株式会社あじかん様
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玉子焼きに始まる食品の製造と販売で、お客様の“お困りごと”をうかがうルートセールスを基本的なビジネススタイルとして300億円規模の企業へ大きな成長を遂げた、あじかん様。今後、そのビジネススタイルを大切にしながらも、次の時代へ向けてさらなる発展を目指すための基盤として、今回、基幹システムの刷新が計画、実施されました。
[ 2007年6月5日掲載 ]
導入事例概要 | |
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業種: | 食品製造販売業 |
ソリューション: | 次世代基幹システム |
製品: | GLOVIA-C、その他、要件に応じてシステム開発、パッケージ利用 |
PCサーバ: | PRIMERGY |
あじかん様の創業は昭和37年。地元の寿司屋を一軒一軒まわり、玉子焼きなどの食材を納めることから始まった事業は、主力製品の玉子焼きのほか、かんぴょうなどの味付け素材など700アイテム以上を自社工場で製造するまでに拡大。このほか他社製造による商品を約8000アイテム以上も取り扱っている。また取引先も大手コンビニエンスストアやスーパー、弁当販売店などに広がっている。
現在では中国をはじめ日本各地に4つの自社工場、協力会社、34の営業所を抱えるまで陣容を拡大。また創業以来、毎年、売上高を更新し続けるなど、食品製造・販売の分野で大きな成長と成功を実現している。 こうした成長をさらに持続的なものとし、さらなる飛躍を遂げるための新たな基盤として自社内のシステム再構築を行うこととなった。
課題と効果 | ||||
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1 | 生産拠点と営業所それぞれの基幹系データの一元化。 | 業務システムの開発やGLOVIA-C 会計パッケージにより新基幹システムを構築。 | ||
2 | チルド製品を多数扱う在庫管理の精度向上。 | |||
3 | チルド製品を多数生産している工場において、その稼動の平準化。 | |||
4 | 納品先までフォローする食品トレーサビリティの仕組みの確立。 | |||
5 | 手作業が多かった各部門の業務効率向上。 |
江角 知厚氏
株式会社あじかん様 執行役員 業務推進本部長
「これまで弊社では、生産や販売など、それぞれの部門で構築した部門システムを使用してきました。しかし、それらはその部門内の業務を行うには適していますが、データを全社的に統合して活用するためには、わざわざ担当スタッフが入力し直すなど手間と時間がかかっていました」と語るのは、今回の新基幹システム導入を統括した執行役員 業務推進本部長の江角 知厚氏。
あじかん様では温度管理に敏感なチルド食品を多数扱っているため、在庫管理をはじめ生産や物流の計画立案などの精度をいかに上げるかが大きな課題となっている。在庫をいかに詳細に把握し廃棄ロスを抑えるか、お客様の発注と在庫数を照合しながら必要とする数量をいかに製造するか、製造した製品の賞味期限を確認しながらもいかに物流コストをかけずにお客様に届けるか、こうした業務改善を進めるには既存システムでは障害が多かったという。
「さらに、食品を扱う企業としてお客様に安心・安全な商品をお届けするために材料の履歴管理、いわゆるトレーサビリティにも積極的に取り組まなければなりません。また企業運営という側面からは会計基準への適合やコーポレートガバナンスの徹底など時代が求める課題もあります。既存のシステムでは、こうした要件に対応できません。弊社は約312億円(平成18年3月期)の売上げですが、今後400億円、500億円の規模を目指した時、これまでの“つぎはぎ”のようなシステムをベースにした業務体系ではきっと立ち行かなくなる。そのような将来に対する危機感が、システム更新の大きなモチベーションでした」と江角氏は語る。
こうした経緯から新たなシステムが社内で模索されることとなった。社長からは「次の10年を築くためのシステムを作れ」と、直々に指示があったそうだ。
こうして始まった次期基幹システム構築プロジェクトだが、当初はなかなか進展しなかったという。営業、生産、物流、会計といった各部門の業務が絡み合い、問題を複雑にしていたのだ。「そんな時、相談に乗っていただいたのが富士通さんです。系列のコンサルティング会社である富士通総研さんとともに、弊社の業務全体を見渡して、どのような方向性のもと、システム全体の最適化を図るべきかを一緒に考えていただきました」と江角氏。
富士通のほかにも検討したSIerはあったものの、「最後まで面倒見てくれるだろう、と思わせてくれたのは富士通さんでした。知人も“富士通は粘り強い”と評価していましたが、まさにその通りでしたね」と江角氏がその選定の理由を語ってくれた。
実際、今回のシステム構築にあたってトレーサビリティの管理など、あじかん様からの希望により富士通が提案して実現した仕組みも数多い。顧客の要望を最後まで実現できる業務知識とノウハウ、解決のための技術を備えていること、さらに食品製造業務の改善をコンサルティングできるグループパワーなどが大きな評価のポイントとなった。
新たな基盤は全社にまたがる大規模なシステムのため生産管理、経理財務、営業支援、需給管理、経営管理の5つの業務分野に分けて構築が行われた。生産拠点と各営業所のデータが一元化されたことで、多くのメリットと新たな可能性が生まれた。
例えば、生産原価が正確に把握できるようになった。700アイテムもの生産品目ひとつひとつにつき、その原価を精細に把握することが可能になったため、大量受注でもリスクを最小限に抑え、価格競争力を最大限に発揮したセールスが可能となった。
