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事例紹介 株式会社島根富士通

株式会社島根富士通

事業継続強化のためベテラン社員の業務経験を見える化 得られたノウハウを基に一気通貫のものづくりへの転換を図る

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株式会社島根富士通は、富士通グループの製造会社としてノートパソコンの生産を担う企業です。その中で生産計画立案・指示などの業務を担う生産部では、マザーボード(プリント板)の生産計画に関する業務を改善するためにフィールド・イノベーションを導入。フィールド・イノベータ(以下、FIer:エフアイヤー)により、事業継続強化のためベテラン社員の経験やノウハウを見える化し、さらに現在はシステム化による一気通貫のものづくりに取り組んでいます。

INDEX
  • 1 重要な業務が特定の社員に依存
  • 2 「頭の中」のノウハウを取り出す
  • 3 見える化によってマニュアルが完成
  • 4 目指すのは一気通貫のものづくり
  • 5 プロセス革新への第一歩となる
  • 6 サプライチェーン全体の最適化へ
  • 7 会社概要
  • 8 FIer

重要な業務が特定の社員に依存

ノウハウの属人化をなくす事業継続の取り組み

株式会社島根富士通 執行役員 兼 生産部長 松永 重男日本最大のノートパソコン生産拠点として、「LIFEBOOK」シリーズなど富士通のノートパソコンを製造する島根富士通では、グローバル競争を勝ち抜いていくために、「世界をリードする製造会社としてのQCD活動()」を事業目標として掲げています。
その実現のため、2005年より生産革新活動をスタートさせ、TPS(トヨタ生産方式)を全面的に導入、生産ラインの短縮や製造工程の改善など多面的な活動を展開してきました。
それと同時に、事業継続強化のための活動を開始しました。ノートパソコンの生産を一手に担う製造会社である以上、予期せぬ障害や災害などにも柔軟に対処できる対応力が求められるからです。

こうした背景から、ノートパソコンの主要部品であるプリント板の生産業務の改善に取り組んできました。そこには、プリント板の生産計画立案が、一人のベテラン社員のノウハウに依存している実態があったのです。
具体的には「プリント板小日程」と呼ばれるもので、富士通本社のオペレーション部門から送られてきた週次計画を基に、「いつ」「どの機種のプリント板を」「何枚」製造するかを決定する日次の計画業務です。この「プリント板小日程」がスムーズに作成できないと、生産全体に影響を及ぼします。

ノートパソコンの主要部品となるプリント板 同じ機種でもCPUやメモリーなどの構成部品が異なるため、ひと月に製造するプリント板は約120~130種類にも上る。

従来の生産プロセス ノートパソコンの主要部品であるプリント板の生産計画立案が、一人のベテラン社員のノウハウに依存していた。

プロジェクトのオーナーを務めてきた執行役員 兼 生産部長の松永 重男は、「ベテラン社員の経験やノウハウは貴重な財産ですが、誰もその人の代わりができないような状況は望ましくありません。特に、当社は、年間約200万台ものノートパソコンを製造する主要生産拠点ですので、早急にこの問題を解消する必要があると感じました」と振り返ります。

しかし、社内での自主的な改善活動だけでは、こうした状況を打破するのは困難でした。「第1の問題は、日々の生産活動は止まることなく動き続けているという点です。1日あたり約1万台もの製品を製造しながら、同時に改善活動も進めていくのは容易なことではありません。また、第2の問題は、自分たちの業務プロセスを客観的な立場で分析することの難しさです。現状の課題に深く切り込んでいくためには、今までの考え方、やり方にとらわれない第三者の視点が必要と考えました」と松永は語ります。

株式会社島根富士通 生産部 担当部長 佐藤 昌之

今回のプロジェクトリーダーを務めた生産部 担当部長の佐藤 昌之も、「時間をいくら掛けても良いのなら、いつかは他の人でも計画を立案できるようになるかも知れません。しかし、スピードが要求される中で、ゼロから経験を積み上げていくのはあまりにも非効率です。その点、ベテラン社員の持つ経験やノウハウを明らかにできれば、後継者の育成もスムーズに進むだろうと思いました」と語ります。 そこで同社では、富士通のフィールド・イノベーションを採用。属人化したノウハウを見える化する取り組みに着手しました。

