日本電波工業株式会社様
水晶デバイスの製造・販売大手の日本電波工業株式会社様は、2010年3月期決算において、国内企業としてIFRS(国際財務報告基準)の任意適用第1号となる決算情報開示をおこなった。
国内金融市場におけるIFRS任意適用の初年度は、IFRSと日本基準双方による決算情報の同時作成が必要であり、同社では、IFRS対応機能を搭載した連結決算ソリューション「GLOVIA/SUPER COMPACT Pathfinder」を導入。両基準による並行開示に伴う業務負荷の軽減、連結決算の効率化・早期作成を実現した。
[ 2010年7月21日掲載 ]
導入事例概要 | |
---|---|
業種: | 水晶デバイス製造・販売 |
ソリューション: | 連結会計システム |
製品: | GLOVIA/SUPER COMPACT Pathfinder、GLOVIA smart 会計 |
携帯電話端末や液晶TV、ノートPC、デジタルカメラ、カーエレクトロニクス、通信インフラ等に欠かすことの出来ない水晶デバイスの製造・販売を手掛ける大手メーカー・日本電波工業様。アジア・ヨーロッパ・アメリカにもグループ会社を展開し、同社の海外売上比率は70%に達している。グローバルにビジネス展開する同社は、海外投資家や取引先に対して信頼性のある財務報告を行うべく、2002年3月期よりIFRSによる財務諸表を英文アニュアルレポートにて公表。海外金融市場からの資金調達を円滑に進めてきた。日本の金融市場においても2015年からIFRSによる連結決算の情報開示の義務化が予定されており、これに対応すべく新たにIFRS対応機能を開発搭載した「GLOVIA/SUPER COMPACT Pathfinder」を導入した。
課題と効果 | ||||
---|---|---|---|---|
1 | 日本金融市場における2015年IFRS義務化に先駆け2010年3月期決算でのIFRS任意適用を短期間でめざす。 | 「GLOVIA/SUPER COMPACT Pathfinder」にIFRS対応機能を新たに開発・搭載し導入。短期導入とともにIFRS適用による2010年3月期連結決算を実現。 | ||
2 | IFRSと日本基準双方の財務諸表作成を手作業で二重入力しており、作業負荷、タイムロスがネックになっていた。 | 各種自動化率の向上、データ連携等により、入力作業における負荷を大幅に軽減。作業の効率化と期間短縮を実現した。 | ||
3 | 海外子会社からのデータがExcelベースで送られてきていたため、タイムラグや手戻りが発生し非効率な面があった。 | 子会社でのデータ入力がExcelベースからWeb画面入力に変わり、情報収集の効率化が図られた。相手の状況がリアルタイムで把握できるようになり、やりとりもスムーズになった。 |
日本電波工業株式会社様 財務本部財務部 部長
半田 重夫 氏
「90年代後半に日本基準の財務諸表に対する欧州投資家からの不信感、いわゆるレジェンド問題を受け、2002年3月期からIFRSによる英文の財務諸表づくりをはじめました。並行して国内では日本基準で作成していたのですが、ダブルスタンダードで作業しているとどうしてもムダがある。出来るだけ早くIFRSに統一したいと考えていました。2009年8月、経営者の理解と後押しもあり、新たなシステムへの更新とともに2010年3月期のIFRS適用に照準を合わせることとなりました」(同社財務本部財務部部長 半田 重夫 氏)。
日本の金融市場においては2015年からIFRSによる連結決算の情報開示の義務化が予定されており、これに先駆け、2010年3月期よりIFRSの任意適用が認められていた。しかし初年度はIFRSと日本基準双方による決算情報の同時作成が必要であり、もはや時間的余裕がなかった。
「いままでは日本基準で連結財務諸表を作成したあとにIFRSでという流れで対応をしてきましたが、それを同時開示し3月期決算に間に合わせるとなると、これまでのシステムでは時間的にも機能的にも限界でした。ドラスティックに変わるようなシステム、いままでの運用プロセスにはないような別な角度からのアプローチが可能なシステムが必要でした」(同社財務本部財務部主計課 専門課長 大武 聡 氏)。その要望に応えたのが新たにIFRS対応機能を開発搭載した「GLOVIA/SUPER COMPACT Pathfinder」だった。
