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Fujitsu

Japan

アーカイブ コンテンツ

注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2001-5月号 (VOL.52, NO.3)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2001-5

特集: 「環境」

環境特集に寄せて(PDF)

特集: 環境 目次〕

概要

  • 循環型社会のトップランナーを目指して

クリーン化技術

  • プラズマ触媒融合技術によるダイオキシン分解
  • LSI用生分解性包装材

製品環境対策技術

  • ノ-トパソコン筐体の環境対応技術
  • マテリアルリサイクルが可能な環境配慮型塗料

製品リサイクル

  • 使用済み製品のリサイクルへの取組み
  • プリンタ消耗品のリサイクルシステム

環境強化型製品(グリーン製品)

  • ノートパソコンの環境対応
  • イメージスキャナのグリーン製品化対応

工場環境対策技術

  • 半導体工場の省エネルギー対策
  • ベトナムプリント基板製造工場の塩化銅廃液の製品転換技術

環境情報システム技術

  • ILASデータ処理運用システム
  • PRTR対応の化学物質総合管理システム

環境会計

  • 富士通の環境会計への取組み

一般

  • 地球観測衛星データの保存・配布システム
  • 高速両面カラーイメージスキャナ

特集:環境


概要

富士通では,地球環境問題の解決に企業の責任と役割は大きいという認識に立って,いち早く地球環境保全を経営の重要課題の一つとして位置付けていくことを「富士通環境憲章」により社内外に対して宣言した(1992年7月)。さらに,重点テ-マについて,自主的な高い数値目標を定めた「富士通環境行動計画」を策定(第1期:1993年3月)して,第1期/第2期とその目標達成に向けて努力してきた。
本稿では,2000年度に終了した第2期環境行動計画の成果を通して,富士通が事業活動を展開する中で,どのように地球環境保全に取り組んできたかを紹介する。また,新たに2001年度からスタートした第3期環境行動計画について,そのポイントと,環境トップランナーを目指した今後の取組みについて概括的に述べる。

小林 孝一

クリーン化技術

近年,触媒や非平衡プラズマによる有害物質の分解技術に関連し,触媒単独やプラズマ単独技術に加えて両者を融合する技術が話題となってきた。著者らはこの融合技術による大気中かつ常温で動作する化学反応器の概念をPACT(Plasma-Assisted Catalytic Technology)として提唱した。CO2,NO,H2Oなどの分解基礎技術を確立し,この技術をベースに気相反応から固相反応および液相反応に研究を発展させ,ダイオキシン分解に成功した。
本稿では,まずPACTの概念に立脚した化学反応器の構造と動作原理を概説し,つぎに,その特徴を示す化学反応として,ダイオキシン分解結果について述べる。

林 佑二、上田 修、福田 祐幸

LSIの輸送や実装に使用するプラスチック製のLSI包装材は,使用後に一般に廃棄される。このような廃棄されるプラスチックの環境への負荷を低減するために,「自然に還る」プラスチック(生分解性プラスチック)に着目した。この材料に導電性と生分解性を両立させることにより,LSIを静電破壊から保護し,土壌へ廃棄した場合には微生物によって分解され,また焼却した場合でも有害ガスは発生しないという特徴を持った新しいLSI用生分解性包装材を世界に先駆けて開発した。
本稿では,開発したLSI用生分解性包装材料技術および実用化したLSIトレイやエンボスキャリアテープについて紹介する。

端谷 隆文、安藤 幸男、朽網 道徳

製品環境対策技術

パソコン質量の約30%を占める筐体材料に関する環境対応技術を開発した。パソコン筐体材料としては,樹脂材料が一般に用いられているが,モバイルパソコンにおいては,その堅牢性からマグネシウム(Mg)合金が近年広く使用されるようになってきた。このため,環境対応技術として,樹脂材料については燃焼処理時にダイオキシン発生や河川における有害物質の溶出など,環境汚染の恐れのないりん系難燃性樹脂筐体技術を開発した。また,Mg合金については,成形工程で発生する不要部のリサイクル技術を開発した。これらの技術の採用により,リサイクル材においても初期材料と同等の薄肉成形性,強度,耐食性などパソコン筐体に求められる特性を実現した。りん系難燃性樹脂筐体技術,Mg合金筐体のリサイクル技術は,1998年以降の富士通のノートパソコンである,FMV-BIBLOに適用された。

西井 耕太、河原田 元信、木村 浩一

パソコンが情報家電と呼称され嗜好性が求められるようになった今日,家電製品と同様に市場動向に対応したデザイン開発が求められる。店頭効果や商品アピールのため,パソコンの筐体に採用しているプラスチックへの塗装が不可避になっている。パソコンの使用用途に応じた筐体材料の選定については,モバイルでは軽金属であるマグネシウム合金やアルミニウムが考えられるが,通常のパソコンでは実用面(形が造りやすく軽量で安価)からプラスチックが主流となっている。従来,プラスチックに塗装を施すことはマテリアルリサイクルができないとされており,無塗装におけるデザイン開発を行わざるを得なかった。
本稿では,マテリアルリサイクルの現状を述べ,プラスチックに塗装をしてもマテリアルリサイクルが可能な環境配慮型塗料を紹介する。

