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Fujitsu

Japan

導入事例 香川県立中央病院様

香川県立中央病院外観写真

医療情報ネットワークの機能を拡張し救急患者カルテ参照システムを構築


中核病院が救急時カルテ参照の施設間協定を締結し、安全で質の高い救急医療を提供

香川県立中央病院は、県指定の救命救急センターとして、県内外から年間1万1000人超の救急患者を受け入れています。心肺停止など重症度の高い患者さんも多く救急搬送される同院では、患者本人から情報が得られないといった救急現場における課題を解決するため、既存の「かがわ医療情報ネットワークK-MIX+」を利用した救急患者のカルテ参照システムを構築し、救命救急における医療の質と安全の向上に活用しています。

  施設の背景と救急の課題 | 救急患者カルテ参照システムの概要 | システムの有用性と今後の展望

 施設の背景と救急の課題

重症度の高い患者に対応する救急医療の最後の砦

救急が増える土日・夜間の患者情報取得が課題

Q:貴院の特徴をお聞かせください。

高口 浩一 院長補佐

高口 浩一
院長補佐

高口氏:香川県は日本で最も面積が小さく、離島も含め、車や船で1時間あれば県内どこからでも当院に来ることができます。救急については、ヘリポートを設置して県内外から患者さんを受け入れており、他院で受け入れが難しい患者さんを最終的には当院で受けるなど、救急医療の最後の砦として、どのような症例にも対応する体制を整えています。

Q:従来の救急医療において、課題はありましたか。

佐々木氏:救急の場合、多くは事前の情報がない状態で診ることになります。患者さん本人がまったく話せない状態であれば、情報が完全にゼロのところから診療を始めなければなりません。
  受診したことのある医療機関に患者さんの情報を問い合わせできるといいのですが、救急搬送が多くなる土日や夜間には難しいのが実情です。平日の昼間なら、事務スタッフや主治医の先生に電話すればFAXなどで情報を送ってもらえることもありますが、お互いに手間がかかりますし、画像などの情報は見ることができませんでした。

佐々木 和浩 救命救急センター部長

佐々木 和浩
救命救急センター部長

 救急患者カルテ参照システムの概要

既存のネットワークに新機能として追加

HumanBridge の活用でマルチベンダー環境でのデータ参照を実現

Q:救急患者カルテ参照システム構築の経緯を教えてください。

篠田氏:香川県にはK-MIX()という医療情報ネットワークがありましたが、中核病院間での情報共有は困難であったため、県下16の中核病院で構成する「かがわ中核病院医療情報ネットワーク」という新たなネットワークを構築し、患者合意に基づく中核病院間での診療情報共有を行っております。各病院の電子カルテベンダーはさまざまですが、SS-MIXによりHumanBridge 経由で全病院間のデータ参照が可能になっています。
  救急を担う中核病院の間では、救急に際しても他院の持つ患者情報を見たいという要望が以前から上がっていました。その方法を検討したところ、HumanBridge の機能を拡張すれば実現可能であることがわかったため、県主催のネットワーク会合に諮り、賛同を得られたことから開発がスタートしました。

Q:救急患者カルテ参照システムの概要をお聞かせください。

高口氏:今回新たに開発した救急患者カルテ参照システムは、救命救急において必要な場合に限り、患者さんの同意に基づいた事前の開示設定を経ることなく、他施設の電子カルテの情報を参照できるようにするシステムです。命の危険がある場合には、個人情報保護より救命が優先するという法的な根拠に基づいて、そのような状況に限って情報を参照することを、賛同を得た中核病院の施設間協定として取り決めを行い、セキュリティを確保した運用方法を検討しました。