日本電波工業株式会社様 財務本部財務部主計課 専門課長
大武 聡 氏
日本電波工業株式会社様 財務本部財務部 主計課 専門課長
伊藤 洋祐 氏
効率的なデータ収集や自動化による作業負荷の軽減、両基準に合わせた連結決算の早期作成・同時開示を実現する新しい連結会計システムとして今回導入された「GLOVIA/SUPER COMPACT Pathfinder」では、IFRSへの対応機能を新たに開発し搭載している。
同社では、これまでIFRSによる財務諸表を英文アニュアルレポートで公表する際、国内グループ会社については日本基準で個別財務諸表を作成し、IFRSへの組み換え作業を手入力で行っていた。また、両方の基準に共通する修正項目は、IFRSと日本基準の財務諸表へ二重入力することによって大きな手間とタイムロスが発生していた。
「当社の今までのやり方では、まず日本基準で連結精算表をつくってから、IFRSに組み換えるという順番で作業を進めてきたわけです。IFRSのほうが対応すべき決算修正項目が多いため、後からそのプラス部分を作業していたのですが、それを日本基準と同時に出さないと開示までに間に合わないとなると、IFRS対応部分をどれだけ短縮するかというところが課題でした」(同社財務本部財務部 主計課 専門課長 伊藤 洋祐 氏)。各子会社の財務諸表を、日本の会社からは日本基準で受けとり、本社の連結作業の中でIFRSに組み替える。日本基準を完成しないとIFRSに取りかかれない、同時に操作できない、というのがネックになっていた。
しかし、今回の新システム導入で作業効率は一変した。
「新システムでは、日本基準からIFRSという順番に関係なく、先にIFRSをつくってから日本基準ということもでき、また同時操作も可能となり融通が利いた」(大武氏)。
「子会社からExcelの決算修正用資料を受け取り、連結ベースで新システムに投入すれば、自動的に必要な組み替えをしてくれる」(伊藤氏)。
これにより、各々の基準への組み替えが容易となり、二重入力も大幅に削減し、両基準の差異も分析でき、作業の効率化が図られた。
その他にも、同社向けに開発したIFRS対応機能がある。例えば過年度遡及修正機能。IFRSでは会計方針の変更や過去の財務諸表で誤謬があった場合、過去の財務諸表に遡って変更や修正が必要となるため、当年度の仕訳登録を過去の複数遡及期間にわたって自動的に反映することが可能となっている。
また、IFRSでは日本基準と比較して、多くの注記情報の開示が必要となるため、関連帳票を充実させ、効率的に注記情報の収集や開示資料作成が行える機能を備えている。
子会社間での照合差額の把握を子会社担当者が新システム上で行うことで、内部取引データの照合作業を効率化し、本社作業の軽減と決算作業期間の短縮を実現している。
こうしたIFRS対応機能以外にも、システム選定のポイントとして見逃せない視点があった。
「データ収集や自動仕訳等機能面ももちろんですが、個別決算ではこれまでも「GLOVIA smart 会計」を活用していましたので、同一ベンダーという安心感・安定感や担当SEの会計知識の豊富さ、そして何より個別と連結との連携性も重要な選定要因となりました」と大武氏は語る。
「2009年8月に検討をはじめ、9月にはシステムの導入に着手、そして2010年3月期決算を迎え、監査を受け、5月13日に開示というタイムスケジュール。限られた期間という制約もあり、自動化を中心にほとんど標準機能をベースに導入することで短納期を実現しました」(伊藤氏)。システム導入後、まずは事前テストをしながら機能を理解する作業が進められた。
「最初はテスト用に過去のデータを再入力するところからはじめ、徐々にシステムの理解を深めていきました」(同社財務本部財務部 主計課 主任 山本 桂太 氏)。もちろん海外の担当者にも作業を理解してもらわなければならない。その海外とのやりとりを主に担当した同社財務本部財務部 主計課の則武 修 氏は「まず子会社からデータを入力してもらうところからはじまるわけですが、言語が違う中で会計と新システムの機能を交えて説明しなければなりませんでしたので一苦労でした」と語る。これまでのシステムではExcelでデータが送られてきて、不明点や問題点があれば手戻りが発生していたが、新システムでは相手の状態がWeb画面でリアルタイムに把握でき、ムダなやりとりがなくなったという。
