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八木橋ゼミナール 第16回 「在留外国人と安心・安全」

今回のテーマは、前回の「広域行政」を受け、視点を広げて、自治体からみた、「外国人住民」「訪日外国人」などを巡る話題について解説しましょう。

2018年12月20日掲載

入管法改正、住基法改正、マイナンバー制度

入管法(注1)の改正が行われています。
この第一条「目的」は、「本邦に入国し、又は本邦から出国する全ての人の出入国 及び本邦に在留する全ての外国人の在留 の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続を整備すること」とされています。
今回の法改正で、「本邦に在留する全ての外国人の在留」が追記されました。
所管は、法務省の出入国在留管理庁(法改正前は入国管理局)で、8か所の地方出入国在留管理局(法改正前は地方入国管理局)が窓口となっています。(注2)

自治体にとっては、2009年の法改正(在留カードの交付など新たな在留管理制度、外国人住民制度)が大きなものでした。(注3)
入管法で規定された在留カードを持つ、中長期在留者の「居住地に関する届出」は、市区町村が窓口となり、転入・転居等の手続をすれば、住居地変更の届出をしたとみなされ、市区町村長から、法務大臣に通知されます。
この居住地を含む在留カードの情報等は、法務省が市区町村に設置した「情報連携端末」を経由して、法務省の在留カード等発行システム、外国人出入国情報システムと連携しています。(注4)
住民基本台帳に外国籍の住民も記載する「外国人住民に係る住民基本台帳制度」は、2012年7月の施行後、段階的に拡充され、2013年7月からの住基ネットの運用、住基カードの発行、そして2015年からのマイナンバー制度の運用開始へとつながりました。

(注1)法務省所管「出入国管理及び難民認定法」(昭和26年政令第319号)Open a new window
なお、今回の改正法は、「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」(平成30年法律第102号)Open a new window

(注2)この8局に加え、支局7、出張所61が設置されています(2018年12月時点)

(注3)入管法改正(「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律」(平成21年法律79号))による新たな在留管理制度の導入Open a new window、外国人登録法の廃止、住民基本台帳法の改正による外国人住民制度(2009年公布、2012年7月施行)

(注4)法務省 第6次出入国管理政策懇談会Open a new window 報告書「今後の出入国管理行政の在り方」p19~「第6 共生社会の実現に向けた取組」より(2014年12月) 詳細は、総務省「外国人住民に係る住民基本台帳制度への移行等に関する説明会」Open a new window 資料4「法務省と市町村のシステム連携について」(2010年10月)

外国人住民制度

このマイナンバー制度に繋がった、「外国人住民に係る住民基本台帳制度」について、若干の復習をしましょう。
我が国に入国・在留する外国人が年々増加していること等を背景に、市区町村が、日本人と同様に、外国人住民に対し基礎的行政サービスを提供する基盤となる制度の必要性が高まりました。(注5)

(注5)在留外国人数は、約64万人(1955年)から、1990年に100万人、2005年に200万人を超えた。2017年は約256万人、総人口比は2.02%になる。(法務省 入管白書 平成30年版「出入国管理」Open a new window より)

そもそも、市区町村は、「住民の福祉の増進を図ることを基本として,地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」(地方自治法第1条の2)ため、住民に関する正しい記録を整備することは行政の基礎であり、行政サービスの提供を通じて住民の利便の増進を図る上で欠かせないものです。
このことでは、外国籍の住民についても、変わるところはありません。
「市町村は、その住民につき、住民たる地位に関する正確な記録を常に整備」(地方自治法第13条の2)する、住民基本台帳法が制定されていますが、従前の、在留する外国人を対象とした外国人登録制度(注6)は、趣旨及び目的が異なるため、支障が生じていたところでした。
また、従来の在留管理制度は、入管法と外国人登録法に基づいた二重の制度で、制度の発足から60年近くが経過し(注7)、入国・在留する外国人の増加、その目的も多様化、定住化の傾向も少なくない状況で(注8)、様々な問題が生じていました。
このため、新たな在留管理制度として、入管法に集約・一元化した新制度を再構築することになったのです。

(注6)根拠法は外国人登録法(昭和27年法律第125号、2012年廃止)。なお、住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)の前身は、住民登録法(昭和26年法律第218号、1967年廃止)。

