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事例紹介 島根県立中央病院 様

島根県立中央病院 様 医療・教育 営業・サービス

より良質な医療の提供を目指し手術関連業務を改革、大幅な効率化を達成

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島根県立中央病院は、地域の高度特殊医療や救命救急医療、周産期医療を担う基幹病院です。同病院で実施される手術は年々増加しており、手術開始時刻の遅れや手術室看護師の負担増大などの問題が生じていました。職員が働きやすい環境を整備することで、より良質な医療が提供できると考えた同病院では、救命救急の中枢を担う手術関連業務の改革のためにフィールド・イノベーションを導入。手術室看護師の業務効率化や関連部門との情報共有など、数多くの成果を上げています。

INDEX
  • 1 手術関連業務の改革に挑む
  • 2 手術関連業務の現状を見える化
  • 3 3つの改善テーマを設定
  • 4 組織内に生まれた連帯感
  • 5 より良質な医療の提供を目指して
  • 6 お客様概要
  • 7 Fler プロジェクトの感想

手術関連業務の改革に挑む

年々増加する手術、手術室看護師の負担が過大に

病院長 中山 健吾氏 の写真神話と歴史の街として知られる島根県・出雲市に、ドクターヘリ用の屋上ヘリポートを備えた近代的な病院があります。島根県における基幹病院として、県民の健康を支える島根県立中央病院です。
同病院の病院長 中山 健吾氏は「当院は県立の総合病院として、厚労省の医療計画にある『4疾病5事業(注1)』に対応しています。また、救命救急センターや総合周産期母子医療センター、地域がん診療連携拠点病院などの役割を担い、職員全員が一丸となって最適な医療を提供できるよう務めています」と語ります。

医療局 心臓血管外科 医師 北野 忠志氏 の写真

ICT活用に積極的に取り組んでいることも、同病院の大きな特長です。1999年には日本初の統合型電子カルテシステム「IIMS」を構築し、医療分野での情報活用を進めてきました。そして今回、新たな取り組みとして、手術関連業務の改革に着手しました。手術を担当する医療局 心臓血管外科 北野 忠志医師は「電子カルテなどが急速に進歩する中で、唯一取り残されていたのが手術関連業務でした」と語ります。

中山病院長はその実情を「手術は病院における心臓部です。しかし当院では手術の件数が多く、また手術室内の業務をサポートする手術室看護師の負担が過大になりがちで、手術が予定通りに開始できないといった問題が生じていました。この問題の解決には、手術に関わる多くの部門・業務の調整が必要なため、決して容易ではありません。そこでフィールド・イノベーションを導入し、手術関連業務の効率化・改善を図ろうと考えたのです」と説明します。

手術を行うための必要リソースと関連部門 手術には、実際に手術を担当する医師・手術室看護師以外にも、麻酔医師、病棟/外来看護師、メディカルスタッフ、薬剤師、物流管理室、消毒滅菌室など、数多くのスタッフと部門が関わる。

医療技術局 次長 兼 情報システム管理室 室長補佐 角森 正信氏 の写真もともと病院内でも業務改善に取り組んでいましたが、その多くは個々の部門での取り組みに留まっていました。医療技術局 次長 兼 情報システム管理室 室長補佐 角森 正信氏は「病院は多くの部署が連携して業務を行い、そこには多くの専門職のスタッフが働いています。手術に関しては特に多くの部門・職種が関わります。さらに、当院では緊急手術も多く、1日の業務が予定通りに進むことはありません。手術関連業務の改革には、関係する全ての部門および職員の協力が欠かせません。もしこれが実現できれば、今後、他部門の業務改善にも大きな弾みがつくものと期待しました」と振り返ります。

手術関連業務の現状を見える化

困難を極める手術の予定組み、関連部門は手術の予約状況の把握に苦慮

看護局 手術看護師長 狩野 芳子氏の写真同病院を担当したフィールド・イノベータ(以下、FIer:エフアイヤー)は、病院が問題と考えている「手術室看護師の業務過多」と「手術が予定通り開始できない」といった状況を把握するため、42名の職員に対してインタビューを実施しました。その結果見えてきたのが、「手術の予定組みが複雑かつ非効率でなかなか確定しない」「手術室看護師の業務が多岐にわたり負担が重い」「手術室の進捗状況が外部からわかりにくく、業務が円滑で無い」などの問題でした。

