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Fujitsu

Japan

VOICE ~ETERNUSの現場から

1つの技術・製品は、開発、販売、サービスなど、数多くの担当者の手を経て世に送り出されます。「VOICE ~ETERNUSの現場から」では、富士通ストレージシステム「ETERNUS (エターナス) 」の技術・製品にかかわる担当者にスポットをあてて、開発や販売にまつわるエピソード、製品への熱い想いなどを紹介します。

LTO対応テープライブラリなど「ETERNUSテープ製品」
磁気テープ装置の技術的進化と将来の展望

今回は、前回に続いてETERNUS テープ製品について。「テープ装置への需要がなくなることはあるか」を考えながら、テープ装置の大容量化テクノロジーの進化、そして将来の展望を聞きました。


  • 富士通株式会社
    • ストレージシステム事業本部
      ストレージインテグレーション統括部
      シニアスタッフ 大森 治
    • ストレージシステム事業本部
      シニアスタッフ 加藤 恵一
    • ストレージソリューション事業部
      プロジェクト部長 (テープライブラリ担当) 勝山 幸男

――単位容量あたりのコストに関しては、テープはディスクよりはるかに優れている。大容量化技術の進化こそが、テープ装置が長い間廃れることなく利用され続けている、最大の理由の1つといえるだろう。では、テープ装置の大容量化はどのように行われてきたのだろうか。また、将来技術的にはどのように進化していくのだろうか。

テープの大容量化はどのように行われてきたか。


(勝山) 磁気テープ装置は、テープの表面に帯状 (トラック) にデータを記録します。したがって、トラック数が多いほど、たくさんのデータを記録できます。ちなみにオープンリール装置では、9トラックのデータが記録されます。1980年代半ばにCMT (Cartridge Magnetic Tape) 装置になって倍の18トラック、1993年に36トラック、1999年に128トラックのデータが記録されるようになり、容量が増大してきました。


1998年発表
F6458 テープライブラリ


1998年発表
F6458 テープライブラリ用マガジン

加藤近影

(加藤) 読み書きを行うトラック数の増大のためには、ヘッドを固定した状態で一方向に読み書きする18トラック方式では限界があります。一方向で18トラックに書き込み、反対方向ではその隙間の18トラックに書き込むことで36トラック。128トラックのテープ装置になると、一度に16トラックに書き込めるヘッダを少しずつずらして8往復させることで、テープに記録できる容量を増やします。

(勝山) テープの幅は昔から12.7ミリメートル、1/2インチと決まっているため、トラック数を増やすことで1巻あたりの容量を大きくしてきました。LTO (Linear Tape-Open) の規格では2000年発表の第1世代で384トラックでしたが、2010年の第5世代は1280トラックにまで増えています。
LTOがすごいのは、テープに位置制御情報用のサーボバンドを設けているところです。ヘッドは、あらかじめテープのサーボバンドに書き込まれている位置制御パターンを読みながら、その情報に従って微細に位置を移動しつつ、1280ものトラックにデータを読み書きします。

(大森) テープを走行させていると、どうしてもブレが生じます。18トラックや36トラックであれば、多少ブレが生じてもトラック間の隙間に余裕があるので、ヘッドを固定していても対応できました。けれどトラック数が増えるにつれ、そのブレをより細かく制御する必要がある。LTOは、サーボバンドに精密な位置情報をあらかじめ書き込んでおくことでヘッドの動作を制御し、書き込み可能なトラック数を増やしています。

大容量化テクノロジーは今後どのように進化していくのか。


勝山近影

(勝山) LTOは現在第5世代ですが、第8世代まで計画されています。テープ技術としては、LTO第5世代の10倍以上のものが研究発表されています。
またトラック数だけでなく、テープの厚さも進化しています。テープを巻いた状態のリールのサイズは決まっているので、テープを薄くすればその分テープを長くできるからです。LTOの第1世代で8.9マイクロメートルでしたが、第5世代では6.4マイクロメートルになっています。薄くするだけでなく、耐久性を上げるために素材の研究も行われています。テープ関連技術は今後もどんどん進歩していくでしょう。

――テクノロジーが進化していく限り、テープ装置がなくなることはないだろう。けれど、それはテープ装置の利用が増えていくことを意味するわけではない。テープ装置をこれからも利用してもらうためには、どのような取り組みが必要なのだろうか。富士通の将来の展望とあわせて聞いた。

ディスク装置に押されてテープ装置の需要がなくなる可能性は?