不正使用を防止するため何重もの対策を設定

Q:情報のセキュリティはどのように担保されているのでしょうか。

吉田 誠治 医療情報管理室主任

吉田 誠治
医療情報管理室主任

吉田氏:まず、救急患者カルテ参照機能を利用できる端末は救命救急センターのICカードリーダーを接続した2台の端末のみとなっております。このICカードリーダーに、救急患者カルテ参照機能を開放するための専用ICカードを認証させることで参照機能を利用することが可能になりますが、このICカードも2枚しかなく施錠された保管場所からカードを出すためには、鍵を管理している救命救急センターの看護師長に申し出て、貸し出してもらわなければなりません。カードの貸し出しと返却の履歴は、必ず管理簿に記載します。さらにシステムへのログイン権限も、必要最小限の職員にしか与えられていません。また、他施設のカルテを検索するには、「患者さんの氏名」と、「その患者さんのカルテがある医療機関名、または生年月日」の2項目と、カルテを参照する理由の入力が必要です。
  そのような手続きを経て患者さんのカルテを参照すると、相手の医療機関にはメールで自動通知されます。参照履歴もログとして残り、毎月報告を行っています。このような運用によって、なりすましや、必要のないカルテの参照を防止しています。

救急患者カルテの参照には、ICカード(→)の貸与管理やカード認証、ログイン権限など、厳重なセキュリティ対策を施しています。
救急患者カルテの参照には、ICカード()の貸与管理やカード認証、ログイン権限など、厳重なセキュリティ対策を施しています。

 システムの有用性と今後の展望

過去データとの比較や迅速な画像情報の取得で診療の質が向上

緊急連絡先などの患者プロファイルも重要

Q:救急患者カルテ参照システムの利用で、どのようなメリットがありましたか。

高口氏:他院にある情報が得られなければ、救急の受け入れ後に検査を当院でやり直すしかありません。また検査しても、その結果を過去のデータと比較することはできませんでした。これらの問題が解消されたのは、メリットだと思っています。特に心疾患などで、それまでの心電図が見られることは、診断・治療の質に大きく影響します。

吉田氏:現場の声としては、患者さんのプロファイルから緊急の連絡先がわかり、家族に連絡をとることができたという副次的なメリットも報告されています。

佐々木氏:確かに、患者さん本人から家族の連絡先を聞き出せないことは少なくありません。このシステムで連絡先がわかれば、家族と話をすることができます。患者さん本人からの情報は正確ではないことも多いので、家族から聞ける細かな情報は診察にとても役立ちます。
  もちろん、既往歴や処方歴の情報が見られるのも有用です。例えば抗凝固薬の使用がわかれば、それを念頭に置いて治療に当たれますし、併用禁忌の薬もわかります。
  また他院から紹介で搬送される場合には、これまで画像はCDに入れて患者さんと一緒に運ばれてきていたのですが、このシステムを使えば患者さんが到着する前に画像を見ておくこともできます。いずれの変化も、すべては患者さんの利益につながっていると思います。

さらなる裾野の広がりが成功へのカギ

Q:今後の展望をお聞かせください。

吉田氏:まずは、1施設でも多くの中核病院にこの取り組みに参加してもらうことが大切です。また、公開されている診療情報の範囲も施設間で異なるので、参加施設からより多くの診療情報が公開され、かつ施設間の公開範囲の差異が少なくなるよう働きかけていきたいと思います。

佐々木氏:患者さんの多くは、普段は診療所のかかりつけ医に診てもらっているので、中核病院のカルテを見てもあまり情報がないことがあります。ネットワークの裾野をもっと広げられれば、さらに有用なシステムになるだろうと期待しています。
  また当院は災害拠点病院でもありますが、大規模災害時にも、糖尿病や透析の治療が必要な患者さんだとわかれば正しく対応できます。ほかにも、身元不明の方の家族に連絡をとれる可能性があるなど、活用できると考えています。
  このシステムは、すべては患者さんのためであることを前提としたシステムです。それを理解した上で運用すれば、救命救急の現場でとても役に立つシステムですので、地域を巻き込んで導入を検討する価値があると思います。



(注)K-MIX+は「かがわ医療情報ネットワーク」の略称で、これまでの中核病院と診療所などの間で情報共有を行うK-MIXのネットワークに、中核病院間のネットワークを融合することにより、中核病院間も含めた全県的な診療情報共有を行う地域連携ネットワークです。富士通のHumanBridgeをベースに株式会社STNetのデータセンターを使用して開発・構築・運用されています。



施設概要

香川県立中央病院

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