富士通株式会社

社内情報を効率的に利活用できる情報発信基盤を整備
~「必要な情報」を「必要な人」に「必要な時」に届ける仕組みを構築~

富士通株式会社 社内実践事例 イメージ画像

2017年7月、富士通は、富士通クラウド「K5」上に「Sitecore Experience Platform」(以下、Sitecore)をベースとした情報発信基盤「FSXP(Fujitsu Sitecore eXperience Platform)」を構築。社内に点在していた既存サイト(36サイト)を移行し、UXデザインを統一。さらに、全社戦略に沿った拡販テーマや、旬なプラットフォームに関するテーマを発信する社内ポータルサイト「さびぷろ」を新設。利用者の使い勝手を大きく向上させるとともに、サイト運用の負荷軽減と効率化を実現しました。将来的に「グローバル化」することも視野に入れつつ、デジタルマーケティングを活用し、利用者に最適かつ効果的な情報発信に取り組んでいます。

ソリューション マーケティング機能統合型WebCMS FUJITSU Business Application
Sitecore Experience Platform
課題
効果
課題情報発信サイトの操作性向上、情報利活用の強化
各部門が独自のルールで運営しているため、情報が点在しかつ情報過多で必要な情報を探せない
効果Sitecoreのレイアウトテンプレートを開発し、UXデザインを統一。利用者の操作性、検索性を向上し情報の利活用の強化とサイト運営作業の効率化も実現した
課題利用者ニーズに応じた情報の提供
画一的な情報提供ではなく、利用者ごとに最適な情報を提供したい
効果アクセス状況や行動分析によるパーソナライズ、レコメンドなどのデジタルマーケティングを活用することで、利用者ごとに最適な情報を提供することが可能になった
課題拡張性のあるWebサイト基盤
サイトの増加に容易に対応できる情報発信基盤を展開したい
効果富士通クラウド「K5」上に「FSXP」を構築。サイトの増加に対して容易にスケールアウトできるようにマルチテナント形式でサービスを提供

導入の背景

サービス・プロダクトの情報を全体的な視点で発信するポータルサイトの構築

富士通では、営業やSEの商談獲得やシステム構築に向けて社内の各部門が自社のサービスやプロダクトの拡販・技術情報を発信しています。しかし、各部門が独自のルールでサイトの運営や最適化を行っていた結果、見た目や情報の構成やカテゴリがバラバラなサイトが乱立し、「情報が氾濫し、有用な情報がわからない」「必要な時に必要な情報を探せない」「情報への閲覧権限を適切に管理できていない」「HTML知識習得に時間を要する」などの課題が山積していました。

これらの課題の解決策として、SE向けの「SE情報ポータル」に加え、サービス・プロダクトの情報を全体的な視点で発信するポータルサイト「さびぷろ」の構築を決定。ポータルの充実とともに、SE向けを含めて36サイト共通のレイアウトテンプレートを作成してUXデザインを統一し、併せて資材名や単語を統一するガイドラインを制定することで「情報の利活用」の促進と、「サイト運営の負荷軽減」と「効率化」を実現することができました。

導入のプロセス

「サイト検討会」で情報発信サイトの基本コンセプトを検討

2015年1月、サイトに関わる10部門でワーキンググループ(WG)を結成し、関係部門共通の取り組みとしてプロジェクトがスタート。WGの親会議である「サイト検討会」では関連部門のメンバーが参加して情報発信の在り方を検討し、情報発信サイトに共通する方向性やコンセプトを決定しました。

「サイト検討会」でリーダーを務めるプラットフォーム技術本部 企画統括部 シニアマネージャー 絹田昌子は、関わる部門、移行対象のサイト数、資材数の多さに戸惑いを覚えながら、「最初はどこから手をつけていいかわかりませんでした。でも、共通の思いを持った仲間であり、関連部門のメンバーと一つひとつ検討しながら、どのように進めていくかを決めました」と、当時を振り返ります。

