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事例紹介 公立大学法人 福島県立医科大学附属病院様

公立大学法人 福島県立医科大学附属病院様 医療・教育 購買

約2万5000点に上る診療材料の登録プロセスを一新 患者様中心の高品質な医療サービスを追求

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公立大学法人 福島県立医科大学附属病院は、県内唯一の大学病院として最先端の高水準な医療を提供するとともに、地域医療の中核的役割を果たしている病院です。その事務部門である医事課では、手術や治療などに用いる診療材料の業務プロセス改善を目指し、フィールド・イノベーションを導入。フィールド・イノベータ(以下、FIer:エフアイヤー)と共に、現状の見える化や情報管理の一元化に取り組み、医科大学附属の総合病院として他に類を見ない先進的な業務プロセスを実現しています。

INDEX
  • 1 診療材料の登録処理が課題に
  • 2 複雑にからみ合う業務プロセス
  • 3 業務フロー図が事態を打開する糸口に
  • 4 参加者の間に生まれた共通認識
  • 5 3つのシステム間の連携に取り組む
  • 6 「チーム事務」一体で先進医療の実現を後押し
  • 7 お客様概要
  • 8 FIer

診療材料の登録処理が課題に

電子カルテシステムと医事会計システム間のデータの整合性維持に苦慮

福島県立医科大学附属病院は、30診療科・778床の施設を有し、福島県民の健康を支える基幹病院として先進的な医療サービスを提供しています。
2011年3月11日に発生した東日本大震災において、福島県は地震・津波・原発事故という三重の災害に見舞われました。同病院ではこの未曾有の事態に対し、救急医療と放射線被ばく医療の中枢として、全職員の力を結集して対応にあたりました。復興へ向けて歩み始めた現在も、全福島県民を対象とした健康管理調査を行うなど、県民の健康を守る取り組みを推進中です。「福島県民が世界最高レベルの医療を受けられ、最も健やかで長生きできる県になること」を職員全員の目標として掲げ、医療の質と安全性の向上に励んでいます。

公立大学法人 福島県立医科大学附属病院 医事課 主幹兼副課長(業務担当)兼 医療情報部 江澤 淑子氏の写真

同病院において、大きな課題とされてきたのが、治療や手術に用いられる「診療材料」の業務プロセスの改善でした。診療材料とは、主に患者の治療や手術に使用される医療品を指し、ガーゼや絆創膏など消耗品から、カテーテルや人工弁、ペースメーカーに至るまで、その数は数万になります。

医事課 主幹兼副課長(業務担当)兼 医療情報部の江澤 淑子氏は「医師は、治療や手術で診療材料を使用した場合、電子カルテにその診療内容を入力します。そのデータが、保険請求を行う医事会計システムへとつながっていくのが標準的なプロセスです。しかし、以前は電子カルテシステムへのマスタ登録が済む前に診療材料が使用され、保険請求などに必要な処理を後追いで行うケースがありました」と振り返ります。

電子カルテシステムへのマスタ登録遅れによる問題 一部の診療材料が、電子カルテシステムへのマスタ登録前に使用され、一時的に医事会計システムや物流システムとの不整合が発生していた。

通常は、月に1度の定例委員会で使用する診療材料を承認し、病院内で利用する各システムのマスタに登録します。
一方、新しい診療材料は日々開発されています。そして夜間や休日、緊急時など、患者様の治療を最優先し、定例の委員会を待たずに新しい診療材料を使用することがあります。それらの材料は電子カルテシステムのマスタに登録されていないので、医師が診療内容を電子カルテに入力する際に使用実績を記載できず、後から入力作業を行っていました。
どの診療材料が使用されたかをその都度調べて、後から入力作業を行うのは大変な工数が掛かります。また、万一、材料が記載されないまま医事会計システムへデータが送られてしまった場合、保険請求の際に漏れが生じてしまう恐れもあります。患者様中心の医療の実現のために、どちらも好ましい事態とは言えません。しかし、それでもなお登録が後追いになるケースがあったのは、患者様に対してより最新・最適な医療サービスを提供したいという医療現場の思いを反映するのに最適な業務プロセスが確立されていなかったからでした。

