中部国際空港の情報通信システム仮想基盤は、マルチベンダー、異なるバージョンのハイパーバイザーや運用管理ソフトウェアが混在し、業務効率低下などが懸念されていた。そこで「FUJITSU Software ServerView Resource Orchestrator」により仮想基盤を統合。各仮想基盤のバージョン非互換を吸収して操作性を統一し、運用負荷の大幅削減と業務効率や事業継続性向上を実現した。「FUJITSU Software Systemwalker Operation Manager」活用で仮想マシンのバックアップ体制も強化し、安心・安全なサービスを提供している。
[ 2016年5月13日掲載 ]
業種: | 運輸・倉庫業 |
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製品: |
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1 | マルチベンダー、複数バージョンが混在する仮想基盤を統合したい | バージョン差を吸収した仮想基盤の統合運用管理で業務効率と信頼性を向上 | |
2 | 仮想基盤ごとのコンソール画面と操作性を統一し、運用負荷を軽減したい | 画面や操作性統一により必要最小限の人員で高品質な運用管理を実現 | |
3 | 仮想サーバのバックアップを確実かつ効率的に実施したい | 適切なジョブスケジューリングによるバックアップで事業継続性を向上 |
「セントレア」の愛称で知られ、中部地域の空の玄関口としての役割を果たす中部国際空港。日本と世界を結ぶ安心・安全で利便性の高い空港の実現を基本に、「航空ネットワークの拡充」と「地域に愛され、親しまれる空港づくり」を目指して空港運営に取り組んでいる。
近年はインバウンド(訪日外国人旅客)の増加に対応するため、受入環境の整備や案内サービスなどの強化を進めている。
渡部 圭氏
中部国際空港情報通信株式会社
システム企画部 空港運用システムグループ グループリーダー
中部国際空港の情報通信システムはグループ企業の中部国際空港情報通信株式会社がサービスデザインからサービスオペレーションまでを担っている。
システム企画部 空港運用システムグループ グループリーダー 渡部 圭 氏は「空港運営を支える各種情報通信システムのサーバ群の基盤には、拡張性やコスト削減を鑑み、仮想化技術を積極的に取り入れています」と語る。
2011年から第一世代となる仮想基盤を運用。ハイパーバイザーにはVMwareのバージョン4.0と4.1を併用、仮想サーバ管理ソフトウェアのvCenter Serverはバージョン4.0を利用している。
2014年に第二世代の仮想基盤を構築し、VMwareバージョン5.5、vCenter Serverバージョン5.5を採用した。
物理サーバは第一世代仮想基盤が18台、第二世代仮想基盤が現在9台で、複数ベンダーの製品が混在する。
システム企画部 空港運用システムグループ アシスタントマネジャー 古坂 和義 氏は「バージョンの異なるVMware およびvCenter Server、複数ベンダーのハードウェアが混在する環境では、監視メンバーの混乱を防ぐ必要があるため、システムの運用管理が非常に難しくなります。例えば、サーバ障害時はどのvCenterServerに収容されているかを特定するのに、各バージョンのvCenter Serverをそれぞれ点検しなければならず、対応には人的、時間的な負荷がかかることが想定され、一元管理できる体制が求められていました」と振り返る。
仮想基盤の運用管理は、監視メンバーを増員することなく正確に行うことが必須。
古坂 和義氏
中部国際空港情報通信株式会社
システム企画部 空港運用システムグループ アシスタントマネジャー
「vCenter Serverはバージョンごとに画面や操作性が異なるため、運用管理業務の煩雑さが増えたり、ミスの発生など懸念がありました。加えて、新たな操作を習熟するための教育に多くの時間を要することが見込まれました」と渡部氏は語る。
仮想マシンのバックアップにはテープを利用。「従来は週に一度、記憶媒体を遠隔地に設けた保管場所へ人手で搬送し保管しており、時間と手間がかかっていました。定期的なバックアップの強化とともに、バックアップ業務の効率化も求められていました」と古坂氏は話す。
2014年10月、これらの問題を解決するため仮想基盤の統合に着手した。
仮想基盤の運用管理にはServerView Resource Orchestrator、バックアップのジョブ管理にはSystemwalker Operation Managerを導入した。
「サーバは24時間フル稼働させる中、仮想基盤のバージョンの異なりを意識させない仕組みが必要でした。バックアップ運用は堅牢性と災害対策において重要なポイントになります。富士通の業務起点での提案、ミドルウェアのインターフェースの分かりやすさを評価しました」と採用理由を述べる渡部氏。古坂氏も「富士通のミドルウェアは最短でも7年が基本というサポート期間の長さ、マルチベンダー対応である点も高く評価しています」と続ける。
