復興支援 活動レポート: 石巻医療圏健康・生活復興協議会様の取り組み

【特集】

一軒一軒の聞きとり調査により在宅被災者を健康・生活の専門サービスへつなぐ

石巻医療圏 健康・生活復興協議会 様の取り組み

石巻医療圏 健康・生活復興協議会様は、東日本大震災で被災し、住宅に大きな被害を受けながらも自宅で生活している住民の実態を一軒一軒調査。在宅被災者に必要な医療や生活の支援へとつなげる活動を行っています。
富士通は、健康・生活アセスメント(注1)により得た情報をデータベース化する仕組みとしてSaaS型アプリケーションサービス「CRMate(シーアールメイト)/お客様接点力」を提供し、石巻医療圏 健康・生活復興協議会様の活動に協力しています。

石巻医療圏 健康・生活復興協議会とは…

震災後、甚大な津波被害を受けた住宅で生活を送っている在宅被災世帯は、石巻市・女川町併せて約5,000世帯1.5万人にのぼると推定されている。応急仮設住宅と比べ、行政支援が届いておらず、コミュニティも分断された状態で、特に高齢者の孤立が懸念されている。
そこで震災後石巻市で在宅医療診療所を開設した医療法人社団鉄祐会祐ホームクリニック石巻を核として「石巻医療圏 健康・生活復興協議会(以下、協議会)」が組織された。代表は、祐ホームクリニック石巻の院長であり、「高齢者を包括的に支えるサービスプラットフォームの創造」を目指す一般社団法人高齢先進国モデル構想会議(以下、構想会議)の理事長を努める武藤真祐氏。これまで、10年後に訪れる超高齢社会に問題意識を持ち活動していた構想会議が「被災地は将来の高齢社会の縮図。今課題を解決できなければきっと将来も解決できない」と立ち上がり、この地に来た。
協議会では事務局として、多くのNPOやボランティア、行政等と連携。在宅被災者の実態を調査し、拾い上げたニーズを分析。それぞれの世帯に必要な医療や介護、生活支援など求められるフォローやサービスにつなげていくという、在宅被災世帯支援事業に取り組んでいる。

実態が不明だった在宅被災世帯に焦点を当て活動

被災地ではこれまで避難所や仮設住宅で暮らす人たちの把握はできていたが、在宅被災世帯について生活状況はおろか、正確な世帯数、人数さえ把握されていなかった。在宅被災世帯とは、津波により甚大な被害を受けた家屋で生活を送る世帯のことである。

在宅被災世帯数は、石巻市・女川町で5,000戸1万5,000人と推定されているが、実数は不明だ。在宅被災世帯は仮設住宅とは違い、行政や支援の手が届きにくいと言われていた。在宅被災世帯が非常に深刻な状態に置かれているのではないかと考え、まずは実態を調査。そしてその結果をもとに、医療や生活面で必要なサービスを提供する仕組みをつくろうと活動を開始した。

2011年10月から健康・生活アセスメントを開始

活動目標は、健康・生活アセスメント(注1)により孤立を防止し、地域コミュニティを再生することである。在宅被災世帯の実態調査を行い、必要な支援へとつなげることで、在宅被災世帯での孤立や孤独死を防ぎ、その先には、住民同士の絆の再生や地域経済の再生などを見据えて活動している。

まず活動の第一歩として始めたのが、在宅被災世帯の実態把握である。宮城県石巻医療圏(石巻市・女川町等)の対象エリアを11に分け、地元NPOに加え、看護師・介護士・社会福祉士・カウンセラー・医師・専門調査員など県外から集まった住民支援専門員を中心に、2011年10月から健康・生活アセスメントが開始された。

(注1)健康・生活アセスメント : 震災により生じた被災者の健康や生活に対する影響を調査し、客観的に分析・評価すること

調査票はデータベース化され具体的な支援へとつながる

健康・生活アセスメントは、震災による喪失や孤立などに対する心のケアともなる傾聴も兼ねている。

調査終了後、ヒアリングした内容に「抜け洩れはないか」、「矛盾はないか」という観点で、担当分を自己チェックする。その後、調査票は情報システム班によって「CRMate(シーアールメイト)/お客様接点力」に登録することによって、データベース化。2次チェック、3次チェックを経由して住民支援専門員や専門職支援に引き継がれる。緊急支援を必要とする個別ニーズについては「緊急ニーズ管理帳票」にて整理される。こちらも、情報システム班品質チームによるデータベース化と分析チームによるマッチングが行われ、具体的な支援につながっていく。

