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総合化学メーカーの三井化学株式会社様では、注目を集めるリチウムイオン電池の構成素材である電解液事業をおこなっています。需要が拡大するなか、製品搬送用容器の物流可視化と業務改善を目的にフィールド・イノベータ(以下、FIer:エフアイヤー)を導入。FIerとのセッションのなかで、課題の本質として事業全体のサプライチェーンの調整能力の向上が必要なことに気づき、プロジェクトテーマを拡張。FIerとともに改善に向けた取り組みを開始しました。
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環境にやさしい乗り物としてエコカーへの関心が高まっています。国内の自動車メーカーから新車が次々と発表され、今後、普及が始まっていくものと期待されています。三井化学株式会社様では、1990年代に携帯電話やパソコン向けにリチウムイオン電池の構成材料である電解液開発を進め、事業を展開。エコカーのエネルギー源としてリチウムイオン電池の使用の広がりが期待されるなかで需要が急速に伸びています。
「2015年には自動車の1~2割がエコカーになるという予測もあり、当社の事業として大きな成長が期待されています。市場が急激に拡大するなかで、お取引先様も広がり、原材料の調達や物流面などの業務が複雑化しています。新しい領域で市場をリードするポジションを獲得していくために、いかに業務改善を進め効率化をはかっていくかが重要な課題になっていました」と、檜原氏は語られます。
事業の改善活動のなかでまず問題になったのが、容器管理業務の改善でした。電解液は劣化を防ぎ鮮度を保つなど、品質を維持するために特殊な形状の容器で納品しています。容器は高価なこともあり、リユースしています。そこで、今後の需要が伸びていくなか、容器の運用面での効率的な仕組みが求められ、三井化学株式会社様の市原工場での物流管理業務改善が評価された富士通のフィールド・イノベーション活動を今回のプロジェクトでも展開することになりました。
FIerは早速、電解液事業における容器管理業務の可視化と改善をテーマに、お客様と一緒にセッションをおこないました。これまで漠然としていた問題や課題が具体化され、どこに問題があり、どういった形で改善していけばよいかの全体像をつかむことができました。
「そこで気づいたのは、容器管理だけを改善したのではダメだということ。需要予測のフォーキャストから始まって、どう原材料の購入計画を立て、それを生産計画に落とし込み、物流計画を立てていくか。事業全体のサプライチェーンを見直さなければならないということでした」と、今回のプロジェクトの推進役となった三嶋氏は話されます。お客様が気づかなかった隠れた問題点を洗い出し、課題の本質を導き出す。まさにフィールド・イノベーションの真骨頂がそこにありました。
2009年11月から本格的な活動がスタート。マネージャーや担当者のインタビュー、現地確認などを通じて業務概要を把握。データ分析などをおこない、業務を可視化しました。現状データ分析では、フォーキャストや原材料発注、製品出荷、容器管理などについて、150パターンもの分析をおこない真実に迫りました。
「何が問題かという議論にいきなり入っても、担当者一人ひとりでイメージは違いますし、現場が苦労していると言うだけでは上司も納得してくれません。その前提として大事になるのが事実の確認です。現場のデータを分析することで問題点の本質にたどりつき、議論も進めやすくなりました。FIerの方が分析に多くの工程を割いていることにも感心させられました。自分たちでやったら10分の1もできなかったでしょうし、地道に作業を続けてくれたことで、事実の大切さに改めて気づかされました」(檜原氏)。
「実際のフォーキャスト分析では、自分たちが需要変動が大きいと心配していたある製品が実は4週間の平均を取ると変動が少なく、逆に安定し ていると思い込んでいた製品の方が気をつけなければいけないといった、製品ごとの傾向もわかってきました。また、需給計画の実体把握も、Excelで1年間分の実績データを可視化したことで管理精度向上の価値を理解し、改善方法が見えてきました。このExcelでのシミュレーションツールは、メンテナンスが楽になるようにマクロを使わず、操作も必要最低限に絞り、わかりやすく作っていただけましたので、今後活用の価値は高いと思っています」と、高松氏は語られます。改善に必要なものがあれば知識を活かしてつくる。それができるのも、FIerが業務現場での課題解決に、お客様と同じ目線に立ち一緒に取り組むという姿勢を持っているからにほかなりません。
FIerの活動は、2009年11月から2010年3月でファーストステップが終わり、4月からセカンドステップへと入っています。ファーストステップでは、150パターンの現状データ分析からシステム部のメンバーを含め、議論を繰り返し95件の課題を抽出。さらにそのなかから21件の検討施策をまとめ上げました。
「今後は、検討した需給計画業務ならびに容器管理業務の改善に向けて、実際に現場への定着を進めていきます」(檜原氏)。
電解液事業はこれから拡大していく発展的な事業であり、それだけにお取引先様など対外的なところに目が行きがちですが、今回の活動を通じ て、内部をしっかり固めることも大事だという思いを強くしたと言われます。内部の仕組みがしっかりしていなければ強い事業はつくれない。これからが大切な時期になると言えそうです。
創立:1997年10月1日 (設立1955年7月1日)
資本金:125,053百万円(2010年3月31日現在)
従業員数:連結 1万2,892人(2010年3月31日現在)
URL: http://jp.mitsuichem.com
フィールド・イノベーションは、現地・現物に基づく『事実』を大切にしています。今回苦労した点は、需給調整と物流管理がテーマであり、現地・現物だけでは取り組めなかったことです。多種多様なデータと格闘し、なんとか事実に迫ることができたと思います。
プロジェクトとして良かった点は、システム部門の方も参加し、現場の言葉で一体となった有意義な議論ができたことです。メンバー全員がカードセッション、集中検討会に大変真剣に取り組んでいただき、短時間で多くの課題抽出と対策を立案できたことに感謝しています。
三井化学株式会社様は30年以上にわたりお付き合いをいただいている重要なお客様です。
フィールド・イノベーション活動は、お客様のビジネスへの貢献であるとともに、お客様の悩みや課題を知ることで、業務に貢献できる高度なアプリケーションをご提供できるなど、意義のあることと認識しております。
今後、FIer、SE、営業一体となり貢献活動領域を広げ、お客様にご満足いただける真のビジネスパートナーとなるよう邁進していくことをお約束します。
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[2010年6月 公開]
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