プロジェクト実行体制 本プロジェクトには執行役員がオーナーとして参加。生産部だけでなく他部門とも連携し改善活動が始まった。

「頭の中」のノウハウを取り出す

約20年の業務経験をいかに見える化するか

株式会社島根富士通 生産部 計画担当 清水 政行実際にこの作業を一手に引き受けていたベテラン社員が、生産部の清水 政行です。清水は現場の製造ライン業務も経て、現在のプリント板生産業務を手がけるようになりました。この道20年近い経験を持ち、現在の業務プロセスを創り上げてきたエキスパートの一人です。
自分のノウハウを若いスタッフに伝えて共有したいという思いは強かったと言います。「私がこの仕事に就いた頃は、確立されたプロセスもなくゼロからの立ち上げでした。それだけに面白い部分も多かったのですが、これからのことを考えればいつまでも今のままというわけにもいきません。私のノウハウを見える化することで業務改革に貢献できるのなら、積極的に協力したいと思いました」と清水は語ります。

しかし、約20年にわたる経験を明らかにしていくのは、そう容易な作業ではありませんでした。清水は、長年の経験とノウハウに基づいて計画立案を行っていたため、そのプロセスを他の人に順序立てて説明することは難しかったのです。
ごく単純に考えれば、その週に製造する製品のプリント板を、必要な数だけ作れば良さそうに思えます。しかし、実際にはそう簡単な話ではありません。同社で現在製造されているノートパソコンは約20機種、同じ機種でもCPUやメモリなどの構成部品が異なるため、ひと月に製造するプリント板は約120~130種類にも上ります。

「異なる機種のプリント板を作る時には『段替え』と呼ばれる実装部品の取替え等を行わなくてはなりませんので、その時間も見込んでおく必要があります。また、プリント板の生産能力と装置組立の生産能力には差があるので、どういう順番で作るかも重要なポイントです」と佐藤は説明します。

プリント板は、予想を上回る需要変動があった時、ラインの状況や部品在庫の確認、今後の需要予測なども行いながら、まず何から作っていくべきかという優先順位を付けていきます。しかも、こうした平時でも考慮する条件以外に、イレギュラーな事態への対応も問題になってきます。たとえば、先にタイで発生した大洪水の際には、代替部品が使用できるようにプリント板の設計を一部変更したり、生産計画を練り直すといった対応を行っていました。このように、一口にプリント板の生産計画と言っても、そこで考えるべき要素や対応すべき事象は非常に多岐にわたるのです。

見える化によってマニュアルが完成

徹底的なインタビューで複雑な業務ノウハウを解明

こうした複雑な業務を見える化するために、まずFIerが取り組んだのが、清水の業務内容の徹底的な分析です。業務状況のビデオ撮影やパソコン作業履歴の解析などを行い、1日の作業内容を徹底的に把握しました。また、今回特に大きな役割を果たしたのが、インタビューによるヒアリングです。1回あたり1.5~2時間のインタビューを週2回ずつ実施。これを約3ヶ月、のべ45時間にわたって続けました。また、インタビューによって得られた情報を基に、FIer側で業務プロセスのアウトラインを作成。これをその都度清水にチェックしてもらい、そこで不十分だった点については再度細かい部分の深掘りを行っていきました。

ノウハウの見える化のステップ 綿密なインタビュー調査などによってベテラン社員のノウハウを分析。第三者視点で検証を繰り返し、マニュアルを精査していった。

このような活動を何度も丁寧に積み重ねた結果、清水の頭の中にあった計画立案プロセスが次第に形として見え始めてきました。たとえば、計画作成に用いる要素として「受注状況」「プリント板試験能力」「チップマウンター能力」「増減産情報」「部品状況」などの項目です。
もちろん、これだけでは実際の業務を行うことはできませんので、どの段階で、何の情報を基に、何を行うかという業務マニュアルも作成しました。さらに、他のスタッフにこのマニュアルを読んでもらい、実際に計画が立案できるかどうかの検証も行いました。この結果、ある程度の経験を持つ人であれば、プリント板の小日程を作成することができるようになったのです。

