「支える」技術

アスリートセンシング

アスリートにとっても観戦する人にとっても、気持ちを豊かにしてくれるのがスポーツですよね。
「スポーツ」×「ICT」で何ができるか。2020年に向けて、スポーツが変わろうとしています。

アスリートセンシングって?

初めて聞く言葉だけど、どういう意味なの?

アスリートは、日本語で「運動選手」、センシングは、センサーを利用して計測・判別することを意味します。富士通では「運動選手をセンサーを使って色々と計測して、スポーツに活かす」、という意味でこの言葉を使っています。

身近なアスリートセンシング技術

「運動している人を測定する」ということなら、例えば「万歩計」による歩数計測も、「運動している人を測定する」という、アスリートセンシングの一つです。また、ジョギングした後に心拍数を測定するのもアスリートセンシングです。最近では、その他にゴルフのスイングセンサーなどもあります。

  • 身のまわりにもアスリートセンシング技術ってあるんだね!

「スポーツ×「ICT」で何ができる?

「ICT」って?

ICTは、Information and Communication Technologyの略で、情報・通信に関する技術の総称です。ネットワークにつながるコンピュータも、つながっていないコンピュータも、ICTの世界に含まれます。とても広い範囲をあらわす言葉ですね。

「スポーツ」」×「ICT」ってどんなことができるの?

選手の能力やチームの動きをリアルタイムに測定することによって、選手を「もっと強くする」ことや、観客を「よりいっそう楽しませる」ことができます。

バレーボールの試合~監督が選手に指示~

試合では、ベンチにコンピュータを持ち込むことが許されています。監督がタブレット端末を持ちながら、選手に指示を出している姿がテレビに映し出されていることもありますね。この時、試合中にコートサイドで得られたデータをチームのスタッフがリアルタイムにコンピュータに入力しています。そのデータをコンピュータが即座に集計・分析した結果が監督のタブレット端末に届けられます。監督はそれに基づいて、例えば「スパイク、サーブ、ブロックの狙い目」など、具体的な指示を選手に与えているのです。

誤審を無くす

多くの国際大会で、明らかに誤審と思われる判定によってメダルを逃したり、メダルの色が変わってしまったということがあります。本来あってはならないことですが、あまりの速さに人の目がついていけない時があります。このような誤審を無くすために、現在では「審判の目」を補助するものとして、多くの競技に「ビデオ判定」が導入されています。例えばサッカー、柔道、フィギュアスケート、野球、体操、水泳などで微妙な判定がビデオで再確認されている様子をテレビで見ることができますね。

観戦者の楽しみを広げる

例えば野球の試合を見ている最中に、好きな選手の最近の打率や守備範囲、昨年とのスイングの違いなどを見たい時に表示できるといいですね。フィギュアスケートなら、選手がたった今成功させた技の名前や、それによって獲得したポイント、回転数が足りないと解説者が言った場合には、どれくらい足りなかったのか、など画面に表示されると、自分も選手になったような気持ちで楽しむことができるでしょう。

富士通が目指す、ICTを利用した支援技術「体操採点支援」

現在の判定

審判員(人)による判定をしています。体操には技(わざ)を採点する「D (Difficulty)審判員」と演技構成や技術、姿勢に関する演技のできばえを評価する「E (Execution)審判員」がいます。現在の目視採点では、技の高度化による目視の限界、また、審判員が複数の選手を審査する間、緊張を解くことができない等、審判員の負担が大きい状態です。

選手の動きを見るのに、モーションキャプチャーを使うことを考えてみました

(マーカー式)モーションキャプチャーを使った場合の課題

  • 30を超える数のマーカーを選手に装着してもらう必要があるため、演技の邪魔になってしまう
  • 各マーカーの位置を三角測量の原理で測定するためには、ひとつのマーカーが2つ以上のカメラの視野に入っていなければならない。その結果、多数のカメラが必要になる(12台程度)

市販されている3Dセンサーを使った場合の課題

  • 近距離(4m程)しか使えないので、体操運動の範囲をカバーできない
  • 出力が小さく、屋外では使いにくい

富士通が目指す「競技者に負担をかけない、体操の採点支援」

選手にマーカーを付けず、遠くから(競技会場の応援席から)撮影した映像を使って選手の骨格や技(わざ)を認識ができる世界を目指しています。

  • 「採点」って、審査員が見て「きれいだな」というようなことも採点対象ですよね?

