活気づくQRコード市場、
新たなビジネスモデル創出の期待も

~ 来年の消費税率引き上げに合わせ官民一体で推進 ~

海外では、モノやサービスの購入、交通費の支払いにクレジットカードや電子マネーなど、現金を使わないキャッシュレス決済の普及が進んでいます。しかし、日本では現金への依存が根強く、普及が遅れていると指摘されています。近年、訪日外国人旅行者が増加していることもあり、政府は国内の普及率を上げる取り組みに着手。大手銀行などとともに、官民一体でキャッシュレス決済を推進する動きが急速に高まっています。日本の普及率向上の鍵として、さまざまなキャッシュレス決済の中で、今、消費者と店舗が手軽に利用できるスマートフォンを活用した「QRコード(二次元バーコード)決済」が注目されています。

日本のキャッシュレス決済は19.8%にとどまる

日本ではクレジットカードや電子マネーの利用が進んでいるとはいえ、依然として現金志向が強く、野村総合研究所の「キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識」によると、2016年のキャッシュレス決済比率は19.8%にとどまっています。海外のキャッシュレス決済比率の状況は、韓国の96.4%をはじめとして、イギリス68.7%、中国60%、オーストラリア59.1%、カナダ56.4%などで、概ね40~50%の比率です。海外に比べ日本は大幅に遅れているため、政府は2025年までに日本のキャッシュレス比率を40%に引き上げる目標を掲げています。

日本でキャッシュレス決済が普及しない主な要因として、クレジットカードやデビットカード、Felicaをベースとした決済では、専用の読み取り端末の導入コストや加盟店手数料など、店舗の負担が大きい点があります。また、キャッシュレス決済方法が乱立し、消費者にとって分かりにくく、各種の決済方法がすべての店舗や小売店で対応していない状況も普及を妨げていました。

インバウンド消費の取り込みにインフラ整備が急務

政府がキャッシュレス化を推進する背景に、インバウンド消費による経済効果への期待があります。しかし、日本はグローバルに利用できるキャッシュレス決済の方式に対応していないという問題があります。例えば、日本で利用可能な非接触決済サービスFelicaはType-F方式で、海外で主流となっているType-A/B(ISO14443)が利用できる店舗はほとんどないのが現状です。

中国では「Alipay(アリペイ)」や「WeChat Pay(ウィーチャットペイ)」が当初から決済手数料を無料化したため、これを起爆剤に屋台などにもQRコードが一気に普及し、巨大なQRコード市場を築き上げました。インバウンドの消費を取り込むには、日本はQRコードを含むグローバルに対応したキャッシュレス決済のインフラ整備が急務となっています。

導入ハードルが低いQRコード決済

QRコード決済の最大の強みは、利用者にとっての利便性の高さ、店舗側の初期導入費用の安さです。決済には2つの方式があり、1つは「コード支払い」で、支払い時に利用者がアプリにQRコードを表示し、店舗側が販売時点情報管理(POS)端末で読み取ることで完了します。認証、決済フローは従来のクレジットカードとほぼ同じです。店側が対応させるPOS端末の改修が必要ですが、新たな読み取り装置を購入する必要がありません。

もう1つは「読み取り支払い」で、支払い時に利用者は店舗が掲示したQRコードをアプリで読み取り、購入金額を入力することで決済を行います。中国などで普及しているQRコード決済とほぼ同じです。スマホアプリで画面にQRコードを表示すればよいので、端末の対応機種を問わず利用でき、利用者にとって「かざす」「読み取る」だけで支払額が銀行口座から引き落とされます。専用の端末も通信回線も不要なため、屋台のような店舗でも導入が可能で利用する店舗の裾野を広げることができます。

QRコードは、アカウントをベースにしているため、実店舗だけではなくオンライン上でも同一の決済サービスを提供することが可能です。決済サービスを提供する事業者にとって、コストをかけずに大きなネットワークを構築する手段にもなります。

消費税率引き上げが、QRコード決済の拡大を後押し

ソフトバンク、ヤフー、NTTドコモなど、大手企業によるQRコード決済サービスへの参入が相次ぎ、市場は早くも群雄割拠の大乱戦になりつつありますが、普及には利用者が使いやすいようにすることも求められます。それはQRコード規格の統一です。現在は、「コード支払い」と「読み取り支払い」で規格に違いがあるなど、各事業者が異なる規格を採用しており、このまま進むとサービスごとや店舗ごとに異なる複数のQRコードを用意する煩雑な状況が消費者の混乱を招き、普及を妨げる要因になります。

経済産業省は2018年7月、大手銀行やLINE 、楽天、ヤフー、NTTドコモ、ソフトバンクなどが加わった一般社団法人キャッシュレス推進協議会を設立。同じQRコードで決済ができるように規格統一に向け動き出しました。同協議会は10月に開催した創立大会で、QRコードの形式を統一するための指針を年内に策定する方針を示しました。

さらに、政府は2019年10月に予定している消費税率の8%から10%への引き上げに合わせ、中小の小売店で商品購入した際、クレジットカードや電子マネーなどを使った消費者に対し、購入分の2%分をポイントで還元する方針を打ち出しました。増税幅の事実上の還元は、ほとんど普及していない中小小売店にキャッシュレス決済導入への呼び水にする狙いもあり、必要な端末の配備やポイント還元の費用は税率引き上げ後の数カ月の臨時措置として、国が補助する方向です。規格の統一も追い風となり、QRコード決済が拡大するとみられています。

QRコード活用で新たなビジネスモデルの創出も可能に

海外ではすでに統一が進んでいます。シンガポールは9月、複数の電子決済方法に対応できるようQRコードの規格を統一した「シンガポールQRコード(SGQR)」の導入を発表しました。発表によると、規格の統一は世界で初めてとしています。同国の27種類の電子決済のQRコードが6カ月かけて段階的にSGQRに一本化されます。これまで複数のQRコード決済が乱立していた状況から、各店舗がSGQRを1つ表示するだけで済むことになり、利用者側もスマホのアプリが対応していればSGQRをかざすだけで支払うことができるようになります。

キャッシュレス決済が進んでいる諸外国では、決済ビジネスの利益を手数料から顧客ビッグデータの収集と活用へビジネスモデルを転換しています。一方、日本は依然として手数料ビジネスに終始しています。法律的なハードルもありますが、QRコードがけん引してキャッシュレス決済が普及すれば、年齢や性別など消費者の属性とショッピング取引情報のひも付けや、支払い記録など匿名化された膨大な利用履歴のデータを企業の販売戦略に活用することも可能になります。単なる決済アプリではなく、金融サービス、コミュニケーションツールと連動し新しい価値を創出するビジネスモデルが生まれてくるのではないでしょうか。

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