見える化されたノウハウ マニュアルはチェック項目が徹底的に細分化されている。さらに現状の作業プロセスが明確化されることによって無駄が見えてきた。

作成したマニュアルの検証 マニュアルの実効性を検証する為、FIerを交えた査読や、他の社員による検証が繰り返された。

清水はFIerと実施した活動について「FIerが作成したマニュアルなどのドキュメントを読んで、改めて自分の仕事内容について再認識させられることも多かったですね。今までは当たり前のように行っていた作業には、実はこういう意味があったのかと新鮮な発見につながる部分もありました。これなら自分が不在のときでも、きちんと業務が続けていけるだろうという手応えが得られました」と振り返ります。

また、業務プロセスの全容が明らかになったことで、思わぬ効果も生まれました。同社では、生産計画を立案するためのベースとして様々な資料を作成していますが、その中に、現在ではあまり使われていないものも存在していました。「今回からこうしたものの作成を省略すると同時に、空いた時間を他の作業に充てるなど仕事の進め方も見直しました。おかげで残業時間も半減しています」と清水は語ります。こうした改善の効果は、プリント板計画業務の工数を1ヶ月あたり約19%削減など、定量的な数値としても現れています。

目指すのは一気通貫のものづくり

計画立案のシステム化でプリント板在庫の削減を目指す

そして現在同社が取り組んでいるのが、プリント板生産計画業務そのもののシステム化です。佐藤はこの点について「当社が製造するノートパソコンには、法人のお客様向け製品、海外向け製品、家電量販店などの店頭向け製品の3種類があります。前の2つは本来、受注生産のため余分な在庫を持つことはありませんが、急な需要変動などに対応するためにプリント板の見込み生産を行っています。プリント板生産計画と装置生産計画のシステム連携を推進することで、ここで生じるプリント板在庫をできる限り削減したかったのです」と説明します。

ノウハウのシステム化へのステップ 複雑なノウハウをどのようにシステムに落とし込んでいくべきか。一気通貫のシステム化を目指してプロジェクトが進行中。

もちろん、業務プロセスの内容が不明瞭な状況では、現在の生産計画が適正なのかどうか判断する術がありません。清水の業務を見える化することは、プリント板在庫削減を進めていく上でも重要なポイントだったのです。そして、FIerの活動によって、見える化の問題をクリアできたことが、プロジェクトを次のステップへと進めていく原動力となりました。

「計画立案のシステム化が実現できれば、ムダな在庫を持つ必要がなくなり、ものづくりのリードタイム短縮も可能になります。元々、装置製造ラインの方では計画立案のシステム化がある程度進んでいましたので、プリント板生産計画の見える化によって、システム化の実現に大きな弾みが付きました」と松永は語ります。

プロセス革新への第一歩となる

現場の意識改革をFIerが助け固定概念を打破

プリント板生産計画のシステム連携を実現するためには、既存の業務プロセスを大きく変えなければなりません。従来は、全体の基準となる週次計画を基に、装置製造ラインとプリント板製造ラインで、それぞれ別々に計画立案や製造指示を行う生産方式でした。これに対し現在進行中のシステム化プロジェクトは、装置製造ライン側で導き出したデータを、プリント板製造ライン側のシステムにつなぎこみ、計画を自動立案します。2つの製造ラインの計画をシステムで一本化することで、受注情報に基づく一気通貫のものづくりを目指すのです。

「しかし、プリント板製造ラインに装置製造ラインのデータを持ってくることは、単純なことではありません。なぜなら、先にも触れたように、2つのラインには生産能力の差があるからです。たとえば、装置製造側では21本の製造ラインが稼働しているのに対し、プリント板側では製造ラインが6本しかありません。こうしたライン間のギャップを埋め、いかに最適な計画を自動立案するかが、システム化への課題です」と佐藤は語ります。

現在同社では、FIerと力を合わせてこうした課題の解決に取り組んでいます。清水から得られたノウハウをベースに、2つのライン間でのデータ連携や計画立案の方法など、様々な要素を綿密に検討。新たな業務プロセスへと落とし込む作業を進めているのです。
こうした作業の中でも、FIerが参画することのメリットを強く感じたと佐藤は言います。「一つの業務にずっと携わっていると、どうしても自分の業務に対する固定観念を持ってしまいがちです。ラインがこう、システムがこうだからあれはできないといった具合ですね。しかし、今回は、独立していた業務を一つにまとめていく取り組みですから、そうした既存の考え方も改めないといけません。こうした時に、FIerが第三者的な立場で議論に加わってくれたのは非常にありがたかった。現場の意識改革を進めていく上でも大きな手助けになりました」(佐藤)。

