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Japan

VOICE ~ETERNUSの現場から

1つの技術・製品は、開発、販売、サービスなど、数多くの担当者の手を経て世に送り出されます。「VOICE ~ETERNUSの現場から」では、富士通ストレージシステム「ETERNUS(エターナス)」の技術・製品にかかわる担当者にスポットをあてて、開発や販売にまつわるエピソード、製品への熱い想いなどを紹介します。

ストレージシステム ETERNUS(エターナス)のグローバル展開とは

今回は、「ETERNUSのグローバル展開」について富士通の松島、浦、杉浦に聞きました。


  • 富士通株式会社
    • ストレージシステム事業本部長代理
      松島 等
    • プロダクトマーケティング本部 インテグレーテッドプロダクト統括部 統括部長
      浦 昌嗣
    • ストレージシステム事業本部 シニアエキスパート
      杉浦 一

――富士通はETERNUSを旗印に、ストレージ事業のグローバル展開を本格化する。米国をはじめ、韓国や中国などのアジア、そして欧州の市場を目指して歩を進めるが、その途上にはさまざまな問題が待ち受けていた。

海外市場の難しさ、日本との違いは何か?


杉浦近影

(杉浦)国内では富士通製のサーバを導入しているお客様が多いため、サーバ、ソフトウェア、ストレージ、サービスが四位一体となって対応できます。しかし、海外では他社のサーバやソフトウェアがすでに動いている場合が多く、他社がお客様にアプローチしている場合も多い。ETERNUSを採用していただくには、そのような環境に入れてもトラブルがなくつながること、接続性を高くすることが一番の課題でした。それ以外にも日本では考えられない問題がたくさんあります。

具体的にはどのような問題か?


浦近影

(浦)たとえば、輸送です。日本国内では、筐体の高さが1.8mの製品でもジャンボジェット機の貨物室に縦置きで搭載し、どこにでも運ぶことができます。けれど、海外ではそうはいかない。中国では、北京や上海にはジャンボジェット機が飛んでいますが、その先は小さな飛行機になる。そうすると縦置きでは載せられないため、横置きの仕様を作成しなければならない。

(杉浦)陸路の場合も日本とは全然違います。日本ではIT機器輸送用にエアサスペンション付きのトラックを使いますが、海外ではそういう装備のない普通のトラックを使ったりします。道路整備も不十分な地域が多いと聞いています。

(松島)以前ある国へ送ったETERNUSがお客様のところに着いたときには壊れていたということがありました。それが2回も続いたので、現地のスタッフにお客様のところまで運ぶ様子を写真に撮って送ってほしいと依頼したのですが、クッションも何もない普通のトラックに製品をロープ1本で固定している写真を見たときにはびっくりしました。

松島近影

(浦)日本では良い意味できちんと分業ができていて、事業部の責任は製品を工場から出すまで。そこから先は運送業者の責任。お客様のところではCE(Customer Engineer)が製品をきちんと設置します。ところが海外でもその調子で工場から製品を出荷した後を現地の拠点任せにすると、予測もつかないトラブルが起きる。そうではなく、拠点ときちんと話をして、お客様のところまで製品がちゃんと届く体制を作っていかなければなりません。富士通のストレージ事業にとって初めての海外ビジネスですから、次から次に問題に直面しましたが、その経験から学んだことをきちんと活かせてきたなとは思っています。

――順風満帆とはいかないものの、トラブルも糧にして、海外ビジネスが軌道に乗り始めた頃、世界中のITメーカーを震撼させる問題が発生する。半導体封止材問題だ。半導体のパッケージには半導体の防護、防塵を目的に封止材を注入する。当時、封止材に一般的に用いられていた物質が高温多湿下で半導体のピン間の短絡を引き起こすことが判明した。

どのような影響があったか?


(松島)ハードディスクのLSIにはその半導体封止材がよく用いられていました。ピン間の短絡が起こると、ハードディスク製品やハードディスクを搭載したパソコンに不具合が発生します。グローバル展開を推し進めていたGRシリーズにも何度か不具合がありました。その結果、2003年に、ストレージ事業は海外から撤退せよという指示が出たのです。

海外市場からの完全撤退?


