ユニコーンファーム田所氏と語る
「新規事業のツボ」当事者意識を持つ大切さ

ユニコーンファーム田所氏と語る
「新規事業のツボ」当事者意識を持つ大切さ



掲載日 2021年6月25日

2020年10月、「起業の科学」の著者として知られる、株式会社ユニコーンファーム代表取締役田所雅之氏と富士通デザインセンター長宇田とデザイナーによる対談が実現しました。「起業の科学」を読んだ宇田からの熱心なオファーが実を結んだ形です。

国内従業員6万人を抱える富士通は、「スタートアップの起業」を主戦場とする田所氏とは一見相容れないようにも見えます。しかしながら、同じビジネスの土俵に立った時、企業が心を向けるべきはユーザーであり、いかにユーザーに寄り添った製品/サービスが提供できるかという点において企業規模は関係ありません。
今回の対談はそれぞれが所属する企業規模・文化が違っているからこそ話し合えた、ビジネスにおける本質的な課題であり今後への展望です。IT企業からDX企業へ変革をする富士通にとって示唆深い内容となりました。

田所雅之氏プロフィール

株式会社ユニコーンファーム 代表取締役社長
株式会社ベーシックCSO
関西学院大学大学経営戦略大学院 客員教授

日本で4社、シリコンバレーで1社起業経験を持つ 2017年発売以降115週連続でAmazon経営書売上1位になった 「起業の科学 スタートアップサイエンス」のほか「起業大全」などの著者

(注)肩書は取材当時のものになります。

ユニコーンファーム 田所氏

#01 お客様は本当に欲しいものは知らない

第1部は、田所氏とデザインセンター長宇田による対談形式で行われました。宇田は田所氏著書「起業の科学」の根底にあるのは「デザイン」だと分析し、デザインセンターが推進するデザイン経営との親和性の高さを指摘しました。
対して田所氏は、「デザインの位置づけが変わってきた」と説明。従来は「デザイン」が開発プロセスの一つにすぎなかったのが、現在では開発・製造・人材登用といった企業活動のすべてのプロセスにデザインが関与しつつあること、またユーザー側の変化として、「モノの所有が購入からサブスクリプションへ移行しつつある。この時代に重要になるのは、ユーザーとのタッチポイントを増やし、より良いUXをユーザーに提供し続けることだ」と述べました。



#02 そもそもユーザが居るのか?

第1部の後半では、デザインプロセスにアジャイルを導入する難しさについて宇田が課題感を述べると、田所氏は初期ユーザーを絞り込んで定義すること、初期ユーザーからフィードバックを得る仕組みを作りプロセスを回していくことが重要だと、やはりユーザーへの向き合い方にヒントがあると指摘。事業で一番リスクが高いのは「本当に顧客がいるのか」という顧客の存在そのものであり、顧客の仮説検証、課題検証、それに対してソリューション検証をするというプロセスの大切さを説いています。同時にスピード感のあるプロジェクトのためにはメンバーがBTC型の人材、多能工になるべきだと強調しています。



#03 デザイナーの悩み「失敗は成功のもと?」

第2部からは富士通のデザイナー吉川とフォンティンも加わり、日ごろの業務で疑問を感じることを直接田所氏に質問しアドバスを頂く場となりました。
まず、フォンティンが「成功するスタートアップは少人数が望ましいとあるが、大手企業における新規事業では大人数になりがち。メンバーのマインドシフトをどのように図るべきか」と質問しました。
田所氏は「スタートアップのメンバーが持っているのは「オーナーシップ」と「当事者意識」。これが大企業との大きな違いだ。当事者意識、つまり「なぜ自分たちのチームがこれを手掛けるのか」を自分の内なるストーリーとして見つけることが大事になる。というのは、それがアジャイルを回し続ける原動力になるからだ」と指摘しました。また、新規事業に関わることを会社がどう評価し、キャリアパスを作るのか、企業文化や組織風土についても言及しています。



#04 自分ゴトでない新規事業、どうすれば?

第2部の後半では吉川から、大企業が新規事業に取り組んだときに起こりがちな問題として、メンバーが当事者意識を持たないままプロジェクトを始め、ビジネスの方向性やグランドデザインが見つからない・描けないケースについてアドバイスを求めました。
田所氏は企業側に対しては新規事業の制約や条件を少なし自由度を高めること、メンバーに対してはプロジェクトの初期段階において、これまでの人生を振り返るプロセスを持つことを勧めました。幼少期からの自分の内なるストーリーを言語化し、自身が感じてきた違和感を見つめることで、当事者意識をもって取り組めるイシューや社会課題が発見できると、自身の経験した事例を交えながら説明いただきました。



最後に田所氏から富士通・富士通デザインセンターに向けたメッセージを頂きました。 「トランスフォーメーションとは「『シフト(移動)』ではなく『変身する』ことだと思います。まず自分のトランスフォーム、これが原体験となり、次に自分が共感する人、身近な人たち、ソーシャル、インダストリーと、次第にトランスフォーメーションの輪を大きくしていくことができます。現状、GDPの90%の部分にはまだDXは起こっていないと言われているので、富士通にとっては2020年代は大きなチャンスとなるでしょう。自身のトランスフォームからソーシャル・インダストリーへとどんどんトランスフォーメーションを広げていっていただきたいと思います」。



デザインセンター宇田 哲也
 フォンティン 徳康
 吉川 嘉修
(左より) センター長 宇田、フォンティン、吉川、ユニコーンファーム 田所氏
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