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八木橋ゼミナール 第5回 「マイナポータルの動向と活用」

今回のテーマは「マイナポータル」。
2017年1月から、マイナンバーカードの公的個人認証サービス(JPKI)を使い、本人確認をして使う「ポータルサイト」のサービスが始まりました。
「マイナンバー制度の利活用」で、「マイナポータル」は前回、第4回ゼミの「公的個人認証サービス」に続くもう一つの大きなポイントです。
「マイナポータル」は、番号法が規定している「アクセスログ」の開示の機能などの「法定機能」からサービスが開始され、「便利機能」として、提供する範囲の拡充、具現化が進んでいます。
マイナンバーの利用事務の範囲に限らず、本人認証の要らない、広義の行政手続、官民間取引の利活用に順次、拡大しようとしてきています。
以下、こうした「拡張」の経緯も含め、紹介していきましょう。

2017年2月28日掲載

「情報提供ネットワークシステム」

番号制度で、2017年7月から動き出す「情報提供ネットワークシステム」(以下、情報提供NWSと略します)。
この情報提供NWSには番号法(注1)で規定された行政機関等が接続され、各行政機関ごとに暗号化され付設された「機関別符号」を使い、情報提供NWSを経由することにより、各機関間で情報が紐づけられ、情報の照会・提供が行われます。

(注1) 「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年5月31日法律第27号)」

このやり取りされる「符号付き個人情報」(特定個人情報)について、情報提供NWSでの「アクセスの記録」を保持するよう定められています。(注2)

(注2) 番号法23条[情報提供等の記録]「特定個人情報の提供の求め又は提供があったときは、規定する事項(情報照会者及び情報提供者の名称、提供の求めの日時及び提供の日時、特定個人情報の項目、ほか省令で定める事項)を情報提供NWSに記録し、保存しなければならない。」(部分要約)

なお、情報提供NWSの稼働は「国の機関間の連携から開始」の2017年1月の予定でしたが、2014年5月の日本年金機構の事案(注3)でその稼働が延期になり(2016年11月に政令で解除されました)、「地方公共団体等の連携」と同時の2017年7月からの「本格運用開始」の時となりました。

(注3) 第1回ゼミ「自治体の情報セキュリティ強化」参照

年金関係では、年金の通知や「ねんきんネット」との連携、年金の納付関連等の様々なサービスで「マイナポータル」の「便利機能」である「電子私書箱」や「電子納付」等の諸機能を活用する計画がありましたから、「マイナポータル」の稼働にもこの延期の影響がうかがえます。

「情報提供等記録開示システム」

この情報提供NWSのアクセス記録について、番号法の附則で以下のように「情報提供等記録開示システム」が定義され、追加・拡充していくよう、明記されています。(以下、附則各項の部分要約)

  • 「情報提供等記録開示システム」を設置し、年齢、身体的な条件その他の要因も配慮し、その活用を図る。(6条3項)
  • システムの設置後、適時に、国民の利便性の観点から、民間の活用を視野に入れ、システムを利用して以下の手続・行為を行うこと 及び 使用する者の本人確認を当該手続・行為に応じ簡易にすること について検討し措置する。(6条4項)

このシステムでは、以下の4つの機能が規定されています。

  • 機能1 「情報提供等記録開示システム」
    第23条(前述)で規定する記録された特定個人情報について、開示の請求を行い、及び 総務大臣がその者に通知を行うために設置し、運用される電子情報処理組織(6条3項)
  • 機能2 「自己情報表示
    法律又は条例の規定による個人情報の開示に関する手続(6条4項1号)
  • 機能3 「お知らせ機能」(以前の表現では「プッシュ型サービス」)
    個人番号利用事務実施者が、本人に対し、個人番号利用事務に関して 本人が希望し 又は 本人の利益になると認められる 情報を提供する(6条4項2号)
  • 機能4 「ワンストップサービス」
    同一の事項が記載された複数の書面を個人番号利用事務実施者に提出する場合、一の書面への記載事項が他の書面に複写され、一又は複数の利用事務実施者に対し一の手続により提出される(6条4項3号)

