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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

1999-7月号 (VOL.50, NO.4)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 1999-07

特集: 「21世紀に向けた研究開発」

21世紀に向けた研究開発特集に寄せて(PDF)

特集: 21世紀に向けた研究開発 目次〕

特集

  • ナレッジマネジメントを支える文書処理技術
  • 業務モデルを用いた分散システム開発技術
  • インターネットコミュニケータ -アウェアネスとテキスト通信をベースにした新しいコミュニケーションシステム-
  • ソフトウェアエージェント
  • 楕円曲線暗号
  • サーバアーキテクチャ評価用ツール:MUSCAT
  • クラスタファイルシステム:HAMFS
  • フォトニックネットワーク
  • IPネットワークに向けた技術開発
  • 次世代移動通信W-CDMA用干渉除去技術
  • 高速信号伝送技術:Synfinity II
  • システムLSIコア技術-組込みプロセッサ-
  • サブ0.1μmCMOS技術
  • 次世代LSIを支える材料技術
  • 新材料技術による1.3μm帯の温度特性の優れた半導体レーザ
  • 高密度ストレージ技術
  • プラズマディスプレイパネル
  • モバイルPCの実装技術

一般

  • ネットワークオペレーション共通プラットフォーム技術

特集:21世紀に向けた研究開発


特集

企業においては,市場やニーズの変化に即応した活動が必要であり,個々人がばらばらに所有している様々な知識を企業の構成員間で共有し活用することが課題となっている。このように人が知識をうまく活用すること(ナレッジマネジメント)は,究極は人の知的能力の問題であるが,人が知的能力を最大限に発揮するために,情報システムにより支援できる部分も多い。
人が知識を活用するためには,知的活動の個々のプロセスの中で,多くの情報の中から必要な情報を見つけ出して,付加価値を与えたり,人とのコミュニケーションにおいて,新たな知識を創造することが重要である。この中で,多くの情報の中から必要な情報を見つけ出すことが中心課題である。
本稿では,ナレッジマネジメントを支援する技術の中で,基盤となる文書処理に焦点を絞り,情報検索,要約,情報抽出,分析などの技術について,研究例を交えて紹介する。

山本 栄一郎

インターネット時代を迎えて,新しいミドルウェアやサーバが次々と登場するとともに,業務の変化もますます早くなっている。著者らは,このようなインフラや業務の変化に容易に対応可能なソフトウェアアーキテクチャを開発した。このアーキテクチャは,プレゼンテーション層,サービス層,業務モデル層,データ統合層の4層から構成され,異種のサーバを統合する。一方,近年の分業化,グローバル化に伴い,海外を含む分散拠点での開発が増加している。分散開発の効率化のためには,分散サーバ間の整合性を持った情報共有が必要である。著者らは,双方向の効率的な更新を可能とするレプリケーション(複製)方式を開発した。これらの技術に基づき,分散プロジェクト支援システムをJava言語で開発し,顧客システムとして実用化を予定している。

原 裕貴、大久保 隆夫、松塚 貴英

アウェアネスとは,ネットワークにつながれている他者の存在や行動に「気づく」ことである。アウェアネスを活用すれば,「在席・不在,いま忙しい」といった相手の状態が一目で確認できるため,ユーザはより適切なコミュニケーション手段を選択することができる。またテキストは機械可読性をもつため,WWWや検索といった既存の情報処理技術と連携して容易にコミュニケーションの付加価値を高めることができる。
本稿では,アウェアネスとテキスト通信をベースにした新しいコミュニケーションシステム「インターネットコミュニケータ」のコンセプト,主な機能,提案するサービスなどについて解説する。
なお,インターネットコミュニケータのサーバのβ版(CHOCOS)は,富士通のWWWサイトで公開しており自由にダウンロードが可能である。

森下 哲次、松田 正宏、神田 陽治

ソフトウェアエージェントは,情報入手にかかわるネットワーク上の問題を利用者に代わって解決し,だれもが快適な環境で作業を行えるよう便宜を図るプログラムである。本稿では,移動情報サービスおよび情報検索サービスに適用されているエージェントを事例として,その有用性を述べる。インターネットの拡大に伴い,ニュース,株価情報,企業情報,レジャー情報,国家情報,文献図書情報など様々な情報をインターネットから得ることができるようになったが,最近では,普及の進展に比例するように情報量も増大し,情報洪水ともいえる状況を呈してきた。こうしたインターネットを企業で利用しようとしたとき,事務所や外出先のどこからでもネットワークから情報を簡単に入手できるようにし,それらを共同で利用できるようにするかが大きな課題になっている。エージェントは,こうした課題をそれ自身が持つ通信機能,移動機能をうまく活用して解決している。