看護局 手術看護副師長 三上 小百合氏 の写真手術室看護師を統括する看護局 手術看護師長 狩野 芳子氏は「毎週水曜日に翌週の手術の予定を組むのですが、手術の件数が多いため、医師や看護師の調整、どの手術をどの時間帯に入れるかという判断が非常に困難でした」と語ります。また、同副師長 三上 小百合氏も「手術ではさまざまな種類の器械や診療材料を使用しますので、それらの滅菌期限の確認や使用後の個数確認、滅菌依頼といった、手術以外の業務に多くの時間を掛けていました」と振り返ります。

医療技術局 臨床工学科 藤井 義久氏 の写真その一方で、手術に関わる他の部門は、手術室の状況把握に苦労していました。医療技術局 臨床工学科 藤井 義久氏は「たとえば手術機器の点検は、手術室が空かないと作業ができません。手術が遅れると点検が予定どおりにできないので、手術が終わるまで待つか、翌朝にチェックしていました」と言います。

物流管理室 石飛 信子氏 の写真物流管理室の石飛 信子氏も「物流部門では手術の2日前に物品の準備を行います。必要な物品を何が何でも揃えるのが私たちの使命です。手術の予定が早めに確定すれば物品を効率よく確実に手配できるのですが、直前まで決まらない場合や、急な予定変更に対応するのは大変でしたね」と語ります。

FIerは、インタビューでわかった状況を踏まえて、データ分析と現場観察を実施。手術関連業務に関わる事実を客観的に見える化していきました。その結果、「予定時刻より遅れて始まる手術が全体の約47%」、「患者が手術室を退室してから清掃が完了するまでに平均48分」、そして「予定時間と実際の手術時間には約26分の差が生じる要因がある」ことが明らかになりました。これらの事実が、課題整理と施策立案を行うための重要なカギとなったのです。

手術の所要時間の見える化 以前の手術予定組みでは、手術室への患者さんの入退室に要する時間などが手術予定時間の中に十分に考慮されていなかった。これが平均26分の遅れを生む要因となっていた。

3つの改善テーマを設定

課題を整理し、人・プロセス・ICTを一体で改革

FIerとプロジェクトのメンバーは、分析結果に基づいて、真の課題はどこにあるのか、その解決にはどのような取り組みが必要なのかを検討しました。
ここで着目したポイントは、まず従来の手術予定組みそのものに無理があった点です。各診療科から入力された多くの手術予約を調整するのに手間がかかり、タイムリーな調整ができず麻酔医や看護師のスケジュールの重複が発生していました。また、麻酔準備や患者退室、清掃などに要する時間が十分に考慮されていなかったり、手術と手術の間にゆとりがなく、一つの手術の遅れが後続の手術すべてに影響してしまう場合もありました。

手術開始時刻が遅延する要因の見える化 「同一時間帯の別々の手術に同じスタッフがアサインされている」「移動や準備に必要な時間が考慮されていない」などの点が、予定時刻通りに手術が開始できない原因となっていた。

2つ目のポイントは、手術室看護師の担当業務が多すぎる点や、手術室を清掃する人員が不足している点です。手術室看護師は手術介助だけでなく、器械の準備や薬剤の管理、手術後の器械整理/個数確認といった作業も担当していました。また、清掃業者の人数が少なく、手術が重なると清掃が追いつかないといった問題も生じていました。
3つ目のポイントは、当日の手術予定の変更などを、手術室フロアに設置した手書きのホワイトボードで管理していた点です。その場ですぐに記入できるため一見便利に見えますが、その情報は手術室フロアでしか見られません。また関連部門への連絡が口頭や電話であったことも、情報が十分に行き渡らない要因になっていました。

これらの点が明らかになったことで、同病院では「手術予定組みの改善」「手術室看護師の業務の効率化」「手術室と関連部門との情報共有」の3つを今回の改善テーマとすることを決め、それぞれのテーマごとに改革に向けたワーキンググループ(以下WG)を設置。病院内から幅広くメンバーを選出し、手術関連業務の効率化・改善に乗り出しました。