中野 豊、小田 徹

製品リサイクル

大量生産・大量消費の繰返しにより,廃棄物が増加している。このような状況から,廃棄物の適正処理と削減による環境負荷の低減が最大の課題となっている。
このため,2000年に環境関連の法規整備が進められ,廃棄物処理法と資源有効利用促進法などが強化された。富士通では,従来から「富士通リサイクルシステム」を構築し,全国を網羅した複数の収集運搬会社と5か所のリサイクルセンターの連携により,お客様の使用済み製品を回収し,リサイクルを推進してきた。今後,資源有効利用促進法に対応すべく企業からの使用済みパソコンに加え,新たに,家庭からの使用済みパソコンの回収・再資源化の仕組みの構築や,パソコンの分類ごとの回収量や資源再利用率の把握と公開を的確に推進し,「資源循環型社会」の実現に邁進していく所存である。

神田 幸夫、天野 一弘

近年,企業において環境への取組みが高まっている。地球環境に配慮した製品開発は,生産から流通,消費,廃棄に至るまでのすべての段階を通じて環境に与える影響を評価して製品化を行っている。その中で富士通では他社に先駆け,パソコンを初めとする機器類を回収・処理するリサイクルシステムを構築した。
本稿では,プリンタ消耗品であるトナーカートリッジ,大型プリンタ用トナー・現像剤を対象に顧客から回収し,適正なリサイクル処理を実施することで「埋立て処理ゼロ」を実現した富士通コワーコのリサイクルシステムについて紹介する。

関山 實、後藤 幸雄、中村 豊

環境強化型製品(グリーン製品)

2001年4月から「資源の有効な利用の促進に関する法律」(改正リサイクル法)が施行され,(1)事業者による製品の回収・リサイクルの義務付け,(2)製品の省資源化・長寿命化による廃棄物の発生抑制(リデュース)対策,(3)回収した製品の再利用(リユース)対策が必要となった。パソコンは指定省資源化製品の対象とされ,リデュースのための製品化が必要となった。また,2000年9月には(財)日本環境協会がエコマーク認定基準を策定し,パソコンが認定対象製品として指定され,環境負荷の少ない製品の開発が更に重要となってきた。
そこで,富士通は環境に配慮した製品の開発を推進すべく,省資源化,再資源化,規制物質の不使用などを図り,社内のグリーン製品評価規定に基づき,1998年より「グリーン製品」としてノートパソコンの発売を開始した。さらに,エコマークの認証を取得すべく,リサイクル設計に取り組み,環境配慮型製品の開発に努めている。

笠原 雅治、岡崎 泰弘

PFUでは,環境行動計画の中で「グリーン製品(環境強化型製品)の開発推進」活動を展開している。その一環として,イメージスキャナシリーズの開発においては「全開発製品グリーン製品化」を基本方針として,1999年発表のPD-PGM50S(富士通ブランド名:fi-4110C)から,PD-PGM70S(富士通ブランド名:fi-4210C),PD-MAR500SD(富士通ブランド名:fi-4750)と順次,グリーン製品化してきた。
本稿では,開発の初期段階における省資源化,省エネルギー化,再資源化率向上,処理・処分の容易性などの設計課題への取組みを紹介し,イメージスキャナシリーズのグリーン製品化の対応について述べる。

谷口 利昭

工場環境対策技術

半導体製造の技術進歩は目覚ましく,デバイスの高集積化・大口径化が年々進み,製造装置の大型化によりクリーンルームの面積が拡大し,これに伴い,半導体工場のエネルギー消費も増加の傾向となっている。
半導体工場では,クリーンルームの空調設備などの付帯設備で多量のエネルギーを消費している。半導体工場の省エネルギー対策を推進するには,これらの設備の効率化や製造プロセスの最適化が求められる。
本稿では,半導体工場で実施している省エネルギー対策の実例を紹介し,エネルギーの低減対策およびその効果について述べる。

栗原 浩久、笹原 健一

ベトナムは,日本をはじめとした先進国のように廃棄物問題の対策を行おうとしているが,そのためのインフラ整備が追従できていないのが現状である。そのため,ベトナム国内には工場などで発生する重金属を含む廃液や廃棄物の処理を委託できる仕組みがない。このような背景の中で,富士通がベトナムのプリント基板工場(FCV:Fujitsu Computer Products of Vietnam, INC.)を操業していく上で,製造工程から発生するすべての廃液を処理することは重要な課題であった。
とくに,銅エッチング工程で発生する塩化銅廃液は銅濃度が高く強酸性であるため,重金属の除去,中和処理が必要である。しかし,この一般的な処理方法では大量のスラッジ(汚泥)が発生してしまうため,廃棄物の最終処分場がないベトナムでの事業展開は,処理できない廃棄物の保管,管理のためのコストや対外的に見た企業の環境への取組み姿勢の面で大きなリスクを負うことになる。
そこで,富士通では,この廃液の銅濃度の高い点に着目して塩化銅廃液をスラッジではなく,付加価値の高い酸化銅に転換する技術を確立して銅化合物製品の原材料とすることに成功した。