システム化プロジェクトも大詰めの段階に差し掛かっており、近日中には新たな業務プロセスへの移行が予定されています。本格稼働が実現した暁には、「プリント板製造ラインにおけるプリント板在庫の1/3を削減」「10トン車1.5台相当のスペース削減」「生産計画フェーズでの業務工数削減」などのメリットを見込んでいます。

一気通貫でシステム化された生産プロセス 装置製造順序のデータを、プリント板製造側のシステムにつなぎこみ、計画を自動立案。受注情報に基づく一気通貫のものづくりを目指す。

サプライチェーン全体の最適化へ

改善活動を全方位で展開しグローバル競争を勝ち抜く

島根富士通では、今回取り上げたプリント板生産計画業務以外にも、「生産管理システム運用の見える化とプロセス改善」「在庫精度向上」など様々なテーマを設定し、FIerと共に業務改革に取り組んでいます。こうした活動は、それぞれ単独でも大きな改善効果をもたらしますが、すべてが組み合わさることでもう一つ大きなメリットを見込んでいます。

「これらの取り組みが連携して動き出せば、海外向け製品のリードタイムを現在よりも短縮できるようになります。メイド・イン・ジャパン品質を誇る『出雲モデル』をよりタイムリーに提供できるということは、グローバル競争をQCD活動で勝ちぬいて行く上で強力な武器となります」と佐藤は語ります。 「現在はまだ道半ばの段階ではありますが、実現に向けた充分な手応えは得られています。属人化したノウハウを見える化する活動が成功したからこそ、こうした幅広い分野での改善活動にも取り組めるようになりました。FIerの支援には大変感謝しています」と松永。

また同社では、社内での自律的な改善活動を進めていくために、富士通グループ内で開催しているフィールド・イノベーション実践ワークショップに佐藤が参加するなどの取り組みも行っています。「現場の『事実』をどう見える化するかなど、ワークショップで学んだことは大いに勉強になりました。この経験と知識を今後の業務改革にも活かしていきたい」と佐藤は語ります。
「単に外部から調達した部品を組み合わせるのではなく、プリント板も含めてゼロからものづくりができるのが当社の最大の強みです。これがあるからこそ、高品質な製品をタイムリーに提供でき、様々な環境変化にも迅速に対応できるのです。今後もこの強みにさらに磨きを掛け、事業方針である“世界をリードする製造会社”の実現を目指していきたい」と力強く語る松永。将来的には、富士通本社のオペレーション部門や営業部門まで含めた、サプライチェーン全体の最適化も追求していきたいと抱負を語ります。
製造業の現場において、改善・改革への取り組みに終わりはありません。フィールド・イノベーションが貢献する領域も、ますます拡がっていくことになりそうです。

会社概要

株式会社島根富士通 概要

FIer

株式会社島根富士通を担当しての感想

写真左から、竹村克喜、柏原隆海、佐藤公紀、椿克巳

一連のプロジェクトでは、島根富士通との対話の場を通して、ものづくりの上流工程に蓄積された目に見えない貴重な知的資産を見える化し、組織のノウハウに昇華させていくというフィールド・イノベーション活動の一つの型を作れたのではないかと思います。島根富士通は社員一人ひとりの改革意欲が非常に高く、フィールド・イノベーション活動に積極的に参画してもらうことで活動が更に加速しました。今後も更に活動に取組み、競争力強化の一助となるように努めて参ります。

【導入事例(PDF版)】

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注記

  • (注)QCDとは:
    QCD=Quality(品質):世界トップ品質の提供による顧客満足度の向上、Cost(コスト):中国・台湾勢に対応できるコスト競争力の強化、Delivery(納期):スピーディーでフレキシブルな製品供給体制の強化
  • 製品名は各社の商標または登録商標です。

[2012年3月 公開]

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