淺川 和雄

次世代の公開鍵暗号として注目されている楕円曲線暗号について,その概要と富士通研究所の取組みについて述べる。
楕円曲線暗号は,1985年に発明された暗号で,公開鍵暗号のデファクトスタンダードであるRSA 暗号に比べ,より短い鍵長で同等の安全性を提供できる暗号である。鍵長が短いため,高速処理が可能であり,またハードウェア実装を行った場合に,より小規模な実装が可能である。本稿では,まず楕円曲線暗号の原理について概要を述べ,代表的な署名アルゴリズムを紹介する。つぎに,楕円曲線暗号の安全性と最新の攻撃法に関して概要を述べる。最後に,富士通研究所で取り組んでいる安全な楕円曲線暗号のパラメタ生成技術,およびソフトウェアとDSPによる楕円曲線暗号の高速演算エンジンの実装結果について述べる。今後,楕円曲線暗号は,広く電子情報を用いたサービスの基盤技術として利用されていくと思われる。

鳥居 直哉、横山 和弘

近年のサーバは,従来からのいわゆる事務計算や科学技術計算のみならず,WEB,意思決定支援,マルチメディアなど,幅広い分野にわたって使われるようになってきた。このような状況では,目的としたアプリケーションを効率よく実行するサーバを短期間のうちに開発することが重要となる。
本稿では,サーバのアーキテクチャを決定する際のサポートツールとしての性能評価シミュレータ(MUSCAT)について述べる。MUSCATは,逐次マシン上での実行トレースを使って,複数のプロセッサから構成されるサーバシステムの性能評価を行うシミュレータである。設計を詳細化する前に使うことにより,性能向上を阻害する原因を早い段階で発見することができる。また,MUSCATをSMPシステムの評価に適用し,性能向上を阻害する箇所の検出に役立った例を示した。

木村 康則、河場 基行

HAMFS(Highly Available Multi-Server File System)は,従来のファイルシステムが抱えていた様々な問題を解決し,動的にシステムを拡張することを可能とする新しいファイルシステムである。複数のディスクからなるファイルシステムの作成,動的なディスク追加,複数のサーバがディスクを介してデータを直接共用といった従来のファイルシステムにはない特徴を備えている。HAMFSを使用することにより,シングルサーバで運用を開始し,業務量の増加に伴い必要となるディスクあるいはサーバを,システムを停止させることなく追加し,顧客システムを段階的に拡張することが可能となる。

新開 慶武、村上 岳生、土屋 芳浩

21世紀の初頭には,高速インターネットなどの広帯域サービスが本格的に普及し,10 Mbps程度の情報を各家庭で扱うようになると予想される。これらの情報容量の爆発的な増加に備えるため光通信への期待が高まっている。本稿では現在研究開発を進めている,次世代光通信技術であるフォトニックネットワークについて紹介する。フォトニックネットワークは波長多重技術を用い,テラビット級の大容量伝送を可能とするだけでなく,波長をベースにした光信号の多重分離,分岐挿入,クロスコネクトを実現して,ネットワークに拡張性,柔軟性を与え,また,網全体の信頼度を大幅に向上させることができる。フォトニックネットワークの技術動向と課題をまとめるとともに,Supercomm’98(1998年6月,米国アトランタ)で試作展示した光分岐挿入装置,光クロスコネクト装置について紹介する。

近間 輝美

本稿では,IPトラヒックを効率的に収容するネットワークインフラ技術について,富士通研究所における取組みを紹介する。IPユーザに低価格のマルチメディア通信環境を提供することを目標に,基本的な取組みの方向として波長多重光通信(WDM)を基盤においたハイブリッド網(マルチサービス網)の実現を目指している。ハイブリッド網では,各種転送方式,スイッチング方式がサポートされ,アプリケーションに最も適したものが提供される。今回は,公衆基幹網,アクセス網におけるIP統合技術,IPトラヒックを扱う基本となるルータ技術,さらには今後ますます重要性を増すと思われる統合網管理技術についての取組みを紹介する。