(注7)「外国人登録制度が発足した終戦直後は、我が国に在留していた外国人のほとんどが戦前から引き続き我が国に在留していた朝鮮半島等出身者であった(注7-1)。 その後、我が国の国際化が進み、様々な目的を持って新たに来日した外国人いわゆるニューカマーが増加した結果、我が国に在留する外国人の構成が制度発足当時とは大きく変化した」
法務省 第5次出入国管理政策懇談会Open a new window 報告書「新たな在留管理制度に関する提言」p6より(2012年3月)

(注7-1)現在の「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」(平成3年法律第71号)で定められた在留の資格「特別永住者」に相当する

(注8)在留資格別の最多(2017年)は、永住者(29.2%)、次位が特別永住者(12.9%)(前出「入管白書」Open a new window より)

市区町村が外国籍の住民について、正確な情報を保有し、居住関係等を把握するためにも、国籍や在留資格などの要件も含め、より広げた住民基本台帳制度が整備されました。(注9)
これにより、複数国籍世帯(外国人と日本人で構成する一の世帯)について、より正確に把握することが可能になり、世帯全員が記載された住民票の写し等が発行できるようになりました。
そもそも、住民基本台帳は住民に関する事務処理の基礎ですから、転入届などにより、国民健康保険など、各種行政サービスの届出の一本化が図られ、手続が簡素化されました。

(注9)総務省HP「外国人住民に係る住民基本台帳制度」Open a new window

市区町村における多文化共生社会

地域においては、外国人住民の増加に加え、多国籍化や高齢化等も進み、取り巻く状況は一層変化しています。
外国人住民を含めて生活者・地域住民として認識するという視点から、「多文化共生」の取組など、地域での国際化の推進が図られています。
総務省では、地方自治体における多文化共生施策の指針・計画の策定に資するため、ガイドライン 「地域における多文化共生推進プラン」を策定・通知し、全国の多文化共生に資する取組をまとめた「多文化共生事例集」を作成し、地域における多文化共生施策の更なる推進を図っています。(注10)

(注10)総務省国際室「多文化共生の推進に関する研究会」の開催Open a new window (2018年10月)
総務省 「多文化共生事例集~共に拓く地域の未来~」の公表Open a new window (2017年3月)
総務省HP「多文化共生の推進」Open a new window「地域における多文化共生推進プラン」Open a new window (2006年3月)

住民の外国人比率の高い市区町村では、様々な取り組みをしています。

「新宿区には現在、約4万1千人の外国人が暮らし、区民の約12%が外国人となっています。区では、こうした外国人が多く住み暮らすことを区の特性として積極的にとらえ、国籍や民族等の異なる人々が互いの文化的違いを認め、理解しあい、共に生きていく多文化共生のまちづくりを推進しています。」

新宿区HP 「多文化共生ってなぁに?」Open a new window より

「大阪市では、市域に居住する外国人は地域社会を共に構成する「外国籍住民」であるとの観点から、「大阪市外国籍住民施策基本指針」(2004年3月改定)を策定しました。」

「大阪市外国籍住民施策基本指針」についてOpen a new window

「外国人集住都市会議は、ニューカマーと呼ばれる南米日系人を中心とする外国人住民が多数居住する自治体の関係者が集まり、多文化共生への課題について考える会議です。」

外国人集住都市会議HPOpen a new window (2018年度事務局は太田市)より
「外国人集住都市会議は2001年から開催され、入国管理局からも積極的に職員が参加している。」
前出「入管白書」Open a new window 「第2部 出入国管理行政に係る主要な施策等 第8章 外国人との共生社会実現のための施策」p103より

国際人口移動の社会増

ところで、前回の「2040構想」のような、総人口や将来人口推計との関連は、どう把握すればいいのでしょうか。
そもそも、国勢調査も将来人口推計も、外国人も含めた日本に常住するすべての人が対象です。
人口変化は、自然増減(出生、死亡)と社会増減(国外からの転入、国外への転出)で、この社会増減については、「国際人口移動」と称されています。
日本の場合は、「国際人口移動(社会増減)の動向が人口の増減に与える影響は小さく、自然増減(出生―死亡)の動向によってほぼ人口の動向が決定されるという特性がある」とされています。(注11)