支援やフォローされた履歴は、「フォロー状況表」に記録され、こちらもデータベース化されて情報システム班により対応状況が記録される。こうして、支援のバトンはつながれていくのである。

ICTにより、情報を共有してサービスへとつなげる仕組みができた

在宅被災世帯の身体的・精神的問題の背景には生活の問題が存在する。医療だけでは彼らを支えることはできず、専門家たちの複合的なサポートが必要だ。ICTを活用することで、当日の調査で聞いたことが数日後には全員で共有され、迅速なフォローにつなげる仕組みができたのである。

被災した地元の人たちも協議会の日々の活動を支えている

2012年3月15日時点で、3,789世帯約1万人の在宅被災世帯への健康・生活アセスメントが完了した。全体訪問世帯数のうち、医療、健康面の要フォロー世帯数は25%にのぼった。

また、全体の2割が日常生活に支障のある自覚症状・精神症状を抱えており、特に不眠・憂鬱を訴える件数は自覚症状のうちの9割を占める。なかにはリスクの高い「死にたくなることがある」と答えた人もいる。現在病気を抱える人がいる世帯も7割にのぼり、高血圧、次いで糖尿病、心疾患が多いという結果になっている。

生活面では、調査を行った沿岸地域の在宅被災世帯の75%が、全壊・大規模半壊と判定された住宅に住み続けている実態が判明した。さらに、そのうち7割の世帯で震災半年後でも応急修理を必要としていることがわかった。

一家4人で被災し、協議会をはじめとしたボランティアの支援を受けた住民ネットワークのリーダーを務めている阿部悦子氏は、他の地域から来たボランティアの方々の手助けをしたり、在宅避難している一人暮らしの方には食事をつくり、一緒に食べ、お茶を飲んでお話しをしている。被災した地元の人たち自身も協議会の日々の活動を支えているのだ。

フォローが必要な人たちを毎週の要フォロー会議で検討

健康・生活アセスメントの集約された情報から、フォローが必要な人たちに関しては、「要フォロー会議」で検討が行われる。会議は毎週開かれ、専門家が集まって進捗状況の報告や今後の進め方などが協議される。

会議でフォローが必要な案件が決定すると、医療相談の場合、看護師などが再度話を聞き、詳しく確認した上で、その後の対応を検討する。健康相談にのるケースや医療機関への受診を喚起し地域の医療機関とつながるケース、さらに在宅医療で介入するケースもしばしばである。心のケアの場合は、市の保健師と連携している精神医療の専門職(医師、臨床心理士等)がさらに詳細な状態把握に努め、個別事情に併せて慎重に対応を検討している。また、生活自立支援なら、ソーシャルワーカーにつなぐ。この場合には、経済困窮をはじめ、問題が複雑にからみ合っていることが多い。ソーシャルワーカーが持つ専門性で、それらの問題を解きほぐし、解決に向かう糸口を共に探っていく。さらに、生活面では、買い物や移動相談、住宅の応急修理等、様々なニーズに応えている。

公共を民が支える「新しい公共」モデルを石巻から発信していく

今回の活動では、ICTを活用することにより、従来手の届かなかった行政の役割をサポートする新しい仕組みをつくり上げることができた。石巻モデルとでも呼ぶべきこの仕組みは、今後さらに強固なものとし、地元になくてはならない仕組みとして根付かせ、さらに同様の課題を抱える他の地域にも貢献できればと考える。地域再生の希望につながる活動は今日も続けられている。

さらに詳しい内容は、PDFにてご覧いただけます。

写真提供 : 石巻医療圏 健康・生活復興協議会様
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本特集中に記載の数値、固有名詞等は取材日(2012年2月)時点のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

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