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Fujitsu

Japan

VPS 導入事例

株式会社デンソーウェーブ 様


実デバイスを接続してタイミングを検証
設備設計シミュレーションを高精度化

ロボットや自動認識機器に強みを持つデンソーウェーブは、設備のライフサイクル全体における3次元CADとシミュレーション活用の第一歩として、実デバイスを融合した設備シミュレーション環境の構築に着手。産業機器用の標準通信ミドルウェア「ORiN」と富士通の3次元仮想設計支援シミュレータ「VPS」を組み合わせることにより、実デバイスの動作結果に基づいて正確なタイミング検証を行える設備シミュレーションの実証実験に成功した。このシミュレーションではロボットプログラムやラダープログラムの検証も併せて行えるので、手戻りの抑制や期間短縮にも大きな効果が期待できる。

導入事例キーワード
設計品: 産業用ロボット、自動認識機器、プログラマブルコントローラ等の機器およびシステムの開発、製造、販売
ソリューション:
PLMソリューション
製品:
VPS

犬飼 利宏 様 犬飼 利宏 様
株式会社デンソーウェーブ
制御システム事業部
ロボット開発部 開発1室 主幹

東京都港区に本社、愛知県刈谷市に主要な事業所を置くデンソーウェーブは、産業用ロボット、自動認識機器、プログラマブルコントローラ(PLC)などを手がける産業機器メーカーとして知られる。カメラ付き携帯電話からのWebアクセス用に普及している2次元コード「QRコード」の特許権と商標権を所有しているのも同社だ。

このような背景を持つデンソーウェーブは、ロボットとPLCを組み合わせた設備の設計・製作を手がけることも多い。「ただし、コスト面から、そうした設備作りにシミュレーションへの適用はあまり進んでいませんでした」と振り返るのは、デンソーウェーブでロボットの開発に取り組む犬飼利宏様。設備は一品物の性格が強いため、導入コストの回収が難しいのである。

しかし、設備のライフサイクルは製品に比べて長く、何十年にもわたってメンテナンスが行われる。設備設計が完了した後も、メカ設計者、電気設計者、ラダーやロボット言語のプログラマー、運用や保守の担当者など、多くの人がかかわることも特長だ。「ライフサイクル全体で3次元CADとシミュレーションを活用することによって、その人たちの作業を支援する――。その最初の一歩に設備シミュレーションを位置付けることにより、導入効果を十分に引き出せると考えました」と、犬飼様は話す。


正確なタイミング検証を目指し実デバイスをモデルに組み込む

正確なタイミング検証を目指し実デバイスをモデルに組み込む 左:デンソーウェーブの6軸垂直多関節ロボット「VS-G シリーズ」。自動車部品製造を始めとする多くの製造ライン/ セルに採用されている
右:デンソーウェーブから販売されている「ORiN 2SDK for Windows」のパッケージ

一般論としては、設計の段階でシミュレーションを行うことにより、「手戻り時間を短縮する」「手戻り回数を減らす」といった効果が期待できるとされている。

しかし、ロボットを核とする設備の設計では、シミュレーションによる効果には一定の限界があった。それは、タイミングの検証が重要な部分を占めるにもかかわらず、従来の設備シミュレーションツールでは、ステージごとの時間を固定的にしか扱えなかったからである。「理論値に基づく"きれいな"タイミングチャートを作成しても、ロボットやPLCのプログラムを実際に作るとサイクルタイムはぶれてしまうものです。その結果、設備がシミュレーション通りに動かず、設計のやり直しを迫られることも頻繁に発生します」と、犬飼様は話す。

この問題を解決するには、外界にある実デバイスとシミュレータが直接連携できるようにすることだ。そのためのツールとして犬飼様が選んだのは、産業機器用の標準通信ミドルウェア「ORiN」(Open Resource interface for the Network)と富士通の3次元仮想設計支援シミュレータ「VPS」(Virtual Product Simulator)の組み合わせだった。


ORiNに接続された実デバイスを 「VPS/IOConnector」経由でつなぐ

ORiNは制御系ミドルウェアの一種で、ロボットやFA機器に対して監視と制御の両方の機能を提供できるという特長を持つ。
接続されているデバイス間では、状態や変数値の読み書きに加えて、制御プログラムの交換も可能だ。デンソーウェーブはORiNの規格策定にも深くかかわっており、SDK(Software Development Kit)の販売も行っている。

また、VPSには制御系ソフトウェア開発を支援するためのオプションモジュール「VPS/IOConnector」が用意されており、ユーザー側でインタフェースモジュールを開発すれば、原理的にはあらゆる実デバイスとの連携が可能だ。「ORiNとの接続が容易だったことも、VPSを選んだ理由の1つです」と、犬飼様は話す。

「実デバイスを融合した設備シミュレーション環境」の実証実験は、次のようなシステムで構成した。VPSを組み込んだコンピュータ、ロボット、QRコードリーダなどはORiNに接続され、相互に論理デバイスとして認識できる。ロボットコントローラ内のプログラムによって計算された関節値は、「VPS Provider」(デンソーウェーブが開発したユーザーモジュール)を通じてVPSに取り込まれ、実デバイスがVPSの模擬動作に直接関与することを可能にしている。

ORiNに接続された実デバイスを 「VPS/IOConnector」経由でつなぐ

「ORiN」と富士通「VPS」の組み合わせで構成された設備シミュレーション環境


シミュレーション精度が向上し試作回数も手戻りも削減できた

「設備を製作する人が真に欲しているのは、ロボットやPLCなど実デバイス用のプログラム。そのプログラムを設計段階で検証できるようになった結果、シミュレーション精度が向上し、設備作りの手間と時間を削減できるようになりました」

実デバイス融合型の設備シミュレーション環境のもたらす効果を、犬飼様はこのようにまとめる。また、設備作りにかかわる人々の間でシミュレーションに対する信頼度が高まるにつれて、「手戻り時間の短縮」「手戻り回数の削減」といった仮想検証の本来の効果も期待できる。

このシミュレーション環境の肝となるVPS Providerは、現在、ORiN 2 SDK for Windowsにサンプルモジュールとして添付されている。単体のロボットだけでなく、それを核とする設備設計のシミュレーションにおいても、デンソーウェーブは日本の産業界をリードし続けていく。

【会社概要】

株式会社デンソーウェーブ

  • 本社:東京都港区虎ノ門4-2-12
  • 刈谷事業所:愛知県刈谷市昭和町1-1
  • 設立:1976年6月/2001年10月(現商号)
  • 資本金:4億9,500万円
  • 従業員:617名(2008年3月31日現在)
  • 事業内容:
    デンソーグループにおいて産業機器事業を担当。産業用ロボット、自動認識機器、プログラマブルコントローラ等の機器およびシステムの開発、製造、販売に携わる。2次元コード「QRコード」の生みの親としても知られる。