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導入事例 独立行政法人 国立病院機構 長崎医療センター様

災害時でも診療を止めないクラウドサービスによるデータ運用

  HumanBridge BCP ソリューションを活用したバックアップ対策

木村 博典 氏

木村 博典 氏
独立行政法人 国立病院機構 長崎医療センター
情報管理運営部長

1986年長崎大学医学部卒業後、同大学附属病院第一内科入局。1999年から国立病院機構長崎医療センター。あじさいネット理事、地域医療ネットワーク研究会世話人を務める。専門は、医療情報学、内分泌・代謝学。最近の論文に「地域医療連携システムを臨床最前線で活かすための工夫 あじさいネットでの7年間の取り組みから」〔『医療情報学』30巻別冊(2011年)〕がある。


はじめに

  2011年3月11日に発生した東日本大震災では、地震や津波により多くの医療機関が壊滅的な被害を受け、診療業務の継続が不能となった。また、復旧作業は遅々として進まず、現地での診療業務の再開に非常に長時間を要した。この間、多くの地域からの医療支援が行われたが、診療情報が消失しているため、支援は手探り状態で行われた。そのため患者は十分な医療を受けることができず、また支援する医療スタッフにも大きな精神的ストレスを課す結果となった。長崎医療センターでは、今回の大震災をきっかけに災害時でも必要最小限の診療業務が継続できるような仕組みづくりの検討を始め、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の1つとして2012年2月末より電子カルテデータのバックアップ運用を正式にスタートした。

医療におけるBCPとクラウドサービス

  BCPとは、自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した時に、資産の損害を最小限にとどめつつ、事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平時に行っておくべき活動や緊急時の事業継続のための方法・手段などを取り決めておく計画のことである。

  緊急事態はある時突然に発生する。その時に有効な手を打つことができなければ、事業を継続することができず廃院に追い込まれる。医療においては、廃院という問題だけでなく、地域の患者の命を脅かす状況になりかねない。地域で大規模な病院が機能しない状態になれば、その地域の存続すら危うい状況となる。

  このように住民の命を預かる医療においては、その事業の継続(診療の継続)計画は非常に重要である。しかしながら、その策定は十分行われているとは言い難いのが現状である。2009年の内閣府の調査では、BCPを策定している医療機関はわずか5%であった。今回の東日本大震災でもそのことが露呈する結果となった。大震災以降、やっと日本各地の医療機関でBCPの策定が進み始めている。

  一方、医療分野におけるクラウドサービスは、2009年ごろから医療従事者の間でも知られるようになり、2010年には医療分野のクラウドサービスが提供され始めた。そのきっかけは、2010年2月1日に厚生労働省が通知した「『診療録等の保存を行う場所について』の一部改正」であった。この通知により、震災対策などの危機管理上の目的に限定されていた「民間事業者による診療録等の外部保存」が、関連ガイドラインの順守を前提条件に緩和されたのである。長崎県の地域医療連携ネットワークであるあじさいネットでも、2011年1月からクラウド型地域医療ネットワーク(HumanBridge)に移行した。

  震災後、クラウドサービスはさらに大きく注目されることになった。震災では津波によって紙カルテが失われ、患者の常用薬がわからなくなるという事態が発生した。カルテが流されたことで、カルテに記載されている個人情報が野ざらしになっているという状況も問題となった。診療情報の電子化や外部保存に対して、これまではセキュリティ上の問題や停電・通信障害時の対応などを心配する声が多かったが、震災後は、むしろ紙で手元に保管することの危険性が浮き彫りとなり、災害復旧対策としてのクラウドサービスの活用に注目が集まる結果となったのである。


図1  保障点と事業継続性から見た診療データのバックアップ
保障点と事業継続性から見た診療データのバックアップ

  診療データのバックアップをデータの保障点と事業継続性という2つの視点から見ると、図1のように大きく5つのレベルに分類される。現状のほとんどの医療機関では、LEVEL1またはLEVEL2のバックアップ対策しかとられていない。これらのレベルでは、被災直後から診療を継続することは不可能である。最もコストパフォーマンスに優れ、必要最小限の診療が継続できる現実的なレベルは、LEVEL3である。すなわち、限定された重要なデータのみを抽出し、リアルタイムにレプリケーションすることで、被災直後から診療業務を継続できるレベルである。