各種自動化率の向上、データ連携により入力作業等の負荷が大幅に軽減され、効率化と作業期間短縮を実現している。
「それまで手入力だった両基準への組み替えが自動化され、連結財務諸表作成の二重入力も大幅に削減された。こうした作業の効率化により、これまで約90日かけて作成していた両基準の連結財務諸表を約1ヵ月で作成できました」(大武氏)。日本基準とIFRSで精算表を出すタイムラグがなくなった成果だ。
「いざアウトプットが出てみると、日本基準とIFRSが同時に出てくるのが驚きでした。もちろんそういうコンセプトではあったのですが、実際やってみると非常に早いという印象を持ちました」(半田氏)。
スピードはもちろん、作業負荷の軽減という意味でも大きな効果をもたらしている。
いままでは子会社から来たデータを本社で調整するという考えだったが、今回のシステムでは、子会社が正しい数値を入力さえすれば、そのデータを直接取り込んであとは自動仕訳してくれる、というのが同社がシステムに求めた基本的な考えだ。
「例えば、棚卸未実現利益の消去、連結消去仕訳をするために、いままではExcelで計算した結果をシステムに入れ込まなければならなかったが、今回のシステムでは、最初に子会社からのデータをインプットすれば自動的に仕訳してくれます」(大武氏)。
今回は精算表を2つの基準で同時に出すというのが第一目的だったが、IFRSは日本基準より注記情報が膨大であり、今後はそれに関わるデータを容易に拾い上げ、集計し、的確に注記情報を作れるようにしたいという。
「機能としては組み込まれているものの、もう少し慣れも必要ですし、精度や使い勝手の面では、さらに工夫を加えていきたいと考えています」(伊藤氏)。
ダブルスタンダードを解消し、IFRSにシフトし効率化を目指している同社だが、財務情報の利用者のニーズを考えると、まだ日本基準とIFRSを両方ともデータとして持っていないと、IR対応が難しいという感触も抱いている。例えば、IFRSでは、特別損益項目を区分して表示してはいけないため、経常利益がなく、すべてまとめた営業利益、税引前当期利益、当期利益という表示となってしまう。
「財務情報の利用者ニーズで感じるのは、異常なものを除いた営業利益がいくらなのかという問い合わせが多い。将来の数字を予測する上で、異常項目が入ったままでは見えにくい。すると、日本基準に近い様式の損益計算書のニーズというのは今後も必要かなと感じています」(半田氏)。
まずは、2010年3月期決算という第1ステップをクリアした同社。短期間での導入だっただけに、操作面、機能面からも、今後の同システムの活用に大きな期待がかかる。
富士通のGLOVIA会計ソリューションは、これからも、IFRSとその改正に対し、コンバージェンスを求められる日本基準に確実かつ迅速に対応していく。またアドプションへの対応についても任意適用を想定したスケジュールで対応し、お客様の経営基盤強化を支援していく。
富士通システムソリューションズ
会計ビジネスソリューション本部 連結会計ソリューション部
山田 隆也
今回はIFRS任意適用に向けた連結システムの刷新という、意義の大きなプロジェクトをご用命いただき、大変光栄に感じました。国内会社ではIFRS任意適用第1号となることを、プロジェクト遂行時からご公表されておりましたのでお互い失敗の許されないプレッシャーがございましたが、日本電波工業様、富士通システムソリューションズのプロジェクトメンバー全員の力により無事完了することができました。
また、GLOVIA/SUPER COMPACT PathfinderとしてもIFRS対応に向けて大きく前進することができました。今後も、システム改善の提案・ご要望をお客様とコミュニケーションをとりながら連結決算業務のご支援をさせていただきたいと思っております。
所在地 | 〒151-8569 東京都渋谷区笹塚1-50-1 笹塚NAビル |
---|---|
代表者 | 代表取締役社長 竹内 寛 氏 |
創業 | 1949年11月 |
資本金 | 106億4946万9,744円 (2010年3月31日現在) |
事業内容 | 水晶振動子、水晶発振器等の水晶デバイス、応用機器、人工水晶及び水晶片(ブランク)等の水晶関連製品の一貫製造と販売 |
本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。