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事例紹介 会津若松市 様

会津若松市 様 公共 営業・サービス

市民を健康に導く保健業務を改革 地域住民の健康増進と医療費削減を実現

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現在多くの地方自治体において、少子高齢化や医療費増大への対応が大きな課題になっています。こうしたなか、福島県・会津若松市様では、地域住民の健康増進と医療費の抑制を目指してフィールド・イノベーションを導入しました。フィールド・イノベ―タ(以下、FIer:エフアイヤー)と共に、保健業務の改善に取り組み、保健師の業務プロセス改革や特定保健指導率向上、医療費削減による市の財政改善など、多くの成果を上げることに成功しています。

INDEX
  • 1 地域住民の健康増進と医療費削減を目指す
  • 2 保健指導の活性化がカギに
  • 3 保健指導が進まない要因を見える化
  • 4 市の課題と現場の目標・課題を体系化
  • 5 自発的にPDCAをまわす保健指導を目指す
  • 6 「チームの力」で早期指導と指導品質向上を実現
  • 7 PDCAをまわせた自信が改革意識を加速
  • 8 市民の健康改善と大幅な医療費削減に成功
  • 9 お客様概要
  • 10 Fler 今回のプロジェクトを通しての感想

地域住民の健康増進と医療費削減を目指す

高齢化に伴う医療費増大が市財政の大きな負担に

健康福祉部 部長 斎藤 勝氏 の写真「鶴ヶ城」の別名で知られる名城・会津若松城の城下町として、古くから栄えた歴史を誇る会津若松市。貴重な文化遺産と豊かな観光資源に恵まれた同市には、毎年数多くの観光客が訪れます。また近年では、最先端ICTや環境技術によって地域の効率化・高度化を図る「スマートシティ会津若松」プロジェクトも推進。これからの時代にふさわしい新たな街づくりを目指しています。
その同市において今回実施されたのが、市民の健康増進による医療費削減の取り組みです。健康福祉部 部長 斎藤 勝氏は、プロジェクトの背景を「高齢化率が約26%に達する当市では、医療費の増加が大きな課題です。地方自治体の財政事情が厳しさを増す中、医療費増大が市の財政に与える影響はもはや無視できません。持続可能な社会保障制度を維持するためにも、今までにない新たな取り組みを進めていく必要があると考えました」と説明します。

健康福祉部 健康増進課 副主幹 吉田 恵三氏 の写真高齢化に伴う医療費増大は多くの自治体で共通の課題であり、同市でも対応に苦慮していました。健康福祉部 健康増進課 副主幹 吉田 恵三氏は「全体の予算が限られていますが、一般会計から国民健康保険への支出を行わないと保険の運営が廻らないのが実情でした。だからといって、市民の税負担を際限なく増やすようなことはできませんから、一刻も早い対策が求められていました」と語ります。

保健指導の活性化がカギに

保健師による積極的な保健指導で「負のスパイラル」を断ち切る

健康福祉部 企画副参事(部次長職) 岩澤 俊典氏 の写真今回のポイントは、「健康診査(健診)等の未受診」→「発病」→「重症化」→「要医療」という「負のスパイラル」をいかに断ち切るかという点です。健康福祉部 企画副参事 岩澤 俊典氏は「まずは保健、医療、介護など、複数の部門の職員で構成されたワーキングチームを庁内に立ち上げ、組織横断的な議論を行いました。すると、お互いの情報を持ち寄ったことで『負のスパイラル』の存在が明確に浮かび上がってきたのです。以前から薄々感じてはいたものの、発病に至る前の段階で対応することの重要性を痛感しました」と語ります。

健康福祉部 健康増進課 保健師 上杉 慶子氏 の写真ワーキングチームでの検討を経て、具体的な施策を探っていった同市では、市民の健康づくりを支える保健指導の活性化こそが、医療費削減を実現する第一歩という結論に達しました。ここで大きな役割を果たすのが、「保健師」の働きです。
保健師は、国家試験に合格した保健指導に従事することを業とする者を言いますが、同市では21名の保健師・管理栄養士が市民の健康づくりを支えています。
しかし、従来の業務プロセスには、さまざまな問題点も潜んでいました。本来であれば、市民の方々への保健指導にできるだけ多くの時間を割きたいところです。ところが現実には、煩雑な事務処理に多くの時間を取られてしまい、保健指導に出ることもままならない状況でした。
健康福祉部 健康増進課 保健師 上杉 慶子氏は「市民の健康づくりに貢献したいと考えて保健師になったのに、現実にはなかなか思うような働きができず、歯がゆい思いを感じていました」と当時を振り返ります。

