IPKNOWLEDGE公営企業会計システムを導入し、水道事業における会計業務の効率化と運用コストの圧縮に取り組む高知市水道局様を訪問。業務改善の成果、2014年度の地方公営企業会計制度改正への対応、同時に予定している下水道事業統合についてのお考えをうかがいました。
[ 2013年2月26日掲載 ]
業種 | 地方自治体 |
---|---|
ソリューション | 内部情報ソリューション |
製品 | IPKNOWLEDGE 公営企業会計システム |
高知市の水道は1925(大正14)年、鏡川を水源に創設され、以来、市域の拡大と市勢発展とともに拡張を続け、今日、計画給水人口 33万1,400人、1日最大給水量 19万5,800立方メートルの事業規模となっています。
2011年4月、同市水道局様は長年にわたりカスタマイズを重ね、使い勝手を高めてきた手組みの会計システムをIPKNOWLEDGE公営企業会計システムに一新。パッケージシステムでありながら、旧システムに匹敵する運用性を実現。会計業務のフローの一つひとつをパッケージシステムのフローに寄せる、SEとの粘り強い調整作業がカギとなりました。
1 | 検針課金業務を包括的に外部委託することになり、公営企業会計システム1本の運用では、コスト面で見合わない事が予想された |
|
IPKNOWLEDGE公営企業会計システム導入により、ホストコンピュータの年間運用コストの削減など、ICT運用コスト前提で30パーセント圧縮した |
2 | 新たな帳票が発生し科目を追加する場合など、システム要員が最大で4名の運用・改修に対応。また、年度ごとに新規着任者に対し数日間の研修を実施。専門職員に要するコストが負担になってきた |
|
新システム導入後、適用コードを入力すれば仕訳が適切になされる機能や年度替わりに伴う業務の移行作業のスムーズさなど、操作に慣れるにつれ、カスタマイズを重ねていた以前のシステムと同レベルの操作性を実感 |
3 | 2014年度に上水道事業と下水道事業が統合へ |
|
新システム導入により、上水道事業と下水道事業の両事業の会計データを容易に比較、閲覧できるため、今後の上下水道統合への対応を期待 |
基本的な機能面で大きな問題はありませんでした。一から手組みで構築した「高知市水道局仕様」ともいえるたいへん使いやすいシステムでした。しかしそのままでは運用コストが増大してしまうという課題がありました。同一のハードウェア上で料金管理システムと公営企業会計システムを運用していたわけですが、2011年1月をもって料金徴収業務を包括的に外部委託することになりました。公営企業会計システムのみの運用では、コスト面で見合わない事が予想されました。よりコンパクトなシステムでの運用が求められたのです。
高知市水道局 企画課 課長補佐
矢野 宏幸 氏
第二の課題は、専門職員に要するコストが負担になってきたことでした。手組みシステムですから、新たな帳票が発生し科目を追加する場合などシステムに修正を加える必要がありました。専門職員の手を要し、時間もかかり、最大で4名が運用・改修にあたっていました。年度替わりで新任担当者がやってきますと、まず数日間の研修を受ける必要もありました。もちろんそれだけでシステムに精通できるわけではありませんので、オン・ザ・ジョブで技能を身につけるシーンも多く、これが職員にとってはかなりの負担でした。
高知市水道局 企画課
高橋 退助 氏
業務を止めることなくスムーズにシステムを一新させる。これが最優先されるべきポイントであったことはいうまでもありません。具体的には、システム的なトラブルなく予定通りに切り替えること。そして、新システムの操作・運用に早く慣れ、従来通りに業務をこなしていくことができるかですね。
前者については、他の自治体でより多くの導入実績があるかどうかがポイントになります。後者については、徹底的に作り込まれていた以前のシステムにできるだけ近いパッケージシステムを選定することです。コストを抑えることは重要なポイントですが、操作・運用性が損なわれてはなりません。ここが難しいポイントでした。
パッケージシステムを精査していくと、業務の流れに対する思想というべきものが見えてきます。そこを見極めて、できる限り従来の業務フローの考え方に近いパッケージシステムを選定していくべきだと考えました。具体的に何を手がかりにするかは難しいところでしたが、大局と細部の視点をバランスよく取り入れることがポイントになると思われました。その結果、業務全体の特性からシステムを評価する委員と、より現場に近い視点から評価する委員からなる選定チームを編成し、それぞれの立場から各社の提案を精査しました。
業務フローの大まかな流れに合ったシステムかどうかです。公営企業会計ですから、決定した予算から意思決定へ、さらには契約業務を入れて決済という流れ、これに伴う帳票の様式が合っているかです。いくつかのパッケージシステムが候補にあがりましたが、富士通のIPKNOWLEDGE公営企業会計システムを選定しました。
第一の理由は、一般会計寄りか、あるいは公営企業会計寄りか、高知市水道局としての落としどころにうまく対応したということです。もちろん基本は公営企業会計基準に則っているわけですが、細部についてみると、市本庁の一般会計の考え方に寄った業務フローが随所にあったのです。これらのいわば「高知市水道局仕様」の一つひとつを、パッケージシステム側に寄せていく柔軟さにおいて優れていたのです。