「マイポータル」と「マイガバメント」

上記の4つの機能は、当初の説明では、以下の2種に整理、命名、説明されていました。(注4)

  • 「マイポータル(仮称)」[機能1と2]厳格な本人確認を公的個人認証サービスで行う「情報提供等記録開示システム」
  • 「マイガバメント(仮称)」[機能3(プッシュ型)と機能4]「情報提供等記録開示システム」の機能を拡大し、官民のオンラインサービスを、本人確認の連携等によりシームレスに利用し、電子的に完結させることを可能とする

この後段の2機能(プッシュ型とワンストップ)の対象分野と対象者については、「番号利用事務」の限定でなく、民間も含めた広い範囲になること、プッシュ型での「利用者のニーズ」においては対象者が限定不要なケースもあること 等の想定がされていました。

(注4) 「世界最先端IT国家創造宣言」2014年6月24日改定版Open a new window 本文(P20-21)/工程表(P73-75)
本文「3. 公共サービスがワンストップで誰でもどこでもいつでも受けられる社会の実現(1)利便性の高い電子行政サービスの提供Open a new window(435KB)」

「マイナポータル」

この後、「マイポータル」と「マイガバメント」が統合されて、「マイナポータル」が登場します。(注5)

(注5) 内閣府 甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨(2015年4月3日)Open a new window

これ以降、「マイナポータル」の説明は、「法定機能(3機能)」と「便利機能(ワンストップサービス ほか)」の構成になります。
従前の「プッシュ型サービス」については、「法定機能」の範囲に限定され、番号利用事務において、公的個人認証サービスを利用し、マイナポータルに登録した人へ、行政機関等から通知をする「お知らせ機能」となりました。
本来の「プッシュ型サービス」で目指すところの「社会保障サービスにおける申請主義からプッシュ型への変換」(注6)に向けては、行政からの「適切な情報提供」が求められていますから、「通知」だけでなく、より広義の多様な「お知らせサービス」(いわゆる広報、周知、助言など)の具現化や環境整備が必要と思われます。
この辺りは、現場に目線をおいた、地方公共団体での様々な取組が期待されていくところです。

(注6) 総務省「個人番号を活用した今後の行政サービスのあり方に関する研究会(第3回)Open a new window 資料3「マイ・ポータル/マイ・ガバメントについて」」

全体での「マイナポータル」の機能は、より拡張され、電子私書箱、ワンストップサービス、テレビ・スマートフォン等の多様なアクセス、電子決済、官民連携、等々 より広い範囲が「便利機能」と称され、順次実現と宣言されました。(注7)

(注7) 「世界最先端IT国家創造宣言」2015年6月30日改定版Open a new window 本文(P27)/工程表(P103)
本文「4. ITを利活用した公共サービスがワンストップで受けられる社会(1) 安全・安心を前提としたマイナンバー制度の活用3 マイナポータルの構築・利活用Open a new window(632 KB)」

そして、この「ワンストップサービス」に「子育てワンストップ」がユースケースとしてクローズアップされているところです。

「電子私書箱」と「電子決済サービス」

「マイナポータル」の経緯で、法には書かれていない「便利機能」、「電子私書箱」と「電子決済」について補足します。
電子私書箱」は、過去、社会保障カード等と併せ、「国民電子私書箱」の構想など、検討されてきたサービスです。
今般、この電子私書箱のサービスが、ようやく具現化しています。日本郵便(株)が「MyPost」を開始しています。(注8, 9)

(注8) 日本郵便株式会社「「MyPost」試行サービスについて」総務省「個人番号カード・公的個人認証サービス等の利活用推進の在り方に関する懇談会 属性認証検討SWG(第3回)Open a new window」(2016年1月28日)