公立大学法人 福島県立医科大学附属病院 手術部 副部長 猪狩 次雄氏の写真

手術部 副部長の猪狩 次雄医師は「新しく登場した診療材料は、それまで提供されていたものよりも機能や性能が向上していることが多いのです。たとえば注射針で言えば、安全装置付きの翼状針を使用することで、針刺し事故を防止することができます。患者様の身体への負担を減らし、より良い治療を行っていくためには、やはりこうした新しい診療材料を使うことが望ましい。また、どうしても特殊な診療材料が必要な症例の患者様が入院された際など、患者様の治療を優先した対応が必要な場合もあります」と説明します。

公立大学法人 福島県立医科大学附属病院 医事課 主幹兼副課長(総務担当) 佐藤 博氏の写真

医事課 主幹兼副課長(総務担当)の佐藤 博氏は「そもそも後追いの登録処理が頻繁に生じるというのは、従来の業務プロセスに実体と合わない点があったからです。患者様への医療サービス品質を維持し、現場の先生方にも過度の事務負担を強いることなく、また同時に病院としても定められた業務フローに則った処理を行っていくためには、これまでの業務プロセスを抜本的に変えていく必要があると感じました」と語ります。

こうした取り組みを進めるために、同病院では2010年末に富士通のフィールド・イノベーションを導入。現状の問題点を洗い出し、新たな業務プロセスを築き上げていく取り組みに着手しました。

プロジェクト実行体制 横のつながりが少なかった関係部門、委託先、取引先が一丸となって問題解決に取り組む体制を構築した。

複雑にからみ合う業務プロセス

システムへのマスタ登録だけでなく部門間のコミュニケーションにも課題

今回のプロジェクトにおける課題は、診療材料に関わる業務処理が複数のシステムと部門にまたがって行われている点にありました。
まずシステムについては、先に挙げた電子カルテシステム、医事会計システムの他に、院内で使用する物品の調達・在庫管理等に使用する物流システムが稼働しています。従来はこれら3システムのマスタ登録のタイミングや書式が統一されておらず、冒頭に触れたようなデータ不整合を引き起こす要因となっていました。

病院業務に欠かせない3つのシステム 診療材料が調達され、使用され、最終的に会計に至るまでには、これら3つのシステムを経由する。

また、業務に携わる部門についても、医療業務を行う各診療科をはじめ、会計事務等を担当する医事部門、物品の調達・管理を担当する用度部門、物流業務の委託先企業、医事会計業務の委託先企業と多岐にわたっており、コミュニケーションが取りにくい状況にありました。
業務を変えていくためには、これらのシステムや各部門の業務プロセスを一から見直す必要があります。しかし、それを自分たちの力だけで行うのは容易なことではありません。同病院がFIerに期待したのも、まさにこの点でした。

「特に期待したのが、第三者の立場でプロジェクトに関わってくれる点です。組織内のどこかの部門が主導してしまうと、他のメンバーからはその部門のプロジェクトであるかのように受け止められがちです。今回は病院業務全体に関わる取り組みなので、これではうまくいきません。しかし、FIerをサポート役として全部門がフラットな形でプロジェクトに参画できます」と佐藤氏は語ります。

業務フロー図が事態を打開する糸口に

ワークショップで遂に見える化された部門を横断した業務プロセスの全体像

プロジェクトを担当したFIerは、早速現状の業務プロセスの問題点を洗い出す活動に着手。医師や関連部門の担当者を集めてワークショップを開催し、実際にどのように業務が処理されているのかを解きほぐしていきました。
ここで大きな効果を発揮したのが、プロジェクト参加者からのヒアリングなどを元に作成した業務フロー図です。スタート段階では非常に大まかなものでしたが、ワークショップの回を重ねる内に、メインの業務プロセスから枝分かれした細かい処理が次々と書き加えられていきました。何度も改版された業務フロー図は最終的に第10版に達し、ようやく従来の業務プロセスがすべて明らかになったのです。

ワークショップで見える化された業務フロー 各部門の業務フローの洗い出しからはじまり、最終的に全ての部門を横断した業務フロー図が完成。改善の大きな足掛かりとなった。

公立大学法人 福島県立医科大学附属病院 医事課 主任主査兼医療情報係長 兼 医療情報部 山谷 享氏の写真

医事課 主任主査兼医療情報係長 兼 医療情報部 山谷 享氏は「病院はいわば専門職の集団ですから、他部門の業務内容については見えない部分も多いのです。だいたいこのような業務を行っているというイメージはつかんでいても、細かい部分となると、すべては把握しきれません。それが、FIerと一緒にプロジェクトチームのメンバー全員で作成した業務フロー図を見れば、自部門で処理した書類やデータがどこに送られ、どう処理されているかが明確に理解できます。これには本当に感激しましたね」と語ります。