健康福祉部 健康増進課 保健師 山浦 久美氏 の写真もちろん、庁内でもこうした状況は認識されており、改善への取り組みも行われてはいました。健康福祉部 健康増進課 保健師 山浦 久美氏は「平成20年度の特定健康診査・特定保健指導制度の開始後より、私たち保健師の間でも保健師活動の在り方や効果的な保健指導を行うための検討や、体制づくりを進めてきました。しかし組織内部だけの取り組みでは、なかなか抜本的な改革にまでは至りませんでした」と明かします。

このような課題を解決し、保健師の専門性をより活かせるような業務プロセスが実現できれば、地域住民の健康増進や医療費削減にも大きな効果が見込めます。そこで同市では、フィールド・イノベーションの導入を決断。斎藤氏はその理由を「今後の大きな政策転換に結び付けていくためには、これまでの常識や仕組みにとらわれない外部の第三者の力を借りることが必要。そう考え、フィールド・イノベーションの導入に踏み切ったのです」と説明します。

保健指導が進まない要因を見える化

指導業務の運用上の問題点が明らかに

今回のプロジェクトを担当したFIerは、活動メンバー全員に対するインタビューや、ワークショップにおけるカードセッションなどを通して、どこに課題があるのかを探っていきました。また、年間業務量、保健指導実績、公用車利用状況、家庭訪問状況、業務プロセスなど、さまざまな実績記録や情報の分析も行い、業務の見える化を行っていきました。

さまざまなデータから事実を見える化 年間の総業務量に占める保健指導の割合は約6.7%に留まっていた上、下期に指導が集中する傾向が見られた。また、指導開始までに長い時間が掛かるケースもあった。

こうして明らかになった事実は、活動メンバーに大きな驚きをもたらすことになりました。たとえば年間の業務量全体に占める保健指導の割合は約6.7%であり、駆け込み受診が増える下期に集中する傾向にありました。また、早急に指導が必要な人よりも急ぐ必要のない人へ指導しており、指導の優先順位が逆転している、保健師によって指導人数にバラツキがあるなど、保健指導の運用面での問題も明らかになりました。さらに、使いたい時になかなか空いていないと感じていた公用車についても、実際の使用率は約42%で空いている時間も多いことも分かりました。

健康福祉部 健康増進課 保健師 鵜川 利恵子氏 の写真健康福祉部 健康増進課 保健師 鵜川 利恵子氏は「以前から何となく感じていたことが改めて確認できたり、本来力を注ぐべき部分に十分な時間が掛けられていないことが分かったりと、見える化によって多くの気付きを得ることができました。また、もう一つ良かったのが、保健師全員で問題意識を共有し、話し合う場を持てたことです。これによって全員が同じ方向を向いて改革を進めていこうという結束が強まりました」と語ります。

吉田氏も「自分たちの力だけでは、なかなかここまで詳細に業務実態を分析することは難しい。そこをFIerにしっかり提示してもらったことで、現状の問題点を実感として理解することができました。我々事務部門としても、保健師の業務負担軽減を図るための活動に着手しました」と語ります。
ワークショップの過程では、「自治体における保健師とは?」という原点回帰のテーマで、行政保健師のあるべき姿を再定義する議論も行われたとのこと。こうした活動が、専門職としての自覚をさらに深めることにもつながっていきました。

全員参加型の集中討議を重ねるワークショップにおける集中討議の風景。メンバー全員が活発に意見を出し合うことで、課題を解決するための道筋が次第に浮かび上がってきた。

市の課題と現場の目標・課題を体系化

改善目標とKGIを策定し、全員参加で取り組む

具体的な改善活動を進めていくにあたり、同市では「生活習慣病の発症予防と重症化予防」を戦略課題として設定。これを実現するための目標として「保健指導による市民の健康改善」を掲げ、「特定保健指導数を485件から656件以上に増加」「積極的支援対象者の体重減70%以上、腹囲減60%に向上」などのKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指数)を設けました。
また、取り組みの成果を確実に上げるために「1.未受診者への受診強化」「2.保健指導計画の確立」「3.やるべき業務の取捨」「4.年一度の地域分析」「5.データの多角的分析」「6.ケース検討会の定例化」という量と質の両面で6つのテーマを設定し、37の施策を全員で分担し、参加意識を醸成しました。
「最初に戦略課題を設定した上で、具体的な戦術の整理やKGIを定めていくフィールド・イノベーションの手法は非常に参考になりましたね。我々がこれまで行ってきた計画策定のやり方とは着眼点が全く異なりましたので、他の分野でも応用できると大いに感心しました」と斎藤氏は語ります。

