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Fujitsu

Japan

VPS 導入事例

2016年1月

株式会社島根富士通 様


ジャストインタイムと自働化をキーに、VPSとGP4を活用した生産革新とIoTを推進。
-生産性・スペース効率アップ、歩留まり・リードタイムの大幅な改善を実現-

株式会社島根富士通(以下:島根富士通)は、縁結びの神として知られる『出雲大社』や、ヤマタノオロチ退治の英雄・須佐之男命を祀った『須佐神社』などを擁する『神話の国』出雲に位置している。同社は、1台ずつ顧客の仕様に合わせたBTO(Build to Order)でノートPCやタブレットPCを供給し、年間200万台を生産する日本最大級のPC工場だ。「日本品質=Made in Japan」にこだわる同社は、VPSの活用で開発~生産~出荷までの連携体制を確立。さらにGP4を組み合わせることで、工場のレイアウトや生産ラインの検証~最適化を推進し、スパイラルな改善活動で大きな成果を上げている。

導入事例キーワード
設計品:
PC、タブレット
ソリューション:
PLMソリューション
製品:
VPS(DMU,MFG,GP4)

トヨタ方式のカイゼンをICTで加速させ3Dデータに基づいた生産方式の転換を推進

吾郷 純 様吾郷 純 様
株式会社島根富士通
ITシステム技術部 部長
(兼)サービスビジネス事業部 部員

廣野 慎一 様 廣野 慎一 様
株式会社島根富士通
生産技術部 主任

島根富士通が生産プロセスにもVPSを活用し始めて、すでに10年になる。ITシステム技術部 部長の吾郷純氏は、その経緯をこう語る。

「当社の開発部門では早い時期からVPSを導入し、3D-CADデータを活用した設計の精度アップや効率化を図ってきました。そこで同じツールを使って、3Dデータをものづくりの視点からも積極的に活用していこうと考え、2006年に生産部門へのVPS活用を開始しました」

同社はこれと同時期に、トヨタ生産方式を基盤にICTを駆使した「富士通生産方式(FJPS)」に取り組み、ジャストインタイムと自働化をキーとした生産革新をスタートした。それ以前のプロセスは工程が複雑に交錯していた上に、前工程から後工程へと順次押していく『プッシュ型』の生産方式がとられていた。そのため各工程間に隙間が生じ、そこに仕掛かりが滞留しがちだったのである。

「そこで在庫を持たず、カンバン方式で後工程が前工程に対して、『必要なもの』を『必要なとき』に『必要なだけ』要求するジャストインタイムの『後工程引取り型』に変更。さらに整流化を進めて、ものづくりの円滑な流れを築くことを目指したのです」(吾郷氏)


GP4の導入で生産現場の省スペース化と効率アップを実現

島根富士通では以上の成果を踏まえながら、生産現場の機械・設備や人の配置、ライン構成、さらに作業動線や作業姿勢などの工程設計の精度を高めたいと構想。そのためのシステムとして2012年にGP4を導入し、積極的な活用を進めてきた。

同社の工場は1 階がプリント基板製造ライン、2階が組立ラインとなっている。1階のプリント基板工程は、表面実装~裏面実装~加工~検査に至るまで、人の手を介さない全自動一環ラインだ。検査用のCPUやメモリの脱着や試験用OSによる機能性チェック、基板を切り離すルーター装置への基板セットや切断後の各ボードのトレイへの分配や搬送なども、全てロボットで自動化されている。

そして2階の組立工程では、GP4を用いて工場全体の物流動線の検討が進められた。BTO生産を行う同社の製品の約90%は法人からのオーダーで、それぞれ構成やスペック、設定が異なる。その中でスムーズな部品供給を図るために、部品棚の配置の最適化や作業動線の短縮も重要な要因だったのだ。

「以前は1周270m歩かなければならなかったのですが、GP4による検証で170mに短縮。人員も1名減らすことができました。1名といっても、20ラインあれば合計20名になるのですから、非常に大きな省力化です」(廣野氏)

また、今まで製品の緩衝材は、業者が組み立てた状態で納入していた。しかし、かさばることから、その保管スペースや運送頻度も頭の痛い問題だったのである。そこで箱の設計を自社で行い、自動組立機を内製し、自社工場内に移行した。サプライヤーからは平板を納入してもらい、必要に応じて現場で組み立てる体制に変更したのである。