公立大学法人 福島県立医科大学附属病院 医事課 病院用度係主事 斎藤 雅之氏の写真

また、ここで作成された業務フロー図は、その後の改善策を練るうえでも非常に有用な材料となりました。

医事課 病院用度係主事 斎藤雅之氏は「業務フロー図からは、今後どう業務を変えていけば良いのかを考えるヒントも数多く得られました。自分たちだけの取り組みでは、とてもここまで細かく業務を分析することはできなかったでしょう」と語ります。

関係者が一堂に会したワークショップ 週に数度の割合で開催されたワークショップには、各部門の関係者だけでなく、現場の医師や調達先の外部業者も参加。の写真

参加者の間に生まれた共通認識

現場の医師の負担を減らしながら確実にマスタ登録できる仕組みを

業務フローを徹底的に洗い出すことで明らかになった問題点は、全部で40近くにもなりました。FIerはこれらの内容をさらに深掘りし、問題解決の糸口が「共通認識を持つためのルール作り」「それを徹底するための明文化」「部門間の横連携」の3点に集約されることを突き止めました。

「関連部門が一堂に会して話をしてみると、意外と業務に対する考えに微妙なズレがあるんですね。元々、隣の仕事がよく見えていないような状況でしたから、無理もない部分もあったと思います。ただ、フィールド・イノベーション活動を行ったことで、関連部門の全員が『これから業務をどう変えていくのか』という共通認識を持つことができました」と江澤氏は語ります。

具体的な改善施策は、まず「診療材料が使用される前の段階で一元的にマスタ登録を行う」という点が挙げられます。

「登録処理の後追いでカバーするのではなく、治療や手術に使用する診療材料は必ず事前にマスタ登録しておく。このルールを改めて徹底しようということですね。ただし、ルールを守ってもらうためには、無理なく実施できるような仕組みを構築する必要がありますので、既存の業務プロセスに様々な改善を加えていきました」と江澤氏は説明します。

たとえば以前は、定例の委員会を通らない個別の新しい診療材料の申請・承認に約1週間を要していましたが、手続きを合理化して最短で中1日にまで短縮。月曜日に申請を行えば、水曜日の朝には使用できるようになりました。これと同時に、医師が行う材料申請作業を省力化する書類フォーマットの改善も行っています。
以前は各システムでバラバラに行われていたマスタへの登録作業についても、同じタイミングですべてのシステムにデータが登録されるよう業務プロセスを変更。これによりシステム間のデータ整合性が確保されるようになりました。

業務フロー見直しによるマスタ登録の一元化 申請にかかる手続きを合理化するなどの工夫で、3つのシステムへのマスタ登録タイミングの一元化に成功。

メンバーは、新たに構築した業務プロセスが病院の実務に即したものかをチェックするために、ウォークスルーと呼ばれる現場検証も実施しています。

「各部門を流れる書類は机のどこに置くのが望ましいのか、その書類は誰が何時にどこへ届けているのかといった点まで実地で確認するので驚きました。こうした細かいことにまで目配りしているからこそ、真の業務改善が実現できるのだなと思いました」と佐藤氏は語ります。

一連のこうした改善は、医療の最前線で活躍する医師にも好感を持って迎えられました。

「今回の活動で特に良かったのは、医師の負担軽減に正面から取り組んでくれたことです。以前の業務プロセスでは、事務作業に手間を取られることが多く、後追い処理を生む一因となっていました。しかし、今回の仕組みであれば、我々も自然にルールに沿った業務が行えます」と猪狩氏は語ります。

3つのシステム間の連携に取り組む

診療材料に関する大量のデータを効率的に処理できる仕組みを構築

またフィールド・イノベーション活動で得られた気づきを基に、病院内で稼働する3つのシステムのカスタマイズも行われました。既に2万5000点に達している診療材料ですが、この数は今後も減ることはありません。医療技術の進歩に合わせて、新たな製品が次々と登場するからです。