戦略課題・目標・取り組みテーマを体系化 「生活習慣病の発症予防と重症化予防」という戦略目標の実現に向け、6つの具体的な活動テーマを設定。これを基に全部で37の改革施策が実行に移された。

自発的にPDCAをまわす保健指導を目指す

「合間に行く」から「行く日を決める」計画的な保健指導に変更

今回はこの6つのテーマの中から、目標を達成する上で最も重要なポイントとなった「2.保健指導計画の確立」における改善効果を見てみましょう。
「従来の保健指導業務では、事前の計画が不十分だった点がさまざまな問題につながっていました。そこで計画を立てた上で行動し、その内容をチェックした上でさらに改善するというPDCA(注1)サイクルの確立を目指しました」と鵜川氏は説明します。
たとえば、特定保健指導率がなかなか上がらなかった原因として、指導の目標件数が存在しない、訪問指導の日程が前月になるまで決められないなどの点がありました。そこで、班ごとの目標件数をきちんと定めると共に、年間の活動計画も策定。半日単位を1コマとし、1ヶ月あたり最低4コマの訪問予定を最初から月間スケジュールの中に組み込むようにしました。同様に訪問指導に使用する公用車についても、各保健師が所属する班ごとに、使える日を事前に決めて予約するように改めました。
「従来は訪問に行こうと思った段階で公用車の空き状況を確認していたため、希望が集中して使えないケースがありました。しかしあらかじめ公用車が使える日を確保しておけば、こうした事態が起きる心配もありません」と鵜川氏は語ります。
また、訪問時に不在だった際にはメモを残し、後で連絡をもらったり、フォローの電話を掛けるようにしました。さらに、保健指導を行った後の班会議においても、全員の活動状況を共有した上で担当の再割り振りなど実施。こうした場を通して、コミュニケーションの活性化や意思統一を行ったことで、組織としての結束力も高まっていったのです。

施策の進捗をきめ細かく管理 PDCAサイクルの進捗チェックフェーズで使用されたシート。それぞれの項目の達成度が表示されており、一目で現在の状況が確認できる。

「チームの力」で早期指導と指導品質向上を実現

事前準備の効率化とスキルアップの継続的強化の実践

こうした計画性を高める取り組みが行われる一方で、優先度に応じた適切な保健指導や事前準備の効率化を目指す取り組みも行われました。「特定保健指導には動機付け支援と積極的支援がありますが、医療費削減を目指す上では、より優先度が高い後者の方や、血圧値・糖の値が高いなど重症化しやすい状態にある方の指導件数を増やす必要があります。そこで、優先度に応じた対象者の抽出作業をより短時間で効率よく行えるよう、業務に改善を加えていきました」と山浦氏は説明します。
以前は、健診結果を基に指導対象者の抽出・選定を行う作業を特定の担当者が行っていました。このため、担当者の事務作業量が増えると、対象者が選定されるまでの時間も延びてしまうという問題がありました。そこで、誰もが抽出・選定作業を行えるように、当番制にしました。また、健診データの入力から指導に用いる資料の作成、初回の訪問日に至るまで、すべてのプロセスに期限を設けて管理するようにしました。指導対象者の多い地区の保健師に負担が集中しないよう、班内さらには班間で人数調整やフォローを行って助け合うといったことも行われています。
また、並行して、保健師自身のスキルアップも図りました。「保健師が有効な保健指導を行えないと、対象者の方々の生活や行動も変わりません。そこで、保健指導の質を高めるための事例検討会をそれぞれの班単位で実施。内部だけでカバーできないような高度な内容については、外部の経験豊富な有識者を招いて学習しています」と山浦氏は語ります。