課題ごとに職種をまたがるメンバーでワーキンググループを編成 「手術予定組みの改善」「手術室業務の効率化」「他部門との情報共有」の3点を改善テーマに設定。テーマごとにワーキンググループを設置し、業務に関連する全ての部門からメンバーを集めた。

まず手術予定組みについては、診療科ごとに手術の曜日別優先枠を設定。これをベースに予約時間を決めることで調整がスムーズになりました。また、手術の予定所要時間についても、過去の手術実績から算出した手術時間や現場観察から導き出した麻酔、清掃にかかる時間もあわせて自動設定できるようシステムを修正。より正確で無理のない予定組みができるようにしました。

さらに、予約のシミュレーション作業をシステム化しました。狩野氏は「従来はシステムに入力する前に、各診療科からの手術予約希望や看護師のシフト表を見ながら、まず紙の表ベースで手術の予定組みを考えていました。現在は画面上で簡単にシミュレーションが行えるため、以前より効率的に予定組みができます。深夜まで掛かっていた作業が、17~18時頃には終わるようになりました」と語ります。

また、手術室看護師の業務の効率化のために、事前準備や手術後の器械整理などを行う助手を置くことを決定。見える化でわかった繁忙時のみ清掃業者を増員する、契約時間を延長するなど、これまで手術室看護師が行っていた作業を分担することで、手術により専念できるようになりました。それ以外にも、手術に使用した器械の個数確認は消毒滅菌室で、薬剤等の管理は物流管理室が担当するなど、さまざまな分野で作業分担が図られています。
「以前は、お互いの業務がよくわかっていなかったため、器械の個数確認を手術室と消毒滅菌室の両方で行っていたりしました。こうした点を整理したことで、業務の無駄がなくなりました。以前と比較すると相当改善が進んだという印象ですね」と三上氏は語ります。

部門間情報共有のために、手術室以外の部門から、手術室の現状を電子カルテ上で確認できるシステムを新たに構築しました。このシステムでは3つの表示モードを備えており、その1つ「エアポートモード」と呼ぶ画面は、空港ロビーの到着表示板のように、手術開始時刻順に各手術の進捗状況が一目でわかります。これに伴いホワイトボードは撤去し、60インチの大画面モニターを設置しました。もう1つの画面は、全手術室の1日の予定と進捗状況、手術に付随する検査や準備機器等の情報が確認できます。
「情報は病院内のどの電子カルテ端末からでも確認できますので、画像撮影を行う放射線技術科の職員や入院病棟の看護師も手術室の状況をリアルタイムに把握できます。その結果、以前のようにわざわざ手術室看護師に状況を聞かなくても済むようになりました。こうした情報は、患者さんやご家族に安心して手術をお待ちいただく上でも大いに役立ちます」と角森氏はメリットを説明します。
また、藤井氏も「手術室の状況がリアルタイムに把握できるのは非常に便利です。臨床工学科でも、各手術室への機器の振り分けや保守・点検対応が行いやすくなりました」と語ります。

フィールド・イノベーションにより優先して実施した施策例 手術関連業務の改革を実現するために優先的に実施された施策の一例。これまで問題となっていた点を解消するために、人・プロセス・ICTのすべての面で改善が加えられた。

「エアポート画面」でリアルタイムの情報共有が可能に ホワイトボードに替えて導入された大画面モニター。新たに構築されたシステムにより、10室ある手術室の状況が一目でわかるようになった。同じ情報を院内の電子カルテ端末で見ることも可能だ。

手術の予定と進捗状況がきめ細かくわかるように改善 麻酔や清掃の時間も含めた手術の予定と進捗状況を電子カルテで見ることができる。どの看護師がどの手術を担当しているか把握できるため、人員の配置なども行いやすくなった。