「GP4上で、組立機や平板や組立後の箱の配置、作業動線などを検証。搬送もAGV(Automatic Guided Vehicle:自動搬送車)の活用を図りました。その結果、搬送効率が大幅に改善し、人員も一名削減できることが事前に確認できました」(吾郷氏)

さらに、箱はパレットへの積載性などを考慮して、高さなどの共通化を図ったおかげで、搬送効率も大きく向上した。

GP4の導入で生産現場の省スペース化と効率アップを実現

ライン検証/作業検証
GP4はレイアウト検討や作業動線評価などのライン検証を中心に活用している。作業姿勢評価や作業視野評価など作業検証にも取り組みを開始している。


ICTと改善努力の積み上げでポジティブ・スパイラルへ変革

同社では、新規作業者の事前トレーニングのために、組立ラインのある2階の一角に『訓練道場』を用意している。

「ここでは、まずVPSでラインの全体像を見せて、製品が組み上がる全貌を把握してもらいます。以前は新人採用~現場の配属まで3~4日を要していましたが、VPSの組立アニメーションの活用で、ライン投入までのアイドル期間が半減しました」(廣野氏)

組立ラインの中でコンベアが各自の作業領域を流れているのは、1分弱。その間におよそ10工程の仕事を終え、さらに次の工程へと引き継がなければならない。

「各自の作業量は1分弱ぎりぎりに設定してあり、お助け要員を呼ぶヘルプボタンが押されるケースは少なくありません。そこで『何故、時間内に終了できなかったのか』を検証し、作業手順やラインのあり方を再考し、改善のポジティブ・スパイラルを回していくのです」(吾郷氏)

ICTと改善努力の積み上げでポジティブ・スパイラルへ変革
生産準備工程では従来の2D-CAD平面図に代わりVPSデータを活用した組み立て手順書が導入され、手順書の作成工数が30%削減された。


確実な数値的実績がVPSとGP4の導入効果を物語る

島根富士通では、10年間におよぶシミュレーション活用と生産革新の結果、コストの半減に成功した。

「生産性は約30%向上しました。しかも、製品付加価値に直結する工程の複雑化や難易度もアップしていますので、実質的な生産性は50%近く向上したと実感しています」(吾郷氏)

「おかげさまで歩留まりも向上しており、組立工程の不良発生率は半減。プリント板では1/10になり、リードタイムも1/5になりました」(廣野氏)

工場のスペース効率も、レイアウトの工夫や部品在庫のシェイプアップ施策などが功を奏し、ラインやストックヤードなどの占有面積も約30%削減に成功。さらに外部に借りていた倉庫も不要になり、賃貸料などの直接的なコストとともに、管理負荷など数値化できないロスコストを合わせれば、さらに大きな削減効果が生まれている。

島根富士通は「ものづくりは、人づくりである」を会社方針に掲げICTを導入するだけでなく、その後の維持管理や運用の中で生まれた問題意識を次の改善要因として活かす姿勢を大切にしている。

「各自が改善意識を持つことで技術力や現場力が育ち、それぞれがものづくりを支える人材になっていくのです」(吾郷氏)

また、廣野氏はGP4のさらなる活用を図るために、以下の提案をしてくれた。

「これからも、私たち自身が富士通の活動を具現化するモデル工場として、役割を果たしていきたいと考えています。そこで、IoTの強化を図る意味からも、機器や装置など実際のエレメントをそのままの形状でGP4に取り込んだり、センシングなどで、現実の人の動きや動線を反映させたりなど、より自在なリアルとバーチャルの連携を進めて欲しいですね」

島根富士通では、これらの生産革新活動の成果を元に、製造受託やコンサルティング、デジタルピッキングシステムの提供など、ソリューションプロバイダとしての側面も拡大。富士通グループ内外を問わず、日本の製造業全体の国内回帰に寄与すべく取り組みを進めている。

確実な数値的実績がVPSとGP4の導入効果を物語る
ピッキング作業ではRFIDで棚アドレスと照合し、正確さとスピードの両立を実現。さらに付属品のピッキングと箱詰めはロボット活用による自働化に取り組んでいる。

【会社概要】

社名:株式会社島根富士通

  • 本社:〒699-0504 島根県出雲市斐川町三絡1180番6
  • 会社設立:1989年12月
  • 従業員数:612名(2015年10月現在)
  • 概要:PCタブレット製造、設計・生産受託サービス