(大森) テープ1巻あたりの容量はこの10年で100GB (LTO第1世代、非圧縮時) から1.5TB (LTO第5世代、非圧縮時) に伸びています。ディスク容量の伸びも同じくらいです。ただ、単位容量あたりのコストは、テープはディスクの1/5~1/10と圧倒的に低いです。また、ディスクと比較して、テープは容積あたりの記録容量は高く、転送速度が速い。企業データは増加傾向にありますから、コストを考えるとテープ装置への需要がなくなることはまずないでしょう。
だからと言って、テープ装置やテープライブラリを現状のまま作っていればよいというわけでありません。テープ装置がディスク装置の脅威を感じているように、ディスク装置も背後に迫るフラッシュメモリの脅威を感じています。生き残りをかけた技術競争はさらに激化していくでしょう。

(加藤) テープはランダムアクセスが不得意です。大容量のデータを単純にバックアップするときは速いけれど、一部のデータだけをリストアする場合に速度を求められると弱い。そういうニーズに対してはディスク装置のほうが有利ですから、バックアップ用途にディスク装置を使うケースは確実に増えています。

テープ装置へのニーズを増やすためには何が必要?


(大森) テープ装置は、その長い歴史の中で、技術だけでなく使われ方も変わってきています。バックアップ用途にディスク装置が使われるようになっても、大容量のデータを長期保存するアーカイブ用途にはやはりテープ装置が最適です。ただ、今後は、装置単体ではなく、バックアップやアーカイブを行うシステム全体の一部としてとらえていかなければならないでしょう。

(加藤) ディスクをテープのように見せかけてバックアップなどに用いるバーチャルテープという装置があります。これをテープライブラリと組み合わせると、頻繁に利用するデータをディスクに残し、アクセス頻度が少ないものをテープに保存するといった階層管理が可能になります。またクラウドの普及により、ディスクやテープなどの装置に関係なく、ネットワーク上のどこかに保存できればよいという考え方や、ディスクをテープに見せかけるのとは反対に、テープをディスクに見せかけてゆくアクティブアーカイブアクセス方式などが注目されはじめています。今後は、利用者がデータの位置を意識せずにアクセスできるようなシステムを作っていく必要があると思います。

(大森) 長期保存データには、データ移行の課題があります。 LTOメディアの保存寿命は非常に長くなっていますが、LTOのテープ装置でも、2つ下の世代のテープは読み取れるものの、それ以前の世代には対応できない。よって、3世代に一度はデータの移行が必要となります。実際、富士通が過去に販売した装置で記録したテープを、何とか読めるようにしてほしいというご要望をお客様からいただくことがあります。大容量のデータを長期間保存しても、将来それが読めなくなっては意味がありません。バックアップやアーカイブを行う裏で自動的にデータ移行を行い、常に利用者がデータにアクセスできるようにするといったソリューションも必要になるでしょう。

富士通として今後どのように取り組んでいくべきかを聞かせてください。


(加藤) 「テープ装置への需要はなくならない」ということは、今やっていることをそのまま続けていればよいということではありません。市場動向を先読みして、常に新しいことにチャレンジしていかなければ、テープ装置はなくならなくても、テープ装置ビジネスとそれを担う組織は死んでしまう。

(勝山) テープ装置の市場が今後右肩上がりになる可能性は少ないです。縮小傾向にある市場で他社との差別化を図るためには、製品の性能だけでなく、バックアップやアーカイブ、データの移行などに関して、お客様にとって価値のあるソリューションを考え出していかなければなりません。そのために自分たちは次に何をするべきかという意識を持って、いろいろなことにトライしていく必要があると思います。

大森近影

(大森) 現在はテープドライブの開発を行っていませんが、富士通には50年近くテープ装置の開発に取り組んできたノウハウがあり、それが他社にはないアドバンテージだと思っています。現在の位置に満足してとどまるのでなく、今後お客様に何が必要になるのかを考え、技術的蓄積を活かしたシステムを作っていきたいですね。

(加藤) あと、コンピュータテクノロジーに関しては、やはり米国のほうが進んでいます。海外のエンジニアと交流を持ち、グローバルな視点でユニークな発想をすることがビジネスにもつながっていきます。日本だけでなく世界中の人と積極的に関わり、大胆で冒険的な発想をして製品開発に活かしていくことを、富士通の若いエンジニアに奨励したいと思います。

――テクノロジーの進化に伴い、テープ製品へのニーズや用途もどんどん多様化していくだろう。できるかぎりの保守サービスを続けていきながら、今後もお客様にとって何が必要かを常に考え、さらに価値のあるソリューションを提供するための努力を続けていく。

(注) 取材日:2011年1月25日
本稿記載の肩書きや、固有名詞等は取材日時点のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

次回 「さらなる進化を遂げたETERNUS DX
~ 開発経緯や強化点、開発秘話について

掲載日:2011年5月10日


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