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VOICE ~ETERNUSの現場から

大容量のデータを安全かつ容易にバックアップ 富士通株式会社 ストレージシステム事業本部 テープシステム開発部 マネージャー 佐々木 忍 / 堀 大輔 / 富井 大介 ETERNUS LT270 S2 テープライブラリ ~富士通の繊細なテクノロジーがお客様業務を効率的に支援

ディスクの大容量化、低価格に伴い、テープ装置は利用されなくなるのではと予測されてきた一方で、テープライブラリには常に根強いニーズがあり、バックアップやアーカイブなどに活用されている。テープライブラリにはディスクストレージと比べ、どのようなメリットがあるのだろうか。

そもそもテープライブラリとはどのような装置か。

堀

堀近影データを記録するカートリッジテープ、データを読み書きするテープドライブ、テープをドライブまで運んでセットするロボットを1つのキャビネットに収めた装置です。
単体のテープドライブでは、カートリッジテープの交換は人間の手で行います。どのカートリッジテープにどのデータを記録したかも人間が管理しなければなりません。データが増えるほど、これらの作業は煩雑になり、運用管理のコストが嵩みます。これらの作業を自動化し、コストを抑えて大容量データの格納を可能にするのがテープライブラリです。

ディスクストレージと比較した場合のテープライブラリのメリットは?

佐々木

佐々木近影まず、カートリッジテープ1巻あたりの収納容量が大きいことです。ディスクストレージに比べると収納効率が高く、コスト面でもメリットがあります。 テープ規格のLTOは現在第6世代でそのLTO Ultrium 6のカートリッジテープは1巻あたり非圧縮で2.5TBの容量を格納できます。LTOのロードマップでは、1巻あたり非圧縮で12.8TBの容量を格納可能なLTO Ultrium 8まで予定されていますが、磁性体を貼り付ける表面積を考えるとテープはディスクと比べて非常に広く、記憶密度を上げることで、LTO Ultrium 8を超えて技術が進化していく可能性が高いと考えています。

富井

富井近影テープの一番のメリットは、保管時に製品自体が電力を使わずデータを保持できることです。ディスクストレージと比べ、消費電力を抑えることができます。可搬媒体であり、持ち出し可能というのも大きなメリットです。
例えば、カートリッジテープを遠隔地に外部保管することにより、災害時に影響を受けずにデータを復旧し、業務を継続するなど、低コストでの災害対策に役立ちます。ビッグデータやクラウドというキーワードのもとでは、大量のデータを長期間、安価に保管したいというニーズがさらに増えてくるでしょう。そのようなニーズには、ディスクストレージよりテープライブラリのほうが適していると思います。

テープとHDDの比較


テープ(テープライブラリ) HDD(ディスクアレイ)
容量単価 非常に優れている 優れている
省電力 非常に優れている
オフラインで利用できるため、省エネ効果が高い
やや劣る
発電量・発熱量が大きい
可搬性 優れている
カートリッジテープを外部保管可能
劣る
速度 優れている 非常に優れている

ETERNUS LT テープライブラリはお客様のニーズやシステム規模の応える幅広い製品ラインナップを展開している。開発担当者から見たETERNUS LT テープライブラリのおすすめポイント、最新製品のLT 270 S2の特長を聞いた。

それぞれ担当している業務は?

佐々木

堀はハードウェアの機構やキャビネットの設計、富井はファームウェア開発の担当です。私は開発のマネージャーとして、全体の管理、とりまとめをしています。

ETERNUS LT テープライブラリにはどのような製品があるのか。

佐々木

エントリーシステム向け、ミッドレンジシステム向け、エンタープライズシステム向けの製品をご提供しております。とにかくデータのバックアップを安全に、安価に行いたい場合には、エントリーシステム向けのLT20 S2がおすすめです。データの容量が大きい場合はミッドレンジシステム向けのLT40 S2やLT60 S2、さらに複数システムのバックアップ統合などのニーズがある場合にはLT250をご利用いただけます。今後もデータが増え続ける、大容量のデータをますます蓄積していきたい場合には、必要なときに簡単にキャビネットを拡張できるLT270 S2が最適です。

なお、ETERNUS LT250およびETERNUS LT270 S2は、テープの交換を行うロボットを含むハードウェア、プリント基板、ハードを制御するソフトウェアまですべて富士通内で開発・製造しています。

ETERNUS LT テープライブラリのおすすめポイントは?

