VPSは、ものづくりの全ての場面でご活用いただける製品です。今回は、VPSを「設計部門」「生産技術」「製造部門」「保守部門」で活用した事例です。
富士通の課題 | プリンタ製品開発 | ノートパソコン開発 | 大規模サーバ製品 | 光磁気ディスク装置 その他 | 導入効果 ~約80%の不具合が出図前に検出~
市場変化が激しく、今までの開発では間に合わないというような事や、設計したものの、開発が遅れたために発売できない商品があるなどの問題点を、新製品の早期投入を行うことによって設計データを有効利用し、開発期間の大幅な短縮を目指します。
プリンタ製品の開発は、3次元CADを初めて本格的かつ全面的に製品開発に活用しました。これまで、応力解析、熱解析など解析シミュレーションによる検証は、数年前から実施してきたが、解析用の3次元モデルは概念形状であり、製品形状とは異なっており、試作品での検証に近いシミュレーションができるツールが待ち望まれていました。
設計 | 組立・保守性の検討が十分でなく、出図後の手戻りが多い。 |
生産技術 | 試作機は印字品質など機能的な検証が中心となるため、組立指示書などには充分な時間をかけられない。 |
保守 | 保守性の検討に十分な時間が取れない。 |
3次元CADとVPSを併用することで、タイトな開発期間を遵守できた。通常、試作機1号機は部品が干渉しあうなどの障害から改造を余儀なくさせられる場合が多い。中には部品加工だけでは済まず、やむなく部品製造のやりなおしになる場合もありました。今回、VPSを活用し、徹底的に検証を繰り返した結果、本装置について再製作の部品もなく、数日での初期立ち上げ(通常は数十日)を実現できています。
ノートパソコンは、装置の高密度化に伴なう熱対策、環境対策など大きな課題を抱えている。特にボリュームビジネスでは、如何に少ない工数で組立てられるか、如何に地球環境への負荷を少なくするかが焦点となっています。また、製品化前の早い段階で、商品のイメージを関連部門に掴んでもらうための製品保守マニュアルや製品マニュアルの整備が重要。
設計 | 製品の高密度化に伴い、隙間チェックに時間がかかる。 |
環境 | 充分な環境対応の時間がとりにくい。 |
断面検討、ウォークスルー(「部品カメラ」機能を使った空間移動)による製品の細部に渡る構造の確認を実施。
VPS/EcoDesignによるライフサイクルアセスメント(LCA)評価およびリサイクル率の検証を実施。
製品の開発期間の短縮と、これまで数週間を要していた環境対応に関する評価を、わずか3日に短縮できています。
部品点数が数万点と多い大型サーバのような製品開発では、3次元CAD上においてモデルの回転・移動を行うだけでも相当な時間がかかるため、十分なDRを行えないのが錫情。
設計 | 製品データが大きく、ユニット間の検証が難しい。 |
生産技術 | 組立手順書作成が前倒しできない。 |
製造 | 作業者への教育を短縮したい。 |
保守 | 保守作業が円滑に行えるか検討したい。 |
従来、3次元CADではデータが大きすぎたため、検証に膨大な時間とストレスのかかった作業をスムーズに進めることができるようになりました。組立工場における作業者への教育が、従来に比べて1/5の日数で完了しています。
VPSの組立指示作成機能を製品適用
適用効果:従来約10日要していた指示書作成が約3日に短縮
ヘッドの動作機構に連動した断面図をVRで参照した構造検討例
アミューズメントセンタに設置されているコインで音楽をダウンロードする端末(図-7)。VR上でバーチャルヒューマンによる徹底的な操作性検証を実施。
製品の組立装置や試験装置も3D-CADで開発することが多い。装置内ユニットの機構動作検証で、部品にバーチャルで取り付けたカメラ(部品カメラ)は、安全性を確認する上で大いに役立っている。
富士通社内では、VPSを広く活用しています。従来の設計工程では、「出図」後に設計の問題が多く発見されており、後工程から設計工程への差し戻しがたいへん多くなっていました。この繰り返しにより工程全体の流れに悪循環が生まれ、製品の開発完了までの期間が長くなっていました。
富士通では、VPSの活用により設計工程中のモデルを使った各種検証、徹底したDRの実施により、後工程での問題検出を大幅に改善しています。 現在では、約80%の不具合が出図前に検出できており、開発期間の大幅な短縮を実現しています。
すでに一般化した3次元CADの活用を、今後より一層加速するためには、今回紹介したVPSのようなVR技術による検証が必須となっています。しかし、ツール(ソフトウェア)単体により完全な効果が出せるものではなく、企画~設計~製造~販売~保守など、関連する部門が一体となり、シームレスで徹底した検証が行える開発体制を築き上げてこそ、競争力と収益を創出できるものと考えています。富士通ではこの理念に基づき、以下の3点を社内で推進しています。
富士通では、今後もVPSを核とした、VR環境での製品開発をより一層推進し、新しい業務フローによるより一層の効率化と品質の向上を図っていきます。