個別のプロダクトを超えて。共創でひらく「DXパートナー」への道
共創プロジェクト「デジタルラボ」の軌跡 Vol.3

個別のプロダクトを超えて。
共創でひらく「DXパートナー」への道
共創プロジェクト「デジタルラボ」の軌跡 Vol.3



掲載日 2021年6月22日

富士通株式会社(以下、富士通)が「DX企業」としての飛躍を誓い、DXビジネスの実践を目指す中、デザインセンターと事業部が一体となった4つの共創プロジェクトが進められている。すべてのプロジェクトに共通するのが、DXと親和性の高い「デザイン思考」の実践を掲げている点。今回はそのうちの1つ、「デジタルラボ」プロジェクトの進捗を取材。デジタルラボ事業部の萩原シニアディレクターと溝渕マネージャー、そしてデザインセンター部長の浅川が、プロジェクトの軌跡と今後の展望について語った。(全3回配信)

インタビュイープロフィール

  • 萩原 稔 :
    ソーシャルデザイン事業本部)デジタルラボ事業部 シニアディレクター
  • 溝渕 真名武 :
    ソーシャルデザイン事業本部)デジタルラボ事業部 マネージャー
  • 浅川 玄 :
    デザインセンター)ビジネスデザイン部 部長

(注)部署名・肩書は取材当時のものになります。



記事のポイント(Vol.3)

  • 当初の目標をクリアした後も、デザイナーと事業部の「共創」が続いている。
  • 事業部は、研究開発領域だけでなく、Wellbeing領域でもデザイン思考を実践する意向。
  • 顧客の「DXパートナー」となるために、両者とも今後の共創を前向きに捉えている。


DLPを超えて、みるみる広がった共創シーン

Digital Laboratory Platform(DLP)の事業化をミッションとする「デジタルラボ」プロジェクトの活動は、2020年11月で一段落した。 その後、DLPについては、デジタルラボ事業部が顧客と継続的にコンタクトをとりながら、プロダクト化へのアプローチを続けている。

そして、デザインセンターとデジタルラボ事業部の「共創」は新たなフェーズへと移行。
「約5か月のプロジェクトを通して、当初こちらが想定していたよりもずいぶん広い範囲でデザインセンターが力になってくださることがよく分かったので、一緒に取り組む場面が増えています」(溝渕)。

こうして、DLPの事業化に先立つ個別の開発案件や、材料メーカー以外の顧客への展開を見越した活動について、デザイナーの参画が事業部から打診されるようになった。

具体的には、研究者向けの新規のプロダクト開発において、「プロトタイプの作成とお客様へのデモンストレーション」、「そこでのフィードバックをふまえた改善」という一連のプロセスにデザイナーが参画。あるいは、事業部主催で実施した食品系の研究開発者向けワークショップにおいて、ファシリテーションのスキルを持つデザイナーが事業部メンバーにナレッジを共有するなど、デザイナーが幅広い領域で事業部の取り組みに携わるようになっている。

オンラインワークショップの目的を説明したスライド(左)と、ワークショップの様子(右)

「共創プロジェクトには、デザイナーが持つスキルを事業部の皆さんに伝達することにより、可能な限り『スキルトランスファー』を実現していこう、というねらいもあります。お客様向けのワークショップでのサポートは、その実践例の一つになったと思います」(浅川)。



これからが正念場、Wellbeing事業の立ち上げにも「デザイン」の力を!

さらに、研究開発領域だけでなく、デジタルラボ事業部のもう1つの柱であるWellbeingの領域においても、デザイナーが持ち前のスキルを発揮。2020年11月、デジタルラボ事業部内に発足したWellbeingプラットフォーム推進室の本格的な展開を後押ししている。

「Wellbeingプラットフォームは、病院と製薬企業の情報連携を可能にするものです。従来、富士通では医療と製薬とで事業部が分かれていたため、こうしたアイデアはありながらも、なかなか実行に移すことができませんでした。ところが、いよいよ全社の重点領域の一つに掲げられるようになった。ビジネスとして大きく成長できる可能性のある領域なのは間違いないので、事業化に向けてきっちり取り組んでいきたいと考えています」(萩原)。