もう一歩踏み込んでいうなら、SEの粘り強さがその柔軟性を最大限に引き出したともいえるでしょう。実際にはパッケージシステムの業務の流れと実際の現場業務の流れにちょっとしたギャップが出ることは珍しくありません。そこを埋めるには、「現場業務をこのようにアレンジすれば、スムーズにパッケージシステム寄りの流れになるのでは」という提案です。2案、3案と、いろいろな側面から提案をいただいて解決する場面もありました。うまくアレンジできたと思いましたが、他部署との関係で調整する必要が出てきた。その対応策をどうするか。パッケージシステムのスムーズな導入には、経験豊かなSEの提案力が前提になるといってもよいでしょう。
2010年7月に契約し、運用開始が2011年4月。予定通り新たなシステムでスタートを切り、翌年には決算書を出すことができ大変満足しています。カスタマイズを重ね、使い勝手に優れていた以前のシステムにどこまで近づくだろうかとの思いがありましたが、導入後、操作に慣れるにつれ、かなり近いレベルだと感じました。とくに、摘要コードを入力すれば自動的に仕訳がなされる機能は、カスタマイズを重ねていた以前のシステムと比べてまったく遜色はありません。年度替わりに伴う業務の移行作業のスムーズさも同様です。
IPKNOWLEDGEならではのメリットも感じています。システム選定の段階から「これは便利だ」と直感していましたがデータの抽出が素早く、簡単にできる機能は便利です。以前のシステムでは個々に抽出用のプログラムをつくる必要がありましたが、IPKNOWLEDGEでは、画面上のデータをクリックすればExcelデータとして抽出表示され、加工も容易です。数値としてはっきり表れている効果としては、ホストコンピュータの年間運用コスト3,000万円の削減などにより、ICT運用コスト全体で30パーセント圧縮できたことや、午前8時30分から終業時間までのシステム運用時間が、深夜のバックアップ時以外いつでも利用可能となった点などです。
下水道事業の法適化は、水の供給から処理までを統合化、窓口のワンストップ化しようと2010年3月に議会答弁していました。その時点では地方公営企業会計制度改正の詳細はまだ具体化していませんでしたので、結果的に法適化と重なった次第です。その意味で結果論になりますが、新システムを導入して正解だったと思います。
たいへん心強いのは、IPKNOWLEDGEでは上水道事業と下水道事業を同時に管理できる点です。事業を切り替えることで、それぞれの事業のデータを容易に閲覧できるのです。
下水道事業の担当者にとって、公営企業会計における仕訳は慣れない業務になるのではと心配している担当者もいるようですが、すでにIPKNOWLEDGEを運用している私たち上水道事業部門としては楽観しています。自動仕訳機能を使えば、誰が入力しても正確な会計データが生成されるからです。
当市では、地方公営企業会計制度改正への対応は、2013年度を予定しています。法改正の詳細な内容については明確になっていない部分も少なくありません。ただシステムについては、コスト面でも機能面でも、現行のIPKNOWLEDGEの範囲内で吸収していただけるので安心しています。
2014年度の制度改正時には、おそらく高知市水道局の業務に合わせた調整が必要になる部分もあるでしょうが、IPKNOWLEDGE導入時の富士通のきめ細かいサポートの実績から、スムーズに運ぶものと確信しています。
前列左より 高橋 退助 氏、矢野 宏幸 氏
後列左より 村松 健司 氏
所在地 | 高知県高知市本町5丁目1-45 |
---|---|
代表者 | 高知市長 岡崎 誠也 |
人口 | 340,176人(161,524世帯)(2012年11月1日現在) |
職員数 | 158人(2012年11月1日現在) |
ホームページ | http://www.city.kochi.kochi.jp/ |
高知市のご紹介 |
四国の中南部に位置する高知市は、土佐藩の城下町として発展し、幕末から明治期には、かの坂本龍馬をはじめ、中江兆民、板垣退助ら多くの偉人を輩出しました。1889(明治22)年4月に市制を施行、昭和初期には戦災や南海大地震で大きな被害を受けましたが、市民の献身的な努力で、新しい町づくりにも成功しました。 その後多くの町村を編入し、1998年には中核都市に。現在では市域面積309.22平方キロメートル、人口約34万人(2012年11月現在)となり、四国中南部の中心的都市の役割を担っています。また、2004年からは、パブリックコメント制度を施行。基本計画や条例策定の際には市民から多くの意見を募集し、市政に反映しています。 毎年夏に行われる「よさこい祭り」は、今や国内のみならず世界にも広がりをみせ、「元祖よさこい」として有名です。また“カツオのたたき”と言えばすぐに高知の名が思い出されるように、他県を圧倒する漁獲量を誇ります。初代藩主山内一豊の高知城、悲恋の舞台はりまや橋、龍馬の銅像のある桂浜など、多くの観光名所にも恵まれています。 |
本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。