  • はい、美しさはEスコアとして採点されます。現時点では、採点結果の正しさは「人間の目」によって確認されなければなりません。私たちが目指すのは、機械と人間それぞれが自分の受け持つ部分だけを採点する仕組みによって、審判員の負担を軽減することです。

富士通オリジナル基礎技術 ①3Dレーザーセンサー技術

1秒間に230万点のレーザー光を照射するので、選手の素早い動きでも正確にデータを取得(従来よりも1ケタ多い照射数を実現)

マーカーを装着していない選手の素速い動きを正確に測定するレーザー発光技術(1秒間に約230万点)によって、普段の姿のままの選手の正確な立体データの取得が可能になりました。

このようにレーザー光を選手にあてることによって、選手とレーザー装置との距離を測定しています。このレーザー光の数が多ければ多いほど距離情報の量が増えるため、選手の体の立体データが正確になります。そこでレーザー光を高速に照射するレーザー照射ユニットを新たに開発し、1秒間に230万点ものレーザー光照射(従来比で約1ケタ多い)を可能にしました。

  • 1秒間に230万点ってすごい数ですが、もうちょっと詳しい説明をお願いします!

  • はい、まず動画の構成から簡単に説明しますね。動画はパラパラ漫画の組み合わせでできています。例えば、本のすみに人が歩きだす絵を描いて、最後に本をいっきにめくると、人が歩いているように見えますね。このように、動画も1フレーム(本で言うと1ページ)が1秒間に30フレームをいっきに流すことで、動画になります。今回開発したレーザー発光は、1フレーム76800点の光をあてることができます。そのため、1秒間に30フレームなので、掛け算すると230万点になります。

遠くから撮影できる「画角制御技術(世界初)」

市販されている3Dセンサーは距離が離れると(4m以上)選手に照射できる測定点数が減ってしまうため、解像度の高い測定ができません。そこで富士通では、選手との距離が近くても遠くても解像度が高いまま測定できる技術を開発しました。それは、測定した選手までの距離に合わせて3Dセンサーの視野の広さを調整する技術です。(MEMS*ミラーを用いた画角制御技術を行うMEMSミラー制御ユニットを独自に開発)

*MEMS:Micro Electro Mechanical Systems の略。電気と機械をあわせた超小型システムのことです。

  • 選手を検出して、レーザー光を当てる範囲を絞り込む技術ですね?

  • はい、その通りです。絞りこみをしないと、選手との距離が遠いとレーザー光を当てる範囲が広がります。選手の体までの距離を測れる点の数が減り、正確な3Dデータが得られなくなります。そこで、選手までの距離に応じてレーザー光を当てる範囲を自動的に絞り込むことによって、いつでも細かく正確なデータを得られるようにしました。

3Dレーザーセンサー分解図

投光系と受光系の2つの機能ユニットからなる3Dレーザーセンサーです。

富士通オリジナル基礎技術②骨格を認識し、技(わざ)を特定

リアルタイムに正確な採点

3Dセンサーで得たデータを
(従来方式A)人の動きを集めたデータ辞書を探して手足等を推測
(従来方式B)推定部位に適した骨格形状を当てはめて認識
従来方式の良いところと、そして高速化を実現するための独自方式(角度フィッティング)をくみあわせて、素速い関節の動きを正確にとらえることによって、手足の位置や体をひねった回数などを判別し、技を特定します。これにより、リアルタイムに正確な採点につなげることができます。

新しく開発した方式

他のスポーツへの応用

「採点」を助ける仕事は他にも応用が可能

体操や飛び込み競技など「アスリートの技術によって観客の目を楽しませる」スポーツにおいては、3Dセンサーが捉えた選手の体の動きによって、これまで審査員の目のみに頼っていた「採点」という仕事を助けることができます。(例えば飛込み競技など)その他、広範囲な動きをするスポーツ(例えば、サッカーやラグビーなど)への応用も考えています。

小話 ~キーワードは「ノーパラソル」~

3つ目の開発のキーワードは「ノーパラソル」でした!

富士通の社内研修の課題のひとつに、「自分のアイデアを形にして、相手に伝える」というものがあります。
この研修を受けたときにゴルフの成績が伸びないことに悩んでいたS研究員は、自分の悩みを解決するようなものを考えてみよう、と思い立ちました。ゴルフの上達にはきれいスイングが欠かせません。しかし自分のどこをなおせば良いのか、なかなかわかりません。正面から自分をビデオで撮ってみましたが、見た目は良さそう・・・。でもどこかが違うハズ!
そこで、開発のキーワードを考えてみました。
キーワード1つ目:体の中心が分かるように「骨格」を認識させてみよう!
キーワード2つ目:好きな角度からチェックできるようにしよう!

さて、自分のスイング(骨格)と比較するためには、お手本としてプロのスイング(骨格)のデータが必要です。S研究員はプロの選手に頼んで、スイングを撮影させてもらいました。実際のゴルフ大会の会場で、プロに方々に撮影させていただいたのですが、その日は快晴。市販の3Dセンサーでは直射日光があたって正確にデータがとれないことがその場で初めてわかりました。そこで急遽、開発者がゴルフ場で使う大きなパラソルを持ち歩き、撮影のたびに日光が当たらないようにしました。苦労の甲斐あってなんとかデータは取れたのですが、最後は疲れ切ってしまいました。その経験から、3つ目の開発キーワードを決めました。それは、
キーワード3つ目:ノーパラソル!
でした。


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