以下に、「将来人口推計 平成29年推計の解説」(注12)から、キーとなる要素を抜き出してみましょう。
「外国人の入国超過」 日本は、1990年代に、かつての移民送り出し国(注13)から外国人の入国超過国へ、「国際人口移動転換」を経験しました。
社会経済事象や災害等の影響で大きく変動しますが、日本への入国超過数は増加しています。
将来人口推計の水準では、年間6.9万人と長期的な設定をしています。
「日本人の出国超過」 1970年代以降、出国超過の傾向ですが、総人口の-0.00005%程度。
「国籍異動」 帰化(日本国籍の取得)による「日本人の純増」率は外国人人口の0.7%程度。
また、1990年代以降、いったん上昇した後、緩やかに減少してきています。
「外国人人口の日本人口構造への影響」 2065年(推計)には、約417万人(総人口の4.7%)と見込まれています。
これは、2015年(国勢調査)約177万人(総人口の約1.4%)の倍以上と見込まれています。
また、年齢層別では、若年層(18~34歳)での外国人の割合は、3.1%から6.9%に上昇、若年層から多国籍化が進むと見込まれています。
なお、日本人と外国人の区別は国籍によっています。帰化して日本国籍を取得した者や、両親いずれかが外国籍の者など、外国にルーツを持つ日本国籍人口は日本人として扱われるので、このような人口が日本人人口の中に一定程度存在していることにも留意が必要です。

(注11)「平成27年版厚生労働白書-人口減少社会を考える-Open a new window 第1章第1節「我が国の人口の概況」p40-41より

(注12)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」Open a new window 「平成29年推計の解説および条件付推計」(2018年3月刊行)より
なお、2015年、自然減は約29万人(死亡約129万人-出生約100万人)で、社会増は約11万人でした。自然減の約38%が、この社会増で「埋められた」ことになります。

(注13)明治以降1945年以前、北米へ約40万人など約70万人、1945年以降、米へ約13万人など約26万人が、「永住」旅券相当等を発行されています。
国勢協力事業団JICA「海外移住統計」1991年Open a new window ほか 外務省統計等による)

短期滞在者も同様に必要な災害対策

さて、住民である中長期在留者以外の、短期滞在者、旅行者などの外国人について考えてみましょう。
政府は、訪日外国人旅行者数が約2000万人を超えたことを受けて、「訪日外国人旅行者数を2020年に4,000万人、2030年に6,000万人」という目標を発表しました。(注14)

(注14)「外国人旅行者数836万人(2012年)が1974万人(2015年)に、訪日外国人旅行消費額は、1兆846億円(2012年)が 3兆4771億円(2015年)に」
国土交通省観光庁「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定しました!」Open a new window (2016年3月)
国土交通省観光庁HP「訪日外国人旅行者の受入環境整備」Open a new window より

この中で、次のようなことが謳われています。

  • 多言語対応の強化:美術館・博物館、自然公園、観光地、道路、交通機関等で、共通ガイドラインを策定
  • 無料公衆無線LAN整備促進協議会Open a new window:総務省と連携して設置、共通シンボルマーク「Japan.Free Wi-Fi」を策定
  • 観光のICT化の推進:ICTを活用した訪日外国人旅行者受入環境整備事例を紹介

ただし、直近では2018年夏の豪雨や台風や地震など、相次ぐ自然災害により、大きな影響がありました。
とくに、台風や地震による国際空港や公共交通機関の停止など、非常時の外国人旅行者の安全・安心確保のための緊急対策が大きな課題になりました。
「災害等の非常時においても外国人旅行者が安心して日本を旅行できるよう、コールセンターの24時間の多言語対応体制の確立など、様々な場面における外国人旅行者の情報入手手段の多重化を図る。」

首相官邸 観光戦略実行推進会議(第24回)(平成30年北海道胆振東部地震及び平成30年台風第21号に関する関係閣僚会議との合同会議として開催)Open a new window(2018年9月)

この災害時の対応などは、在留者も旅行者も差はありません。
「訪日外国人旅行者数の早期回復及び2020年4,000万人等の目標達成に向けた対策について」の検討で、総務省が「外国人受入対応が必要なところ(代表例)」を整理しています。(注15)

  1. 在留外国人+訪日外国人の対応:出入国(税関、出入国管理、検疫)、非常時(警察、消防、避難所)、医療(病院・診療所、大学病院)、移動(空港、鉄道、バス、タクシー)
  2. 主に訪日外国人対応:観光(観光施設、体験施設、物販店、飲食店)、宿泊(宿泊施設)
  3. 主に在留外国人対応:教育(学校、対保護者)、手続(地公体、ハローワーク、労基署)

