Word)方式を採用することで,通常のCPUの行う汎用処理と画像・音声処理などのメディア処理の両方を効率良く実行できるとともに,低消費電力,コンパクトなコアサイズを実現できる。FR-Vアーキテクチャに基づいた最初のプロセッサであるFR500を開発し,当初の目標どおりの性能を得た。

高橋 宏政

本稿では,100 nm世代以降のCMOSをターゲットに,短チャネル効果抑制技術と多層配線技術について検討した結果を述べる。短チャネル効果の抑制にはチャネル方向に急峻な分布が実現可能なインジウム不純物のポケット構造が必須である。また,ポケット注入時のチャネル部表面へのイオンの進入は,キャリア移動度低下につながるため極力避けるべきである。このため,ポケット注入のマスクとなるゲート電極にノッチ(刻み)を入れゲート長50 nmのトランジスタを試作した結果,CV/Iでの性能は1.2 ps(nMOSFET),2.5 ps(pMOSFET)の超高速を実現した。一方,多層配線技術の課題は,低誘電率の絶縁膜中に高アスペクトの溝や孔を形成しメタルを埋め込む技術,それらの表面処理技術,低誘電率のエッチングストッパの開発である。LSIの高性能化にはこれらトランジスタと配線の遅延を同時に改善していくことが重要である。

杉井 寿博、中村 友二

次世代のLSI,磁気ヘッドなどのデバイス開発においては,ますます微細化が進み,デバイスを構成する薄膜の膜厚,組成,微細構造などのナノレベルの制御が不可欠となる。これに伴い,薄膜のナノレベルでの分析・評価技術の開発も急務となってきている。
本稿では,まず,このようなデバイス開発における,現在から将来に向けての分析・評価のニーズを展望し,開発すべき先端分析・評価技術について述べる。ついで,これらの先端分析・評価技術のうち,現在著者らが取り組んでいる技術の現状について紹介する。はじめに,微細構造の解析技術として,FE-TEMによるナノレベルでの構造・組成解析,さらには原子種まで特定可能な高分解能暗視野STEM法について述べる。ついで, 微量不純物の深さ方向分布を1 nm以下の深さ分解能で評価できる低加速2次イオン質量分析法について述べる。最後に,材料の微細構造に加えて,電気的・磁気的特性をナノレベルの分解能で可視化できる新しい評価技術である電子線ホログラフィの開発状況についても概説する。

上田 修、本田 耕一郎、片岡 祐治、小高 康稔

米国のクリントン前大統領が発表した「国家ナノテクノロジ戦略」により,ナノテクノロジという名が一躍有名となった。ナノメートル(10億分の1メートル)の世界を人間が制御することにより,あらゆる材料,そしてあらゆる産業分野に技術革新をもたらす可能性があることが広く認識されるようになったからである。
富士通研究所では,半導体分野でのナノテクノロジの研究開発は,HEMTの発明に端を発し20年前から始めている。現在では量子ドットの研究で先行,例えば,電子1個を制御する量子ドットメモリや,新しい原理に基づくテラビット光メモリの実現可能性を検証している。本稿では,これら量子ドットに関する最近の研究成果をまとめるとともに,半導体から異分野へのナノテクノロジ展開を図るために2000年12月に新設したナノテクノロジー研究センターの研究計画をご紹介する。

粟野 祐二、横山 直樹


---> English (Abstracts of Papers)