さらに物流コストの大幅な削減も、この新基幹システムで期待されていることのひとつ。チルド製品を多く扱うあじかん様では、温度管理を厳重に行いながら物流を行うコールドチェーン網も確立している。チルド製品の需要は曜日によって大きく変動するため、物流網の稼働状況も影響を受ける。新基幹システムでは、この物流量が平準化できるような機能を盛り込み、配送の効率化とそのコストダウンを見込んでいる。
また、会計管理業務のスピードアップ、上長の承認がないと書類が処理されないようなワークフローなど、上場企業として備えるべき体制の整備も、この新基盤システムによって一気に進んだ。
福岡 泰志氏
株式会社あじかん様 経理システムグループ 情報システムチーム リーダー
「新しいシステムで営業所と工場が結ばれたことで、データの途切れない流れが社内全体で回るようになりました」と語るのは、経理システムグループ 情報システムチーム リーダーの福岡泰志氏。構築にあたって、社内のとりまとめ役となった方だ。
懸案事項のひとつとなっていたトレーサビリティは、原価管理の仕組みを応用し実現された。玉子焼きを100本焼くという生産指示があった場合、そのために使う鶏卵や砂糖など原料の指示書も合わせて発行される。原料にはバーコードが付与されており、指示書に従って生産する時に各原料のバーコードを専用の端末で入力することで、どんな製品にどの原材料を使用したかが記録される。この記録を原価管理に使う一方で、トレースのデータとしても活用している。「このしくみのおかげで、いつ、どんなお客様に何本の玉子焼きをお届けしたか分かるようになりました。万一、鳥インフルエンザ等の問題が起きた時も、その鳥が産んだ卵は弊社の玉子焼きに使われているのか、まだ材料の段階なのか、すぐに分かります」と福岡氏は語る。
また、細かな使い勝手にも工夫が凝らされている。お客様ごとに良く注文される商品を一覧表示し、担当営業が数量を打ち込むだけで受注や売上げ計上につながるような仕組みとしたり、在庫と発注数を照らし合わせ、常に一定の在庫レベルを維持できるようアラートを発する機能も盛り込まれている。
工場内の生産指示書
バーコード入力端末で、生産情報を入力
経理財務の決算発表が15日短縮された、自動化により作業者の負担が大幅に軽減された等、新基幹システムは稼動を始めてまだ間もないながらも着実な効果をもたらしている。「弊社はお客様への直販という独自の体制で成長してこれました。しかし、このやり方を変えずに売上げをさらに伸ばして行くためには、どうしても何かの手助けが必要です。新基幹システムは、大きな力になってくれると信じています」と江角氏は期待を寄せている。
また福岡氏は「発注や生産、それに関連する在庫の精度が格段に向上しました。具体的な数字はこれからですが間違いありません。また、今回こだわったトレーサビリティの機能も、間違いなく弊社ならではの強味となります。その他にも在庫アラートといった各機能により経験が浅くスキルのない営業スタッフでも確実な発注ができるようになっています。全社のレベル向上に新基幹システムは大きく寄与しています」と語ってくれた。
「このシステムはまだこれで完成したわけではない」と江角氏は言う。長期情報計画のもと、次にどんなシステムをいつ構築するかスケジュールは既にできているという。
現在のシステムの強化項目のひとつに需給予測がある。「それぞれの営業所が担当しているお客様に対して、“この商品は先月は過去こういう動きをしていました、だから今月はこれくらい発注されるといいですよと”いう候補数をデータ上で教えて差し上げられるようなシステムを目指しています。現在は営業スタッフのカンや経験に頼っていますが、こうしたことも標準化できるといい。こうしたことができるようになれば、例えばより適正な数量を生産することに結びついたり、物流の稼働率を高めるなど、全社のさらなる効率化も期待できます」と江角氏は語る。
あじかん様は、この新基盤システムによって次世代の食品製造・販売へ、いままさに大きな変革を遂げようとしている。
富士通株式会社
中国営業本部
流通サービス営業部
木下 篤実
大興電子通信株式会社
中国支店 営業課
濱田 和紀
株式会社あじかん様は、玉子焼き製品を主軸に一代で上場を果された、たいへん活気のある企業であります。3年前に会社を取り巻く環境の変化(多頻度小ロット配送への対応、受注から出荷までのリードタイム短縮、賞味期限別在庫管理など)に対応するために、社長が社運をかけ「年商が2倍になっても対応できる」を大命題に全社プロジェヘクトを立ち上げられました。
富士通グループは、コンサルタント会社の富士通総研(FRI)、システム構築には、同業態に精通している富士通関西システムズがリーダとなり、本プロジェクトに参加させて頂きました。
本システムの構築に参画させて頂いたことは、たいへん喜ばしく、感謝しております。まだまだ課題は多いと思いますが、富士通グループ総力を上げてサポートさせて頂きますので、今後ともよろしくお願いします。
所在地 | 広島県広島市 |
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代表取締役社長 | 足利 政春 |
設立 | 昭和40年3月 |
売上高 | 311億6,875万円(平成18年3月期) |
社員数 | 約600人 |
事業内容 | 玉子焼き、かに風味かまぼこ、野菜加工品等の製造、販売 |
ホームページ | 株式会社あじかんホームページ |
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