フィールド・イノベータ鼎談

小中高等学校・教育委員会におけるフィールド・イノベーション活動

~個々の実態を捉え教育現場の改革に貢献する~

文教分野においても数多くの実績を積み上げてきたフィールド・イノベーション。今回はその中から、小中高等学校・教育委員会での活動にフォーカスを当て、文教担当のフィールド・イノベータを総括している小林 努と、プロジェクトを担当したフィールド・イノベータの加藤 宏明、宮田 和幸が、石川県津幡町ならびに東京都港区での活動と小中高等学校におけるフィールド・イノベーションの活用について語った。

全国の小中高等学校で活用される
フィールド・イノベーション

フィールド・イノベーションでは、大学以外でも様々な支援を行われていますね。

小林:はい。特にここ2、3年は小中高等学校での活動が増えており、大学の附属学校も含め既に20件以上の実績があります。

小中高等学校の案件が増えているのには、何か理由があるのでしょうか。

小林:小中高等学校では、教育委員会も学校現場も日々の業務に追われ、これまではなかなか改革が進みませんでした。しかし、教員の働き方改革やICT活用の広がりなど、小中高等学校を取り巻く環境が大きく変わりつつあります。そこで、我々にお声がけ頂く機会が増えているように思います。


富士通株式会社
フィールド・イノベーション本部 行政・文教FI統括部
シニア フィールド・イノベータ
小林 努

校務軽減に向けた施策を立案

具体的な事例を教えてください。

加藤:石川県津幡町教育委員会では、教員の校務軽減に向けた施策立案に取り組みました。小中学校の先生方が忙しいことは広く知られていますが、なぜそんなに忙しいのか、どこに負担を感じているのかがきちんと把握できていない。そこを可視化し、課題解決に向けた施策を考えるのが本活動の目的でした。


富士通株式会社
フィールド・イノベーション本部 行政・文教FI統括部
フィールド・イノベータ
加藤 宏明

教育以外の部分での教員の負担が重いという話はよく聞きます。

加藤:通知表の作成にはじまり、学校行事やクラブ活動、保護者への対応など、先生方は大変多くの業務を抱えています。そこを少しでも効率化できれば、負担も軽減できますし子供たちと向き合う時間も増やせます。

どのように取り組みを進められたのですか。

加藤:まず現場に赴き、先生方に負担感や課題認識を伺いました。先生方はお忙しいので、授業の合間を使い短時間でインタビューを行うなど、なるべく負担を掛けないように工夫を凝らしました。

そこからどのような事実が見えてきましたか。

加藤:まずは、データ共有の問題です。名簿や出欠簿など、同じデータを使う書類があるにも関わらず、その都度新たに作り直していたりする。また、通知表の作成フローも学校や先生ごとにまちまちで、効率良く作業ができているケースもあればそうでないケースもありました。また、校務ではよく表計算ソフトを使いますが、そのスキルに個人差が見られました。

それをどう解決していたのでしょうか。

加藤:学校と教育委員会が一堂に会してワークショップを行い、施策立案に向けた検討を行いました。今まで両者が直接話し合う機会が無かったこともあり、一気に距離が縮まったように感じました。教育委員会からも現場の声をよく拾ってくれたと感謝して頂きましたし、先生方も現場の困りごとを直接伝えられたと喜ばれていました。ここでの議論の結果、最終的に55件の施策案が出されました。

改革に大きな弾みがつきそうです。

加藤:成果として、この施策案を「学校で対応すること」「教育委員会で対応すること」「外部委託で対応すること」と、誰が何に対応するのかを明確化した点が挙げられます。書類のフォーマット統一などは学校で行えますが、校務支援システムの導入などは教育委員会でないと実現できませんので。余談ですが、ある意味、あきらめも感じていらした先生方が、前向きに変わる様子を見られたのは、我々としても大きな喜びでした。

システムの導入効果を検証
現場の課題も浮き彫りに

その他の事例も教えてください。

宮田:東京都の港区教育委員会では、出退勤・庶務事務システムの導入効果検証に取り組みました。文部科学省や都では、教職員の在校時間削減を強く求めています。これを実現するには、ICTを活用した業務効率化が欠かせません。ただし、ここで課題となるのが、システムの導入効果をどう測るのかという点です。ちょうど港区教育委員会では、出退勤・庶務事務システムの導入を進められていましたので、導入前後で業務がどう変わったのかを調べることにしたのです。


富士通株式会社
フィールド・イノベーション本部 行政・文教FI統括部
フィールド・イノベータ
宮田 和幸

どのような業務が効果検証の対象となったのでしょうか。

宮田:今回は紙からシステムに置き換わる「出勤簿管理」「旅費管理」「休暇管理」の3つの業務を対象としました。調査手法としては、まず紙ベースの業務プロセスの内容やそこに掛かる時間を調べ、システム稼働後の状況と比較する形です。幸いシステム稼働前に活動が立ち上がったこともあり、早速学校へ伺って教職員が普段行っている作業や使っている書類を洗い出していきました。

その結果はいかがでしたか。

宮田:やはり、相当な手間と時間が掛かっていました。基本的にすべて紙による運用ですから、必要な書類をクリアファイルから抜き出して記入・押印し、また元の場所に戻すといった紙捌きの作業が必ず発生します。その確認や承認も全部手作業ですし、何か確認したいことがあったら複数の書類を探さなくてはいけません。たとえば、ある教員が出張に行ったことは出勤簿から分かりますが、どこへ行ったのかは旅費管理の書類を見ないと分からないのです。

そうした作業がシステム化できれば、かなりの改善効果が見込めそうです。

宮田:我々の調査でも、出退勤・出張・休暇の事務処理にかかる時間を、港区の小中学校全体で約6割程度削減できるとの試算が出ました。同時に、一朝一夕にそこへたどり着くのは難しいことも分かりました。実は、紙からシステムに変わることで、教職員の間にも混乱があるだろうと事前に予測していました。システム稼働前に操作講習会も行われたのですが、運用が始まると入力内容の不備に起因するエラーが多発している学校が少なからずありました。

システムを導入しただけで変わるというものではないと。

宮田:そのとおりで、エラーがまったく発生していない学校もありました。理由を調べると、学校の支援員や副校長が教職員をしっかりサポートしていました。結局、システムを使う側の意識や支援体制が整っていないと、紙運用での問題がシステム運用になっても残存することになります。教育委員会へは事実のまま「現在はまだ時間削減の途上である」と報告しましたが、これが現場のリアルな実態であるということで評価をいただきました。

個々の学校や教員に寄り添い
改革に貢献する

いろいろ興味深いお話ばかりです。

小林:先生方の仕事は個人裁量という面と個人任せという両面があります。これが非効率さを生む原因になっている面もありますが、長年の積み重ねでそうなってきたわけですから、ただそれを責めても仕方がない。小中高等学校の改革においては、いま何が問題なのか、どこからなら始められるのか、現場に寄り添って一緒に考えていくアプローチが重要だと感じています。

今後は教育現場でのICT活用もさらに進んでいきます。

小林:「GIGAスクール構想」による1人1台PCにしても、それをどう使うかは個々の現場の問題です。学校や先生、生徒のスキルや家庭環境によっても取り組みは変わってきます。また、教育委員会の予算や優先度も地域によって異なります。そういった様々な面を個別に相談しながら丁寧にご支援していきたいと考えています。特にICT分野では、オンライン教育で先行する大学の改革で培った知見なども活かせます。こうしたものもフルに活用して、教育現場の改革に貢献していきます。

※掲載している職制等は取材時のものです。

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