「サイト検討会」で決定した情報発信サイトのコンセプトは次のとおりです。

  • 関係部門共通のWebサイト基盤とする
  • プッシュ情報、横断的テーマ発信の場を統合する
  • 利用者が迷わないように、情報の見せ方とWebの階層構造を共通化する
  • 社内やパートナー様や海外利用者など、閲覧権限に応じて情報を提供する
  • タブレット、スマートフォンなどマルチデバイスに対応し、ワークスタイル変革を促進する
  • デジタルマーケティング機能により利用者に最適な情報を提供する
  • アクセスログを個人やコンテンツだけでなく、組織とも結びつけることで横断的に分析する
  • サイト運営業務の中で、共通化できる作業を効率化する
  • 検索機能を利用者視点で強化し、情報の探しやすさを追求する
  • 将来的にパートナーサイト「ALL-WAYS」と連携する

情報発信基盤の核としてSitecoreを選定した理由について、絹田は、「Webサイト基盤統一のロードマップに従った」と言いつつも、先行していたパートナーサイト「ALL-WAYS」をモデルにできること、ワンソースマルチユース、マルチデバイス対応、デジタルマーケティングなどの標準機能、テンプレートにより誰でも均一の品質でコンテンツをアップできることにメリットを感じたと述べています。

Sitecoreの考え方、仕組みを理解し、要件を確認・整理

プロジェクトでは、親会議の下に個別のWGを設け、サイト担当者を集めて細かな調整を行いました。加えて、サイトの利用者に対しても情報発信サイトの今回のコンセプトが利用者のニーズを満たしているかを随時確認しています。「約170名にWebアンケートを3回ほど実施し、利用者側のニーズに合っているか意見をいただき、価値を提供できるコンセプトかどうかを確認しながら調整を進めていきました」と、サイト担当者間の調整役を担当するプラットフォーム技術本部 企画統括部 村上行弘は語ります。その他にも、「プロトタイプ版を試用してもらったり、営業やSE、支援部門などによる座談会を開催することで、利用者側の意見を反映しながら進めていきました」。

2016年1月、サイト担当者からの要件の抽出が終わりましたが、情報発信基盤(以下、FSXP)の構築を担当したIT戦略本部 グループ共通サービス統括部 ワークスタイル変革ソリューション推進部 マネージャー 森川克巳は、要件の整理が不充分だと判断しました。「FSXPはWebサイト基盤として汎用的に展開するため、なるべくカスタマイズを行わずにSitecoreの標準機能だけで対応したいというのが、共通基盤を提供する側としての意見です。まず、サイト担当者にSitecoreの考え方、機能や仕組みを説明して理解してもらい、その上でどうしても業務に必要な機能はアドオンとして提供するという形で、半年かけて要件を整理し、収束することができました」と、森川は語ります。

独自にサイトを最適化し、運営スタイルを確立していた各部門のサイト担当者にとっては、Sitecoreの標準機能はときに物足りなく見えてしまい、これまで抱えてきた課題を本当に解決できるのかという疑問が湧いていました。これを、移行検討WGで不足機能については運用で代替するなどのアイデアを出しつつ、社内情報発信に必須のコンテンツ一括登録やワークフローなどのサイト共通機能はアドオン開発で対応することを合意していきました。

サイトが社内用とパートナー様用に分かれており、重複作業の発生や、いかに情報漏洩対策を徹底するかも大きな課題でした。Sitecoreの権限管理では利用者の属性によりコンテンツを出し分けることが可能です。「ALL-WAYS」では、権限管理によりパートナー様との契約内容によるコンテンツ参照範囲の制約をかけていました。FSXPでは、社内のグローバルコミュニケーション基盤などの認証機能と連携させることで共通コンテンツ、パートナー様固有コンテンツ、国内限定コンテンツ等の出し分けを実現し、コンテンツ開発者自身によるきめ細かな情報発信を可能にしています。グローバルコミュニケーション基盤との連携により、社内検索の統合も実現できました。

基盤構築、サイト担当者、運営事務局など関係者が入念に話し合い、すり合わせを行ったことがFSXPの成功につながったと言えます。

36サイトを、クラウド「K5」上でマルチテナント形式により稼働

サイト構築にあたり森川が懸念していたのは、36サイトをSitecore上でマルチテナント形式により稼働できるだろうかということです。森川は、要件整理と並行し、Sitecore社に事例やノウハウを適宜問い合わせながらPOC(Proof of Concept)を繰り返し、構築の準備を進めました。また、将来サイトが増えたときに容易にスケールアウトできるように富士通クラウド「K5」を利用し、「K5」のアドバンテージを最大限に活かしたFSXPを設計していきました。「ひとつのSitecoreでどこまでキャパシティを持たせた設計ができるか、技術的に非常にチャレンジングな試みでした」(森川)。

