下津井瀬戸大橋
本州四国連絡高速道路は従来3つの自動車道ごとに構築・運用していた交通管制 / 施設監視システムを統合した。
両システムのさらなる最適化により大幅なコスト削減に加え、DR(ディザスタリカバリ)などによる事業継続性向上、トリアージ機能などの自動化による業務効率化も実施し、サービスレベルの向上も実現した。
[ 2016年11月8日掲載 ]
業種: | 高速道路会社 |
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製品: |
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1 | 3つの自動車道の交通管制 / 施設監視システムを統合し最適化したい | システム最適化や運用簡素化によりコストを大幅に削減 | |
2 | 24時間365日、管制 / 監視業務の事業継続性向上を図りたい | 2分以内の業務運用資産切り替えで事業継続性を向上 | |
3 | システム統合後も管制 / 監視業務の品質を維持したい | 自動化で業務効率化と予防保全を図り利用者サービスを拡充 |
本州四国連絡高速道路は本州と四国を結ぶ「神戸淡路鳴門自動車道」、「瀬戸中央自動車道(瀬戸大橋)」、「西瀬戸自動車道(瀬戸内しまなみ海道)」の3ルートの総称である。
その維持、修繕や料金収受などの管理、休憩施設運営などの関連事業を担う企業が本州四国連絡高速道路株式会社だ。
村上 茂之氏
本州四国連絡高速道路株式会社
岡山管理センター 電気通信課 課長
同社は経営の合理化や技術の高度化を図りながら、顧客が安全・安心・快適に利用できるようサービスの拡充に努めている。
同社 岡山管理センター 電気通信課 課長 村上 茂之 氏は「海上に架けられていることから劣化が激しい長大橋を200年以上の長期にわたって利用可能にするため、『予防保全』を基本に『アセットマネジメント』の考え方を導入した維持管理に取り組み、ライフサイクルコストの最小化を図っています。この予防保全を具体的に推進するため、2100年までの長期保全計画を策定しています」と語る。
同社は道路設備からの情報を収集、処理して利用者に提供する「交通管制システム」、防災設備機器や道路照明などの施設の運用状態や故障を監視する「施設監視システム」を構築・運用している。
同社 神戸管理センター 電気通信課 課長 西野 晋二 氏は「両システムは道路管理者に求められる役割・責任上、重要な基幹システムです。加えて、道路の逆走対策など、利用者の安全で快適な通行を支援するため、各種センサーと交通管制システムの連携によるリアルタイム情報提供など、ICTのさらなる有効活用を進めています」と述べる。
西野 晋二氏
本州四国連絡高速道路株式会社
神戸管理センター 電気通信課 課長
三橋 直樹氏
本州四国連絡高速道路株式会社
岡山管理センター 電気通信課 課長代理
交通管制 / 施設監視システムは従来、ルートごとに構築・運用されていたため、整備や維持管理にコストと労力を要していた。
同社 岡山管理センター 電気通信課 課長代理 三橋 直樹 氏は「合理化と運用の最適化を図るため、3ルートのシステムを集約、統合することにしました」と話す。
さらに両システムについて、同社 神戸管理センター 電気通信課 課長代理 日高 英治 氏は、「従来のルートごとのシステムでは、冗長化していても被災した際はシステムが使えなくなる可能性があるなど、事業継続性に課題がありました」と明かす。
三橋氏は「統合後も今まで通り管制 / 監視業務を確実に遂行し、利用者への情報提供の範囲やリアルタイム性といったサービスレベルの向上をより進め、業務効率化や精度向上を図るため、自動化の仕組みが必要でした」と振り返る。
また、同社は今後を見越し、容易に更改や拡充ができるシステム構造と運用に影響なく現地確認できる試験モードの実装も求めていた。
日高 英治氏
本州四国連絡高速道路株式会社
神戸管理センター 電気通信課 課長代理
交通管制 / 施設監視システムの集約、統合に着手した同社は富士通の提案を採用した。
「業務効率化と運用簡素化を可能とするユーザビリティ向上や自動化の工夫、事業継続性を高めるDRでの切り替えの処理提案など、高いSI力を評価しました。充実したサポートなど、長期にわたるシステム維持の面でも安心できました」と三橋氏は語る。
明石海峡大橋
アプリケーションサーバはJavaをはじめ、C++などのマルチ言語対応で、プロセスの生存監視機能も持つ「FUJITSU Software Interstage Application Server」を全面採用。データベースは従来の海外ベンダー製データベースから、高速ローダー機能や負荷分散で現況データを即時反映するパーティショニング機能を持つ「FUJITSU Software Symfoware Server」へ移行した。