(松島)いずれまた海外に出なければ、この先富士通のストレージ事業は生き残れないと予測していたので、上層部に掛け合い、何とかアジアでの事業を残しました。あの問題がなければ、グローバル展開について今とはまったく違う図式が描けたかもしれない。そう思うと非常に悔しいです。

(杉浦)新しい技術や製品は、一般に普及したときには市場シェアの獲得が終わっています。米国に関しては、撤退によりシェア獲得のタイミングを逃してしまった。陣地獲りが終わってしまったところに後から参入してチャンスをつかむのは非常に難しいです。

(松島)半導体封止材問題は米国市場における分岐点でした。あの問題に苦しみながらも米国でのビジネスを継続し、シェアを獲得した日本企業もいたのです。残念ながら、当時ストレージ製品はサーバ製品の付属的な位置付けで見られており、撤退せざるを得ませんでした。

――臍をかむ想いで一度は諦めた海外市場。しかし、GRシリーズの立ち上げ時からの「生き残りにはグローバル展開は必須」という予測どおり、富士通が全社的にグローバル市場に目を向け始め、ストレージ事業にも再挑戦の機会が与えられることになる。

アジア、欧州で好調とのことだが。


(杉浦)中国や韓国では、諦めずに事業を継続してきた結果、出荷台数が伸びています。現地拠点と富士通の間で、ETERNUS製品を自信を持って頑張って売っていこうという意識がお互いにだんだん合ってきた感じです。

(浦)EMEA(Europe, the Middle East and Africa)への本格参戦は2009年からです。2009年4月に、富士通とシーメンスとの合弁会社富士通シーメンス・コンピューターズ(FSC)を富士通テクノロジーソリューション(FTS)とし、100%子会社化しました。FTSも富士通マインドを持って、ETERNUS製品を売ることをミッションとしてくれています。ETERNUSのエントリーモデルについては国内の出荷台数を超える勢いです。FTSの販売網があり、ロシア、アフリカなどの潜在的市場も大きい。EMEAは今後最も期待できる市場です。


富士通テクノロジーソリューション(FTS)外観

海外市場でのETERNUSの評判は?


(浦)市場シェアという意味ではまだまだです。知名度もまだ低い。けれど、導入したお客様からは信頼性が高いとの評価をいただいています。ただ、海外では国内と比べるとサポート体制がまだ万全とは言えません。販売の面については徐々に体制が立ち上がってきており、サポートについても日々改善しています。国内と同様に、「富士通製品は壊れない、壊れてもすぐ直してくれる」という評価が浸透していけば、少しずつでも認知度とともに需要も伸びるはずです。

(杉浦)米国でのシェアを上げたいです。世界のストレージ市場の4割を占める米国は重要な舞台。現在は難しい状況にありますが、米国の展示会にETERNUSを積極的に出展したり、カンファレンスで当社ストレージのメッセージを継続的に発信していくことが将来につながると思います。

――最後にETERNUSに関して将来の展望を聞いた。

(松島)10年前にグローバル展開が必要と思ったが、会社の事情や業界のアクシデントでギブアップしてしまいました。正直に言うと、富士通に在籍中にもう一度グローバル展開ができると思わなかった。そういう意味で、個人的に今の状況にとてもエキサイトしています。
世界には、国内での経験だけではまったく通用しないことが山ほどあります。ETERNUSの海外ビジネスを広げていくためには、若い人材が固定観念を持たずに現地でさまざまな経験をしてそれを活かしてほしい。
ETERNUS製品を海外市場に持っていくことは非常にうれしいことです。もっともっといろいろな国へ持っていきたい。そのために、何を作って何をサービスするかを臨機応変に考えていきたいです。

(浦)日本のものづくりが優れていることは間違いありません。ただ「使い勝手」という部分についてはもっと勉強しなければならないことがあります。国が違えば、文化も風習も異なるのはもちろん、現地に行かなければわからない常識もある。そういうことは日本で座して考えているだけでは絶対にわかりません。
幸い、富士通には、FTSなど、現地にそういうことを熟知している仲間がいます。グローバルビジネスを推し進めていくにあたり、彼らと一緒にどのようにお客様の満足度を獲得できるかを考え、そのための体制作りをしていきます。

――富士通の「オープンシステム元年」から10年経ち、「シャーク」プロジェクトの発足時に夢見たことが実現しつつある。課題はまだ多いが、ETERNUS製品が2010年を「グローバル展開元年」として海外市場でシェアを伸ばしていけるかどうか、期待を持って見守っていただきたい。

(注)取材日:2010年9月9日
本稿記載の肩書きや、固有名詞等は取材日時点のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

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掲載日:2010年11月24日


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