PDCAをまわせた自信が改革意識を加速

「保健師本来の仕事ができ、楽しくやりがいを感じる」

改善活動を進めていったことで、保健師の業務も以前とは大きく様変わりしました。斎藤氏は「目に見えて違うのが、日中に庁舎内から保健師がいなくなったことです。以前は煩雑な事務処理に追われてしまい、外に出たくとも出られなかった。しかし業務プロセスの見直しによって負担軽減が図れたことで、本来のミッションである地域への保健指導に専念できるようになったのです」と語ります。
こうした変化は、メンバーのモチベーション向上にもつながっています。上杉氏は「以前は大量の対象者リストが一度に届いてしまい、どこから手をつけて良いのか判断に迷うようなこともありました。しかし現在では優先順位が明確ですから、指導が必要な方から計画的に訪問することができます。また、勉強会を通してスキルアップを図ったことで、指導の際の地域の方々の反応も目に見えて変わりました。今では、日々楽しく仕事ができています」と語ります。
現在では班ごとの訪問実績や対象者数を貼り出し、現時点での達成度が全員に分かるようにするといったことも行われています。上杉氏は「他班の頑張りが目に見えるので、自分たちもやらないといけないという意識を強く持つようになりました」と続けます。
活動を支援したFIerに対しても、高い評価が寄せられています。「いくら立派な計画を立てても、それが実行に移されないのでは意味がありません。しかし、プロジェクト初期にFIerがPDCAのチェック機能を担ってくれたことで、改善活動を着実に定着させることができました。現在では自分たちで業務を変えられるという自信がつきましたので、今後も継続的な改善に取り組んでいきたいと思います」と鵜川氏は語ります。

市民の健康改善と大幅な医療費削減に成功

保健指導率の大幅改善により年間医療費を前年比約3,500万円削減

今回の取り組みの成果は、定量的な数字としても明確に現れています。吉田氏は「保健師や事務職員が一丸となってフィールド・イノベーションに取り組んだことで、当初KGIとして掲げた656件の目標を大幅に上回る842件の特定保健指導を達成できました。これにより多くの市民の健康状態が改善され、前年比約3,500万円もの医療費削減が見込まれています。また、事務処理作業などの効率化が図れたことで、年間の業務時間を94人日分も削減することにも成功しました」と語ります。

特定保健指導件数の月別推移 メンバー全員が一丸となって改革に取り組んだことで、プロジェクト開始時にKGIとして設定した「特定保健指導件数656件以上」を大幅に上回る成果を上げた。

直接数字としては現れない部分でも、さまざまな成果が上がっています。斎藤氏は「その中でも特に大きいのが、我々自身の中に継続的なイノベーションを追求する意識が醸成されたことです。今後法制度や社会環境が変わったとしても、それに対応してこの取り組みを発展させていきます」と語ります。
こうした変化は、会津若松市の医療関連施策にも大きな影響与えています。「現在、国民健康保健税の改定作業を進めている最中ですが、次回についてはゼロベース改定、つまり保険料を上げないと決めて市議会に提案中です。これも今回の取り組みを通して、適切な改善・改革活動を進めれば税は上げないで済むとの確信が得られたからこそです。市民の方々の健康を維持し、税負担を抑えることが我々に課せられた使命ですから、今後もこの責務をしっかりと果たすべくイノベーションを続けていきたい」と斎藤氏は力強く語りました。

注記

(注1)PDCA:
継続的な業務プロセス改善の際に実施する、計画(Plan)・実行(Do)・評価(Check)・改善(Act)というサイクルのこと。

お客様概要

会津若松市 様

人口:約12万3,500人(2014年1月1日現在)

沿革:1899年(明治32年)に福島県で最初の市となり、2009年に市制施行110周年を迎えた。

市内には多くの史跡があり、観光は同市の重要産業となっている。

URL:http://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/Open a new window

FIer

今回のプロジェクトを通しての感想

左から、石川 真之、齋藤 秀範 の写真最初のインタビューから保健師の強いプロ意識が高いのが伝わってきましたが、組織としての連携が弱いと感じました。そのためワークショップを通じて、モヤモヤ感の解消、目的・目標のベクトル合わせ、遠慮の壁をとり払うコミュニケーションの活性化の場を設けることを重視して活動しました。ベテランの保健師さんから「保健師とは何ぞや」と原点回帰される発言が飛び出したことには驚きでした。ここでの本質共有が保健師の「訪問指導にいかなきゃ」という意識変化を起こし、保健指導率の目標を大幅に上回る成果につながったと思います。何よりも保健師さんが「本来の仕事ができて、楽しくやりがいを感じる」と実感していただけたことを嬉しく思います。

【導入事例(PDF版)】

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[2014年4月 公開]

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