さらにサーバ間通信ではなくデータベースに直接アクセスすることで、他サーバに影響することなくシステム更改を可能とする構成や情報提供のリアルタイム性を高める方式を導入した。
2014年10月にシステム構築を開始し、2016年2月に3ルートが本稼働。安定稼働を続けている。
サーバは仮想化し、神戸と岡山の管理センターで冗長化している。
3ルート合計でカメラ102台、情報板198面、トンネル照明・防災設備29カ所など、広範囲におよぶ膨大な数の施設を運用監視する。
「平常時は神戸管理センターのメインシステムに両管理センターからアクセスし、岡山管理センターへ遠隔地バックアップを行います。メインサイト運用停止時にはバックアップサイトにシステムを切り替え、3ルートの管制 / 監視業務を継続可能としました。万が一ネットワークが分断されても、両センターでそれぞれ運用できます。復旧後のデータ整合も可能にしました」と話す村上氏。クラスタ構成や高信頼性のハードウェア / ソフトウェア採用など、あらゆる角度から事業継続性の向上を図った。
様々な自動化機能も実装している。例えば、橋や道路上の設備に異常が発生した際は音声やメールで自動通知するとともに、主原因をシステムで判断してからオペレーターへエスカレーションするトリアージ機能がある。
「車両位置情報システムと連動し、道路パトロールカー(維持作業車)の位置から位置情報を取得して情報板への規制情報を自動で提供できるようにし、タイムリーな情報提供と管制員の業務軽減を図りました」と日高氏は説明する。
西野氏も「リソースを有効活用して、シミュレータ機能も新たに追加し、新任オペレーターが事故発生などの情報を受け、情報板に表示するまでの一連の流れを仮想的に体験して訓練できるようにしました」と続ける。
同社は3ルートの交通管制 / 施設監視システムの統合によって合理化を達成した。
「システムの最適化や運用の簡素化などによって、システムコストを大幅に削減できました。その上、電気通信設備の『質』『量』の状態を定量的に把握し、将来の劣化予測を効率的に把握できる機能も実現できました」と三橋氏は強調する。
事業継続性についても、神戸・岡山のDR体制を中心に大幅に向上できた。
「システム切り替えの目標を5分としていましたが、実際は通信プロセスのみ起動することで2分以内の切り替えが可能となり、ダウンタイムを想定以上に短縮できました」(日高氏)。
あわせて、Symfoware Serverによる復旧後のデータ同期など、事業継続性をより高いレベルで実現。また、Interstage Application Serverのプロセスの生存監視やサーバのクラスタ構成により24時間365日稼働を支える仕組みを低コスト、短期間で構築できた。
南北備讃瀬戸大橋
自動化などによる業務最適化も果たしている。
「富士通のSI力によって整備できた自動化の機能、操作や訓練のためのシミュレータ機能のおかげで、大幅な業務効率化や精度向上を実現できました。加えて、業務データ量が3ルート分に増えたにもかかわらず、データ処理の性能低下は見られず、安定してシステム稼働しており、統合によるサービスレベル向上につながっています」(西野氏)。
「構築に費やせる時間が非常に限られていましたが、予定よりも短い期間で本稼働を迎えられたのは大きいですね」と村上氏は話す。
今回、システム最適化、コスト削減、事業継続性向上、業務効率化や短期構築の達成には、富士通のミドルウェアおよび総合力が大きく寄与している。
同社は今後、ICTをさらに有効活用して、本州四国連絡高速道路の電気通信設備の高度化を図るとともに、保全がより一層効率化するようアセットマネジメントも推進していく。
本州四国連絡高速道路株式会社様と富士通営業 / SE
明石海峡大橋
社名 | 本州四国連絡高速道路株式会社 |
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本社所在地 | 兵庫県神戸市中央区小野柄通4-1-22 アーバンエース三宮ビル |
設立 | 2005年10月1日 |
資本金 | 40億円 |
代表取締役社長 | 三原 修二 |
従業員数 | 363人(2016年3月31日現在) |
事業概要 | 本州四国連絡高速道路の維持、修繕、料金収受などの管理を事業の柱に、サービスエリアなどの休憩施設の関連事業、国や地方公共団体からの委託に基づく長大橋や道路の調査・設計の受託事業などを行う。
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ホームページ | 本州四国連絡高速道路株式会社様 ホームページ |
瀬戸中央自動車道
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本事例に掲載されている橋の写真は、本州四国連絡高速道路株式会社の提供によるものです。