チャレンジングな試みはもうひとつありました。36サイトを同日同時刻に一斉に稼働開始するというミッションです。森川は、事前に移行準備環境を用意して、各部門にコンテンツを移行してもらい、旧サイトを維持しつつ、移行が終わったサイトから順次本番環境に組み込んでいくことで稼働日時に一斉に公開するという手法を選択。「本番環境へ、いきなり移行することは、戸惑う人もいます。移行準備環境でワンクッションを置き、そこで慣れてもらうことで、本番環境へスムーズに切り替えることができました」(森川)。

富士通株式会社 プラットフォーム技術本部 企画統括部 シニアマネージャー 絹田 昌子の写真 絹田 昌子
富士通株式会社
プラットフォーム技術本部
企画統括部 シニアマネージャー
富士通株式会社 プラットフォーム技術本部 企画統括部 村上 行弘の写真 村上 行弘
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プラットフォーム技術本部
企画統括部
富士通株式会社 IT戦略本部 グループ共通サービス統括部 ワークスタイル変革ソリューション推進部 マネージャー 森川 克巳の写真 森川 克巳
富士通株式会社
IT戦略本部
グループ共通サービス統括部
ワークスタイル変革ソリューション推進部 マネージャー

導入の効果と今後の展望

性能問題は「K5」のスケールアップ・スケールアウトで解決

2017年7月、FXSP上の36サイトと「さびぷろ」が本番稼働を開始。事前の説明会などにより各部門に標準的な運営ルールを徹底することで、コンテンツ作成や登録作業の効率化を実現しました。稼働前は、コンテンツの一括登録処理などで性能問題が発生しましたが、「K5」側でリソースを増強するなどにより短期間での解決を図り、稼働後はトラブルもなく順調に稼働しています。

今回の情報発信サイトは、「さびぷろ」を横断的な情報発信の場とし、その下にサービスやプロダクトのサイトがぶら下がるというシンプルな構造をとります。「さびぷろ」と開発技術サイト、サービス・プロダクトサイトの間はグローバルナビゲーションにより縦にも横にも自由に移動可能です。また、統一されたUXデザインにより直感的なアクセス、商談・SIのフェーズに沿った情報の入手などができるようになりました。利用者からは、見やすくなった、操作性が良い、情報の検索性が上がったと高評価を得ています。

デジタルマーケティング、自動化、AIの活用、グローバル化など

絹田が今後の展望として最初に挙げたのは、デジタルマーケティングの活用です。支援部門と連携し、パーソナライズやレコメンドにより、利用者が必要とする情報をプッシュしておすすめできるようにしたいと話します。「サイトを誰が、どのように利用しているかが分かれば、より適切な情報を提供できます。そのための手法がデジタルマーケティングだと思っています。特にアクセスログ分析は、FSXPに移行したことでサイトを横断して実施できるようになり、そこから利用者の動線が分かれば、利用者の立場に立った情報発信が可能になるでしょう」。

サイト検討会では、さらなる作業の効率化を目指し、資材登録の「自動化」などにも取り組もうと考えています。AIを活用してログ分析を「自動化」することも可能でしょう。また、国内だけでなく海外拠点のサイトを統合する「グローバル化」も、もちろん視野に入れています。

「多くの部署、多くの人の協力により、今回のプロジェクトを完遂できました。プロジェクトに関わる皆さまが同じ方向を向き、チーム力を高め、大きな仕事を成し遂げられたことは、貴重な財産です。感謝の念に堪えません。ただ、プロジェクトはまだ第一段階を突破したに過ぎません。今後とも関連部門の皆さまと協力し合いながら、より良い情報発信を目指していきます」と、絹田は話を終えました。

システム概要図 【システム概要図】

左から:富士通株式会社 岸本 博之/絹田 昌子/村上 行弘/森川 克巳 左から:富士通株式会社 岸本 博之/絹田 昌子/村上 行弘/森川 克巳

富士通株式会社

所在地 本店:神奈川県川崎市中原区上小田中4-1-1
本社事務所:東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター
代表者 代表取締役社長 田中 達也
事業内容 通信システム、情報処理システムおよび電子デバイスの製造・販売ならびにこれらに関するサービスの提供
ホームページ 富士通株式会社 ホームページ

[2017年12月21日掲載]

本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は取材日(2017年11月)時点のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

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