松本 操、中安 浩二、山川 英士

環境情報システム技術

オゾン層破壊現象の機構解明のため,環境省は極域大気中の微量ガスを人工衛星から観測するための改良型大気周縁赤外分光計ILAS(Improved Limb Atmospheric Spectrometer)を開発した。ILASは1996年11月から8か月間,宇宙から南北両極域を観測した。
著者らは,国立環境研究所からの業務委託により「ILASデータ処理運用システム」の開発・運用に携わり,2000年度に主な作業をほぼ終えた。開発の特徴として,衛星データの処理全般にわたる総合的なシステムであったこと,アルゴリズムの開発・改良を継続的に行いデータ品質の向上を図ったこと,膨大な演算と大量のメモリを必要とするデータ処理に並列計算技術を適用したことが挙げられる。
本稿では,ILASデータ処理運用システムの開発内容・基礎技術などを紹介する。

伊藤 康裕、梶 正典、戸上 武雄

環境に有害な化学物質の管理と環境問題への積極的な取組みを進めるため,[特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律]{通称:PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法}という新しい仕組みができた。事業者は,化学物質の自主的な管理の改善を進め,無駄な排出を抑え,原材料の削減を行っていく必要がある。
すでに富士通では,購入・使用・廃棄に至るまで化学物質を把握し,かつPRTR法にも対応した化学物質の総合管理システムを構築している。それらのデータをもとに工場ごとの排出削減目標を設定して,化学物質の再利用や代替物質への変更などにより,製造工程での使用量や濃度などの削減を図ってきた。
本稿では,使用する化学物質を人の健康および環境保全の観点で管理するためのシステムとして,富士通で実践されている「化学物質総合管理システム」をベースとした「eco-HCMS」パッケージの概要と機能について述べる。

山口 寿義、野口 喜一、塩野 拓

環境会計

今,環境に大きな変化,うねりが起こっている。環境負荷を低減する循環型社会に向かっての変革である。環境負荷低減活動において環境対策の継続的な向上を目指すために,採算を見据えた環境会計への取組みによる環境活動の活性化が必要である。富士通はグローバルスタンダードが存在しない状態の中でその取組みをスタートし,費用と効果の範囲および算出定義の基準を作成した。とくに効果については,直接効果のみならず,見えにくい間接効果を明確にすることも環境会計導入の一つのねらいであると考え,「みなし効果」「リスク回避効果」を定義付けし,算出できるよう基準化した。
本稿では,見えにくい間接効果の考え方を中心に,事例に基づき富士通の環境会計について説明する。また,環境対策費用に対する環境負荷低減を定量的に評価できる環境負荷改善指標も必要と考え,1999年度集計分から導入した同指標についても述べる。

小野 芳一、三枝 達男

一般

地球環境問題に貢献するために米国NASAが提唱した国際共同プロジェクトにEOS(Earth Observing System)計画がある。我が国も経済産業省主導のもと,ASTER(Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection Radiometer)プロジェクトとして,地球観測センサASTERの開発,ASTER地上データシステムの開発,およびデータ処理アルゴリズムの開発の形でEOS計画に参画している。富士通は,センサ開発,地上システムの開発,処理アルゴリズムの開発のいずれにおいても,その一翼を担ってきた。
本稿では,ASTER地上データシステムの1サブシステムとして,富士通が開発したデータ保存・配布設備(DADS:Data Archive and Distribution Subsystem)の概要と構成を紹介するとともに,開発の過程で直面した問題と解決に至った技術的アプローチについて紹介する。

佐藤 弥之助、有山 俊朗

富士通では,本格的にカラー対応を行った,「業務用高速両面カラーイメージスキャナ」fi-4750Cおよびfi-4990Cの2機種を開発した。いずれもA3サイズまでのフルカラー両面原稿を複数枚連続して読み取ることができる。また,その速度はfi-4750Cは24 ipm(image per minutes),fi-4990Cは180 ipmとそれぞれ同じクラスの他社機を上回る速度を実現した。両機種とも直線に近い用紙パスを採用し,広範な種類の用紙を良好に給紙できるようにするなど数々の設計上の特長を備えている。
本稿ではこの2機種を紹介するとともに,その基本原理や使用技術,応用ソフトウェアなどについて,概要を説明する。

柏崎 朋之、吉田 正博、田端 良雄


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