「今回構築した業務プロセスを今後も維持し続けるためには、ICT側にも効率的にデータ活用を支える仕組みが求められます。そこで、物流システムのデータを夜間バッチで電子カルテシステム側に送るなど、大量データを効率的に連携できるようカスタマイズしました。また、診療材料の検索機能を改良・強化し、以前よりも簡単にデータ検索が行えるようにするなど、先生方が電子カルテに診療内容の入力を行う際の負担軽減も図っています」と江澤氏は説明します。

こうしたシステムのカスタマイズは、富士通のSEが担当。業務プロセスとそれを支えるICTを一体でバックアップしていきました。

システムのカスタマイズ フィールド・イノベーション活動で得られた知見を基に、大量データを効率よく処理するためのシステムのカスタマイズを実施。

「チーム事務」一体で先進医療の実現を後押し

システム間のデータ不整合を駆逐し業務効率化と医療サービス向上に貢献

FIerと共に構築した新たな業務プロセスは、2012年2月より適用を開始。これにより、多くの改善を実現することができました。

「以前は後追いで、電子カルテシステムに登録した件数が多くありました。しかし現在では、原則として事前登録を行っていますので、緊急限定材料等の登録件数は4分の1以下に激減。しかも、この4分の1についても、翌々日には確実にマスタに登録されます」と斎藤氏は語ります。

電子カルテシステムと医事会計システムのデータが常に一致していれば、保険請求の際に、漏れや請求の遅れが生じる心配もありません。また、後追い処理を行う必要がなくなったため、大幅な業務効率化も実現できました。

「診療材料の登録が後追いになるという問題は、現在多くの病院や診療機関にとって共通の課題となっています。診療材料をすべて事前にマスタ登録する取り組みが成功した例は、あまり耳にしたことがありません。
今回のプロジェクトでは画期的な業務プロセスが実現できたと自負しています。手作業で対応する部分も多少は残っていますが、業務プロセスそのものは誰が見ても分かるクリアな形になり、院内の他部門や委託業者など、職種の異なる他部門の動きも全部見えるようになりました。現代の医療では、複数の診療科や他の職種の人達が連携する『チーム医療』が進んでいますが、今回はまさに『チーム事務』で成し遂げた成果ですね。活動を支援してくれたFIerにも『三つ星』の評価を差し上げたいと思います」と江澤氏はにこやかに語ります。

電子カルテシステムマスタへの緊急限定材料等の登録 数多く発生していた緊急限定材料等の登録が4分の1に激減。休日、夜間など時間外の緊急限定材料等の使用も翌々日にはマスタ登録されるようになった。

また、フィールド・イノベーション活動をきっかけに、コミュニケーションが円滑に行えるようになったことで、院内の雰囲気や課題解決に対する取り組み方にも大きな変化が生まれました。

「他部門の職員や委託業者とも顔の見える関係が作れましたから、今では何か業務上の問題点が見つかると、すぐに声を掛けて集まるようにしています。いわば自前のフィールド・イノベーション活動ですね。解決までのスピードも大幅に向上し、些細な問題であればその日の内に解決してしまいますよ」
「実際に取り組んでみて、自分たち自身が主体的に課題解決に臨むことの大事さを改めて感じました。FIerが提供してくれた資料やヒントを基に、ゴールを目指して全員が一丸で取り組んだからこそ、今回のような成果が達成できました」と山谷、佐藤両氏が語ります。

課題であった業務プロセスの改善を見事成し遂げると同時に、自律的な改善体質を築き上げることにも成功したプロジェクトメンバーの方々。今後もその力をフルに発揮し、県民への先進医療サービス提供を後押ししていきます。

お客様概要

公立大学法人 福島県立医科大学附属病院様 概要

設立:1951年4月
診療科:30科
病床数:778床(一般713床、精神49床、結核14床、感染2床)
URL:http://www.fmu.ac.jp/byoin/Open a new window

FIer

福島県立医科大学附属病院様を担当しての感想

写真左から、橋本隆、前多宏志の写真

ワークショップを開始した当初、各ご担当者はそれぞれの部門の立場で発言することが多かったのですが、次第に発言の内容が「病院としてどうあるべきか」という視点に変わっていきました。病院のように専門職で構成される複雑な組織では、隣の部門や組織全体の仕事が見えない点がしばしば課題となります。今回のフィールド・イノベーション活動を通じて、そうした状況を変えていくお手伝いができたことを嬉しく思っています。

【導入事例(PDF版)】

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[2012年6月 公開]

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