富井

富井近影カートリッジテープは持ち出す機会が多く、盗難や紛失などセキュリティ上のリスクが問題になります。ETERNUS LT テープライブラリは、LTO Ultrium 4以降のテープドライブとバックアップソフトウェアによりハードウェア暗号化に対応でき、暗号化鍵管理オプションによりデータがテープに書き込まれる際に暗号化されるため、カートリッジテープを持ち出した際に紛失や盗難に遭っても、データの流出を防ぎ、セキュリティを確保することが可能です。暗号化には最高レベルの暗号化強度を持つ256ビットのAES暗号化方式を採用しています。

堀

堀近影カートリッジテープには寿命があり、数が増えるとその管理は大変です。ETERNUS LT テープライブラリは、カートリッジテープ内のカートリッジメモリにデータの位置情報やテープの使用履歴などを記録し、この情報をもとに装置全体やテープを管理します。例えば、ロード回数からテープの寿命を判断し、交換が必要である旨を通知する仕組みなどを備えており、管理の手間を軽減してくれます。

佐々木

佐々木近影ETERNUS LT テープライブラリは、ストレージ統合管理ソフトETERNUS SF Storage CruiserやバックアップソフトETERNUS SF TSMなどのソフトウェアと組み合わせることで、より有効に利用できます。さらにETERNUS DX ディスクアレイと組み合わせて、D2T方式やD2D2T方式のバックアップシステムを実現することも可能です。幅広い業種や用途向けにハードウェアからソフトウェアまでを富士通の製品で揃えたソリューションをご提供できる点もおすすめポイントの1つです。

LT270 S2の特長は?

堀

LT270 S2はデュアルロボット機構を備えています。1つのキャビネット内に予備のロボットを搭載し、現行のロボットが故障しても、システムを停止することなくすぐに予備のロボットが業務を継続します。

デュアルロボット機構の概略図

デュアルロボット機構は、旧機種のLT270で初めて搭載しました。今でこそ、1つのキャビネットに2台のロボットを搭載するテープライブラリは珍しくありませんが、LT270の発表当時にはそのような製品は他社にはありませんでした。富士通製品として信頼性を重視して開発した機構ですが、結果として富士通が先駆けとなったと言えます。

佐々木

佐々木近影LT270 S2の最大の特長は拡張性です。LT270 S2では、基本キャビネットに713巻のテープを収納でき、さらに最大7キャビネット、合計8台連結できます。例えば、最初は基本キャビネットで必要最小限の構成でスタートして、データの増大により多くの容量が必要になったときに、カートリッジテープやキャビネットを追加でご購入いただけます。キャビネットの拡張も短期間で容易に行うことができます。そのため、データのバックアップだけでなく、ディスクに入り切らないデータを蓄積するアーカイブの用途にも利用することができます。

堀

堀近影

他社のテープライブラリは、キャビネット内を動作するロボットが複数のキャビネットをまたがって動作する構造になっています。ロボットを動作させるには、ズレがないように精密にキャビネットを設置しなければならず、時間がかかります。拡張作業のために稼働中のお客様のシステムを1、2日停止しなければならないというのは現実的ではありません。

LT270 S2は、各キャビネット内で動作するロボットとは別にキャビネット間でテープを搬送するロボットを用意し、搬送用ロボットが動いて受け渡しをする部分を連結すればよい構造(キャビネットスルー機構)になっています。キャビネットをラフに設置してロボットが走る部分が多少でこぼこ道になっても、搬送用ロボットがそのズレを吸収するよう開発しました。LT270 S2では、この機構により、最低限の停止時間でキャビネットを拡張できます。搬送用ロボットは、キャビネット内のロボットと同様に2台搭載して冗長化し、高信頼を実現しています。

キャビネットスルー機構

ETERNUS LT テープライブラリの開発に関して、苦労したこと、良かったと思ったこと、そして、今後の展望を聞いた。

開発で苦労したことは?