津田 俊隆、伯田 晃、野島 聡

マルチメディア移動通信への需要に対応するために,次世代移動通信システムの研究開発が各国で行われている。新たな周波数である2GHz帯を利用するこのシステムでは,国際ローミングや,2Mbps程度までのマルチメディアサービスの提供を可能とすることなどが求められている。日本からは,システム容量が大きく,低速から高速まで多様な通信を効率よく実現できるW-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式が提案されている。このW-CDMA方式では,各ユーザに割り当てられる拡散符号の相互相関によって生じる干渉が加入者容量を決める要因となるため,干渉キャンセラやアダプティブアレイアンテナなどの干渉除去技術が注目されている。
本稿では,初めにW-CDMAの技術と標準化の動向を述べ,つぎに著者らが提案しているパーシャル干渉キャンセラとアダプティブアレイアンテナを紹介し,終わりに得られた特性の評価結果を述べる。

田中 良紀、斉藤 民雄、武田 幸雄

Si集積回路の高性能化に伴い集積回路チップに出入りするデータ量は増加する。チップ入出力のデータ転送能力がチップ性能に見合って向上しなければ,これが性能のボトルネックになる。このボトルネックを解消するための回路技術側からの解答が,高速信号伝送技術である。
本稿では高速信号伝送技術が今後どのような要求に応えなければならないかを述べた後,バンド幅2.5 Gバイト/秒のサーバ間接続技術(Synfinity II)向けに開発してきた回路技術を紹介する。

田村 泰孝、後藤 公太郎、ラグー・サストリー

システムLSIはマルチメディア時代のキーデバイスであり,その心臓部が組込みプロセッサである。本稿では,過去に開発した2種類のプロセッサの開発背景,特徴を説明し,現在開発中の組込みプロセッサへの技術の流れを述べる。メディア処理向けプロセッサ:mGEN(Media and Graphics Engine)は,当研究所で開発した最初の組込みプロセッサである。また,Procyonは3次元グラフィクス処理向けの幾何変換プロセッサであり,効率的設計手法を採用して開発期間短縮に成功した。現在は,次世代組込みプロセッサを開発中である。本プロセッサはVLIWアーキテクチャを採用し,高性能でかつ種々のメディア処理に対応できる柔軟性を持っている。今後このプロセッサが次世代システムLSIコアとして様々な場面でその実力を発揮していくことを期待している。

久保沢 元、高橋 宏政

LSIは市場の要求から,サブ0.1μm世代に向けて急速なデバイスの微細化と低電圧化が行われている。トランジスタを微細ゲート長で正常に動作させること,そして低電圧においても微細ゲート長に見合った高性能を実現することが開発の基本目標である。
本稿は,この目標に向けて行ったトランジスタ設計指針の検討と実験結果について述べる。検討した内容は低しきい値化,短チャネル効果抑制と寄生抵抗および寄生容量の低減技術である。これらの検討の結果,基本ゲート遅延時間で11 ps/ゲートの超高速性能を実現できた。この動作速度は,これまでに報告されたSOIデバイスを含む微細CMOSの中でもトップレベルの性能である。

杉井 寿博、後藤 賢一、籾山 陽一

情報機器の処理速度の向上を支えるCMOSデバイスの高速化は年々伸展し,21世紀には1GHz以上のクロック周波数が汎用デバイスで実現されようとしている。富士通研究所では,この高速化を支える材料として,微細加工用レジスト材料と多層配線に用いるための低誘電率層間絶縁材料の開発を進めている。レジスト材料では,0.15μmの解像能力をもつArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザ用レジストの開発,そして層間絶縁材料では,3.0以下の低い比誘電率を持つ材料(HSQ:水素シルセスキオキサン)の製品適用に世界に先駆けて成功した。本稿では,これら0.18μm以降の次世代LSIのために開発したレジスト材料技術および層間絶縁材料技術について紹介し,さらに今後の展望について述べる。

矢野 映、福山 俊一、朽網 道徳

通信に使われている波長1.3-1.55μm帯の半導体レーザには,短波長帯(0.8-1.0μm)のレーザに比べて,特性の温度依存性が大きいという問題がある。21世紀に向けて新しい応用分野を開くために,この温度特性の問題を解決することが強く望まれている。本稿では,温度変動に対して特性変化の少ない,波長1.3μm帯のレーザを実現するための,新しい材料技術によるInGaAs三元基板を用いたレーザの研究を紹介する。三元基板に格子整合した材料系を用いることで,波長1.3μm帯の深いポテンシャル井戸の量子井戸を形成でき,高い温度でも完全にキャリヤを閉じこめることができるため,優れた温度特性を実現できる。著者らは基板のためのInGaAs三元バルク結晶製作技術から開発を行っており,この基板上のレーザの研究開発を,光インターコネクションを目標の一つとした通産省プロジェクト「次世代情報処理基盤技術開発」通称Real World Computing(RWC)の研究として進めている。これまでに,三元基板を用いて,波長1.23μmで210℃まで発振するレーザを実現,波長1.32μmでも従来のレーザに比べて,温度特性が大幅に改善されたレーザを実現することに成功した。これらの結果を踏まえて,面型レーザへの適用など,今後の展望についても議論する。