(注9) 日本郵便株式会社 「「MyPost」とは、日本郵便がご用意する「インターネット上の郵便受け」です。「MyPost」による配信は、現在、一部の差出人(企業・自治体等)に試行的にご利用いただいており、今後は順次サービスを拡大していく予定です。Open a new window」(2017年1月時点)

電子決済サービス」は、以前から「公金収納の電子化」として普及が図られているサービスです。
民間の決済では、クレジットカードや電子マネーでの取引が当たり前になってきていますが、公共分野では、国税を筆頭に、国民年金など、対応が進んできていますが、地方公共団体の税や料金の収納については、種別が多いこともあり、まだ普及途上です。
地方公共団体の公金収納を受託している「指定金融機関」が多く属している地方銀行協会は、次のように説明しています。

「国民経済全体の利益増進の観点から、指定金融機関を中心に地方公共団体に対して電子納付(ペイジー)やペーパーレス化(口座振替、事務処理の電子化)の働きかけを行い、各地方公共団体の合意を得つつ、地方税等の納付チャネルの多様化による納税者の利便性向上や各地方公共団体および各金融機関の事務効率化のための施策を進めております。」(注10)

(注10) 全国地方銀行協会 「「要望書」提出についてOpen a new window」(2016年6月24日)

今般、「マイナポータルを利用した地方税等の電子納付の実現」の要望書を全国銀行協会などと連名で提出しています。(注11)

(注11) 全国銀行協会 全銀協からの意見書・要望書詳細「地方税の電子納付の推進等についてOpen a new window」(2016年6月24日)

先行している地方公共団体は、既に、コンビニでの納付やATMでの納付に加え、インターネットバンキング等によるペイジー、クレジット納付など多様な手段をとって、住民の利便性向上と事務の効率化、そして納付率の向上が進むように対応してきています。
今般は未導入の地方公共団体も、この電子収納に対応できるように各団体の収納事務システムを改善・改修して、マイナポータルが用意する「電子決済サービスのメニュー」に相乗りして、電子納付の利用を推進していきましょう という動きと理解します。

「行政手続のIT化」

「マイナポータル」に関連する、その他の動向について紹介しておきます。
「マイナポータル」の具体的な活用について、社会保障制度での大きな課題である「年金保険料の納付率の向上」の観点から、「マイナンバー制度の活用等による年金保険料・税に係る利便性向上」の具体的施策が検討され、「アクションプログラム」(注12)がまとめられました。
報告書の「別紙3」の末尾に、マイナポータルの「国税・地方税・年金等に関する手続き」の画面イメージがあります。

(注12) 内閣官房 年金保険料の徴収体制強化等のための検討チームOpen a new window 「報告書」(2015年6月22日)

ここで示された「マイナポータルでの国民年金のワンクリック免除申請」などの具体的施策は、政府の「マイナンバー制度導入後のロードマップ」で、マイナポータルの欄中に記述がされています。(注13)

(注13) 内閣官房 マイナンバー 広報資料「マイナンバー制度概要資料Open a new window(4.3 MB)」(P21)

こうした「マイナポータル」の活用策は、より広く、大きくなっています。
政府の「官民データ活用基本法を踏まえた対応<行政手続・民間取引IT化関係>」で、マイナンバー制度・法人番号の「徹底活用」、「利活用の促進」が掲げられ、「官-民」「地方-民」の「行政手続の原則オンライン化」、「民間取引オンライン化促進」という動きに繋がってきています。(注14)

(注14) 首相官邸 IT総合戦略本部「データ活用基盤・課題解決分科会 規制制度改革WTOpen a new window」「規制制度改革との連携による行政手続・民間取引IT化 次期アクションプラン」の検討(2016年11月より開催)

新しいキーワードは、「デジタルファースト」「コネクテッド・ワンストップ」「ワンスオンリー原則」です。
行政手続・民間取引IT化について、今後、国民・事業者に対して、「画期的・効率的なサービス体験」を提供すべく、規制制度改革と併せIT化を推進する と検討が進行中です。

これから

まだまだ動きは続きます。大きな動向も併せて、注視していきましょう。

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