HumanBridge BCPソリューションのコンセプトと仕組み

  富士通が提供するHumanBridge BCPソリューションのコンセプトは、電子カルテの診療データを常に安全な状態で保管し、病院環境が復旧した際には診療データを完全な形で被災直前の状態に復元させることはもちろんであるが、さらに一歩踏み込んで、被災直後から必要最小限の診療業務を再開するために必要な診療情報を提供することができる機能を併せ持ったバックアップシステムの構築である。特に医療においては、後者の機能が非常に重要である。


図2 HumanBridge BCPソリューションの仕組み
HumanBridge BCPソリューションの仕組み
[図を拡大する]Open a new window

  HumanBridge BCPソリューションの基本コンセプトに基づいて、図2に示す ように2つの仕組みに分けて構築した。①日常診療の全データをバックアップする仕組み、②被災直後から診療を再開するための仕組みである。①については、画像を除く電子カルテおよび医事会計システムの全データをオンラインでバックアップするもので、電子カルテからバックアップサーバに書き出した情報を高度なネットワーク技術と信頼性の高いセキュリティを確保しながら、1日に1回定期的にクラウドセンターへ送信している。②については、電子カルテの情報を標準的なフォーマットであるSS-MIX(Standardized Structured Medical Information Exchange、厚生労働省電子的診療情報交換推進事業)準拠のデータ形式にして抽出し、リアルタイムにデータをクラウドセンターへ送信している。クラウドセンターは、あらゆる災害対策を装備した堅牢な構成になっており、365日ノンストップで診療データバックアップの運用管理を行っている。

  有事の際は、本システムを用いることにより、避難所や他の医療機関などからパソコンをインターネットに接続して認証を行い、医師や看護師などの医療スタッフは患者の同意を前提にしてクラウドセンターにバックアップされた被災直前までの診療データを参照することが可能となる。また、参照だけでなく、メモ機能を利用して現場での診療記録を残したり、情報を伝達したりすることが可能となる。

HumanBridge BCP ソリューションの特徴と地域医療における将来像

  HumanBridge BCPソリューションの最も大きな特徴は、被災直後からの診療業務の継続を意識してシステムを構築した点である。東日本大震災で学んだ教訓を基に、た だ単に遠隔地にデータをバックアップするだけではなく、バックアップしたデータを即座に利用できるようにしなければならないということである。そこで我々はどこからでもクラウドセンターにアクセスして電子カルテの情報を閲覧することができる地域医療ネットワーク(HumanBridge)に目をつけ、災害時には他の病院・診療所や避難所から地域医療ネットワークを経由してクラウドセンターのバックアップデータを参照する方式を考えた。世界的にも 類を見ない方式である。未曾有の災害を経験した日本ならではの智恵の結晶であると考えている。コストの問題もあるが、電子カルテ運用においては必須事項であり、今後は、電子カルテシステムの標準装備として考えなければならないような時代が来るであろう。

  また、大規模災害の場合には、地域全体の診療情報が消失してしまう可能性が考えられ、地域におけるBCPを考えておくことも重要であり、将来的には地域医療連携の一環として診療所も含めた地域全体の診療データのバックアップを考えていかなければならない。地域医療連携システムと一体化した診療データのバックアップシステムが究極の形態であろうと考える。

おわりに

  日本においては、クラウドサービスを利用した診療データの外部保存はまだスタートしたばかりであり、黎明期である。まだまだいろいろな課題が山積している状況であり、今後、これらの課題を解決しながら成長していくものと考えている。特にHumanBridge BCPソリューションは、医療におけるBCPの最も有力なツールになると期待している。

施設概要

独立行政法人国立病院機構 長崎医療センター

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