これまでのところ、具体的にデザインセンターが携わったのは、Wellbeingプラットフォームに象徴される「富士通のWellbeingビジネス」の対外発信に関わる部分。Webサイトのコンテンツ作成や、リリース資料に掲載する「絵」作りをデザイナーが担当した。

Wellbeingビジネスの全体像を表すデザイナーの「絵」。対外発信にも活用された

さらに今後は、「デジタルラボ」プロジェクトの際と同様に、顧客へのヒアリングとそれを元にした課題抽出のフェーズにおいても、デザイナーが参画することになりそうだ。
「関係各所へのヒアリングは順調に回数を重ねているのですが、そこで得られた情報を『次』につなげるための手立てについては検討中です。
今後の進め方については、「デジタルラボ」プロジェクトで実践した手法を参考にするべきとの想いが、今回の対話を通じて一層強くなりました」(溝渕)。



真のゴール「お客様のDXパートナー」を目指して

事業部とデザインセンターの連携が、事業部の活動に好影響をもたらしているのは間違いない。
その上で、仮にデジタルラボを含めた一連の「共創プロジェクト」の取り組みが終了した場合、両者の関わりはどのような状態に落ち着くのだろうか。事業部メンバーの言葉には、プロジェクト発足当初からの心境の大きな変化がうかがえる。

「正直なところ、今でも『ビジネスをデザインする』というようなデザイン思考の“キャッチフレーズ”には懐疑的です。
ビジネスを作るのは、あくまで事業部の我々だろう、と。ただし、事業企画にデザイン思考を取り入れることで、事業化に至るまでに必要なヒントや気づきを得られることが分かりました。

デザイン思考がないとビジネスが一切前に進まないということはないけれど、エンドユーザーの視点に立った有意義な知見が得られる。それがデザイン思考を用いる意義だと捉えています。
Wellbeingプラットフォームしかり、今後もデザインセンターと連携していけたらと考えています」(萩原)。

萩原

「事業部の我々が作った資料が、お客様の共感や理解を一発で得られるケースは実はなかなかありません。
ところが、デザイナーに描いていただいた絵があると、合意形成のスピードが10倍はアップすると感じました。

これは、社内と社外両方に言えることで、これが積み重なると、新規事業創出というゴールを目指す上で非常に大きな差が生まれるはず。
もはや、デザイナーはなくてはならない存在になりつつあると言えると思います」(溝渕)

溝渕

一方のデザイナーも、案件ごとにアサインされる従来のプロジェクト形式ではなく、「共創プロジェクト」として事業部と協働することに特別な意義を見出している。

「これまでのデザインセンターの関わり方は、あるソリューションを作ってお客様に買っていただくところまでにほぼ限られていました。
しかし、共創プロジェクトのベースにあるのは、『DXパートナー』としてお客様に認知していただくために、お客様のビジネスの未来を、事業部とデザイナーがより中長期的なスパンで一緒に考えていくことだと思っています。

そのためお客様にも、こちらが提示するビジョンに共感していただけるのであれば、ぜひパートナーとして併走していきましょう、というアプローチをしています。

DLPやWell-beingのプラットフォームは、共創の象徴ではありますが、全体の中の一部に過ぎません。
共創の実践例をさらに広げながら、事業部と一緒に『DXパートナー』を目指していきたいと考えています」(浅川)。

浅川

「DXパートナー」としての種まきは、順調に進んでいる。今後、「デジタルラボ」プロジェクト発の芽がどのような花を咲かせるか、ぜひ注目してほしい。

左から 溝渕、浅川、萩原
  • (注)
    ※本取材は、2021年3月に実施したものです。取材関係者に関しては、取材前14日間における新型コロナウイルス感染症発生国への渡航歴、また、咳、くしゃみ、鼻水、発熱などの症状がないことを確認した上で、消毒や換気など新型コロナウイルス感染症の拡大防止に最大限配慮して行いました。

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