(注15)総務省資料「観光関連施策」観光戦略実行推進会議(第26回)Open a new window (2018年11月)
議題は「訪日外国人旅行者数の早期回復及び2020年4,000万人等の目標達成に向けた対策について」

災害時の連絡等について、さまざまな検討が行われています。一部を紹介しておきます。
「地方公共団体における災害時の円滑な外国人対応に向けた、関係者間の連携や中核的な人材の育成、多言語情報提供のあり方、日常的な取組の重要性等について、検討が行われ、報告書を取りまとめました」

総務省 「多文化共生の推進に関する研究会」報告書-災害時のより円滑な外国人住民対応に向けて-Open a new window (2013年1月)

「外国人旅行者向け災害時情報提供アプリ「Safety tips」(注16)について、熊本地震をはじめ、昨今多く発生している大規模な地震等もふまえ、外国人旅行者がさらに安心して日本国内をご旅行いただけるようアプリの機能を大幅に向上しました」

観光庁「外国人旅行者向け災害時情報提供アプリ「Safety tips」を大幅に機能向上しました!」Open a new window (2017年3月)

(注16)「Safety tips」とは、自然災害の多い日本において訪日外国人旅行者が安心して旅行できるよう、2014年10月から提供を開始した、観光庁監修の外国人旅行者向け災害時情報提供アプリ。対応言語は5言語(英・中(簡体/繁体)・韓・日)。緊急地震速報、津波警報、気象特別警報、噴火速報をプッシュ型で通知できる他、周囲の状況に照らした避難行動を示した対応フローチャート、周りの人から情報を取るためのコミュニケーションカード、災害時の情報を収集できるリンク集等を提供。2018年3月からは総務省消防庁のJアラート配信の国民保護情報も配信。

「近年急増する訪日外国人や在住外国人等への災害時の情報伝達の環境を整備するため、「情報難民ゼロプロジェクト」の中で、避難所等における外国人被災者への情報伝達の支援を担う人材について、「災害時外国人支援情報コーディネーター制度に関する検討会」を開催、検討結果をまとめ、報告書を作成しました」

総務省 災害時外国人支援情報コーディネーター制度に関する検討会報告書Open a new window (2018年3月)

「外国人旅行者や外国人住民が地震や津波、台風、豪雨等の災害に遭遇したときに情報から孤立しないよう、伝わるべき情報を正確、迅速、的確に伝えられる仕組み(プラットフォーム)を構築し、実証を開始して社会実装を目指します」

総務省 近畿総合通信局「外国人への災害情報提供プラットフォームの実証を開始」Open a new window (2018年11月27日報道発表)

なお、マイナンバー制度を活用した「災害対策」の利活用については、マイナンバー制度を活用し、「どこでも安心して充実した支援が受けられる、被災者に寄り添った生活再建」の実現に向けて、「災害対策・生活再建支援タスクフォース 中間とりまとめ」(注17)が公開されています。このとりまとめの最後の文章を抜粋しておきます。

「既に導入又は実証された事例を参考に他の地域での展開も念頭に置きつつ、今後はこれら技術や既存の制度を上手に組み合わせ、災害時に効果的に作用できるよう、社会実装の実現に向けた検討や活動が求められる。なお、これら検討や活動に関する今後のスケジュールについては、平成 28 年度中に定めることとする。」

(注17)IT総合戦略本部)新戦略推進専門調査会分科会)災害対策・生活再建支援タスクフォースOpen a new window (2016年9月)

富士通の取組

災害対策については、ICTの活用が必須です。
先日(2018年12月9日)、川崎臨海部で行われた川崎市津波避難訓練で実証事業を行った、ICTを活用した、被害軽減のためのプロジェクト を紹介しておきます。

国立大学法人東北大学災害科学国際研究所、国立大学法人東京大学地震研究所、川崎市、富士通株式会社
川崎市においてICT活用による津波被害軽減に向けた共同プロジェクトを開始Open a new window (2017年11月24日プレスリリース)
「より安全な津波避難に向けたICT活用の実証実験を実施」Open a new window (2018年10月30日プレスリリース)

富士通は、さまざまな取り組みを進め、デジタル社会への変革を進めていきます。
ひきつづき、今後の動向を注視していきましょう。

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