堀

LT270 S2のキャビネットスルー機構の設計では、「ロボットにキャビネット間でテープを搬送させたい」という要件と「キャビネットを簡単に設置したい」という要件がぶつかりました。ロボットを走らせる部分はでこぼこがなくスムーズなほうがうれしい。一方で、追加のキャビネットは多少ズレが生じても極力時間をかけずにラフに設置できるほうがうれしい。この反目する2つの要件のバランスをいかに取り、現実の製品として仕上げていくかに非常に苦労しました。
仕様が決まるまで機構設計者で検討とレビューを何度も繰り返しました。その後プロトタイプを作成して実際にロボットを走らせ、ロボットが想定したズレを吸収でき、装置の寿命として設定した回数以上動かしても問題ないことを確認することで、キャビネットスルー機構が実現したのです。

富井

富井近影ファームウェア開発は、ハードやプリント基板の仕様が決まってからスタートしますが、実際にハードに結合すると機構が動かず、修正しなければならないことがたまにあります。新しいテクノロジーやCPUを使って装置の機能を具現化していくためには、そのようなプロセスを何度も積み重ねていかなければならない。そこがファームウェア開発で苦労する点かなと思います。
プリント基板が動いて、機構が動いて、1つの装置として完成させていくことがファームウェアの役割だと考えています。メンバー全員で1つの装置を組み立てていくことが大切ですね。

佐々木

1つの部署で1つの製品を開発するには、機構、プリント基板、ファームウェアなどの専門の技術やスキルが必要です。製品を作り上げていくには、それぞれの専門だけでなく、他の技術やスキルについても理解していることが求められます。幅広く技術を習得することが一番苦労する点かもしれません。

良かったと思ったことは?

堀

富士通内では、ロボットのように動く機構を設計する部署は多くありません。ときに苦労はありますが、機構設計を担当できることはありがたいと思いますし、やりがいを感じています。

富井

コントローラーが立ち上がり、装置が完成して、上位のソフトウェアから動いた瞬間に「1つの製品としてちゃんと連携するのだなあ」と感動します。何もない状況から1つのシステム、1つの構成部品を作り上げ、製品として仕上がっていく過程に達成感があり、完成したときは本当にうれしく感じます。

佐々木

ハード、プリント基板、ソフトをすべて富士通のテクノロジーで開発するということは、苦労するポイントでもありますが、エンジニアにとって誇りでもあります。そして、人間が一つ一つ手で管理しなければならなかったことを自動化の仕組みをつくることで、その分のパワーを他業務に活かしていただけるということは、やりがいにもつながりますね。

ETERNUS LT テープライブラリの今後の展望は?

佐々木

佐々木近影最近では、低価格のニアラインディスクなどが出てきたことで、ディスクストレージを使って安価にバックアップシステムを構築できるようになりました。今後は小規模であれば、テープライブラリではなくディスクストレージを使うシステムも増えていくでしょう。1巻あたりの容量の大きさ、省電力、可搬媒体などのテープのメリットを活かすには、バックアップだけでなく、アーカイブの分野でどのようにソリューションを提供するかが重要です。そのためには、アーカイブソフトとの連携など、アーカイブに関連する機能を強化していこうと思います。

堀

堀近影今後は、国内だけでなく、海外市場にも売り込んでいきたいです。国内では装置のインストールやメンテナンスが手厚くサポートされますが、海外ではそのようなサポートが少なくお客様自身が行う場合がほとんどです。海外市場に向けて、装置の作業性や操作性をもっと向上し、誰でも簡単にインストールやメンテナンスができる装置にしたい。そのような機能は機構設計者でなければ提供できないので、そこに注力していけたらと思います。

富井

富井近影LTO Ultrium5 以降のテープドライブより、データをファイルシステムベースで記録するLTFS(Linear Tape File System)という新機能がサポートされました。これを活用すればアーカイブ市場に大きくアピールできるのでは、と考えています。このような新機能を理解し、どう製品化していくかを検討して、バックアップやアーカイブなどに関して課題を抱えているお客様に新しい選択肢を提示していきたいと思っております。

クラウド、ビッグデータが本格化するにつれ、テープライブラリをバックアップだけでなくアーカイブにも利用しようというニーズが増えていくものと思われる。富士通は、アーカイブにも有効活用できるソリューションを提供するために、今後も努力を継続していく所存である。

(注)取材日:2013年8月20日
本稿記載の肩書きや、固有名詞等は取材日、または公開日時点のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

掲載日:2013年10月25日

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