石川 浩

マルチメディアの普及により,処理される情報量は,爆発的に増大しており,その情報の記憶装置として,磁気ディスク装置や光磁気ディスク装置などが日常生活の中で利用されるようになっている。これらの記憶装置では,記録媒体上の磁化として情報が記憶されており,その磁化情報の書き込み,読み出しの手法によって,電気・磁気変換を利用した磁気ディスク装置と電気・光変換を利用した光磁気ディスク装置に分類されている。それぞれの装置では,小型高性能で廉価な装置の要求が高く,この要求に応える技術として,高密度に効率よく記憶する高密度ストレージ技術が重要視され,開発が進められている。
本稿では,磁気ディスク装置および光磁気ディスク装置での高密度ストレージ技術に対する富士通研究所の取組みを紹介する。

押木 満雅、庄野 敬二

21世紀に向けて,ディスプレイに大きな変革が起ころうとしている。20世紀のディスプレイの覇者であったCRT(ブラウン管)にかわり,フラットパネルディスプレイが21世紀のディスプレイとして大きく期待されている。すでに,LCD(液晶ディスプレイ)はノートPCや携帯機器といった小型ディスプレイに確固たる地位を築き,デスクトップPCのモニタの一部を置き換えつつある。一方,プラズマディスプレイ(PDP)はフラットパネルでありながら,LCDと違って大型化に向いたディスプレイとして注目を集めている。カラーPDPの基本技術を確立したのは富士通であり,1993年には世界に先駆けて21型のフルカラーPDPの量産を開始した。さらに,1995年には42型を発表し,大画面フラットパネルディスプレイへの可能性を確かなものとした。
本稿では,PDPの基本技術の特長,および富士通が開発,商品化したPDPについて説明する。そして,このPDPが21世紀のディスプレイとして大きな市場を形成するための課題とその対応について述べる。

井上 博史

21世紀において,情報ネットワークが拡大・充実していく中で,モバイルPCは,通信,情報処理端末として,性能・機能の向上とともに量的にも飛躍的に増大していくと考えられる。それに伴い,性能向上はもちろん,軽量・小型といった携帯性の追求,またノンハロゲン化やリサイクル性など環境対応を考慮した材料・機器設計が必須となってくる。
富士通研究所では,これまでモバイルPC向けの実装材料技術としてビルドアップ配線基板,樹脂と軽量金属板を一体成形したハイブリッド筐体,BIT(Bump Interconnection Technology)用接着剤などを開発してきた。現在,さらなる性能・携帯性の向上を目指して,ビルドアップ基板用の高信頼性絶縁材料,狭ピッチ用導電性接着剤,新規冷却技術の開発を,また環境対応を図るべくノンハロゲン樹脂筐体の開発を行っている。本稿では,これらの技術を紹介するとともに今後の展望について述べる。

水谷 大輔、堀越 英二、西井 耕太

一般

通信ビジネスのグローバル化や多様化に伴って,新しいサービスを提供できる伝送・交換・アクセスなどの各種通信装置と,それらを運用管理できるネットワークオペレーションシステムへの期待が高まりつつある。富士通も,これまでに各種オペレーションシステムを開発してきたが,社内の開発部門の相違などにより,使い勝手が異なることや,重複開発によるコストの増大などの問題があった。これらを解決するために通信部門共通のネットワークオペレーションシステムの共通プラットフォームである“Common Foundation”を開発した。開発に当たっては,ITU-T準拠のTMNを基本アーキテクチャとして採用し,CORBAを始めとした最新のソフトウェア技術を駆使している。
本稿では,開発した新しい共通プラットフォームのソフトウェアアーキテクチャとその応用製品について紹介する。本ソフトウェアは,とくに今までの技術では実現が困難であった,異なるメーカ間のネットワークオペレーションシステムの相互接続に大きな革新をもたらし,通信業者に大きなメリットを提供するものである。

豊島 康文、金井 龍幸、東 充宏


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