同社は、異なるバージョンのVMwareやvCenter Serverが混在する仮想基盤の運用管理をServerView Resource Orchestratorで統合した。
ServerView Resource Orchestratorによって、仮想環境だけでなく物理環境のサーバも一元管理でき、サーバ保守の簡易化や故障予兆の検知により予防保全性も向上。監視や起動・停止、運用操作の共通化も実現できる。
「各バージョンのvCenter ServerをServerView Resource Orchestratorのコンソールから一元的に操作可能とし、操作ログの一元管理によるトレーサビリティも確保しました。加えて、ゲストOSの停止もアプリケーションインターフェースをサポートしていないVMwareに替わり、ServerView Resource Orchestratorを利用して実現しました」と古坂氏は話す。
仮想マシンのシステムバックアップはまずストレージの筐体内でコピーした後、遠隔地に設置してあるテープ装置へネットワーク経由で送信する仕組みに変更。ジョブ管理をSystemwalker Operation Managerで行いつつ、バックアップを日次で実施する。
「バックアップのジョブ管理は従来から利用していた他ベンダー運用管理ソフトウェアを引き続き使用し、そのソフトウェアからSystemwalker Operation Managerを制御する方式としました」(古坂氏)。
【中部国際空港株式会社様導入事例 システム概要図】
2015年6月に本格稼働を開始し、安定稼働を続けている。
仮想基盤はServerView Resource Orchestratorによって、「VMwareやvCenter Serverのバージョンの違いを吸収して統合運用管理できるようになり、運用管理業務を効率化できました。サーバ障害が発生しても、該当の仮想マシンをServerView Resource Orchestratorから迅速に探せるようになり、信頼性も向上しました」(古坂氏)と狙い通りの効果が得られている。
あわせて、仮想基盤の運用管理のユーザーインターフェースをServerView Resource Orchestratorで統合できた。
「vCenter Serverのバージョンの違いに左右されずに、同じ画面と操作体系での運用管理が実現でき、操作ミスの発生余地を少なくできました。監視メンバーは、仮想基盤のバージョンごとに操作を覚える必要がなく、教育時間が不要となったため、スムーズな稼働開始を迎えることができました」と渡部氏は話す。
さらには今後の仮想基盤の拡張でも効果が見込まれる。
現在はバージョン6系のVMwareおよびvCenter Serverの追加導入を検討中であり、将来的には別製品のハイパーバイザー導入も視野に入れている。
「今後、ハイパーバイザーや管理ソフトウェアのバージョンアップや新規導入、リプレースを何度か実施することになっても、ServerView Resource Orchestratorのおかげで、バージョンやベンダーの違いを意識せず継続的に運用管理できます。サポート期間も長いため、将来にわたって仮想基盤の最適な運用管理が行える仕組みを整備できました」(渡部氏)
仮想マシンのシステムバックアップ最適化も実現した。
「筐体内コピーや日次での実施などの体制強化で事業継続性を向上できました。同時に、テープ搬送が不要になったなど、バックアップ業務の効率化も達成できました。システムバックアップをSystemwalker Operation Managerによるジョブ管理が支えています」(古坂氏)。
今後は仮想基盤の拡張および運用管理体制のさらなる最適化を進めるとともに、「今回構築したServerView Resource Orchestratorで統合管理する仮想基盤を有効に活用していきたいですね」(渡部氏)。
中部国際空港情報通信株式会社様と富士通営業/SE
社名 | 中部国際空港株式会社 |
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本社所在地 | 愛知県常滑市セントレア一丁目1番地 |
設立 | 1998年5月1日 |
資本金 | 836億6,800万円(設立時3億2,200万円) |
代表取締役社長 | 友添 雅直 |
従業員数 | 255人 |
事業概要 | ・中部国際空港および航空保安施設の設置と管理
・旅客および貨物の取扱い施設などの機能施設、店舗などの利便施設の建設と管理 ・上記に付帯する事業 |
ホームページ | 中部国際空港株式会社様 ホームページ |
基幹のシステム基盤をプライベートクラウドに集約してITガバナンスを向上
統合管理やリソース有効活用などにより運用コストを約3分の2に削減
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