組織内に生まれた連帯感

部門横断の活動が円滑な意思疎通を後押し

フィールド・イノベーション活動で、手術室と関連部門間の連携やコミュニケーションがこれまでになく円滑になりました。その結果、さまざまな効果が生まれています。
角森氏は「課題の整理と深掘りによって、個々のスタッフが漠然と感じていた問題の本質を追求できたことが良かったですね。たとえば『手術室看護師のPHS番号が知りたい』という意見があったのですが、実は、PHS番号は手段で、本当に知りたかったのは『いつ始まるか・いつ終わるかといった様な手術の状況』でした。真の改善・改革を実現する上では、こうした本質を知ることが非常に重要だと感じました」と語ります。

ワークショップでも、これまであまり部門横断的な活動がなかったことから、当初は戸惑っていたメンバーもいました。しかし何度も回を重ねるにつれて、そうした雰囲気も次第に変わっていきました。
WGでリーダーを務めた藤井氏は「私自身、最初は『関連部門との情報共有に関するWGでリーダーが務まるか』という思いがありました。しかし、現場の状況をきちんと伝えることが大事だと気付いたことで、意識も大きく変わりました。また、ワークショップでは、最初はこちらから指名して順番に発言してもらっていたのですが、皆で改善施策を検討するうちに自然と自発的な発言が増えていきました」と語ります。

同じくWGでリーダーを務めた北野医師も「最初はやはり医師は医師、看護師は看護師と、それぞれの立場からの発言が目立ちました。しかしお互いの状況やさまざまな事実を共有していくうちに、全員が同じ目線で『手術関連業務を良くするにはどうすればよいのか』と考えるようになりました。医師は手術の時しか手術室にいませんから、準備や手術後の作業の大変さを知りませんでした。しかし今回の活動を通して、手術室の課題をより身近に感じられるようになりました。手術室看護師の負担が軽減された分を看護師の教育やスキル向上などの前向きな活動につなげることで、医療サービスの更なる向上が期待できるのでは」と語ります。

より良質な医療の提供を目指して

今後も改善・改革に取り組む

プロジェクトを支援したFIerに対しても高い評価が寄せられています。角森氏は「実は正直なところ、最初は『医療の素人に病院業務が変えられるのか』と疑っていました。しかし、第三者であるFIerだからこそ、病院内の取り組みでは出てこないような意見をインタビューで引き出せた。また、一直線に課題解決を目指すのではなく、議論の発散と収束を繰り返して、より有効な施策を探る手法なども大いに参考になりました」とにこやかに話します。

懸案であった手術関連業務の改革を成し遂げた島根県立中央病院ですが、この成果をさらに拡げるべくさまざまな取り組みを展開していく構えです。中山病院長は今後に向けた抱負を「部門間のコミュニケーションは、やはりお互いが意識しないとなかなかうまくいきません。しかしフィールド・イノベーション活動に取り組んだことで、関連部門から手術室の状況が見えるようになり、無駄な待ち時間がなくなりました。業務効率が上がったことで、患者さんやご家族に、より快適で良質な医療サービスをご提供できるようになりました。今後も職員の働く環境を整え、よりよい医療をご提供していきたい」と語って下さいました。

注記

(注1)4疾病5事業:
がん・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病の4疾病と、救急医療・災害時における医療・へき地の医療・周産期医療・小児医療の5事業を指す。

お客様概要

島根県立中央病院 様

設立:1948年4月(前身は私立松乃舎病院)
診療科:38科
病床数:679床(一般633床、精神40床、感染症6床)
手術室:10室
URL:http://www.spch.izumo.shimane.jp/Open a new window

FIer

今回のプロジェクトを通しての感想

左から、北川典男、浦田穂積、杉田清の写真FIerにとって、病院の心臓部である手術の現場は未経験の領域でした。そこで心掛けたのは、ひたすら事実を見える化することと、現場の方の“悩み”に誰よりも詳しい人間になろうということでした。もともと改善意識の高い病院職員の方々と討議を重ねることで、複雑な手術関連業務が紐解けていき、組織を越えて考え、動くきっかけになったと感じています。特にワークショップでは、異なる部門のメンバーの意識が徐々に同じ方向に向かい、時間を忘れて討議をされていた姿が印象に残っています。施策にさらに磨きをかけて実行し、成果を出されている島根県立中央病院様と一緒に活動ができたことはFIerにとっても大きな喜びであり、あらためて感謝しています。

【導入事例(PDF版)】

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[2013年5月 公開]

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